老後の一人暮らしは持ち家がいいのか賃貸がいいのか?
よく言われるテーマですが、どちらも長所、短所があって判断に迷います。
いざ、ウェブサイトを調べてみても、一般論を述べているだけで、結局どちらがいいのか判断しかねるものです。
この記事では、持ち家と賃貸を単に比較するだけでなく、判断の要点となるポイントを40個の項目にまとめました。
高齢者と共に長年、仕事をしてきた私が、老後生活に関して身に付けた知識をもとに、実用的な情報をお伝えします。
掲載した40個の項目をもとに分析・判断すれば、「持ち家と賃貸のどちらにすべきか」、その答えを導き出せることでしょう。
目次
- 1 なぜ、持ち家か賃貸かに迷うのか
- 2 この記事の利用方法
- 3 持ち家と賃貸の長所・短所
- 4 基本的な考え方とポイント
- 5 判断のポイントとなる40個の要点
- 5.1 【01】現在、土地や家屋を所有しているか
- 5.2 【02】住宅ローンの返済が残っているか
- 5.3 【03】まとまった貯蓄や資産があるか</3>
- 5.4 【04】将来の収入は安定しているか
- 5.5 【05】年金支給の時期と受給額は?
- 5.6 【06】借金に対する抵抗感はあるか
- 5.7 【07】いつから住み替えるか
- 5.8 【08】現在、何歳であるか
- 5.9 【09】何年間、住みつづけるか
- 5.10 【10】戸建てかマンションか
- 5.11 【11】孤独に強いか
- 5.12 【12】求めるライフスタイルは?
- 5.13 【13】社交性に富んでいるか
- 5.14 【14】相続する対象者がいるか
- 5.15 【15】子供がいるか
- 5.16 【16】家族の事情などがないか
- 5.17 【17】結婚の可能性があるか
- 5.18 【18】新たな家族構成の可能性
- 5.19 【19】自動車を所有しているか
- 5.20 【20】仕事をどうするか?
- 5.21 【21】健康面に不安はないか
- 5.22 【22】更に引っ越す可能性があるか
- 5.23 【23】要介護後にどうしたいか
- 5.24 【24】家屋の始末に頼れる人がいるか?
- 5.25 【25】居住地の自治体のサポートは充実しているか
- 5.26 【26】住み慣れた地域か
- 5.27 【27】親族の居住エリアからアクセスしやすいか
- 5.28 【28】交通の利便性は?
- 5.29 【29】日常の利便性は十分か
- 5.30 【30】災害の少ない地域か
- 5.31 【31】坂道などが少ないエリアか
- 5.32 【32】月々の支払額はどうか
- 5.33 【33】住まいの築年数は
- 5.34 【34】間取りはどうか?
- 5.35 【35】防犯・セキュリティ面は?
- 5.36 【36】空調は万全か
- 5.37 【37】床は滑りやすくないか
- 5.38 【38】屋内の移動のしやすさは
- 5.39 【39】浴室やトイレの使いやすさは
- 5.40 【40】物件の雰囲気は
- 6 必ず想定しておくべきリスク
- 7 まとめ
なぜ、持ち家か賃貸かに迷うのか
さて、
「老後の一人暮らしは持ち家にすべきか、それとも賃貸がいいのか?」
これを説明したウェブサイトは到るところにあります。
しかし、その多くは不動産関連会社が一般論を述べただけに過ぎません。
また、老後に向けて考えておくべき要素も不足しています。
持ち家にも賃貸にも、それぞれ長所・短所がありますから、一般論だけではどうしても迷ってしまうのです。
それに加え、考えておくべき要素が不足すれば、しっかりした判断も困難です。
そもそも、人によって生活する環境や背景は違います。また、求める条件も異なります。
つまり、持ち家と賃貸のどちらが向いているかは人それぞれ。
だから、自分自身の状況をよく考えて、色々な角度から検討・判断してこそ、相応しい結論を導きだせるのです。
ここにあげた40項目を1つ1つ分析すれば、自然と多角的な検討ができ、迷いを判断に変えることができるでしょう。
この記事の利用方法
老後の一人暮らしは持ち家と賃貸のどちらがいいのか?
これを判断するキーワードは、「老後」と「一人暮らし」です。
老後には、年老いてならではの問題があります。
また、一人暮らしだからこそ生じる課題もあります。
この記事を読む人は、独身であれ、死別や離別であれ、一人暮らしとなる人のうち、既に老後を迎えた人、間もなく老後を迎える人、老後に備えておきたいと考える人がいると思います。
いずれの立場であっても、「老後」と「一人暮らし」の2つの側面から、持ち家か賃貸かを判断することが重要です。
そこでまず、この記事では、一般に言われている持ち家と賃貸との違いをメリットとデメリットを示すことでその概略を述べます。
次に、老後の一人暮らしに対する基本的な考え方とポイントについて説明します。
そして、判断のポイントとなる40個の項目について列挙しますので、1つ1つの項目についてメリット、デメリットを念頭に検討してみて下さい。
40個全ての項目について検討した後、総合的に熟慮を重ねることで、”持ち家にすべきか賃貸にすべきか”が見えてくることでしょう。
1つ1つの項目を繰り返し検討することが大切です。
最後に、想定しておくべきリスクについても触れておきますので、判断の一助にして下さい。
持ち家と賃貸の長所・短所
では最初に、持ち家と賃貸の長所・短所について触れておきます。
持ち家と賃貸とを簡単に比較できるように、それぞれの長所・短所を表に示してみます。
\ | 持ち家 | 賃 貸 |
初期費用 | 大きい (頭金、契約手数料) |
小さい (敷金・礼金、手数料) |
月 額 | 小さい ローン返済(完済まで) |
大きい 家賃(永続する) |
維持費 | 多い (固定資産税) |
少ない (消耗品はあり) |
