マインドとハートとスピリットとソウル。
これらはいずれも、心や魂、精神といった意味を持っています。
しかし、言葉が違う以上は微妙な違いがあるハズですが、同じような使い方をする場合も多く、分かりずらいのが現実です。
以下、これら4つの言葉の違いを分かりやすく説明します。
目次
4つの言葉
マインドとハートとスピリットとソウルは、いずれも英語から来ている外来語です。
しかし、実際はカタカナで記述することが多く、半ば和製英語化している趣があります。
いずれの言葉も、日本語として使われることが定着しているため、実際にどのように使われているかという視点で違いを見る必要があります。
また、これら4つの言葉は意味として重複する場合が多く、違いを明確にすること自体がナンセンスな場合もあります。
そのため、敢えてこれらの違いを端的に表現しようとするならば、その傾向の違いを把握すべきでしょう。
しかし、ネット上で解説している情報などでは、違いを明確にしようとするあまり、言葉そのものの意味に捕われてしまったり、無理に言葉の違いを分類しようとしているきらいが多く見られます。
ここでは、4つの言葉の違いについて、無理に言葉の違いを分けることはせず、傾向の違いを端的に示すことにします。
意味を端的に言えば
まずは、4つの言葉のそれぞれの意味を端的に述べます。
マインド(mind)
マインドは、肉体(ボディ)に対する精神や心の意味で多く使います。
感情に起因する精神や心を表すよりも、理性に起因する精神や心を表す傾向が強いです。
つまり、意識や思考、意志など「考えからくる心」を表すことが多く、そこから価値観や行動基盤のようなものを指すこともあります。
ハート(Heart)
ハートは、精神や心の意味ではマインドと同じです。
しかしハートの場合は、理性に起因する精神や心を表すよりも、感情に起因する精神や心を表す傾向にあります。
従って、喜怒哀楽などから生じる、情熱、愛情、友情、人情、気持、真心など「感情からくる心」を表すことが多く、人の性格や性分が表れやすいと言えます。
広い意味では、勇気、熱意、元気などを表すこともありますが、実際に最も多い使い方は愛情としての心でしょう。
スピリット(Spirit)
スピリットは、精神や心の意味では前述のマインドやハートと同じです。
スピリットの場合、マインドとハートの中間的な趣があり、理性に起因する精神や心についても、感情に起因する精神や心についても、どちらに対しても同じように使います。
しかし、マインドとハートとは生命の根源から生じた霊的な趣を持つ点で少し異なり、生気、気迫、気力などを強調したい場合などによく用いられます。
ソウル(Soul)
ソウルは、精神や心の意味を持つ点では他の3つと同様ですが、生命としての魂の意味を持つニュアンスが強いです。
ソウルは理論理屈を差し挟まない面があり、理性や感情によらない本源的な精神に対して用いることが多いです。
ソウルは霊魂を表す傾向がスピリッツよりも強く、不死などの宗教的な意味合いもあります。
違いは図示すると分かりやすい
では、4つの言葉の違いを理解するために、言葉の意味する傾向を図に示してみましょう。
図の上側ほど心・精神の働きを表し、下側ほど心・精神の実体、生命の本源的な意味を表します。
また、図の左側ほど感情的な傾向が強く、右側ほど理性的な傾向が強くなります。
マインド(橙色)は、理性に起因する精神や心の働きですから右上部に相当します。
ハート(黄色)は、感情に起因する精神や心の働きですから左上部に相当します。
スピリット(緑色)は、感情や理性の区別が少ない精神や心の働きで、生命の実体に近い趣がありますから中央部に相当します。
ソウル(青色)は、理性や感情によらない霊魂のような生命の実体に近い意味がありますから下部に相当します。
実際は、ここまで明確な分布はしていないでしょうが、図を見ることで違いを理解しやすいでしょう。
4つの言葉に漢字を当てはめると
さて、4つの言葉の違いは、心を表す漢字と関連づけると更に分かりやすくなります。
漢字には、文字としての固有の意味があり、字が異なればその趣も微妙に違ってきます。
ここでは、下記の漢字を図に当てはめてみます。
感 情 思 想 悟 意 智 魂 気 命 霊 心 考 志 念 精 生 性 観 覚 胆 識
漢字によっては、広い意味を持つ場合や複数の意味を持つこともあります。
また、漢字の解釈には差がありますから、「少し違うのでは?」と感じるところもあるかも知れません。
しかし、「マインド」、「ハート」、「スピリット」、「ソウル」は同じ意味で使われることも多くあります。
4つの言葉の違いを、傾向として捉えるには十分と言えるでしょう。
4つの言葉に熟語を当てはめると
ではここで、単なる漢字の代わりに、熟語を当てはめてみます。
