老後の孤独はつらいという話をよく耳にします。
また、孤独死などが、ひとつの社会問題にもなっています。
老後の孤独は、「一人で寂しい」と言う単純なものではなく、本当につらくて深刻な問題です。
老後の孤独に苦しまないよう、その本質を知り、早目に対策して行きましょう。
老後の孤独・寂しさはつらい
世の中には
「一人の方が気楽だからいい」
と思っている人がいます。
また、
「孤独の方が自由があっていい」
と考える人もいます。
このような人達は、孤独を好むタイプと言えます。
しかし、もし老後の孤独も同じだと考えているのであれば、それは老後の孤独の本当の辛さが分かっていません。
単に孤独を好む人は、いざその気になれば、他の人と接する環境を容易に作ることができます。
要は、簡単に孤独から脱することができるのです。
しかし、老後の孤独の場合、たとえその気になっても、他の人と接する環境を簡単には作れず、孤独を回避しにくいのです。
つまり、孤独を容易に回避できるかどうかという点で、両者は大きく異なるのです。
老後の孤独の辛さは、実際に老後になってみないと、よく分からないのかも知れません。
しかし、多くの老人が老後の孤独の寂しさ辛さを強く味わっているのが現実なのです。
私の知り合いで、若い頃から人づきあいが嫌いで一人でいることを好んでいた人がいました。
しかし、いざ年老いて一人暮らしになった途端、孤独に耐えかねてボランティアの話し相手を派遣して貰うことになりました。
それだけ老後の孤独はつらいものなのです。
どうして老後の孤独はつらいのか
では、どうして老後の孤独はつらいのでしょうか。
その理由をあげると、下記の4つがあります。
(1)寂しさが継続するため
(2)精神的に追い込まれるため
(3)孤独感がどんどん強まるため
(4)状況を脱しにくいため
それぞれを詳しく見てみましょう。
(1)寂しさが継続するため
まず初めに、老後の孤独は、半永久的に継続する点に辛さがあります。
人間は何かつらいことがあっても、それが一時的であれば我慢しやすいのですが、長く続くことだと辛さが増幅されてしまいます。
癒されることも無く、常に孤独感を味わうから苦しいのです。
(2)精神的に追い込まれるため
次に、老後の孤独は精神的に追い込まれる点に辛さがあります。
人間は、身体的な苦痛よりも、精神的な苦痛の方が長い目で見ればつらいものです。
特に、老後の生活では気持ちの持ち方がより重要になって来ますが、精神的な孤独感は、生活そのものも沈んだものにしてしまいます。
要するに、気持ちの面で追い込まれてしまうところに辛さがあると言えます。
(3)孤独感がどんどん強まるため
また、孤独感が少しずつ強まって行く点にも辛さがあります。
孤独感がある程度のところで一定であれば、その苦しさもまだ耐えやすいものです。
しかし、時間の経過と共に孤独感がジワリジワリと強まって行くと、その辛さは相当なものです。
そして、
・同級生が亡くなって行く
・知っている芸能人が出演しなくなる
・兄弟姉妹が先に亡くなる
このような経験が積み重なることで、その寂しさは更に加速して行きます。
孤独感が少しつず強まり、機会がある度に一段と大きくなって行く。とてもつらいことなのです。
(4)状況を脱しにくいため
そして、老後の孤独の辛さは、頼れる人が無く、孤独という状況を脱し難い点にもあります。
換言すれば、老後に一度孤独となると、その状況を脱するのは極めて難しいのです。
老いてから人と接する環境を作るのは容易なことではなく、改善への希望を抱けないからこそ辛いのです。
老後の孤独は、生活を悪循環にさせる
そして、老後の孤独が厄介なのは、老後生活を悪循環にさせることです。
悪循環となるからこそ、とても深刻なのです。
具体的に悪循環となる点について詳しく説明しましょう。
老化を加速させる
まず、孤独はボケや老化を加速する要因になります。
孤独になると会話をする場が無く、コミュニケ―ションをとることが殆どありません。
すると、その分だけ頭を使う機会が減り、ボケの進行につながります。
