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【実用文の書き方】第2回~修飾語は適切な言葉で可能な限り数値で表現する

「実用文の書き方」について掲載、第2回目です。

今回は、「修飾語は適切な言葉で可能な限り数値で表現する」ことをテーマに説明します。

修飾語の重要性

修飾語は被修飾語の具体的な内容を説明する言葉として、とても重要な役割を持ちます。

例えば、単に

部屋に箱が置いてあります。

と表現すると、それがどのような箱なのかよく分かりません。

しかし、

大きな箱
赤い箱
ブラスチックの箱

のように修飾語(ここでは形容詞)を加えると、被修飾語である箱の大きさや色、素材などがハッキリします。

修飾語を加えることで、どのような物なのかがより具体的になり、読み手は対象をイメージしやすくなります。

修飾語は、物や動作の様子を詳しく表現してくれますので、読み手は分かりやすくなるのです。

実用文では殊に重要

殊に、修飾語は実用文では重要になります。

小説なら、読者は想像力を持って状景をを思い浮かべることも少なくありませんから、時には修飾などしない表現が適す場合もあります。

しかし、実用文の場合、読み手によって理解の仕方が異なるような曖昧さは避けるべきです。

例えば、取扱説明書の操作方法の記述で、

リモコンのボタンを押す

と書かれているだけでは、読み手はよく分かりません。

このような説明文だと、読者によっては、間違った操作をしてしまうことでしょう。

上記の文が、

リモコン上部の赤ボンタンを1回押す

のように適切な修飾語で表現されていれば、操作を間違えることはなくなります。

実用文では、修飾語をうまく活用して、曖昧さのない明瞭な表現が大切と言えます。

適切な修飾語を選び明確な表現に

さて、修飾語を使った分かりやすい表現が重要なことは理解して頂けたと思いますが、修飾する言葉なら、どんな表現でも構わないという訳ではありません。

実用文では、より正確で分かりやすい表現にするため、留意すべきことがあります。

では、詳しく見て行きましょう。

あいまいな言葉は使わない

実用文で、まず重要なことは、あいまいな修飾語を避けることです。

修飾する言葉が曖昧だと、分かりにくくなるだけでなく、場合によっては意味が通じなくなることすらあります。

例えば、企画されていたイベント中止の報告書で、

予定されていた屋外販売促進イベントは、気温がかなり高かったため中止となりました。

と表現されていたとします。

文中の「かなり高かった」と言う表現に曖昧さが残るものの、大抵の人は、その内容を理解できると思います。

しかし、もしこのイベントをとても重視していた人が読んだ場合、

なぜ気温が高いくらいで中止にするのか!

などと感じるかも知れません。

もし、上記の文章が

予定されていた屋外販売促進イベントは、熱中症の警戒レベル温度をはるかに上回っていたため中止となりました。

のように記述されていれば、「中止はやむを得ない」ことを理解してもらえるでしょう。

言葉の修飾表現の仕方が異なるだけで、読者に与える印象が大きく変わることがよく分かると思います。

実際には、ここまで細かく書く必要のないケースも多いでしょうが、イベントへの期待が大きかった場合などでは、このような表現にすべきでしょう。

要するに、実用文では「低い」「長い」「重い」「軽い」「固い」「短い」などの漠然とした表現はさけるべきなのです。

漠然とした表現には主観が含まれ、程度が曖昧となるからですね。

分かりやすく表現するポイントは、

  • 何に対して低いのか
  • 何をもとに長いのか
  • 何が基準で重いのか

など、比較対象や基準、判断の根拠などを併記して表現することです。

実用文では、読み手の主観で変わるような表現は、避けるべきです。

専門的な分野では造語を避けて専門用語を使う

さて、実用文では専門用語が求められる場合が多くありますが、修飾する言葉においても同様です。

例えば自動車に関して述べる文章において、下記の表現をしたとしましょう。

容易停止可能速度を保つ
道交法規定速度内で走る

意味は分からなくはありませんが、読み手は意味を考えながら読まなければなりませんから、分かりにくい表現と言えます。

上記の例では、”容易停止可能速度”や”道交法規定速度内”など、耳慣れない言葉が使われているため、理解しにくくなっています。

これらの言葉は一般に使われない造語ですから、実用文では用いるべきではありません。

では、上記の2文を改めてみましょう。

直ぐに停車できる速度を維持する
法律で定められた速度を守って走る

これならば日本語として間違いはありません。意味も分かり易くなっています。

しかし、文章が少しダラダラして締まりがなく、稚拙な感じもします。

試しに、上記の2文を更に改めてみましょう。

徐行し続ける
法定速度を順守して走行する

上記では、”直ぐに停車できる速度”を”徐行”に、”法律で定められた速度”を”法定速度”に置き換えてシンプルにしたため、意味が端的に伝わり、稚拙さも無くなっています。

