寒い日々が続いていると、温かい春が待ち遠しく思えます。4月にもなれば桜の花も咲き、温かくて気持ちのいい日も出てくることを考えると、早く春が来て欲しいものです。
そんなポカポカした暖かい季節を思い浮かべた時、ふと頭に浮かんだことは、「ポカポカとした温かい桜花の咲く4月初頭の気温は実際どれ位で、秋の場合だと、いつ頃に相当するのだろう?」という疑問でした。
人間の感覚のズレ
そもそも、寒い時期から暖かい時期に移りかわる時に人間が感じる暖かさと、それとは反対に、温かい季節から寒い季節に移り変わる時に人間が感じる暖かさとでは、実際に測定した温度とは異なった「感覚による差」が生じるものです。
4月初頭ともいえば「ポカポカ暖かい春」というイメージがありますので、直感的にイメージすると、「秋なら10月頃のまだ寒さが本格的になる前の季節と同じ温度かなぁ」という感じです。
しかし、上記のように、季節の変化による人間の感覚のズレがありますから、これをよく考え合わせると、10月でも比較的11月に近い下旬の頃、もしかしたら11月の初旬頃かも知れないと思えました。
しかし、実際の気温を比較してみた結果は、直感的な感覚とは少し違っていました。平均気温で比較した場合、桜の花が咲く4月初頭の気温は、11月の中旬の気温とほぼ同じだったのです。
数値を比較
さて、比較してみた実際のデータですが、気象庁が公開している統計データのうち、過去30年(1981年~2010年)における、各月の「日の平均気温の月の平均」、「日の最低気温の月の平均」、「日の最高気温の月の平均」(以下それぞれ、平均気温、最低気温、最高気温と呼称)を比較してみました。
用いた統計データは、私が現在住んでいる長野市と、出身地である東京都の各気象台における観測データです。
それぞれを表とグラフに示すと、下記のようになります。
平均 | 最高 | 最低 | |
1月 | -0.6 | 3.5 | -4.1 |
2月 | 0.1 | 4.7 | -3.8 |
3月 | 3.8 | 9.5 | -0.8 |
4月 | 10.6 | 17.3 | 4.9 |
5月 | 16.0 | 22.5 | 10.5 |
6月 | 20.1 | 25.7 | 15.8 |
7月 | 23.8 | 29.1 | 20.0 |
8月 | 25.2 | 31.0 | 21.3 |
9月 | 20.6 | 25.6 | 16.9 |
10月 | 13.9 | 19.2 | 9.7 |
11月 | 7.5 | 13.0 | 3.1 |
12月 | 2.1 | 6.8 | -1.6 |
長野の月ごとの気温(気象庁 統計データより)
平均 | 最高 | 最低 | |
1月 | 5.2 | 9.6 | 0.9 |
2月 | 5.7 | 10.4 | 1.7 |
3月 | 8.7 | 13.6 | 4.4 |
4月 | 13.9 | 19.0 | 9.4 |
5月 | 18.2 | 22.9 | 14.0 |
6月 | 21.4 | 25.5 | 18.0 |
7月 | 25.0 | 29.2 | 21.8 |
8月 | 26.4 | 30.8 | 23.0 |
9月 | 22.8 | 26.9 | 19.7 |
10月 | 17.5 | 21.5 | 14.2 |
11月 | 12.1 | 16.3 | 8.3 |
12月 | 7.6 | 11.9 | 3.5 |
東京の月ごとの気温(気象庁 統計データより)
平均気温、最低気温、最高気温の3つのうちいずれも、月による変化の仕方の傾向、すなわちグラフの形状はほぼ同じなので、これら3つのうち、いずれか1つを比較してみれば十分だろうと判断し、平均気温を見てみることにしました。
この統計データは月の平均なので、桜が咲くような4月初頭の場合、3月の平均気温と4月の平均気温の平均値がその時期の気温になると考えられますから、2つを足して2で割って平均を出せば、算出することができます。
4月初頭の温度は、長野の場合、3月の平均気温は3.8℃、4月の平均気温は10.6℃ですから、
(3.8+10.6)÷2=7.2[℃]
となり、同様に東京の場合、
(8.7+13.9)÷2=11.3[℃]
となります。
これら7.2℃と11.3℃の気温に最も近い時期を秋から探すと、長野の場合は11月の7.5℃、東京の場合も11月の12.1℃で、いずれも11月の方が少しだけ暖かい数値になっていました。
もう少し詳しく見るために、上記のグラフに線を記入して見てます。
上記のように緑の矢印、紫の矢印と同時期を追ってみると、気温が同様の時期がより分かりやすくなります。
上記のグラフから長野も東京も、4月初頭の気温は11月の中旬なみ、更に言えば中旬よりもやや後半よりの時期の気温に等しいことが言えます。
上記の結果を端的に言えば、「冬場の寒さに慣れた人が暖かいと感じる4月初頭の温度は、夏場の暑さに慣れた人にとっては寒いと感じる11月の温度と等しい」ということです。
まとめ
今回、寒い時期から暖かい時期に移りかわる時に感じる暖かさと、反対に、温かい季節から寒い季節に移り変わる時に感じる暖かさとで、このような差が生じることを、改めて数値を比較することで確認することができました。
以上の結果を見て、人間が感じる温度と実際の気温との間には隔たりがあることがよく分かります。
そもそも、4月と言えば「暖かい」という言葉を使いますが、11月ともなれば、「暖かい」という言葉は使わないものです。このような点にも人間が感じる感覚の違いが表れているとも言えるのではないでしょうか。
そしてこのことは、人間がいかに環境に慣れるものなのかが端的に表れているとも言えるでしょう。
また、人間が感覚的に捉える物理量は、実測した物理量とは開きがあるものだとも感じ、感覚というのは、時として大きな誤差を生むものだということもよく分かります。
身の周りにあるちょっとしたことを数値で比較してみると、面白いものですね。