また、孤独になるとあまり活動しなくなり、身体を動かすことも少なくなりますから、老化の進行にもつながります。
健康を損ねる
また、孤独は健康を損ねる要因にもなり得ます。
昔から「病は気から」とも言いますが、健康な身体は健康な心があってこそ保てます。
孤独でいると寂しさから気が滅入ってしまったり、落ち込んでしまったりしますが、精神的な気持ちの低下が病につながります。
そして、孤独でいると、生活は非活動的になり、身体を動かさないことが不健康な要因にもなります。
余暇を活かせない
更に言えることは、孤独生活は余暇の有効活用の妨げになります。
本来、老後は人生の中で最も時間がある時期ですから、余暇を有効に利用して、生活を楽しみ切って行きたいところです。
ところが、孤独でいると、内にこもる傾向となり、生きがいも低下して、余暇を楽しむ機会が減ってしまいます。
せっかく自由に使える時間がありながら、大きな可能性を小さくしてしまうことはとても勿体ないことです。
ますます孤独感を増長させる
このように、老後の孤独は色々な面に悪影響を及ぼします。
そして、質(たち)が悪いのは、悪影響を受けた要因が逆に孤独感を増長させる働きを持つことです。
例えば、孤独によって老化が進めば、ますます非活動的になり、更に孤独を強めることになります。
また、孤独によって病気を患えば、気持ちも落ち込みますが、それが孤独感を深めることになります。
更に、余暇を有効に活かせないでいると、ますます人と接する機会を失い、余計に孤独な思いをすることになります。
孤独は、老化を進め、健康を損ね、充実しない生活を招きますが、逆にこれらの要素が却って孤独感を増長させてしまうのです。
老後の孤独は悪循環を生むところに深刻さがあるのです。
孤独に陥りやすい要因は
では、老後に孤独になりやすい要因には、何があるでしょうか。
孤独になりやすい傾向の人はいますが、その要因を大別すれば下記の3つです。
(1)孤独になりやすい環境
(2)孤独になりやすい性格
(3)孤独になりやすい習慣
では、それぞれの要因を細かく見てみましょう。
(1)孤独になりやすい環境
まず、要因として大きいのは、その人の生活環境です。
当然のことですが、一人暮らしが最も孤独に陥りやすくなります。
つまり、シングルマザーなどを含めた独身者、離婚者、配偶者と死別した人などが比較的なりやすいと言えます。
たとえ一人暮らしでも、子どもが要る人や兄弟の多い人の方がなりにくいと言えます。それは、年老いても、親族のつながりというのはなかなか途切れるものではないからです。
特に子供の場合は、自分よりも若くて身体的にも自由がききやすく接する機会が持ちやすいです。人と接する機会が多いほど孤独は抑制できますから、子どもの存在は大きいと言えます。
但し、一般に男の子(息子)の方が親との交流は少ない傾向にありますから、同じ子供なら女の子(娘)を持つ方が孤独になりにくいとも言えます。
もちろん人にもよりますが、女の子の方が老いた親のことを気に掛けるてくれるものです。
そして、注意しなければならないのは、一人暮らしでない人でも孤独に陥ることがある点です。
例えば、家庭内別居などと言う言葉がありますが、同じ屋根の下に暮らしていても夫婦で全く接点が無い場合もあります。
更に、子どもと暮らしていてもお互いにぜんぜん会話がない家庭もあります。
環境は孤独を生む大きな要因ですが、これらの例を見ると、環境だけが全てではないことが分かります。
(2)孤独になりやすい性格
次にあげられる要因は、その人の性格です。
簡単に言えば、内向的な人ほど孤独になりやすく、反対に外向的な人ほど孤独になりにくい傾向があります。
内向的な人は、内気で引っ込み思案なところが多く、非社交的になります。
結果として、殻に閉じこもったり人見知りをしたりして、人付き合いも悪くなります。
このような性格だと、自然と人と接しようとしなくなりますから、孤独になりやすいのです。
逆に、外向的な人は、人付き合いが良く、社交性にも富んで、顔も広くなりますから、その分だけ孤立しにくくなります。