単なる漢字だと、意味が広くて違いが捉えにくいのですが、熟語なら意味がより明確になります。
具体的には、下記の熟語を当てはめます。
精神、思考、意識、感情、意思、意向、気持、情緒、情感、心意、見方、心情、霊魂、霊知、心魂、気迫、気力、精気、精霊、生気、霊感、意気、心霊、意志、全霊、御霊、心胆、気分、心持、理知、己心、心境、心頭、信念、意中
図を見ると、先ほどよりも、4つの言葉のニュアンスの違いがハッキリします。
マインドは、思考や意識のような理性的な心の働き
ハートは感情や心情など感情的な心の働き
スピリットは、心の働きを生み出す根源的な心
ソウルは、生命の実体に近い霊的な心
それぞれの言葉の傾向を、よく表していることが分かります。
2つの言葉の比較も容易
上の図をもとにすれば、4つの言葉のうち2つの言葉の違いも比較しやすくなります。
例えば、マインドとハートの違いを見たい場合は、橙色(マインド)のエリアと黄色(ハート)のエリアを比較します。
マインドもハートも図の上方なので、心の働きの意味合いが強いと言えますが、この点では両者に差がないことが分かります。
一方、左右方向を見るとマインドはやや右寄りにあり、ハートはやや左寄りに位置しています。
これから、マインドは理性的な心の働き、ハートは感情的な心の働きが強い傾向にあることが分かります。
そして、橙色と黄色のエリアにどのような漢字や熟語が分布するのかを見ると、違いの趣がハッキリと分かります。
ハートの位置する左側には、気持、心境、情感、心情、気分など感情を表す言葉が並び、マインドの位置する右側には、意識、意思、思考、見解、心持など理性を表す言葉が並ぶことから、2つの言葉の違いよく知ることができます。
このように、2つの言葉を比較したい時は、該当するエリアがどこにあり、どんな関連ワードが分布しているのかを確認すれば直ぐに理解できます。
4つの言葉のうち3つの言葉を比べたい場合もこれと同様の見方をすれば分かりやいでしょう。
ちなみに、ここに挙げた4つの言葉以外に「メンタル」がありますが、これは形容詞なので違いを比較する対象としては不適切です。
もしメンタルを名詞とみなした場合、メンタルはマインドとハートを含んだ範囲と捉えるのが自然でしょう。
用例を見ると違いが明確になる
では最後に、4つの言葉の実際の用例を見てみます。
マインドの用例
まず、比較的よく使われるマインドを含む言葉を挙げてみます。
- マインドマップ(mind map):思考の表現方法の1つ
- マインドセット(mindset):経験や教育などで作られる思考パターンや考え方
- リーガルマインド(legal mind):法律の実際の適用に必要とされる、柔軟、的確な判断
- マインドフルネス(mindfulness):瞑想などにより今だけに集中できるような精神状態を意識的に作ること
- マインドシェア(mind share):消費者の心の中でブランドが占める割合のこと
- 消費マインド:消費者の購買意欲。→消費者の意識の表れ
- インフレマインド(inflation mind):物価上昇を予想して買いだめ等の行動をとるような心理的傾向
- リマインド(remind):気付かせる、思い起こさせる、念を押す
- アメリカンマインド(American mind)アメリカに根付いてきた自由と平等の理念
上記で、マインドマップは思考の表現方法のこと、マインドセットは考え方つまり思考パターンのことですから、マインドが思考の意味で使われています。
リーガルマインドは、法律上の判断のことを指していますが、これには論理的かつ合理的な思考が求められますから、思考の意味あいが強いことが分かります。
最近はやりのマインドマイスター(MindMeister)は、思考を整理するツールの商品名ですから、これも思考を意味していることが分かります。
よく耳にするマインドコントロールは和製英語で、特定の意思決定へ誘導する技法のことですから、これは意思に関する意味です。
また、上記のマインドフルネスは意識の向け方のこと、マインドシェアは潜在意識から想起される割合のこと、消費マインドは消費者の意識の表れのことですから、これらはいずれも意識の意味で使われています。
上記のインフレマインド(「インフレ期待」と同意)は心理的傾向の意味ですが、心中に意識が働いていることが分かります。
リマインドは、”気付き”などと呼称して使われますが、これは感情ではなく理性によって得た記憶を取り戻すことです。
アメリカンマインドは、理念を指しますが、理念とは根本の考えですから、これも理性的な心の働きであることが分かります。
このようにマインドは、思考や意識など理性的な精神活動の意味で多用されていることがよく分かります。
ハートの用例
次は、ハートについてです。
ハートを含む言葉を挙げてみます。
- スイートハート(sweetheart):恋人、愛する人、意中の人