管理費 | なし (修繕費は必要) |
あり (更新料,修繕積立金) |
資産形成 | 可能 | 不可能 |
リフォーム 間取り・設備 |
可能 | 不可能 |
住み替え | 困難 | 容易 |
安定性 | 安心感 | 契約に依存 |
物件数 | 少ない | 多い |
相続対策 | 必要 | 不要 |
防犯性能 | 低い | 高い |
間取り | 広い | 狭い |
居住性能 | 高い | 低い |
詳細は、物件ごとに異なりますが、概要を比較すれば上表の通りです。
まず、費用の面では長期的に見れば持ち家の方が負担が小さくなります。
持ち家は購入の際に、住宅ローンを組むのが一般的ですが、その際、頭金や不動産の契約手数料などまとまったお金が必要です。
これに対し、賃貸の場合、敷金・礼金などが必要ですが、持ち家の初期費用に比べて少ないのが普通です。
また、1ヵ月当たりに必要な費用は、持ち家ならローンの返済額、賃貸なら賃料で、実際の金額はローンの条件や賃貸料金などによって異なります。
直ちに金額の大小を比較することは困難ですが、持ち家は住宅ローンを完済してしまえば負担が0円になるのに対して、賃貸は家賃の支払いが永続する点で大きく異なるのです。
これが長期的に見た場合に、持ち家の方が負担が小さい理由ですね。
更に、維持・管理費について言えば、持ち家なら固定資産税が必ず掛かり修繕費も時々必要となり、賃貸なら契約更新料が必要で、物件によって修繕積立金が必要になります。
条件によって金額がけっこう異なるため両者の比較は困難ですので、対象の物件について試算・比較してみることが大切と言えます。
そして、持ち家は賃貸よりも資産形成、リフォーム、安定性、広い間取り、居住性の面で優れ、賃貸は持ち家よりも住み替えやすさ、物件数、相続対策、防犯性能の面で優れているという特徴があります。
詳細について比較したい方は、不動産関連サイトが便利です。
基本的な考え方とポイント
さて、持ち家と賃貸のそれぞれの長所と短所が分かったと思います。
問題は、「老後の一人暮らしの場合にはどうであるか」です。
先にも述べましたが、キーワードは「老後」と「一人暮らし」です。
まず、老後について考えてみましょう。
老後は、基本的に年金生活なので収入が限られます。
しかも、日本は高齢化が急速に進み、体制や制度が追いついていません。加えて、国家の膨大な借金が背景にあります。
結果として、年金は徐々に減らされ、高齢者の医療費負担も増加傾向にあり、消費税増税などが進みつつありますので、これからも直接、間接を問わず、実質的な収入は減少傾向が続くと考えるべきです。
従って、最も大切なことは、「月々の出費を極小に抑える」ことです。
生活のためには生活費が必要ですが、これをわずかな年金から抽出しなければなりません。
月々に必ず出ていく出費は、確保できる生活費に直結しますから、月々の出費を極小に抑えることは非常に重要なのです。
持ち家なら資産価値を抑えて課税額を抑制する、賃貸なら月々の賃料を抑えられる物件にするなどを考えましょう。
その為に、大切なことは「間取りをシンプルにする」ことです。
一人暮らしの場合、部屋数は少なくても問題ありません。
特に、子どもが独立した、パートナーに先立たれたなどであれば、不要な部屋がけっこうあるものです。
また、年をとれば活動量が減るため、必要な物も減って来ます。
スリム化を図ってシンプルな間取りにすれば、課税額や賃料を抑えることができます。
いたずらい迷っていると、引っ越しや借り換え、リフォームなどのタイミングを逸してしまいます。
早ければ早いほど、出費を抑えることができるのです。
更に、「老化は必ず進むことを考慮する」ことも重要です。
住まいを構える時は、何ら不自由のない生活を送っているものです。
しかし、誰でも老化は進みますから、病気がちになったり、足腰も弱くなったりします。
行動範囲も狭くなり、最終的には、出歩くのも困難となり、介護とは無縁でいられなくもなります。
従って、老体でも暮らしやすい住まいを念頭に置いておくことはもちろん、住む地域の高齢者に対する公的なサポート体制も考慮しておきたいものです。
これは、住む物件が持ち家でも賃貸でもどちらにも言えることです。
次に、一人暮らしについて考えてみましょう。
一人で暮らしていると、付きまとうのが孤独や寂しさです。
人間は本来、一人で生きてはいけません。また、社会の中で暮らしています。
だから、「社会との接点を保つ」ことが大切と言えます。
一人暮らしをしていると、どうしても陥りがちなのが家に籠り孤独になることです。
一般に集合住宅の場合ほど近隣との接点は少なく、戸建ての場合ほど近隣との接触が多くなるものです。
持ち家にせよ、賃貸にせよ、地域との関係・接点も考えるべきです。
近隣との接点があれば、孤独を回避できるだけでなく、一人ではどうしようもないことも対処しやすくなります。
住む物件を考える場合、社会との接点も頭に入れておきましょう。
そして、高齢で一人暮らしをする場合、「いざと言う時のことを想定する」ことも大事です。
同居している家族がいれば、何かあった場合でも、家族にすぐ対応して貰えます。
しかし、一人暮らしの場合には、簡単ではありません。
従って、持ち家、賃貸に関わらず、居住地を決める際には、子どもや親せきのアクセスしやすさも大切です。
また、現実的な話として、最後は臨終を迎えますから、その時のことも念頭に入れた住まい探しをしましょう。
更に、持ち家の場合なら、資産や相続をどのように処理するのかなど、事前にきちんと決めておくことも重要ですね。
以上、老後の一人暮らしにおける基本的な考え方とポイントについて説明してきました。
ポイントを要約すると下記の通りです。
【ポイント1】月々の出費を極小に抑える
【ポイント2】間取りをシンプルにする
