日本は後進国に転落?GDPやGNP、競争力等多くの数値を追ってみた

日本は後進へ転落。

最近、そんな言葉がよく言われるようになってきました。

特に、昨年ソフトバンクグループの孫社長が「日本はAI後進国」などと発言して、後進国たる所以・根拠をあげたことから、色々なところで話題に上るようになりました。

日本は後進国か、多くの数値を追ってみた

このブログでもその発言を受けて、その根拠となる数値を細かく具体的に見てきました。

今回は、その総集編として、それらの数値を総括し、改めて後進国化しつつある日本の実態に迫りました。

概要

日本はG7やG20の一員ですから、先進国と言われているのは事実です。

実際、GDPやGNPは世界第3位ですし、他の先進諸国と言われている国々と肩を並べて比較されてもいます。

そうした姿を見れば、日本は先進国と言えるのでしょうが、果たして実態はそれに相応しいと言えるでしょうか。

経済は低迷し続けていますし、「個々の生活を見た時には、必ずしも豊かと言えるものではない」というのが一般国民の共通の意識ではないでしょうか。

そういう意味で、孫社長の発言は日本の実態を直接指摘した鋭い内容であったと思います。

数値は嘘をつきません。たとえ統計情報を操作したとしても、誤魔化しきれません。

そんな嘘をつかない数値を、以下の11項目に分けて追って行きます。

(1)国内総生産(GDP)
(2)国民総所得(GNI)
(3)世界競争力ランキング
(4)平均賃金
(5)相対的貧困率
(6)教育に対する公的支出のGDP比
(7)年金の所得代替率
(8)障害者への公的支出のGDP比
(9)失業に対する公的支出のGDP比
(10)労働生産性
(11)世界輸出のシェア

興味のある数値だけを見たい方は、上記の11項目に対応した下記の記事を直接ご覧いただければ、その詳細が分かります。

数値が示す日本

(1)国内総生産(GDP)

では、実際に色々な数値を追って行きます。まずは、国内総生産(GDP)からです。

GDPは、ひと言で言えば、「一定期間に国内で生産されたモノやサービスの付加価値の合計額」です。

そして、この数値の見方として重要なことは、GDPの伸び率が経済成長率を端的に表すということです。

つまり、GDPがどれ程伸びているかを見れば、経済がどれほど成長しているかが分かることになります。

では、さっそく具体的に数値を見て行きましょう。

まずは、GDPの国際ランキングです。2017年の世界ベスト10(ドル換算)を見てみます。

GDPランキング(2017年)

堂々の3位です。これだけ見れば悪いとは言えません。しかし…です。

あくまで「GDPの伸び率」が「経済成長率」を表しますから、経済成長はGDPの変化を見なければ分かりません。

では、日本の近年におけるGDPの変化を見てみましょう。

近年の日本のGDPの変化

図を見て分かるように、バブル経済がはじけた90年代から、ほぼ横ばいなのです。

これを端的に言えば、「約30年に渡って経済がほぼ成長していない」ということです。

では、国際的にどうであるかを見るために、1992年のGDPを基準(=1)とした時の、他の年におけるGDPの比率を見てみます。

各国のGDPの変化の割合は

さすがに近年、発達してきた中国、ブラジル、インドなどは凄い伸び率ですが、それに比べて日本はほとんど変わらないことが分かります。

ここで、発達の著しい国は除き、GDPの変化の仕方について、上記の折れ線グラフを一次関数で近似した時の傾きを算出してみます。

日本  :0.0071
イタリア:0.0386
ドイツ :0.0381
フランス:0.0503
英国  :0.0660
米国  :0.0799
カナダ :0.1020

日本は諸外国と比べて著しく傾きが小さく、成長していない、ほぼ横ばいであることが数値の上でよく分かります。

結論として言えることは、

「世界の主要国の中で、過去30年近くにおいて、GDPがここまで横ばいに推移した国は他にはない」

ということです。

日本ほど成長が止まっている国は、主要国の中には他に無いってことです。これだけ見ても日本の深刻さがよく表れています。

「後進国に転落」しつつある姿を見る思いがします。

GDPに関して詳細を見たい方は、下記の関連記事をご覧ください。

(2)国民総所得(GNI)

