中国語でよく耳にする「ゾウバ」は「走吧」と書くが走る意味はない

中国人と接していてよく耳にするフレーズに「ゾウバ」という言い方があります。

これを漢字で書くと「走吧(zǒuba)」となりますが、という漢字が使われていても走ると言うような意味ではありません。

ゾウバは走吧と書くが、走る意味はない

中国語では「」を日本語には無い意味で使っているのです。

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日本語の「走」の意味・用法

日本語で「走」という漢字を使う場合、「走る」というように、速足で進むこと、駆けることを意味します。

また、乗り物などが進行すること、運行することも意味します。

更に、「走る」は色々な表現にも使われ、

「痛みが走る」と言えば物事のはやい動きを表現しますし、
「非行に走る」と言えば人がある方向・状況に傾くことを意味しますし、
「専用道路が走る」と言えば、何かが長く伸びている様子を表します。

熟語としては、走行、競走など色々な表現がありますが、いずれも上記で説明したような意味を持っています。

中国語の「走」の意味・用法

では、中国語における「」の意味はどうでしょう。

そもそも「」という漢字は、人の姿を現す「大」と足を表す「疋」が組み合わさってできた会意文字で、人が大の字に足をひろげて走る様子から来ています。

従って、日本語と同じく、走るという意味を持つほか、歩行する、歩む、動くという意味もあります。

また、そこから派生して、逃走する、逃げる、或いは、移動する、行き来する、通るなどと言った意味もあります。

これらは「走る」という意味につながりやすいので比較的、意味を理解しやすいところです。

このように「」には、「歩く」や「走る」の意味や、そこから派生して生まれた意味がありますが、実際に最も頻繁に使われる用途としては、あくまで「歩く」という意味としてです。

走を使った言葉に、走累(zǒulèi)がありますが、これは歩き疲れるという意味で、走って疲れるの意味ではありません。

また、同様に走路(zǒulù)という言葉もありますが、あくまで「(道を)歩く」の意味で、走る意味ではありません。

中国語の「」は、走る意味よりも歩く意味で使われることが多いのです。

特に、自転車などの手段ではなく、足を使って歩いて行くニュアンスを強くもっています。

そして、冒頭にあげた中国語で頻繁に耳にする「ゾウバ」の場合、我々日本人が馴染まない、更に別な意味で使います。

それは、出かける、出発する、立ち去る、行ってしまうなどの意味で、「ゾウバ(走吧)」の場合は、「行きましょう」、「行こう!」のような、ちょっとした掛け声のようなフレーズ・言い回しになります。

日本人の場合「走」という漢字を見ると、どうしても「走る」というニュアンスを想像してしまうものです。

しかし、歩くという意味を持つほか、「ゾウバ」のように、立ち去る意味で使うことがとても頻繁にあり、これを知らないと少し混乱してしまうこともあるかも知れません。

歩()はどんな意味を持つ

さて、中国語のが、主に歩く意味で使われるとすると、そもそも「歩」という漢字はどのような意味を持つのかが気になるところです。

中国語でも、「歩」に相当する漢字はあり、字体が少し違う「步(bù)」が使われます。

步(bù)は、歩みや一歩、ステップや段階、長さの単位や程度や状態の意味で使われるのが一般的です。

歩くという意味でも使われはしますが、あくまでも限定的です。

歩く意味でを使うのは、あくまで成語や文語(書き言葉)で、口語(話し言葉)としては使いません。

通常、歩く意味を表現する場合は、あくまでを使います。

換言すれば、は主に歩く意味で用いられ、走る意味がメインではないのです。

走るにはが使われる

ところで、中国語のが、走る意味をメインとしないのであれば、「走る意味をメインとする言葉はないのか?」という疑問が湧くと思います。

実は、中国語では、走る意味を表すのには、跑(pǎo)という別な漢字を使うのが一般的です。

つまり、下記のような対応が最も自然な使い分けになります。

歩く→走(zǒu)
走る→跑(pǎo)

跑(pǎo)は、走る意味がありますが、人が走る意味だけではなく、自動車などが走る場合にも用います。

そして、跑(pǎo)は、走ることを意味する一般的な言葉なので、日常でもよく使います。

例えば、别跑了(biépǎole)と言えば「走るな!」と言う意味で、禁止や注意を呼びかけるフレーズとして多用されます。

また、她跑得很快(tāpǎodehěnkuài)と言えば、「彼女は走るのが速い」と言う、とても自然な表現になります。

立ち去る意味を持つ「」とは違う

さて、走には「立ち去る」意味もあると説明しましたが、去(qù)とは何が違うのでしょうか。

この違いを、英語を例えて説明すれば、leave(に相当)とgo(に相当)の違いに似ています。

の場合、ある地点から離れて移動することが中心で、向かう先については焦点が当たっていません。従って、向かう先を表す言葉を目的語として取ることができません。

の場合、ある地点から別な地点へ移動する行き先が焦点となっています。従って、行き先を表す言葉を目的語として取ることができます。

日本語の「あなたはどこへ行きますか?」を中国語で表現する場合、你去哪儿?(nǐqùnǎr)とは言いますが、你走哪儿(nǐzǒunǎr)?とは言わないことを見ると、この違いがよく分かると思います。

走吧(ゾウバ)はよく使うフレーズ

さて、冒頭にあげた言い回し「ゾウバ」ですが、この表現は非常によく使います。

上記でも説明しましたが、この「ゾウバ」は、咱们(zánmen)走吧の略で、堅苦しい訳し方をすれば「(私たちは)出かけましょう!」となります。

しかし実際は、こんな堅苦しい場面で使うと言うよりも、日常のちょっとした場面でとてもよく使うのです。

例えば、誰かとちょっと店に立ち寄って、そこをを出ようとするときなどに「ゾウバ」と言えば、「もう行こう(もう店を出よう)」といった感じの表現になります。とても、気軽に使うのです。

そして、「ゾウバ」と同じように出発する、立ち去るという意味で使う表現は日常茶飯時で、

快走(kuài zǒu・速く行こう!)
走不走(zǒu bu zǒu・行くの?行かないの?)
他已经走了(tā yǐ jīng zǒu le・彼はもう行っちゃったよ)

など、身近なところでとてもよく使います。

中国語にしかない「」の意味。ぜひ覚えておきたいですね。

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