【ポイント3】老化は必ず進むことを考慮する
【ポイント4】社会との接点を保つ
【ポイント5】いざと言う時のことを想定する
判断のポイントとなる40個の要点
では、持ち家か賃貸かを判断するためのポイントを40個示します。
1つ1つの項目をご自身に当てはめて、どちらに利点があるかどうかを1つ1つ検討してみて下さい。
40項目をチェックリストのように使うのも便利です。
【01】現在、土地や家屋を所有しているか
老後の一人暮らしの住まいを考えている人の中には、既に土地や家屋を所有している人もいると思います。
もし、所有しているのなら、その物件を最大限、有効活用することを考えるべきです。
老後は経済的に余裕がありませんから、既にある資産を活用しない手はありません。
具体的には、「そのまま住み続ける」、「リフォームする」、「建て替える」、「売却する」の4つです。
売却すれば、資産は目減りするでしょうから、現在の持ち家に住むことを基本に考えるのがいいでしょう。
但し、長い目で見た時に、固定資産税の負担額が無視できないのであれば、改築や建て替え、売却する方がいい場合もあります。
また、家屋の老朽化による維持費の増額が懸念される場合も、思い切って建て替えを考えた方がいいかも知れません。
もし、まだ高齢でないのであれば、そのまま住み続けて、リフォームや建て替えの選択肢も残るでしょう。
建て替えをするにしても、リフォームするにしても、バリアフリー対応や部屋数のスリム化など、高齢者の一人暮らしに適した間取り・構造が望ましいです。
売却する場合、持ち家と賃貸の両方の選択肢が残りますが、どちらにするかは他の諸条件を考え合わせて結論を出しましょう。
特に制約がなければ、売却益を元に、老後の一人暮らしに適した持ち家を構えるのが無理なく自然と言えます。
【02】住宅ローンの返済が残っているか
一人暮らしでも、住宅ローンの返済が残っている人もいるかと思います。
マイホームを手に入れたけどパートナーに先立たれて一人になった人
理由があって離婚して子供も独立して一人になった人
もとから独身だったがマイホームに憧れて購入した人
背景は異なりますが、マイホームを購入して住宅ローンが残っている点については共通と言えます。
住宅ローンの残債額や返済条件、完済時期などは人により異なりますが、基本的な考え方は以下の通りです。
もし、住宅ローンの返済に無理があるのであれば、物件を清算してしまった方がいいでしょう。
清算によって得られた利益を元に、一人暮らしに適した小さな持ち家を構えるのは有効な手段です。
得られた利益が僅かでも、貯蓄と合わせて持ち家も検討してみましょう。
ワンルーム中古マンションなら意外と安価で購入できる物件もあるからです。
また、住宅ローンの返済に目途がついているのであれば、可能な限り繰り上げ返済をして完全に持ち家としてしまうのが自然な方法です。
ただし、子どもが独立して無駄な部屋が多いなどの問題があれば、ローン未完済のまま売却して、小さな持ち家を求めるのも1つの方法でしょう。
住宅ローンが残っている場合の基本的な考え方は、未完済とはいえ、資産の一部を築いてきたわけですから、これを有効活用することです。
経済的にゆとりを持てない老後を考えれば、今ある資産は可能な限り無駄にしないことが大切ですね。
【03】まとまった貯蓄や資産があるか</3>
まとまった貯蓄や資産がある場合、持ち家を一考する価値はあるでしょう。
長期的には持ち家の方が経済的に有利だからです。
もし、相応の年齢に達しているなら、無理して持ち家を構えずに、貯蓄や資産は生活費に回した方がいいかも知れません。
また、貯蓄額がそれほどでもないのであれば、無理に持ち家にするよりは賃貸の方がいいでしょう。
最終的には、どれ程の貯金があるのか、いま何歳なのか、年金はどれくらい見込めるのかなど総合的に判断することになりますが、手持ちの資金で無理なく家を購入できるのであれば、持ち家は検討の余地があると言えます。
逆に、手持ちの資金で家を購入するのが困難であれば、無理に購入することは避け、賃貸を考える方が無難でしょう。
そもそも、まとまった貯蓄がなければ、それなりに年を取った段階で家を購入する余地はなく、また、無理をするべきでもありません。
判断する指針としては、手持ちの貯金を利用することで、先々の日々の生活費に負担を掛けずに家を購入できるかどうかです。
間取りが狭くても一人暮らしができるだけの小さくて安価な物件があれば、無理のない範囲で持ち家を検討してみてもいいかも知れませんね。
【04】将来の収入は安定しているか
老後の収入は不安定になりがちです。
たとえ一定額の年金を受給できたとしても、近年、実質的な収入は減少傾向にあります。
病気などで不意な出費でもあれば、たちまちひっ迫してしまうこともあるでしょう。
老後の収入は、どうしても安定しない傾向にあるのです。
その上、独り身だと、世帯収入をもとに生計を立てられない点にもハンディがあります。
もし、「老後も事業に励む」、「不労収入がある」など、人並以上の収入が見込めるなら、住宅ローンを組んで家の購入を考えてもいいでしょう。
生涯に渡って一定の収入が確保できるのであれば、逆に賃貸し続けるのも1つの手です。
しかし、高齢だと住宅ローンの審査は通りにくいですし、賃貸契約も難しくなります。
従って、なるべく若いうちに手を打っておくことが大切で、収入が不安定になる退職前から住居の問題は目途を付けておくべきです。
仮に、住宅ローンを組むのであれば決して無理な条件にはしないようにしましょう。
また、賃貸するにしてもゆとりを考えた契約が大切です。
収入が不安定であることの影響は、持ち家でも賃貸でも様々な条件によって変わります。
どちらが、影響を受けにくくなるのかを考えて判断したいものですね。
【05】年金支給の時期と受給額は?