- ブロークンハート(broken heart):失意、失恋、恋愛に破れ傷ついた心
- ハートブレイク(heartbreak): 悲嘆、悲痛、失恋
- ハートウオーミング(heartwarming):心温まる、喜ばしい…和製英語heartfulに相当
スイートハートは、思いを寄せる人のことですから、愛情の意味あいがあります。
ブロークンハートは、心が破れる失意や失恋の意味ですから、感情的な心の働きを表しています。ハートブレイクも同様です。
ハートウオーミング(heartwarming)は、文字通り心温まる、喜ばしいとの意がありますから感情的な心と言えます。同様の意味として、和製英語であるハートフルも使われます。
ハートの場合、単なる言葉としてではなく何かを表現する手段として使われることが多くあります。
例えば、
「熱いハートを持った奴」
「愛しい彼女のハートを射止める」
「ハートがこめられたプレゼント」
などです。
これらは、情熱や愛情、気持ちのような感情を意味しています。
このようにハートは、感情的な精神活動の意味で使われることがよく分かります。
スピリットの用例
次は、スピリットです。
スピリットを含んだよく使われる言葉を挙げてみます。
- フロンティアスピリット(frontier spirit):開拓者精神
- ファイティングスピリット(fighting spirit):積極的に闘おうとする心構えや闘志
- アニマルスピリット(animal spirit):企業投資家の主観的期待(野心的意欲、動物的衝動)
フロンティアスピリットは、アメリカにおける西部開拓者の精神や気質のことを言います。似たような意味の言葉にパイオニアスピリット(pioneer spirit)があります。
ファイティングスピリットは、戦おうとする精神ですから闘志のことです。
アニマルスピリットは、イギリスの経済学者が唱えた言葉で野心的意欲、動物的衝動などと訳され、本能的に心の奥から生じる精神活動を表しています。
ここに挙げた言葉は、それぞれ違った言葉に訳されますが、いずれも魂の奥底から力強く出てくる心意気や気構え、気力のような意味を持ちます。
心や精神の内側にある気質を表に発するようなイメージです。
また、スプリットの前に何らかの名詞を付けることで、その名詞に宿る魂を表す言い方があります。
例えば、日本人スピリット(Japanese spirit)と言えば、大和魂のような意味になります。
ラガースピリット(rugger spirit)と言えば、ラグビー選手の精神を表します。
〇〇スピリットと表現することで、その分野における気構え・心意気などを表せるのです。
このように、スピリットは、単なる心の働きと言うよりも、心の奥底から発せられる生気、気迫、気力などを意味し、何らかの気質を表現する場合に多く使われます。
ソウルの用例
最後にソウルについてです。
上記と同様に、ソウルを含んだ言葉を挙げてみます。
- ソウルフル(soulful):魂のこもった
- ソウルミュージック(soul music):黒人音楽のスタイル
- ソウルシンガー(soul singer):ソウルミュージックの歌手
- ソウルフッド(soul food):黒人の伝統的な料理
実は、ソウルを含む言葉はそれほど多くありません。(全く別な言葉である、韓国の都市を指すことの方が多いくらいです)
上記のソウルフルは魂のこもったという意味ですが、どちらかと言えば英語をそのままカタカナ読みしただけで日本語としてはあまり馴染みがありません。
ソウルミュージックは一番よく耳にする言葉ですが、”心”と何の関係があるのかと思うかも知れません。
実は、ソウルミュージックの「ソウル」とは、「黒人としての誇り」・「黒人魂」という意味から来ていて、その魂のこもった新たなジャンルとして定着した音楽がソウルミュージックなのです。
上記のソウルシンガーも語源としては同様で、ソウルという言葉そのものがその後、黒人の意味を持つようになり、そこからソウルフッドなどの言葉が生まれました。
つまり、ソウルには、黒人としての心意気の意味があり、その意味ではスピリットとニュアンスが近いと言えます。
しかし、一般にソウルと言う場合、どちらかと言えば英語のsoulをカタカナで表記したい場合や、魂、霊魂、霊などの言葉をカタカナで表現する場合がほとんどです。
その場合、ソウルは英語のsoulが本来持つ意味を表すことが多く、魂のほか、霊魂、霊のような意味で使われることが殆どです。
このように、ソウルは、スピリットに近い魂の意味や、生命の実体としての霊魂、霊の意味あいで使われます。
以上、4つの言葉を実例で見てみましたが、違いがよく分かります。
これらの用例を思い浮かべながら、先に示した図を眺めると、更に違いがよく分かると思います。