その人が持つ性格は、取る行動にも大きく影響しますから、内向的か外向的かは孤独になりやすかどうかに大きく関わります。
(3)孤独になりやすい習慣
最後にあげられる要因は、その人の生活習慣です。
分かりやすくひと言で言えば、交際範囲が狭い人ほど、孤独に陥りやすくなります。
当たり前と言えば当たり前ですが、日頃から人と接する機会が少ない人ほど孤独になるのです。
逆に言えば、広く交際する生活習慣があれば、孤独にはなりにくいです。
これを人のタイプで表現すれば、インドアタイプの人は孤独になりやすく、アウトドアタイプの人は孤独になりにくいと言えます。
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孤独にならないための対策
最後に、老後に孤独とならないための対策について述べましょう。
上記で孤独になる要因を3つあげましたが、基本的にこれらの要因を取り除くことが回避策となります。
とは言え、子どもと同居するなどの環境を変える手段は、他の人が関わることになりますので自分一人では対策できません。
また、性格や性分というものは変えられるものではありませんから効果的な方策はありません。
従って、3つ目の要因である「孤独になりやすい習慣」を「孤独になりにくい習慣」にすることが、現実的かつ効果的な対策と言えます。
それは、たとえ一人暮らしをしている内向的な人であっても、人と接する機会を多く持つ習慣がある人は孤独になりにくいからです。
孤独を防止するための具体的な方法は下記の通りです。
(1)仕事に励む
(2)趣味に打ち込む
(3)ボランティアに没頭する
(4)福祉サービスを活用する
(5)同好会等の交流の場に参加する
(6)ネット環境を利用する
以下、それぞれについて詳細を説明します。
(1)仕事に励む
まず最初に、仕事に励む方法があります。仕事をしていれば少なからず人と接する機会を持てるからです。
「老後=退職」というイメージが強くあるかも知れませんが、老後に仕事をしたらいけない訳ではありません。
仕事は本来、収入を得る手段ではありますが、同時に、生きがいを得たり、生活にメリハリを付けたり、毎日を楽しんだりする手段にもなります。
無理のない範囲で好きな仕事をすれば、収入の足しになるだけでなく、生活は充実して、孤独を防止する役割をも持ちます。
(2)趣味に打ち込む
次に、趣味に打ち込むことも孤独防止に役立ちます。特に、人と接する機会の多い趣味ほど効果的と言えます。
人の好みによって色々な趣味がありますが、好きなものであれば、年老いてから始めてもハードルは高くありません。
そして、新たに始める趣味は、可能な限り、人と関わるようなものがよいでしょう。
もしその趣味が身体を動かすものであれば健康維持にも寄与しますし、頭を使う物であればボケ防止にも役立ちます。
例えば、ゲートボールなどは身体も頭も使いますし、競技をする仲間を作ることができますから一石三鳥です。
孤独防止と併せて、より意義のある趣味を見つけましょう。
たとえ、人と接することがない趣味の場合でも、同じ趣味を持つ人と関わる機会を作ることが大切です。
例えば、
釣りが好きなら釣り仲間を見つける。
囲碁が好きなら碁会所(囲碁サロン)に通う。
料理が好きなら料理教室に行く。
と言った具合です。
仮に、人と接する機会が少ない趣味でも、好きなことに打ち込める時間を多く持てれば持てるほど、味わう孤独感を小さく抑えることはできます。
趣味こそ孤独防止の最善策と心得て、自分にあった最高の趣味を見つけたいものです。
(3)ボランティアに没頭する
さて次は、ボランティアに没頭する方法があります。
ボランティア活動は、営利目的ではありませんから、割と気軽に参加できます。
また、高齢化に伴って、シニアの手を借りようとする社会の動きもありますから、取り組みやすいボランティア活動も数多くあります。
ボランティアは人と関わり接することが多いため孤独を防いでくれますが、誰かの助けになるという意味で充実感も味わえます。
