2015年にオックスフォード大学の「早起きは病気を招きやすい」旨の研究発表がされて以来、「実は早起きは健康に良くない」との話題がネット上にあふれています。
私は「早起きは三文の徳」を信じて来ていましたし、実際に人より早起きをする習慣があるため、始めて聞いた時は、正直ショックのような感じがありました。気になり色々調べてはみましたが、この説には賛否両論があり、どちらが正しいとも言い切れない感じがしました。
しかしながら、調べる中で強く感じたことは、「早起きが健康によくない」という話が、ネットを通して加熱して伝わっているという傾向でした。
調べたきっかけは
私がこのことを始めて知ったキッカケは、2年ほど前に仕事がとても忙しい時期があって、朝早めに出社する時期が続いていたある日、妻が私に対して「朝早く起きるのは身体に良くないから止めて」と言い出したことでした。
「早起きは健康にいい」と信じていた私は内心、「何を言っているんだ」と思いながら聞き流していましたが、二度三度と同じことを言ってくる妻の言葉が気になり、何を根拠に「身体に良くない」と言っているのかを調べてみることにしました。
ネットを利用していざ調べてみると、そこにはオックスフォード大学の「早起きは病気を招きやすくなる」旨の研究発表をもとにした記事が溢れていて、読んでいてなるほどなぁと思う反面、本当だろうかとの疑念がぬぐえない状況でした。
よくよく見てみると
そして今回そんな疑念を思い出し、もう少し調べてみようと思い立って色々と調べた結果、「早起きが健康によくない」という見解を示している記事のほとんどは、オックスフォード大学の研究発表を拠り所にしたもので、それ以外を論拠とするものは一部であることが分かりました。
つまり、オックスフォード大学という学術的に権威ある機関が公に発表したことをキッカケとして、センセーショナルな話題として多くのメディアやブロガーが取り上げたことで、話題性だけが先に独り歩きしているという強い印象を受けました。
このことは、色々な記事をよく見れば分かることなのですが、オックスフォード大学の研究発表は、あくまで「病気を招きやすくなる」ことを示す実証データをあげて、その傾向があることを示した研究成果のひとつで、継続的な調査・研究が大切であることも示唆していて、何も断定的な言い方をしている訳ではありません。
しかし、ネット上でこの類の多くの情報が飛び交えば、ちょっと読んだ人の中には「そうなんだ」と短絡的に思ってしまう人もいるでしょうし、信じ込んでしまう人もいることでしょう。
例えこれが事実であったとしても、あくまでも現在ではまだ、仮説から証明する段階に到った途中経過と見るべきだと思いますし、「早起き=不健康」という短絡的な見方をすべきでは無く、「早起きが健康へ与える影響はどのようなものか」という視点でみるできではないでしょうか。
そのようなことから、この研究発表の内容が将来、定説や常識に到るまでにはまだまだ道のりが長いであろうと感じ、この研究発表の意義と今後について少し考えてみました。
研究発表の内容は
まず、この研究発表の拠り所となっている統計データは、起床時間の早い人と遅い人の発病確率の違いをもとにして出していますが、このデータの信憑性がどの程度なのかという思いが湧いてきます。
もちろん、これだけ権威のある機関が公に発表している以上は、それ相応の吟味、考察、検討がされた結果でしょうから、それなりの信憑性はあると思います。
しかしその一方で、健康に影響するような要因は無数存在するものなので、起床時間以外の要因を全て同じ条件にして比較するのは、現実的に極めて困難です。
例えば、健康に影響しそうな睡眠に関する要因は、起床時間以外にも、睡眠時間(長さ)、睡眠の深さ(質)、睡眠のリズム(ペース)などがありますが、被験者が起床時間を強制的に合わせることによって、睡眠時間や睡眠の深さなどへ微妙に影響したとすれば、単なる起床時間の早い、遅いだけが健康に影響したとは言えなくなります。
また、ストレスや食生活なども健康に大きく影響する要因ですが、被験者が起床時間を強制的に合わせることによって生じた、ストレスや食生活のリズムの乱れなどがあれば、その影響が発病のリスクを高めた可能性も否定できないハズです。
特に、現代のような生活リズムが定着している中では、遅く起きる生活リズムを継続して行くよりも、早く起きる生活リズムを継続して行く方がストレスや生活上の乱れや負担が生じやすいと言え、その影響は微小たりでもあることでしょう。
また、取得したデータの統計的な偏りを考慮した場合、根拠としたデータの正確性がどの程度高いものか、統計的なバラつきというものを、どこまで正確に分析しているのかといった疑問なども湧きます。
以上、ちょっとした疑念をあげてみましたが、このような疑念は当然、オックスフォード大学でも抱いていて、それらを考慮したことでしょう。だからこそ、研究機関自らが、継続的な研究が必要であることを示唆している訳ですし、統計学的にも信憑性を高くするには、より多くのデータも必要なハズです。
何かの仮説を定説や常識にして行く場合、「仮説を立てて検証する」と言った繰り返しが必要になるものですが、オックスフォード大学の研究発表は、その第一歩を踏み出したばかりと言えるのではないでしょうか。
また、忘れてはいけないことが、この説が仮に100%事実であったとしても、研究発表が示すような「成人の理想的な起床時間は9時」なる生活リズムは、実際の生活上で実現することは不可能に近いということです。
あくまで学術は学術、実生活は実生活と切り分けた上で、「早い起床時間がもたらす健康への悪影響を、実生活の中で最小限に抑えるためには何が大切であるか」を究明して行くことこそ、この研究が最終的に目指すべきところであるべきでしょう。
いずれにしても、今後の研究成果の成り行きを、見守って行きたいものです。