年金生活となる老後においては、年金の支給時期と金額がとても重要です。
なので、年金を試算して居住費に掛かる費用を踏まえて、しっかりとした計画を立てておくべきです。
一人暮らしだと、受給者は一人なので、夫婦で受給するよりも世帯収入は少なめになります。
安易に考え、無計画でいると思わぬ失敗につながるかも知れません。
計画する上では、あくまで年金の受給が始まってからの月々の収支を試算することが大切です。
その際、十分なマージンを考えてゆとりを持った計画を立てることが重要。
いざ年金生活が始まらないと、家計のやりくりは実感が持てないからです。
実際、年金生活が始まってから「思っていたより生活が苦しい」との言葉をよく耳にします。
ゆとりを持った計画こそ大事なのです。
そして、持ち家と賃貸でそれぞれどのようになるかをよく比較することです。
その際のポイントは、年金生活における月々の居住費はいくらまで許容できるかです。
その許容範囲を考えるところに、持ち家がいいのか、賃貸がいいのかが見えてきます。
最終的にどちらがいいのかは、諸条件を考えた上で判断することになりますが、年金の受給額から試算することが基本中の基本です。
【06】借金に対する抵抗感はあるか
年を取ってから借金(住宅ローン)はしたくないものですから、高齢で住宅ローンを組むのは避けたいものです。
老後は、収入が減ることや健康に対する不安もあるため、返済に支障を来す場合も多くなりがちです。
しかし、住宅ローンはきちんとした返済計画が立てられれば決して無理ではありません。
だから、住宅ローンに対する抵抗感こそがカギとなります。
たとえ無理のない返済計画が成り立っても、抵抗感が先立てばローンは組めません。
換言すれば、抵抗感がなく無理のない住宅ローンが組めれば、持ち家を検討する価値は十分あるのです。
抵抗感を拭えるのなら、持ち家を考えてみるのもいいでしょう。
逆に、どうしても抵抗感があるのなら、それは老後生活に大きな不安を生じる要因になります。
ローンは避けて賃貸を考える方がよいでしょう。
【07】いつから住み替えるか
「老後の一人暮らしはこのようにする!」との結論を出すのなら、ふつうは早い方がいいでしょう。
早ければ、持ち家を構えられる可能性が高まりますし、住宅ローンの負担も軽減しやすくなるからです。
年老いて貯蓄や資産が十分ないと、持ち家か賃貸かの選択肢も狭まってしまいます。
また、高齢期の引っ越しでは、新しい環境に馴染めないなどの問題もありますから注意が必要です。
とは言え、将来はまだ分からないと言う人も多いハズ。
だから、計画として考えるタイミングとしては、何かの節目がいいでしょう。
例えば、
・定年退職
・年金の受給開始
・子供の独立
・住宅ローンの完済時
・賃貸契約の満了
・現在の住居の老朽
などです。
節目に行動を起こす方が、なにかと対応しやすいからですね。
そして、住み替えのタイミングが若い時期なら持ち家を、年老いた時期なら賃貸を基本に考えるのがいいでしょう。
諸条件にもよりますが、持ち家の方が長期的に経済的だということだけは念頭に置いておきたいものです。
【08】現在、何歳であるか
もし、あなたが後期高齢に該当するのであれば、無理に今の住居を変える必要はないでしょう。
いま持ち家に住んでいればそのまま持ち家に住み続け、いま賃貸に住んでいればそのまま賃貸に住み続けるのが自然です。
高齢期の引っ越しは体力的にも負担が大きいですし、住む環境の変化は老体には酷だからです。
仮に後期高齢までは至らないものの、年金生活を既に始めて何年も経過している人なら、持ち家か賃貸かは無理のない方にするのがいいでしょう。
自然に構えられるのであれば持ち家を検討すべきですが、決して無理すべきではありませんね。
また、定年退職を前にしている年代の人なら、退職金を元に持ち家を考えるのも1つの手段です。
「現在、何歳であるか」は経済的なゆとりや、余命年数、体力的な影響などと密接に絡みます。
今の年齢に諸条件を加味した時、「持ち家を無理なく構えられるかどうか」が大きな判断のポイントでしょう。
【09】何年間、住みつづけるか
さて、持ち家に住むにしても、賃貸に住むにしても、これから何年間、住み続けるかも考えておきたいものです。
自分が亡くなる時期は誰にも分かりませんから、住み続ける期間を想定するのは難しところ。
しかし、今や人生100年と言われる時代ですから、十分、長生きすることを念頭には入れておきたいものですね。
持ち家に住む場合、家屋の老朽化が進めば、メンテナンス費用が増加することは考えておくべきでしょう。
中古住宅なら、耐用年数を大きく超える可能性も認識しておきましょう。
賃貸物件に住む場合も、家屋の老朽化などで退去を余儀なくされることも頭に入れておきたいもの。
また、貸主都合で退去させられる場合もあり、賃貸し続けることが難しくなるリスクも頭に入れておかなければいけません。
長く住めば住むほど、持ち家であれ賃貸であれ課題やリスクが発生する傾向があります。
住み続けることによるそれぞれの問題をよく比較しておくことが大切と言えます。
【10】戸建てかマンションか
持ち家には戸建てもあればマンションもありますが、賃貸にも戸建て、マンション(集合住宅)があります。
従って、持ち家と賃貸のどちらを選択しても、戸建てかマンションかを選ぶことはできます。
しかし、実際には物件数に差がありますので、物件の見つけやすさが変わってきます。
例えば、賃貸を探す場合、戸建てよりも集合住宅の方が物件が多いので、戸建てを望む場合は適切な物件を見つけにくいと言えます。
従って、持ち家か賃貸かを考える場合、戸建てかマンション(集合住宅)であるかは、とりあえず分けて考えた方がいいでしょう。
人によって、「どうしても戸建てがいい」、或いは、「マンションでなければダメだ」、などのコダワリもあると思いますが、先ずはコダワリの枠を外して考えることです。
戸建てもマンションも、それぞれ長短所があり、一概にどちららが良いと言えるものではありません。また、好みの問題でもあります。
要は、まず、居住費の形態が異なる「持ち家と賃貸」に主眼を置いて検討し、次いで戸建てかマンションかを考えましょう。
単なる感覚や好みだけで判断しないことも大切ですね。
【11】孤独に強いか
老後に一人暮らしとなると、付きまとうのは孤独との闘いですから、孤独に強いかどうかは重要です。
一般に、持ち家だと近所とのつながりが強く、賃貸だと近所とのつながりは弱いと言われています。
もし、孤独に強くないのであれば、持ち家を構えて、その地に根を張ってコミュニティを重視することも大事。
孤独に強いなら、賃貸を選択するのも悪くないでしょう。
但し、たとえ孤独に強い人でも、年を取ってから何年間も、まともに人と触れ合うことがないと気が滅入るものです。
持ち家であれ賃貸であれ、住み慣れていない地域は避けるとか、人との交流が期待できる場所に住居を構えるなどの工夫は欲しいものですね。
【12】求めるライフスタイルは?