次に、国民総所得(GNI)の数値を見てみます。

GNIは、事実上同じ数値となる国民総生産(GNP)と同じと考えてよい数値です。

国内総生産(GDP)との違いは、GDPは単に国内の生産のみを表すのに対し、GNIは日本企業が海外で得た利益も含む点です。

では、数値を見て行きます。まず、GNIの世界ランキング(2017年)です。(ドル換算)

GNIの世界ランキング(2017年)

結果は、GDPの場合とほとんど変わりません。GNIも世界第3位ですから、そういう意味では立派と言えます。

但し、GDPと同じで、実際の経済の指標として見る場合は、その変化や伸び率こそが重要ですから、やはりどれだけ変化したかを見るべきです。

早速、近年のGNIの変化を見てみます。

日本のGNIの変化

やはり、GDPの変化と同じで、1990年頃から約30年に渡ってほぼ横ばいです。30年近くも成長していないのです。

GNIに関する傾向はGDPの場合とほぼ同じなので、諸外国の変化との比較のグラフや数値はここでは省略します。

GNIに関して結論として言えることは、

「GNPと同様、過去約30年間において、GNIがここまで横ばいに推移した国は、世界の主要国の中では他にはない」

です。

GNIに関する詳細データを見たい方は、下記の関連記事をご覧ください。

(3)世界競争力ランキング

さて次は、世界競争力ランキングに関する数値を見て行きましょう。

このランキングは、スイスにあるビジネススクール「IMD」が毎年発表している評価結果で、1989年以降、主要国に関して比較した結果を公開しています。

要は、IMDが独自の指標に基づいて競争力のある国を順位づけした結果ですが、独自と言っても非常に多くの評価項目をもとに評価していますので、それ相応の比較をすることができます。

では、実際のランキング(2019年)を見てみます。(上位30位)

順位 国名(英語) 国名
1 Singapore シンガポール
2 Hong Kong SAR 香港
3 USA アメリカ
4 Switzerland スイス
5 UAE アラブ首長国連邦
6 Netherlands オランダ
7 Ireland アイルランド
8 Denmark デンマーク
9 Sweden スウェーデン
10 Qatar カタール
11 Norway ノルウェー
12 Luxembourg ルクセンブルグ
13 Canada カナダ
14 China 中国
15 Finland フィンランド
16 Taiwan、China 台湾
17 Germany ドイツ
18 Australia オーストラリア
19 Austria オーストリア
20 Iceland アイスランド
21 New Zealand ニュージーランド
22 Malaysia マレーシア
23 United Kingdom イギリス
24 Israel イスラエル
25 Thailand タイ
26 Saudi Arabia サウジアラビア
27 Belgium ベルギー
28 Korea Rep. 韓国
29 Lithuania リトアニア
30 Japan 日本

このランキングは、主要63か国について順位を決めたもの(上記に掲載は30位まで)ですから、30位である日本はちょうどその中間あたりと言えます。

先進国と言う割には、決して高いランキングとは言えません。

実際、「日本より上位に、こんな国がランキングされているのか…」などと感じた人も少なくないことでしょう。

実はこのランキング、前年の2018年において、日本は25位だったのです。つまり1年で5つもランクを落としているのです。

そこで気になるのが、更に昔はどうだったのかですが、ランキングが始まって以来の日本の順位を見てみましょう。

日本の世界競争力ランキングの順位の変化

どうでしょうか。驚いた方もけっこういるのではないでしょうか。

かつての日本は、1位をキープしていた時期もあるのです。

それだけ日本は落ちぶれてしまい、後進国化が進んでいると言えそうです。

そして、結論として言えることは

「かつて1位だった日本の世界競争力ランキングは30位まで後退し、回復の兆しが見えない」

ということです。

どんどん、どんどん悪化して行く日本。このまま後退が続けば、遠くない将来において後進国となるのも無理なさそうです。

世界競争力ランキングに関して詳細を見たい方は、下記の関連記事をご覧ください。

(4)平均賃金

次に、平均賃金を見てみましょう。平均賃金とは分かりやすく言えば給与のことです。

孫社長の発言によれば、「平均賃金はOECD加盟35カ国中18位」という内容でしたが、これは2017年のデータをもとにした結果でした。

こちらで確認のため最新の2018年のデータをもとにしたところ、平均賃金はOECD加盟35カ国中19位でした。

GDP世界3位でありながら、実質的な賃金のランクではこの程度なのです。生活が決して豊かにならないのが頷けます。

では実際のデータ(グラフ)を見てみましょう。

OECD加盟国の平均賃金(2018年)

