景気が低迷する中、輸入原材料の仕入れ価格が高騰し、食料品を中心とした物価の値上がりが発生して消費者を直撃していますが、製造・販売者がそれに対応するひとつの手段として、価格を据え置いて、内容量を少なくする方法があります。
内容量を少なくするような商品は最近、多く目にするようになりましたが、中には原料高騰とは関係なく、内容量を少なくして販売している商品も目につきます。
ヨーグルトの内容量の減少
内容量が減った商品の中で、私の目によく留まるものには、プレーンヨーグルトがあります。
ヨーグルトといえば、乳酸菌を多く含み、整腸作用があるといわれていることから、独身時代からプレーンヨーグルトをたくさん買い込んでは、毎日のように食べていましたので、とても馴染みのある食品のひとつでした。
当時は、内容量が500mlが普通でしたし、シュガーが付属されている商品もけっこうありました。
その後、乳製品の原料価格の高騰の影響で、どこかのメーカが内容量を450mlに変更してから、他のメーカもそれに追従する形で内容量を少なくするようになりましたし、付属のシュガーも自然と無くなって行きました。
そして、内容量減少の流れは更に加速して、いつしか400mlになり、ほとんどのメーカがそれに歩調を合せるようにした結果、今では店頭に陳列されているプレーンヨーグルトのほとんどは400mlの商品になりました。
では、値段はどうかというと私の感覚では、確かに据え置きという感じなので、値上がりしたという感じはあまりしません。
今ここで、容量が減少した分を単純計算で値段に換算すると、例えば従来が160円だとしたら
160円×(500ml/400ml)=200円
となって、500mlの量のままだとしたら、160円から200円に値上がりしているとの数値が出てきます。
もし、単純な値上げをしていたら、消費者からは40円も高くなったという感じが否めないと思います。
値段を据え置きで500mlを400mlにした場合は、パ ッケージの大きさは、見たところあまり変わらないので、値上がりしていないという感覚を持てるのは確かです。
そういう意味では、値段据え置きで、容量を減らす方法は、ある意味、消費者に購入する抵抗感を与えないための有効な手段といえるでしょう。
お米にも内容量を減らした商品がある
さて、内容量を減らす販売方法で、最近、他に目に付くようになったものといえばお米です。
私の感覚では、お米は5kg入りか、10kg入りが定番で、ほとんどの商品はどちらかというイメージがあったのですが、最近では8kg入りや9kg入りの商品をいろいろな店で見かけるようになりました。
実は8kgや9kg入りのお米の場合、パッと見たところ、10kg入りの製品と大きさが変わらないように見えるので、10kg入りと間違えやすいのです。
「このお米、安い!」なんて思ってよく見てみると8kgと書いてあることがあります。
仮に8kg入りの商品が3200円で販売していたとすると、10kgだと4000円に相当しますから、割安感を抱くのは当然でしょう。
しかし、お米の場合は、その殆どが国産米なので、原材料の高騰が起因してこうなったというよりも、販売戦略の1つとして割安感を与えるための手段を採っていると考えるべでしょう。
回転すしのシャリの量も小さくなった
そして、もう1つ最近、目に付くものとして、回転すしのシャリ (ごはん)の量の減少です。
以前、私の職場に二十代の青年が派遣社員として来ていた時、
「昨日は回転すしで60皿食べた」
なんて話をしていたので、私は「こいつ、嘘ついていやがる。60皿も食えるわけねェ」と心の中で思いながら
「そんな、食べたんだ。すごいね」
などと話をしたことがありました。
確かにその人は、体格も良く、大食漢ではあるのですが、さすがに60皿は無理だろというのがその時の正直な印象だったのです。
そして、ある日、大手回転すしチェーン店に行った時、ふとその時の話を思い出して考えてみたところ、二十歳の頃に比べて食の細くなった私でも、当時やっとのことで食べていた30皿も、本気を出せば今でも食べられそうだという感じがしたのです。
そうです、改めてよく見たら、当時のすしに比べて、ごはんの量が明らかに少なくなっていることに気付いたのです。
実は、以前から、感覚的にはなんとなく小さくなっているなぁとは思っていたのですが、改めて意識して直接見てみると、ここまで違うのか、と言う感じでした。
そして、ひと回り小さくなっているシヤリの大きさを見て、感覚的には長さにして2割減、つまり8割くらいの長さに思えたので、体積比でどれくらいになるか計算してみました。
縦横高の3辺をそれぞれ20%短くすると各辺は0.8倍なので、体積としては
0.8×0.8×0.8=0.512
となって、なんと体積的には約半分、すなわちご飯の量としても半分になるのです。
計算してみて、なるほど、と言う感じでした。ネタの大きさをそれなりにキープすれば、シャリを小さくしても見た目の印象としてはあまり変わった感じがしません。
シャリの部分を半分の大きさまで小さくすれば、満腹感が得られないため、一人当たりの皿数は増え、結果として、売り上げは大きくなる…という訳です。
上手い販売戦略だなぁとつくづく思いました。
そして、あの派遣社員が言っていたことは本当だったのだ…とその時わかったのでした。
このように、原材料価格の値上げから始まった、内容量を減少させた製造・販売方法ですが、原料の高騰に無関係な製品にも販売戦略として広がっているようです。
そういう意味で、消費者としては、内容量の変化に気を付けつつ、単位量当たりの価格で商品を比較するよう心掛けるべきでしょう。