老後は時間がありますから、充実した生活のためには趣味や娯楽はとても重要です。一人暮らしならなおさらですね。
なので、老後のライフスタイルも頭に入れて判断したいもの。
例えば、庭いじりが好きなら、庭のある持ち家が欲しいところです。
もし、室内での運動やピアノの演奏が趣味なら、騒音の影響が小さい持ち家が相応しいですね。
ゲームが趣味なら、持ち家でも賃貸でもどちらでも構わないでしょう。
持ち家か賃貸かを安易に考え、老後に思い描いていた生活スタイルが取れなくなるのはとても残念なことです。
老後の生活をイメージして、判断しましょう。
【13】社交性に富んでいるか
人のタイプをザックリ分けると、外で活動するタイプと家で過ごすタイプの2つがあります。
外で活動するタイプは、もともと社交性に富んでいるものですが、年老いてからも社会と交わることは大切でしょう。
家で過ごすタイプは、社交性は薄く一人にも慣れているでしょうから、社会との交わりはあまり重要ではないでしょう。
なので、物件を決めるに当たっては、社会と交わりやすい環境であるかどうかも考えたいものですね。
一般に、持ち家の方が近隣とはつながりが強く、賃貸の方が近隣とはつながりが弱い傾向があります。
持ち家か賃貸かを考える場合、人と接する機会はどうなのかも頭に入れておきましょう。
社交性を重視するなら、公共交通機関の利用しやすい地域を選ぶことも大事ですね。
【14】相続する対象者がいるか
持ち家か賃貸かを決める時には、相続者の有無も確認したいものです。
持ち家は資産となりますから、相続者がいる場合に関わってきます。
例え子どもがいなくても、相続権を持つ者がいるかどうかは確認しておきたいところ。
過疎地や老朽化などで資産価値がない場合、負の資産の相続となる可能性がありますので、特に注意が必要です。
資産価値がほぼ無くなるのであれば、思い切って賃貸に変更するのも一つの手段です。
逆に資産価値が大きくても相続の問題は付きまといますから、親族間でしっかりと話し合っておくことが重要です。
相続争いの問題を解決するために、持ち家を売却・清算して賃貸に変更する余地もあるかも知れません。
いずれにしても、持ち家の場合は、家屋を処分する必要が生じますから、先々のこともしっかり考えておきましょう。
一人暮らしの場合、相続についてはあまり考えないかも知れませんが、確認だけはしておくべきです。
なお、新たに持ち家を購入するのであれば、できるだけ資産価値の下落しにくい物件を求めることも大切ですね。
【15】子供がいるか
子どもがいるかどうかは、前述の相続の問題もあるかと思いますが、それとは別に同居の可能性も考えておくことが大切です。
子どもが独立したからこそ現在は一人暮らしになっている(なる)訳ですが、将来的にどうなるのかはまた別な話。
子から見れば、自分の親が老後にどのように暮らすかは関係ないとも言えますが、年老いて行けば放っておけるものではありません。
子どもは子供なりに、「できれば同居したい」、「なるべく近くに住みたい」、「二世帯住宅を考えたい」などと考えていることもあります。
子どもは、年老いた親のことが気にかかるもので、同居の意思を持っていることもあるのです。
親としては、「子どもに迷惑を掛けたくない」と考える人も多いのですが、子供の意思も一考すべきでしょう。
距離を保つからこそ親子円満でいられるものの、一緒に暮らすと却って衝突することもあるかも知れません。
それでも、老いが進めば理想的なことばかりでは済まないこともあります。
「一人で暮らす」と考えている人でも、もし子供がいるのであれば、将来のことについて一度話してみるべきでしょう。
もし、一緒に暮らす方向に進むのであれば、持ち家にするか賃貸にするかなどは考える必要がなくなるかも知れません。
【16】家族の事情などがないか
さて、持ち家にするか賃貸にするかの判断は重要ですが、それ以前に考えなければならないこともあります。
その一つが、家族や親せきに何らかの事情がないかどうかです。
家族の事情も考えずに安易に自分ひとりで判断してしまうと、あとあと問題につながるケースもあります。
例えば、自身の親がまだ健在な場合、親の老後生活のことも合わせて考える必要があるでしょう。
他にも、
子どもはいるけど国外に移住して、帰国する予定がはっきりしない。
現在は持ち家に住んでいるけど、親戚の名義になっている。
年老いた一人暮らしの兄弟がいて、生活が心配だ。
など、様々な事情がある人もいます。
持ち家に住む場合は、簡単には変更ができませんし、賃貸でも契約している以上、手続きが必要になります。
なので、家族や親せきの事情があって、その影響を受ける可能性があるのであれば、居住を始める前にしっかり整理しておきましょう。
一人暮らしだと、個人の判断だけになりがちですが、家族や親せきと無関係な人はいません。
持ち家であれ賃貸であれ、事前に何かしらの事情がないかを確認し、必要であればきちんと整理した上で判断した方が賢明と言えます。
【17】結婚の可能性があるか
「この年に至って、今さら結婚?」
そのように思う人もいるかも知れません。
しかし、熟年結婚と呼ばれるケースはけっこうあり、実際にうまく行っている人もいます。
初婚であれ再婚であれ、結婚願望が少しでもあるのであれば、たとえ予定がなくても一考の価値はあります。
熟年結婚は、人生経験を積んだからこそ楽しめる恋愛や、法律上で優遇される側面、更に老後の不安解消の一助にもなり得ます。
けっこうメリットがあるのですね。
デメリットもありますが、「老後は一人暮らし」と決めつける前に、結婚を検討してみるのもひとつの選択肢と言えます。
結婚すれば、持ち家か賃貸かはパートナーとの話し合いになるでしょうから、結婚の可能性があるのなら先ず考えてみてはいかがでしょう。
【18】新たな家族構成の可能性
これは、子どもがいるか、家族の事情があるかなどとも関係しますが、色々な場合があります。
一人暮らしを考えていたけど、状況が変わって誰かと一緒に暮らすことになるのは珍しいことではありません。
例えば、
独立した子供が転勤となって地元に戻って来る。
事情があって親友と一緒に暮らすことになる。
税金や制度の関係で同居が条件的にとても有利となる。
など、色々な場合があるでしょう。
「私は死ぬまで一人暮らしだ」と考えていても、状況が変わることはあります。
新たな家族構成については、可能性だけでも考えておきたいものです。
【19】自動車を所有しているか
自動車を所有しているかどうかも判断材料にすべきでしょう。
一般に、持ち家は駐車料金が掛かりませんが、賃貸は駐車料金が発生しますから、自動車を所有しているか、所有し続けるかは大きな問題です。
ただし、持ち家でも駐車場のない持ち家やなら別に駐車料金が掛かりますし、逆に駐車場込みの賃貸物件なら別途費用がかかることはありません。
どちらであれ、自動車の所有には他にも維持費が掛かりますので、住居費に割ける費用が制限されることは頭に入れておきましょう。
近年では、高齢者ドライバーによる事故が社会問題にもなっていますから、いずれ運転免許証は返納すべきでしょう。
なので、向こう何年間、自動車を所有することになるのかも考慮すべきです。
高齢になってから駐車場付きの家を購入すると、却って固定資産税が負担になる場合もあるかも知れませんね。
公共交通機関の利便性と自動車の必要性の双方を考えて物件を選ぶことも重要です。
【20】仕事をどうするか?
