【実用文の書き方】第1回~最適な述語を用いて曖昧な表現を避ける

ビジネスなどで扱う文書は、読み手に正確に伝わるような実用的な文章でなければなりません。

しかし、実務の現場でも不適切な文章は氾濫していて、円滑なコミュニケーションの妨げになっているのが現実です。

このサイトでは、そのような問題を解決するための一助として、実用文の書き方についてまとめることにしました。

今回の記事ではまず、「最適な述語を用いて曖昧な表現を避ける」ことをテーマに説明します。

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はじめに~「実用文の書き方」の記載にあたり

さて、「実用文の書き方」について書くのは、今回が初めてになりますので、まずは執筆に至るまでの経緯について触れておきます。

私は、製造業の大手メーカに長年、勤務して来たなかで、色々な文書を扱ってきました。

それらの文書は、会議録、報告書、提案書、議事録、論文、通知書、始末書、誓約書、契約書、業務連絡、マニュアル、作業手順書、各種伝票、依頼書、通達文など、挙げればきりがないほど多岐に渡り、メールや日報なども日常茶飯事でした。

このような業務経験を通して、文書の重要性を感じた私は、自ら「実用文の書き方」の講義を受け、文書力の向上にも努めてきました。

そうした経緯もあって、日々の業務の中では文章作成にも自信がつき、人の文書の添削もできるくらいになりました。

そして、仕事上で触れる文書を見ては、「ひどい文章がたくさんあるなぁ」と感じることが頻繁にあり、文書の重要性を伝えたいと思ったことが「実用文の書き方」を書こうとした動機となりました。

実用文書は、文学小説など情緒的な表現をするものでもなければ、ソーシャルメディアなどのようにまとまりのない文章の羅列で通用するものでもありません。

内容が明確で分かりやすく、意図が確実に伝わる必要があります。

今後、「実用文の書き方」については、機会を見て複数に渡って掲載して行く予定ですが、全てを読み終えた時、

実用文の書き方のノウハウの要点は全て押さえた!

と思って頂けるようにまとめて行きたいと考えています。

実用文の書き方をマスターしたい人のための一助になればと思います。

最適な述語とは?

では、本題に入りましょう。

今回は「最適な述語を用いて曖昧な表現を避ける」のがテーマです。

”最適な述語”といっても、あまりピンと来ない人もいると思いますが、それは述語をあまり意識して文章を書く習慣がなかったからでしょう。

述語は主語を説明する部分に相当しますが、表現しようとする文章によっては、相応しい述語が決まっている場合があります。

また、曖昧な述語を用いると意味がボケてしまい、内容を正確に伝えられない場合もあります。

”最適な述語”で表現しよとする場合、下記の2つが重要です。

(1)相応しい述語を用いる
(2)曖昧な述語を避ける

この2つの要点を押さえることで、より分かりやすい述語表現となります。

では、具体的に見て行きましょう。

(1)相応しい述語を用いる

まず最初に、「(1)相応しい述語を用いる」についてです。

これについて、最も分かりやすい例を挙げれば、将棋と囲碁です。

将棋をやろうよ
囲碁をしようぜ

SNSや友人との会話ならこれでいいかも知れません。

しかし、実用文であれば相応しくありません。

では、どう表現すべきでしょう。

将棋をしましょう
囲碁をしましょう

これらの言葉は、前掲よりも丁寧な表現ですが、述語としては不適切です。

実用文で書くならば、

将棋を指しましょう
囲碁を打ちましょう

になります。

つまり、将棋は「指す」ものであり、囲碁は「打つ」ものです。

「将棋を打つ」とは言いませんし、「囲碁を指す」とも言いません。

将棋に最適な述語はあくまで「指す」であり、囲碁に最適な述語はあくまで「打つ」なのです。

このように最も相性の良い最適な述語を用いることは大切で、もし「将棋をする」「囲碁をする」と記述すれば、稚拙な表現になってしまいます。

何かを表現する場合、相性の良い、最適な述語を選ぶことが重要です。

(2)曖昧な述語を避ける

次に、「(2)曖昧な述語を避ける」についてです。

述語には色々ありますが、「行く」「見る」などのように広い意味を持つ言葉がいくつもあります。

この種の言葉を安易に用いると、本来の意味とは違う意味に解釈されてしまうかも知れません。

例えば、「〇〇温泉に行く」と表現すれば、たいていは「〇〇温泉に入浴する」ことを意味します。

ところが、この文だけを解釈すれば、「〇〇温泉という観光地に足を運ぶだけで、実際には入浴せず」という場合も含まれます。

これは、「行く」と言う曖昧な述語を用いるからです。

また、「本を見た」と表現すれば、通常は「本を読んだ」ことを意味することが多いと思います。

けれども、この表現だと、「見当たらなくなっていた本を見かけた」ことを意味する場合もあります。

これも、「見た」と言う広い意味を持つ言葉を用いたからです。

実際の文章では、「行く」「見る」などの言葉を用いても、前後の文や文脈から意味は理解できるのが普通です。

しかし、曖昧な述語が多ければ、その分だけ明瞭さに欠け、時には誤解を招く場合もあります。

できるだけ、曖昧な述語を避け、より具体的で的確な表現を心掛けるべきです。

より専門的な言葉を使う

以上のように、述語を用いる場合は、相応しく曖昧さのない言葉を選ぶ大切さを理解して頂けたと思いますが、実際に述語を選ぶ上では、できるだけ専門的な言葉を用いるように心掛けたいものです。

例えば、

新製品を試す

と表現すると、具体的に何を試すのかが不明瞭です。

この場合、「試す」と言っても、その意味が広いため分かりずらくなっています。

「試す」には、多くの意味が含まれますので、上記のように単に「試す」と表現すると

「新製品の性能を評価する」
「新製品について耐圧試験をする」
「新製品に関して市場調査する」
「新製品を試作する」
「新製品のシミュレーションをする」
「新製品を用いて強度試験をする」
「新製品のトライアル運用を始める」

など、色々な解釈が成り立ってしまいます。

従って、単に「試す」と表現するのではなく、何を試すのかが分かり易い、より具体的な言葉、より専門的な用語を使う方がいいのです。

上記で、「試作する」、「シミュレーションをする」、「トライアル運用を始める」と言った表現の方が、単に「試す」と表現するよりも分かりやすいことが分かると思います。

「行う」や「実施する」の乱用は避ける

さて、最後になりますが、「行う」や「実施する」の乱用は避けましょう。

ビジネスの現場でよく目にする表現が「~を行う」「~を実施する」などです。

かしこまった表現であるためなのか、実際の業務でもとても頻繁に使われています。

実際に、私が仕事上で見かけた例文を挙げてみましょう。

  • 〇〇活動の推進を積極的に実施願います。
  • 〇〇の操作を行い試験を実施する。
  • 〇〇の取り組みについて活発な議論を行いました。
  • 〇〇の無駄の排除を実施する。
  • 〇〇の操作を行う。

文章としては間違っていないのですが、とても堅苦しく不自然な感じがします。

上記は、

  • 〇〇活動を積極的に推進願います。
  • 〇〇を操作して試験する。
  • 〇〇の取り組みについて活発に議論しました。
  • 〇〇の無駄を排除する。
  • 〇〇を操作する。

のように「行う」や「実施する」を省いてシンプルにした方が、ストレートで読みやすくなります。

「行う」や「実施する」を一切使わないという意味ではありませんが、使うことで重たく不自然な表現になることが多々あるのです。

実用文では、堅苦しくない自然な表現を心がけて行きましょう。

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