日本はG7の中では6番目と下の方であり、韓国とほぼ同等の賃金水準であることが分かります。決して高い賃金水準にあるとは言い難いところです。

では、過去はどうだったのか見てみましょう。

近年の日本の平均賃金の推移

これを見ると日本の賃金は、ほぼ横ばいであることが分かります。

2000年の賃金は40468ドル、2018年の賃金は40573ドルですから、この18年間の伸び率はたった0.26%です。1年ではなく18年間でです。

賃金が伸びない、生活が全くよくならないことがそのまま表れています。

ちなみに2000年における順位はOECD加盟国中で11位でしたから、じわじわと順位を落としていることが分かります。

以上を要約すれば

「実質賃金の伸びは世界的にも非常に低く、最近の20年位に渡ってほとんど変わっていない」

ってところです。

後進国化が進む姿が端的に表れていると感じます。

もっと細かく平均賃金のデータを見たい方は、下記の関連記事をご覧ください。

(5)相対的貧困率

それでは次に、相対的貧困率を見てみましょう。相対的貧困率を分かりやすく言えば「平均所得の半分に満たない人の割合」です。

従って、貧富の差なども数値に反映されますし、あくまで相対的な数値ですから、単なる豊かさの比較にはなりませんが、国の発展した度合いを表すひとつの指標としては有用でしょう。

この数値については、OECDがデータを公開していて、2018年時点における結果としては下記のようになっています。

相対的貧困率の国際比較

これから

相対的貧困率は39か国中29位

と言うことが分かります。(孫社長の発言では、データの取得年が異なるため、順位が少し違います)

上記の結果は、G7の7か国の中では6番目で先進国の中では、貧困率が高いことが分かります。

また、日本よりも上位(貧困率が低い)にランクしている国を見ると、「この国は日本よりも上位なのか…」と感じてしまうこともあるのではないでしょうか。

そういうことからも、端的に「日本の相対的貧困率は高い」と言えるでしょう。

貧困率について、

貧富の格差を埋められていない → 遅れている

という見方をすれば、日本は貧富格差後進国という表現ができるかも知れません。

そして、相対的貧困率を見る上で見逃せないのが、高齢者に関する数値です。

OECDでは上記のデータを年齢層に分けて出していて、65歳以上における相対的貧困率についても、日本は39か国中29位になっているのです。

これは「高齢者が安心して暮らせない国」ということを意味していますから、ますます進む高齢化を考えると、今後どうなるのかとの思いが込み上げます。

以上を端的にまとめると

「日本の相対的貧困率は、先進諸国中だけでなくOECD加盟国中でも比較的高い」

と言えるでしょう。

相対的貧困率に関しては、下記の関連記事に詳細が記載されていますので参考にして下さい。

(6)教育に対する公的支出のGDP比

次に「教育に対する公的支出のGDP比」ですが、これは教育に対する公的な支出がGDPに対して何パーセントであるか、を表した数値です。

従って、この数値はその国の教育水準を推し量る上でのひとつの指標であり、教育面における進み遅れ、即ち教育分野での先進、後進を表していると言えます。

これについてはOECDが公表しています。早速、初等教育に関する数値を見てみましょう。

教育に対する公的支出のGDP比(小中学校)

見て分かるように「初等教育に対する公的支出のGDP比は43カ国中40位」です。

これは小中学生に関する数値ですが、日本の義務教育の教育水準は決して高くないと言えそうです。

では、高等教育の場合を見てみます。

教育に対する公的支出のGDP比(高等教育)