不用意に修飾語を羅列するのではなく、その書類に合った最適な言葉(用語)を用いる方が、紛れの無い締まりのある表現になります。

但し、1つ気を付けたいことは、必ずしも全ての実用文で専門用語が最適とは限らないことです。

あまり広く浸透していない用語を使えば、読み手が容易に分からないケースもあります。

読み手が、専門知識を持たない場合もあります。

想定される読み手を思い浮かべて、言葉を選ぶ柔軟さが大切と言えます。

修飾語と被修飾語の距離には注意する

修飾する言葉が複数ある場合や、文章が複雑な場合は、修飾語と被修飾語の距離に注意しましょう。

基本的には、修飾語と被修飾語は可能な限り接近させて用います

次の句を見て下さい。

わんぱくな若く見える老人の孫

読んでいて、分かりずらいと思います。

”わんぱく”は、一般に子供に対して使う言葉ですから、後ろの孫を指します。

また、”若く見える”は孫に使うのは不自然ですから老人を指すことも分かります。

しかし、”わんぱく”の位置が先頭にありますので、読み手には分かりにくくなります。

言葉の順番を変えてみましょう。

若く見える老人のわんぱくな孫

こうすれば、それぞれの修飾語と被修飾語が近くにあるためとても分かりやすいですね。

修飾語と被修飾語は可能な限り接近させて用いましょう。

「○○性」、「○○的」は乱用しない

言葉を修飾する表現の中には、性質を表す「○○性」と言った表現や、傾向を示す「○○的」などの表現があります。

いずれも、名詞の後に”的”や”性”を付け加えるだけで、対象の状態(性質や傾向など)を容易に表せますからとても便利です。

実際、よく使われる言い回しですが、便利だからという理由で乱用するケースが見られます。

「○○性」や「○○的」などの表現は、必要以上に使うと表現が不自然になり、場合によっては文が増長となって、まとまりが無くなります。

例を挙げてみましょう。

新入社員の将来性を考えて、社員教育を充実させる
安全性に問題がある製品
原因を徹底的に追及する

これらは、文として問題あるとは言えません。

では、試しに”的”や”性”を除いてみましょう。

新入社員の将来を考えて、社員教育を充実させる
安全に問題がある製品
原因を徹底して追及する

言葉のニュアンスは微妙に変わりますが、”的”や”性”がなくても自然な表現となることが分かります。

「○○性」や「○○的」は簡単に表現しやすいので、ついつい多用したくなりますが、乱用すると不自然になります。

使用する場合はほどほどにしましょう。

また、”的”を用いる時に、すぐ後ろに”な”を併記する場合がよくあります。

例えば、経済的な効果、客観的な証拠、意欲的な発言、文学的な描写、飛躍的な発展などです。

この種の表現は、経済的効果、客観的証拠、意欲的発言、文学的描写、飛躍的発展のように“な”を使う必要がない場合が多くあります。

状況にもよりますが、表現がくどくならないように、可能な限り”な”は付けないように心掛けましょう。

程度は可能な限り数値を用いた表現にする

実用文では、分かりやすくするために具体的な”程度”が求められることが多くあります。

その場合に、最も有効な手段は数値を用いて表現することです。

「低い」「長い」などは程度が曖昧なので、比較対象や基準、判断の根拠を併記する方法が有用であることは既に述べました。

ところが、実用文では更に明確に程度を表すべき場合が多いので数値が重要となります。

例えば、対象が「低い」「長い」「短い」であればメートルなどの長さで示し、対象が「重い」「軽い」であれば、グラムなどの重さを記します。

具体的な例を挙げましょう。

レバーを手前に少し引く

と表現すると、操作方法は分かっても、レバーを引く度合いがよく分かりません。

この表現を改善して、

レバーを手前に約3cm引く

と表現すれば、レバーをどの程度引けばよいのかがよく分かります。

具体的な数値を含めて表現すると、格段に分かりやすくなるのですね。

特にビジネスでは、数量を明確にすることはとても重要です。

例えば、

業務の効率化を促進するため、確認作業に要していた時間を大幅に短縮する

との業務改善目標を掲げたとします。

この表現では、目指す時間が不明なため、目標がボケてしまいます。

この表現に数値を加えて、

業務の効率化を促進するため、確認作業に40分要していた時間を10分削減して30分に短縮する

のような文にすると、目指すべき目標がしっかり定まり、業務改善への取り組みの具体性が強まります。

数値での表現が、いかに重要であるかが、よく分かって頂けるでしょう。

とは言え、表現しようとする対象が数値で表わしにくい場合もあります。

そのような場合でも、対象を時間に換算する、金額に換算する、パーセンテージで示すなどして、できるだけ数値を含んだ表現を検討してみましょう。

理解度、快適さ、満足度などは対応する単位は存在しませんから、数値化するのは困難と言えます。

しかし、何らかの指標を定めて数値で表したり、基準を設けて数値で評価したりすることは可能ですから、あきらめずに数値化する方法を考えてみることが大切でしょう。

実用文では、無理のない範囲で、可能な限り数値を用いて表現することが大切なのです。

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