今や人生100年の時代。老後に仕事をしないとは限りません。
むしろ、積極的に仕事を求める人も増えて来ています。
老後の生活費のため、自身の健康のため、ヤリガイを求めるためなど、人によって目的は違うものの、高齢でも働く人は少なくありません。
もし雇用されるのであれば、持ち家でも賃貸でも勤務地に通いやすい物件を求めるべきでしょう。
社会の一線で活躍し続けたいと考えるのなら、持ち家を構えて社会的な信用を高めるのも1つの手段です。
また、個人事業を営み事務所を自宅と兼ねるのであれば、持ち家でも賃貸でも、税法上、有利な方法を考えるのがいいかも知れません。
仕事を考えている人は、持ち家と賃貸の違いがどのように影響するのか考えておきたいですね。
【21】健康面に不安はないか
老後における健康状態は生活に直接、影響します。
病弱であるとか、基礎疾患を持っている、或いは健康面で何らかの不安があると、長く住み続けることが出来ないこともあります。
入院や介護が必要となったり、施設への入居が避けられなくなると、せっかく持ち家を所有していても、ほとんど住まなくなる可能性もあります。
また、たとえ施設への入居などが無くても、健康上の理由で、急きょ子供と同居する話に進展する場合もあります。
特に一人暮らしの人は、誰も助けを当てにできない状態で生活することになりますので、健康上の問題が発生した場合、状況が一変する可能性が大きいのです。
従って、既に健康面に不安を抱いている場合は、入居した物件にゆくゆく住まなく可能性が高いことを認識して判断すべきでしょう。
仮に健康体そのものであったとしても、老化が進んで身体が衰えれば同じような問題は発生します。
健康に自信がある人でも、将来的には問題となりうることは頭に入れておきたいものです。
【22】更に引っ越す可能性があるか
老後に一人暮らしをする人の中には、将来、引っ越す可能性がある人もいると思います。
老後も会社勤務をしていれば、退職と共に移住する人もいるでしょう。
父母がまだ健在で、ゆくゆくは実家に戻ろうと考える人もいるかも知れません。
将来、引っ越す可能性がある場合、当面のあいだ住むための家と、後々引っ越した時に住むための家の両方を考える必要があります。
持ち家の場合、資産を形成しやすいですが、移転をすれば売却損が発生します。
また、引っ越しに伴う手続きなどは賃貸に比べると容易ではありません。
一方、賃貸の場合、資産は形成しにくい上、月々の賃料が発生します。
しかし、引っ越しは持ち家に比べて容易なため身軽さがあります。
将来、いつ頃、引っ越す可能性があるのかを想定して、試算して比較するのが最善でしょう。
【23】要介護後にどうしたいか
誰でも健康でいたいものですが、老化にはかないません。
程度の差はあるものの、いずれは要介護の状態になるのが普通です。
特に一人暮らしの場合は、日々の生活を助けてくれる人がいないので、要介護状態になった時のことはしっかり考えておきたいところ。
実際に私が見てきたひとり暮らしの多くの人は、最終的には介護をしてもらえる施設に入所しています。
近所に助けてくれる身内がいないのであれば、介護施設への入居も現実問題として想定しておくことべきでしょう。
いざ施設への入居となると、やはり賃貸の方が直ぐに手続きや具体的なアクションが取りやすいのは事実です。
これについては、一人で決められない面も大きいですから、身内で話し合っておくことが大切ですね。
【24】家屋の始末に頼れる人がいるか?
一人暮らしである以上、最期を迎えた時に家屋の始末をしなければなりません。
だから、親戚縁者を含め、家屋の始末に頼れる人がいるかどうかも重要です。
特に、身近な親戚がいない人は大きな問題ですね。
持ち家であれば売却や譲渡することになるでしょうが、その際、資産の問題が絡むので手続きは煩雑です。
一方、賃貸であれば契約を解除するだけですので、わりと簡単な手続きで済みます。
なので、もし家屋の始末に頼れる人がいないのであれば、あまり面倒とならない賃貸の方がいいでしょう。
もちろん、子どもなど頼れる人がいるのであれば、無理に賃貸にする理由はないですね。
【25】居住地の自治体のサポートは充実しているか
この項目から先は、住む物件を決める際に考慮すべきことについて記載します。
持ち家であれ賃貸であれ、居住地域を決める点は共通ですが、実際どこに住むかが大切です。
特に、自治体のサポート体制はとても重要です。
どこの自治体においても、高齢者に対する福祉サービスはありますが、その充実度は異なります。
また、都道府県や地域によっても差があります。
従って、住まいを検討している自治体で、どのような高齢者向け福祉・サービスが提供されるかを調査しておきましょう。
特に、高齢で一人暮らしの場合は、どれだけサポートして貰えるかは、生活する上で大きな違いとなります。
その地域で活動している高齢者向けボランティア団体も含め、サポート体制がどの程度、整っているのかは必ず調べておきたいものです。
【26】住み慣れた地域か
住む場所を決める時には、住み慣れた地域かどうかも大切です。
年老いてからの引っ越しはただでさえ負担が多いのですが、いざ住み始めて新しい環境に馴染めないと、苦労の絶えない生活になるかもしれません。
都市部で生まれ育った人は都市部の方が馴染みやすく、地方で生まれ育った人は郊外、田舎暮らしの方が違和感がないもの。
田舎暮らしの経験すらない人が、老後にいきなり地方に移転するとギャップの大きさに戸惑うこともあるでしょう。
逆に、農村で生まれ育った人が都市部の生活経験もなく移転するならば、当惑するかも知れません。
できれば、住み慣れた地域からあまり遠くないところ、それが無理でも生まれ育った環境と大差のない居住地を求めたいところです。
持ち家にするか賃貸にするかだけにとらわれて、住む地域に馴染めるかどうかを検討しないのは考えものです。
引っ越しに失敗すると、やり直すのに大きな苦労を伴うのが高齢期です。
移り住む地域に馴染めるかどうかを、しっかり検討しましょう。
【27】親族の居住エリアからアクセスしやすいか
住む場所を決める時には、親族の居住エリアからのアクセスも大切でしょう。
と言うのも、一人暮らしの場合、いざと言う時を考えておくことが重要だからです。
たとえ子や兄弟のような近親者が近くにいなくても、従兄弟や甥や姪が近くにいるだけでもいざと言う時は全然ちがいます。
親族が多く住む故郷などなら、安心感も大きいでしょう。
一人暮らしだからこそいざと言う時のことをしっかり考えて居住地を決めたいものです。
【28】交通の利便性は?