見て分かるように、「高等教育に対する公的支出のGDP比は43カ国中43位」です。

順位的には最下位です。愕然とする思いです。

確かに日本は少子高齢化が進み、教育を受ける人口比率が小さいのは事実です。

また、GDPそのものは世界第3位ですから絶対額としては決して低いとは言えないでしょう。

しかし、この数値を見る限り、教育に対して十分なサポートをしているとは言えません。

先進国を名乗っていながら教育水準の低さを強く感じます。実際、高校・大学などにおいて学費に苦労しているような姿は色々と見聞きするところです。

まさに、教育後進国とでも言うべきところでしょうか。

以上を端的にまとめて言えば、

「日本の教育に対する公的支出のGDP比は、OECD主要国の中で最も悪い」

というところでしょう。

なお、教育に対する公的支出のGDP比に関する詳細については、下記の関連記事にまとめてありますので参考にして下さい。

教育に対する公的支出のGDP比についての関連記事日本が後進国へ転落する理由を数値で見る(6)教育環境は悲惨そのもの

(7)年金の所得代替率

次に、年金の所得代替率を見てみます。

年金の所得代替率は、簡単に言えば

定年前の稼ぎに対する定年後の年金受給額

です。要は、定年前後の収入の比率(パーセンテージ)です。

これは、老後において、どれだけ豊かな生活が送れるか、どれだけゆとりのある経済状態でいられるかを表す数値ですから、老後生活を考える上では重要です。

また、「老後に安心できてこそ先進国」という見方をするのであれば、この数値はどれだけ進んだ国かを表す数値とも言えるでしょう。

では、具体的に数値を見てみましょう。OECDが公開している2018年の男性におけるデータです。(女性については、男性とほぼ同じ数値なのでここでは省略します)

男性の年金所得代替率

どうでしょうか。見て分かるように、「日本は49か国中40位」です。

順位も低いですが、数値的にも32%ですから、本当に低いですね。

この32%という数値を分かりやすく言えば、定年退職後の収入は、それまでの三分の一になってしまうことを意味します。

老後生活に不安を抱く人が増加していることが実感を持てます。

ここで気になるのが過去からの数値の変化です。
残念ながらデータとしては2018年の他には、2014年しかありませんが、データを比較してみます。

2014年:35.1%
2018年:32.0%

驚きではないでしょうか。わずか4年経過しただけで、3.1%も落ちているのです。

具体的に見ると、月収50万円だった人が2014年にもらえていた年金が175,500円(=50×35.1%)だったのが、4年後の2018年には160,000円(=50×32.0%)になったことに相当します。