高齢者が多いボランティア活動などは、同じような年代の人も多く、仲間も見つけやすい点でも魅力です。
(4)福祉サービスを活用する
孤独な老人を支援する福祉サービスを活用するのもひとつの手です。
この種のサービスは、介護などとは違うサービスで、一人暮らしの老人宅などに定期的に足を運んでくれ、話し相手になってくれます。
お住まいの市町村・自治体などによってそのサービスの内容や仕組みは様々ですが、何らかのサービスを提供している場合が多いようです。
まずはお住まいの役所などに問い合わせてみるのがよいでしょう。
お住まいの場所によっては公的機関が仲介・斡旋した民間の業者やボランティア団体などが実際の支援をしている場合もあります。
中には介護サービスの一環としているものや、有償のサービスもあります。
サービスの範囲や内容などは様々ですから、望むようなサービスがないかどうかを調べてみることから始めるのがいいでしょう。
(5)同好会等の交流の場に参加する
同好会やサークル、クラブなど、人々と交流できる場に参加したり、そういう団体に所属したりするのも孤独を回避するひとつの方法です。
これは、運動であったり、趣味であったり、或いは特技などであるかも知れません。
いずれにしても、好みの合うもの同士が集う場は、楽しみやすいのでハードルも高くはありません。
なんらかの団体に所属しておけば、定期的に人と接する機会を持てますので、孤独を避けるにはとてもよい方法と言えます。
また、こうした活動を通して仲間ができれば、単に孤独を防止するだけでなく、老後生活の助けとなる場合も出てきます。
あなたにあった交流の場を求め、孤独防止に努めたいものです。
(6)ネット環境を利用する
ネットワークを利用して人と接点を持つのもひとつの方法です。
以前は、パソコンを持つ人だけが利用できる特別な方法という趣がありました。
しかし、近年ではタブレット端末やスマートフォンを利用して自由にコミュニケーションが取れるようになり、高齢者にとってもハードルが低くなり使いやすくなっています。
また、新型コロナウィルスの流行を背景に、リモートでのやり取りが一段と盛んになり、そのための環境やツールなどもいっきに整いました。
高齢だと足腰が弱るとか病弱になるなど、外出するのが困難なケースも多くありますが、ネット環境を利用することで、人との接点を持つことが容易になり、老後の大きな助けになります。
SNSなどを利用した動画通話などは誰でもできますから、気の合った人同士で、頻繁に活用する習慣を持ちたいものです。
実際に会うことができなくても、相手の顔を見ながら会話ができれば、臨場感が高いので孤独を回避できます。
色々な使い方もできて、とても便利ですから、ネットワークは大いに活用したいところです。
まとめ~老後に孤独にならないために
以上、老後の孤独のつらさ、孤独が悪循環になること、孤独になる要因に触れた上で、孤独の回避策について述べてきました。
少しでも老後の孤独について理解を深めて頂けたかと思います。
とは言え、老後の孤独の本当の辛さは、いざその立場に立たされないと、なかなか実感は湧かないものかも知れません。
だからこそ、少しでもその本質を知り、今からできる対策を早めに実施して行くことが大切です。
老後を迎える前から、ここに示した対策を予め検討して行きましょう。
孤独が好きと言う人でも、必ず寂しさという辛い孤独感に襲われます。
それだけ辛いものですから、人と接することに対して前向きに取り組んで行きたいものです。
くれぐれも、毎日TVやゲームだけで孤独を紛らわすようにはなってはいけません。
TVやゲームなどは、所詮、一方通行で、本当の意味で人と接することができないからです。
人間は、一人で生きて行く動物ではありません。社会を築き、社会の中で生活して行くものです。社会のなかで色々な人と接して行くのが自然な生き方でもあります。
せっかく余暇を持てる老後生活なのですから、人と接する機会を多く持つなかに、有意義な生活をして行きたいものです。