老後の一人暮らしでは、交通の利便性は大切です。
どこか行きたい場所があっても、移動手段が充実していなければ不便を強いられます。
一人暮らしだと、送迎を手伝ってもらうこともあまり期待できません。
また、高齢となれば自ら車を運転することも無理になります。
更に、足腰が弱れば、徒歩や自転車での行動範囲も限られます。
持ち家であれ賃貸であれ、居住地を決める際にはバスや電車などの公共交通機関の利便性を必ず確認しておきましょう。
【29】日常の利便性は十分か
日常で頻繁に利用する店などの利用しやすさは極めて重要です。
特に、病院やスーパー、薬局などは利用することが多く、どれだけアクセスしやすいかがカギになります。
それほど年を取っていない時は、「自転車で容易に行ける」などと考えてしまいますが、老化が進めば進むほど、遠く感じるようになります。
単なる距離ではなく、ルート上の実距離も考慮した”利用しやすさ”を考えたいところ。
また、郵便局、役所など、生活と密着した機関や施設へのアクセスのしやすさも忘れないようにしましょう。
持ち家でも賃貸でも、便利な中心地ほど居住費は高めの傾向にあります。
居住地を決める際は、居住費とアクセスのしやすさとのバランスが大事ですね。
【30】災害の少ない地域か
近年は、且つてなかったような大雨が降ることもしばしばで、想像しにくかった災害も珍しくなくなりました。
そもそも災害の少ない地域に住むことは、居住地を決める際に重要なことですが、殊に老後は、被災がそのまま致命的となりますので、絶対に留意するべき点です。
持ち家でも賃貸でも、住居を決めるに当たっては、市町村が公開しているハザードマップを必ず確認しましょう。
「災害など起きないだろう」ではなく、「災害が起きるかもしれない」との心構えが大事です。
【31】坂道などが少ないエリアか
新たに居住地を決める時には、立地条件を考えるものですが、老後の一人暮らしの場合、考える視点を広げる必要があります。
居住地の周辺に坂が多いと、日常の行動において負荷が大きくなります。
なるべく坂道などがなく、行動しやすい環境を考えましょう。
また、けっこう見落としがちなのですが、周辺道路の歩道がしっかり整っているかどうかも確認したいものです。
更に、道路の構造上の問題などで視界が利かないような危険な場所がないかも確認したいところ。
老いてくると、判断力が低下すると同時に、思った通りに行動できないなどの問題が発生するのです。
住むエリアに不自由がないか、危険な場所はないか、よくよく調べておきましょう。
【32】月々の支払額はどうか
老後の収入は限られますので、月々の支払額をしっかり試算して無理のない計画を立てることが最も重要です。
特に、居住費は3大支出と言われるほど大きな比率を占めます。
居住費は、一定の金額が必ず毎月出ていくことになりますので、負担がもの凄く大きいのです。
そして、試算に当たっては、光熱費などの定期的な出費を含めることが大切です。
収入から月々の定期的な出費を差し引いた額が生活費になるからですが、この試算には十分なマージンを含めておくことが大切です。
持ち家ならメンテナンス費用や固定資産税、賃貸なら更新料などの不定期な支出が必ずあるからです。
新しい住居を構えるに当たっては、無理なく余裕をもった試算・計画が最も重要です。
【33】住まいの築年数は
住もうとする家の築年数(耐用年数)を考慮しないのは大きな問題です。
今や人生100年と言われる時代ですから、予想より10年も20年も長生きすることは珍しくありません。
住み続ける間にどれだけ老朽化が進むのか、しっかり想定しておくべきでしょう。
終の棲家としていったん持ち家を構えると、更に建て替えるのは困難です。
賃貸なら住み替えもできますので、耐用年数を考慮して住み替え時期を決めることも重要でしょう。
何歳まで生きられるのかは誰も分かりませんが、長生きすることも考えて築年数の適性を考えたいものです。
【34】間取りはどうか?
老後の住まいを考える場合、間取りや家の構造も考慮したいものです。
持ち家なら、わりと自由な対応ができますので、可能であれば予めバリアフリーにしておきたいところ。
トイレや洗面所・浴室を寝室から近くすることも大事ですね。年をとるとトイレが違くなるからです。
また、2階建ての場合、老化とともに上階へは自然と行かなくなりますので、1階だけで生活することを想定した方がいいでしょう。
もし、新たに移り住むのであれば平屋でも十分ですね。
賃貸なら、エレベータの無い物件では1階に入居するのがいいでしょう。
年老いてからの階段の昇り降りはとても苦痛になるからです。
年を取ってからも快適な生活空間でいられるかどうか。そんな視点で間取りをチェックしましょう。
【35】防犯・セキュリティ面は?