想像してみて下さい。1ヶ月175,500円でも生活が苦しいのに、それが160,000円になったらどれほど苦しさが加速するか。

しかも、わずか4年間でここまで低下し、その減少傾向は更に続いて歯止めが掛かるとは思えない状況です。

実際、私の両親も「年金の受給額が減らされている」と嘆いていました。

高齢化がますます進む日本。将来に強い不安を覚えるのは私だけではないでしょう。老後生活後進国とでもゆうべきでしょうか。

以上、年金に関して端的にまとめると

「年金の所得代替率は国際的にも極めて低く、今もなお大きな低下傾向が続いている。」

と言ったところでしょう。

ちなみに、年金の所得代替率に関しては、下記に詳細をまとめてあります。興味のある方は、下記の関連記事をご覧ください。

(8)障害者への公的支出のGDP比

次に、障害者への公的支出のGDP比の数値を見てみます。

障害者への公的支出のGDP比は、障害者のための公的支出のGDPに対する比率(パーセンテージ)です。

分かりやすく言えば、障害者に対してどれだけ手厚い支援をしているかが表れる数値です。

従って、どれだけ進んだ国であるかのひとつの指標とも言え、これが低いと後進国という見方ができるでしょう。

このデータについてもOECDが公開していますので、その情報をもとに見て行きます。

下記は世界ランキングです。

障害者への公的支出のGDP比の国際比較

見ての通り、「障害者への公的支出のGDP比は36カ国中31位」です。日本の数値は0.983%です。

これを見る限り、弱者への支援が行き届いていないとの指摘を受けても仕方がないところでしょう。障害者支援後進国とでも言うべきところでしょうか。

そして、この支援を現金支給と現物支給に分けてみると

現金支給:36か国中33位
現物支給:36か国中14位

となります。

ここに、財政が困難だから現金で支給しないという、日本の国家財政の深刻な状況が表れています。

さて、ここで実際の額とその変化が気になるところでしょう。詳細は後述の関連記事を見て欲しいと思いますが、ここではその概要を示します。

(A)1995年の障害者に対する公的支出の実額:3482万ドル
(B)2015年の障害者に対する公的支出の実額:4320万ドル

これから、1995年から2015年までの20年間の増加は、1.24倍(=(B)÷(A))であることが分かります。

20年間でたったの1.24倍ですから、決して多いとは言えません。しかも実際は現物支給が増加しているのですから、深刻です。

以上、障害者への公的支出のGDP比に関してひと言でまとめて言えば、

「障害者への公的支出のGDP比は諸外国と比べて極めて低く、その伸びも鈍化している」

です。

このデータでは、単に数値を見ただけでは分かりにくい、国家財政の深刻な状況も表れているのが印象的ですね。

障害者への公的支出のGDP比に関する詳細については、下記の関連記事をご覧ください。

障害者への公的支出のGDP比についての関連記事日本が後進国へ転落する理由を数値で見る(8)弱者への支援が弱い

(9)失業に対する公的支出のGDP比

次は、失業に対する公的支出のGDP比を見て行きます。

失業に対する公的支出のGDP比は、言葉の通り、失業者に対する公的手当の総額のGDPに対する比率(パーセンテージ)のことです。

これはあくまで比率ですから、GDPの絶対額も影響しますし、何より失業率や失業者の数も影響しますから、単純に比率そのものだけで比較することはできません。

しかし、失業者に対する支援の度合いを見る一つの指標としては有用でしょう。

では実際に数値を見てみましょう。

まずは世界ランキングです。ちなみに統計処理上、各国における2015年~2017年の間の数値のうち最新のデータで比較していますから、同一年における比較ではありません。

失業に対する公的支出のGDP比の国際比較

グラフのように、失業に対する公的支出のGDP比について、日本は34か国中で31位となっていますから、順位だけ見れば最下位に近く、確かに悪い方です。

しかし、ここで問題なのは失業者がどれくらいなのかということです。

早速、失業率について見てみましょう。統計の年は違いますが、2019年においてOECDが公開している情報がありますので、それを見てみます。

失業率の国際比較

どうでしょうか。日本は失業率がとても低く(2.267%)、ベスト2となっています。これが、上記のGDP比を下げている大きな要因と言えますから、ある意味では優れていると言えます。

