人はなぜ、年齢を重ねるごとに時間の経過を速く感じるようになるのか。

本年も残り2ヶ月を切り、時間が過ぎる速さには驚くばかりです。新年を迎える時期になるたびに「もう1年経つのか」との思いを抱くのですが、その速さは年々加速しているように思えます。

世間でも「年齢を重ねるたびに、時間が過ぎるのを速く感じるようになる」と言われていますが、実際の時間は同じなのに、どうして感覚に差が生じるのか不思議にも感じます。

時間に限らず、例えば、景色を見ていると、実際の距離と人間が持つ距離感に差を感じることはあります。また、野球の投手が投げる球は、実際の速度とバッターが感じる速度感に差を感じることもあります。

時間が経過する速さにおいても、実際の経過時間と人が味わう時間の経過速度に差を生じることに変わりはありませんが、加齢という要因が絡んで加速して行くように感じるという点では、少し独特な傾向があるように思えます。

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感情の影響

さて、この理由を考える場合、人はどういう時に時間を速く感じて、どういう時に時間を遅く感じるのかがカギになります。真っ先に思いつくことは、好きなことをしている時や楽しいと感じることは速く感じ、嫌いなことをしている時や苦しいと感じることは遅く感じることです。

これは誰しもが持っている感覚でしょうが、うれしい時、喜んでいる時は速いですし、悲しい時やさびしい時は遅いもので、意味合いとしては、プラス要因は速いし、マイナス要因は遅いということです。

これらの状態を更に端的に表現すれば、感情面で快楽を味わう要素が多いと時間を速く感じ、反対に不快を味わう要素が多いと時間を遅く感じるということです。

では、なぜ年齢と共に速く感じるようになるのでしょうか。それは、年齢を重ねることによって、どうすれば快適に過ごせるかというコツやノウハウが具わって来るからではないでしょうか。

言い方を変えれば、成長と共に、プラス方向の感情を味わえるような行動が、自然と取れるようになるとも言えるでしょう。また、見方を変えれば、感情をコントロールする力が加齢と共に備わってくる、或いは、感情に作用されないような落ち着きを持つようになるとも言えるでしょう。

もしかしたら、感情が鈍くなっているという見方もできるかも知れません。若い人ほど感受性は強く、感情のコントロールがしにくい傾向にあることを見ても、うなずける話です。

忙・閑の影響

そして、時間を速く感じるようになる別な理由としては、忙・閑の違い、すなわち、忙しいと時間を早く感じ、閑(ひま)であると遅く感じることによる影響もあるでしょう。

スケジュールが過密で、休む時間もないような時は、あっという間に時間が経ったという経験は、誰しもが味わったことがあると思います。また、それとは反対に、時間を持て余して退屈な時などは、やたらと時間を長く感じたということも誰でも経験するところです。

忙しいと、何かに夢中になったり、没頭して集中したりするため、時の流れを忘れてしまう、換言すれば、時の流れに対する感覚が鈍くなってしまい、これとは逆に、やることがない場合は、時の流れを忘れてしまうことなどはないでしょうし、時の流れに対しては敏感になるものなので、結果として時間を長く感じてしまうのでしょう。

人は加齢とともに知識が豊富になり、経験も豊かになりますから、時間を使うのがうまくなり、無駄な時間が減って行きます。つまり、人生経験を積めば積むほど、時間を有効に利用できるようになりますから、その分だけ時間の流れに鈍感になって、時間が経過しているのに気付きにくいまま年月が経過して行くのでしょう。

経験の有無

ところで、一説によると「人は経験がある事に対しては、時間の経過を速く感じるようになる」という話があります。

この説によれば、人は年齢を重ねるほど多くの経験を積んで行くので、経験したことが増えるに従って時間の経過を速く感じるようになるという理屈ですが、これは確かに一理あるなと感じます。

自分の人生を振り返って見た時、小学生時代は、やたらと時間が長かったなぁという記憶があります。

現在、小学生である息子を見ていても、小学生にとっては身の回りで起こることの多くが未経験で、それこそ「毎日が未知との遭遇」なのだと感じますが、未経験なことが多かったからこそとても長く感じたのかと思うと、なるほどと感じるところがあります。

そして、中学生、高校生くらいになってくると未経験のことは比較的少なくなって来るので、それと共に時間を速く感じるようになる訳ですが、その感覚は私自身が実際に感じてきた時間の速さの感覚と一致します。

社会人になってからも未経験のことはあるのですが、年を重ねるほど未経験のことはあまりなくなって行き、どちらかというと未経験なことは飽和するようにほとんど無くなって行く感じがします。

一方、時間の経過する早さも年齢と共にそのスピード感が鈍化して行く感じがするので、経験のある事の分量と時間が経過する速さの感覚は比例関係にあるような気がします。

そんなことを考えていると、この説は当たっているなぁと思う訳ですが、その一方で、この説は遠因であって近因ではなく、間接的な原因であって直接的な原因ではない気もします。というのは、経験の有無が感情へ影響を与えることもあるでしょうし、忙・閑へ影響することもあるからです。

つまり、経験を積んでいれば、その経験をもとにどのように過ごしたら楽しめるかということを学習できますし、経験があれば何ごとも立ち止まらずにスムーズに遂行できることから、忙しい時に、時の流れを忘れてしまう、時の流れに鈍感になるという点で、忙・閑の影響に通じるものがあります。

要は、経験があることが直接、時間の速さの感じ方に変化を起こすのではなく、経験があることで楽しく過ごせる方法が磨かれ、また、時間をより有効に活かせるような過ごし方ができるようになるともいえるのでしょう。

以上、年齢を重ねるごとに時間経過を早く感じる理由について考えをめぐらせてみましたが、これは人間の感覚的な部分に関することなので、実際はここで述べたような単純な理由なのではなく、もっともっと色々な要因が複雑に絡んでいることでしょう。

時間を速く感じるようになる理由については、諸説もあるようですし、ある意味、人間にとって永遠のテーマのひとつと言えるかも知れませんね。

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