一人で暮らしていると、防犯・セキュリティも気になるところです。
高齢であればなおさらのこと、しっかりと対策して安心して住みたいもの。
持ち家であれ賃貸であれ、近所に家屋が立ち並ぶ地域は、周りの目があるぶんだけ防犯性は高いでしょう。
賃貸の場合、マンションのような住宅なら防犯性能は優れています。
また、外側から家屋の様子が見えやすい物件ほど、安全性が高いと言われています。
老後に一人で暮らすのなら、安心して暮らせる環境にも配慮したいところです。
可能なら、ホームセキュリティサービスを利用するのも手ですね。
【36】空調は万全か
年を取ると身体の弱体化に伴って、冷えや熱さに抗する力が無くなって来ます。
身体を冷やして体をこわすとか、熱さによって熱中症になるなど、若い頃に問題なかった寒暖ですら耐えられなくなります。
また、ヒートショックなども気になるところです。
そこで重要なのが、家屋の空調です。
構造的にしっかりとした断熱性能があるのか、更に、空調・換気設備はしっかりしているのかは必ず確認すべきですね。
窓の構造や風の吹き抜け方、季節の変化による影響、太陽の位置の変化と日光の差し方など、室内がどれほど快適となるか多角的に見ておきたいものです。
老体は、寒暖に対して決して強くありません。老化していくことを頭に入れて物件の適性を判断しましょう。
【37】床は滑りやすくないか
床の滑りやすさは意外と盲点になりますが、年老いての転倒は致命的になる可能性がありますから重要です。
そもそも、家屋に使用される建築素材には、滑りやすいものは使われません。
しかし、摩耗や劣化によって滑りやすくなる場合はあります。
また、トイレや浴室などの水回り周辺では、僅かに濡れただけでも滑りやすくなってしまうこともあります。
入居に当たっては、滑りやすくないかどうかの確認をして、必要であればリフォームも考えたいところ。
滑りを防止する目的でカーペットを敷くなどの手段もありますね。
【38】屋内の移動のしやすさは
けっこう盲点になるのが、屋内における移動のしやすさです。
将来の老化を見越して、バリアフリー化しておくのが有用なことは上記で述べました。
しかし、車椅子生活になるかどうかは分かりませんし、足腰が弱る以前の利便性も重要です。
たとえバリアアフリー化しないとしても、通路に手すりを設置する、余計な段差を無くすなどの対応は、ちょっとした工事だけで対応できる場合もあります。
若いと盲点になりますが、ちょっと手すりがあるだけでも、移動のしやすさは格段に向上するのです。
可能なら、廊下の幅を広くしておき、室内全域をスロープ状態にしたいものですが、簡単にできない場合もあります。
バリアフリーだけにとらわれず、足腰が弱ってきた場合の移動のしやすさについてもしっかり考えたいものです。
【39】浴室やトイレの使いやすさは
家屋の使い勝手は大切ですが、中でも浴室やトイレは特に重要です。
足腰が弱ると、便座に座ることやそこから起き上がることすら苦労します。
トイレ内は、手すりがあるだけで利便性を向上できます。
介護者がサポートしやすいようにトイレはなるべく広い方がいいでしょう。
同じ理由で、浴室も広くて手すりを備えている方が便利です。
持ち家であれば必要に応じてリフォームをして、賃貸であれば使いやすい物件を探したいものです。
【40】物件の雰囲気は
老後はとかく気持ちが沈みがち。
だから、物件の雰囲気はとても大切です。
室内全体が明るく、ジメジメ感のない家がいいですね。
また、窓から見える風景や、隣接地に何があるかも大切でしょう。
暮らしていて、プラス感覚を持てる環境にしたいものです。
必ず想定しておくべきリスク
では、老後に一人暮らしをする場合の、想定しておくべきリスクについて述べておきます。
気に留めるべきリスクをひとつひとつ列挙、解説します。
・ローンの返済不能
持ち家の場合、住宅ローンが返済不能に陥るリスクがあります。
晩婚化が進んで完済時期が老年期にズレ込む傾向があり、返済に余裕を持てないケースが多々あります。
また、年金が減少する傾向にありますので、その影響も無視できません。
ゆとりのない無計画なローンを組めば返済不能になる可能性は大きくなります。
また、計画的なローンでも、老化すれば思わぬ入院なども発生しやすく、計画が狂うことも少なくありません。
住宅ローンを組むなら十分にゆとりのある計画が重要です。
・収入の減少
年金がジワジワと少なくなっていますので、入居当初は特に問題がなくても、10年、20年、30年暮らしていくと、知らないうちにゆとりがなくなる場合があります。
特に、実質上の収入は目に見えないところで減少して行きますので、注意が必要です。
持ち家でも賃貸でも、居住費が占める割合をしっかり抑え、余裕をもったやり繰りが大切です。
・賃貸契約、更新の不可
高齢になると、審査が通りづらくなり賃貸契約が難しくなります。
また、契約を更新しようとしても断られるケースもあるかも知れません。
賃貸は、住み替えなどはしやすいのですが、高齢だと契約そのものができないリスクが大きいのです。
・貸主都合の解約
賃貸の場合、オーナー(貸主)の都合で、解約せざるを得ない場合があります。
自分が所有する物件ではないので仕方がないところですが、問題はこちらの都合では決められない点です。
賃貸物件に住んでいる以上、解約となる可能性を常に秘めていることは忘れてはいけません。
・家屋の老朽化
賃貸の場合、不都合があれば貸主にメンテナンスなどの対応を求めることもできます。
また、新たな賃貸物件を探すことも可能です。
しかし、持ち家の場合は自分でメンテナンスしなければならず、その費用も高額となるものです。
思っていたより長生きすれば、家屋の老朽化が深刻な状態に到ることも有り得ます。
・後期高齢時の引っ越し
年齢が進んでからの引っ越しは、体力的にも精神的にもとても負担が大きいです。
年老いて無理な引っ越しをしたことで、体を壊したとか、生活リズムが狂ったなどの話はよく耳にします。
終の棲家を決めるなら、極力早めに越したことはありません。
・何かの時の助けを期待できない
一人で暮らしていると、何かあった時に直ぐにその場で助けを求められないリスクがあります。
突発的な発病をしても救急車すら呼んで貰えないことも有るかも知れません。
考えたくないことではありますが、誰にも看取られずに死を迎えてしまう可能性もあります。
老後に一人暮らしをするのであれば、何かあった時の対応策を考えておくことも大事でしょう。
まとめ
以上、老後の一人暮らしを持ち家にするか賃貸にするかについて、その判断のための40個のポイントをまとめました。
持ち家と賃貸とを比較するには、色々な角度から検討すべきだと感じて頂けたと思います。
また、いざ物件を求める際にも注意すべきことが多々あることがお分かり頂けたのではないでしょうか。
持ち家にも賃貸にも、それぞれメリットとデメリットがあり、”いいとこどり”はできません。
最終的にはどちらかに決めなければなりませんが、その判断をするのはあなたです。
ここに挙げた1つ1つの項目を繰り返しチェックすることで、より適切な判断を下すことができることでしょう。