詳細は下方に示した関連記事を参考にして頂きたいと思いますが、過去の失業率の変動に応じて、失業に対する公的支出のGDP比も変化しています。

これは、失業者数に応じて、このGDP比も大きく影響を受けることを意味しています。

逆に言えば、失業者数に応じて予算を確保して対応している訳ですから、失業者に対して相応の対応をしているとは言えるでしょう。

以上のことから、失業に対する公的支出のGDP比についてひと言でまとめると

「日本の失業に対する公的支出のGDP比は低いが、失業率も低いため一概に悪いとは言えない」

ってところでしょう。

失業に対する公的支出のGDP比に関しては、GDPから算出した詳細データなども記事にしています。興味のある方は、下記の関連記事をご覧ください。

失業に対する公的支出のGDP比についての関連記事日本が後進国へ転落する理由を数値で見る(9)失業者への支援の実態は

(10)労働生産性

では次に、労働生産性について見てみましょう。

労働生産性とは、どれだけ効率的な労働生産活動がされているかを表す数値です。

これには下記の2種類があります。

1.就業者一人当たりどれくらいの生産量を生み出しているか
2.一時間当たりどれくらいの生産量を生み出しているか

これらは、それぞれGDP(国内総生産)を従業者数で割った数値、GDPを総労働時間で割った数値として算出されます。

ちなみに、ここで用いるおおもとのデータは労働生産性本部が公開している情報ですが、この情報はOECDの公開データを補正して算出したものです。

では、早速データを見てみましょう。まずは就業者一人当たりの労働生産性の比較です。

下記は、G7に関する2018年における数値です。

G7の一人当たりの労働生産性の比較

見て分かるように、日本の労働生産性は、先進諸国(G7)の中で一番悪いことが分かります。

G7中で最も良い米国と比べると労働生産性の比率は61%となる計算です。

米国人ひとりが”10″生産するのに対して、日本人ひとりは”6″しか生産していない訳ですから、生産性が悪いと言わざるを得ません。

では、比較対象をOECD各国に広げてみましょう。

一人当たりの労働生産性のOECD加盟国との比較

結果は、OECD加盟国36か国中21位ですから、下位の方に属することが分かります。

下位に属するってことは、生産性について遅れているということですから、日本を先進国と呼ぶことには躊躇してしまいますね。

そして、過去のデータを見ると、日本の就業者一人当たりの労働生産性は、1994年以降ではずっとG7中で最下位の状態です。

また、就業者一人当たりの労働生産性の伸び率について言えば、OECD加盟国の伸び率に比べて低く、ここ数年については、ほぼ横ばいで生産性は伸びていません

次に、一時間当たりの労働生産性を見てみましょう。

最初にG7における比較です。

G7の時間当たりの労働生産性の比較

この結果も、G7の中で日本は最下位です。米国の労働生産性と比べると約62%です。

就業者当たりでも、時間当たりでも、共に労働生産性が悪いことがよく分かります。

では、範囲をOECD各国に広げてみましょう。

OECD加盟国の一人当たりの労働生産性の比較

これも先ほどと同じく、OECD加盟国36か国中21位です。

そして、これについても過去について見れば、その伸び率は悪く、常にOECD加盟国の平均以下を推移しています。

GDPにおいて世界3位とは言え、生産性が決して良くないことを見ると、これは一つの大きな問題と考えるべきでしょう。

労働生産性後進国とでも言うべきところでしょうか。

以上、労働生産性についてひと言でまとめると、

「日本の労働生産性は決して高いとは言えないが、そのような状況は以前からずっと続いている」

というところでしょう。

なお、労働生産性に関しては、下記の関連記事に詳細を記述していますので、興味のある方はご覧ください。

(11)世界輸出のシェア

世界輸出のシェアとは、全世界の総輸出量に対する日本の輸出量を表した数値(割合)のことを言います。

従って、どれだけ貿易が盛んであるかを表していますが、資源の乏しい日本では、どれだけ価値のある商品を生み出して世界に輸出しているかが表れる数値でもありますから、国際的な競争力を表しているとも言えるでしょう。

調べるキッカケとなった孫社長の発言では、「日本のシェアは3.8%」とのことでしたが、データの出処が不明であったため、ここではWTOのデータをもとに見てみることにしました。

では早速、輸出量について比較してみましょう。

まずは、輸出の多い上位の国について、その輸出額(ドル換算)を見ます。

世界輸出の順位

見ての通り日本は4位ですから、決して低い訳ではありません。

しかし、1位~3位の国々からはだいぶ差を付けられていることが分かります。

また、GDP世界3位という割には数値的に低い感じもします。また、5位のオランダやそれ以下の国との差もあまりなく、近い将来抜かれてしまうのではとの感じもします。

では、これを割合で見てみます。

世界輸出の順位(割合)

数値としては日本は4%弱で、全体の傾向としては輸出額と同じです。

では、この割合の時間的変化を見てみます。

世界輸出の順位の長期的な変化(割合)

どうでしょうか。かつての日本はもっと高い数値であったことが分かります。米国やドイツとも大差がなかった時期もあります。

最も高い時は10%近くあったシェアが、ジワジワと低下して、遂に4%くらいにまで落ちてしまったのです。

これはバブル経済崩壊後に、日本経済が低迷してきたことがそのまま表れています。

かつては、日本製即ち「Made in Japan」というと、それだけで「優れた商品」というイメージすらあったと思います。

しかし、今となってはその力もかなり落ちてしまったという感覚を拭えません。

どんどん後退方向へと歩んでいく日本に憂慮の念を禁じ得ませんね。

以上、世界輸出のシェアに関してひとことでまとめれば、

「かつては約10%あった世界輸出のシェアは、ジワジワ低下して約4%まで落ち込んだ」

というところでしょう。

なお、世界輸出のシェアに関しては、その詳細を下記の関連記事にまとめてあります。興味のある方は覧ください。

まとめ

着目すべき点は

日本が後進国であるかどうかを見るために、11項目についてその数値を追ってみましたが、如何だったでしょうか。

「いやいや、後進国と言うのは大げさだ」
「後進国でないにしても決して先進国と呼べる状況ではない」
「これではまさに後進国だ!」

などなど、色々な意見や感想があるかと思います。

ここで、日本が後進国かどうかはとりあえずおいて置き、いままで見てきたデータの全体の傾向をまとめてみたいと思います。

低迷を続ける

まず、全体の傾向として言えることは、バブル経済崩壊から今日に至るまでの30年弱において、日本が徐々に悪化して来た姿が多くの数字に出ている点です。

GDPやGNIが30年近く横ばいであることは冒頭の方で述べましたが、一部を除き、この低迷した期間がそのまま色々な数値の悪化と重なっています。

つまり、1990年代はまだよかったのに、近年はここまで悪くなったという類の数値が多く見られます。

そして、この低迷する期間がここまで長期に渡っていることは諸外国の中でも皆無に近く、注視すべきことです。

本当の豊かさは

次に、言えることは、単なる見た目の経済力とは裏腹に、平均賃金においては決して高くなく、教育や福祉の面など遅れている分野が多くある点です。

GDPやGNIは確かに世界3位ですが、それがそのまま豊かさにつながる訳ではありません。

実生活の上では実質賃金こそが重要ですが、これを意味する平均賃金は、とてもGDP世界3位とは言い難い数値ですね。

また、年金生活に不安を覚える、教育に対する家計の負担が大きいなどの現代の問題・課題については、そのまま数値の悪さとして現れています。

更に、貧困者、失業者、障害者など、いわゆる弱者に対する福祉などはレベルが低く、遅れていると言わざるを得ません。

要は、本当の意味での豊かさを考えた場合、まだまだと言う点が多くあります。

少子高齢・国家財政の影響

そして、データを見る中に強く感じたことは、少子高齢化の影響が色々なところに出ていることです。

例えば、少子化があるから教育費の割合が小さい、高齢化が進んでいるから年金の所得代替率が低いなどはその典型で、少子高齢化の影響が直接数値に出ています。

また、詳細は割愛しますが、影響が直接的ではないところにも、背景に少子高齢化があるからこのような数値なのだろうと思わせる点が、他にいくつもありました。

また、国家財政の厳しさも色々な数値に影響していることが見て採れました。例えば、障害者への支援が現金支給から現物支給に変化している姿はその典型です。

色々なデータを見ると、その多くが国家財政の厳しさの影響を受けていると思わざるを得ないのです。

日本は後進国か?

では、ここで話をもとに戻して、そもそも先進国・後進国とは何かを述べたいと思います。

先進国をデジタル大辞泉で引くと

政治・経済・文化などが国際水準からみて進んでいる国

とあります。

同様に、後進国については発展途上国の旧称として

「発展・開発の途上にあって実質所得が低く、一次産業の比率が高い国」(要約)

とあります。

これらから、先進国か後進国かは

「色々な分野で進んでいるのか、或いは、遅れていて発展段階にあるのか」

を総合的に判断すべきと言えます。

孫社長の発言は、日本にとって遅れている項目についてピックアップしたことは事実です。

このことは「GDPやGNIなどが世界第3位である」などの、進んでいるような点については触れていない姿をみても分かります。

そういう意味からも、総合的に見た場合、「日本を後進国と言うのは不適切」と言えましょう。

しかし、ここであげた幾つものデータは、日本の遅れた部分でもあり、これから発展させなければならない点であるとも言えます。

事実、日本は、IT後進国、AI後進国などと言われていますが、確かに諸外国に比べて遅れていますから、これは遅れている面として正直に認め、改善して行くべきです。

換言すれば、日本は先進国と言いながら、一方では遅れている部分も多くあり、もしそれらの遅れた点だけを見るならば、まさに後進国と呼ぶべきとも言えます。

そして、強く認識しておかなければならないことは、遅れている点の中には、今も悪化しつつある点が多くあり、このままのペースでは本当に後進国の仲間入りをしてしまうということです。

将来の日本に対して憂慮の思いを抱きつつ、今後の動向を見つめて行きたいと考えています。

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