先日、人生で初めて松葉杖を使う経験をしました。
実際に使ってみると、思っていたイメージとは違って、けっこう難しいと感じました。
松葉杖を使ったことが無い人や、初めて使う人のための参考になるように記事にすることにしました。
目次
肉離れで初めて松葉杖を使う
その悪夢の日は、ある冬の日曜日のことでした。
家族と一緒に地元のスキー場で、久しぶりにスキーを楽しんでいた時のことです。
頭の中では学生時代の軽快な滑りをイメージしていたのですが、実際はとてもぎこちない滑りになっていて、イメージと現実との間に大きなギャップがありました。
そして、、、。
気付いていたら足が「ハ」の字になっていました。
要するに
頭の中の滑走イメージ ≠ 実際の滑走
だったんですね。いえいえ、むしろ
頭の中の滑走イメージ >> 実際の滑走
みたいな感じでしょうか。
で、次の瞬間「ズキッ!」という凄い衝撃的な痛みが左足に走り、スキー板が外れて10mほど下方に向かって転がって停止。
しばらく動けませんでした。
そうそう。誤解するといけませんので言っておきます。
”足が「ハ」の字”と書きましたが、”ボーゲン”ではありません。
敢えて言葉で言うならば”ゲンボー”でしょうか。(減給ボーナスではない)
意味不明ですね。解説します。
ボーゲンはスキー板の先頭が谷側のはず。
私の場合は、スキー板の先頭が山側だったってことです。ハハハ(笑)。でも笑えない痛さでした。
これで、足にどれくらいの負担が掛かったのか、憶測して頂けたことだと思います。
話を元に戻します。
しばらく動けなかった私でしたが、時間をかけてゆっくりと態勢を整えてスキー板を取り付け、あとは断続的な斜滑降で滑り下りて来ました。
その間の激痛に次ぐ激痛は、表現できません。わずかな足の動きや振動だけで、左ふくらはぎに凄まじい痛みが走るんです!
それでも、仕方がなく、ただ降りて来るしかなかったんですね。
私は、「もう滑らない」と妻に告げて、先に自動車に戻って休んでいました。
しかし、ズキッ!ズキッ!という痛みは容赦なく襲って来ていました。
その日は日曜日だったため、翌朝、地元の整形外科へ。
「肉離れですね。全治3週間です」
「当院の松葉杖を貸出しましょう」
人生で初めて松葉杖を使うことになったのでした。
(ふくらはぎの断面積だけで言えば、左足は右足の1.5倍くらいに脹れていたくらいひどかったです)
使い方の説明を受けて「えっ?」
医師から松葉杖の話を聞いて、初めは「松葉杖なんて大げさだ」と思っていたのですが、実際に歩こうとするとたった一歩だけでも激痛。
やはり松葉杖が無いと辛すぎるって感じで、素直に使うことにしました。
それで、いざ看護士から使い方を説明されたのですが、脳天を打ち叩かれるくらいの衝撃でした。
長さ調節を終えた松葉杖(2本)を渡された後、少し歩いてみたのですが、その瞬間に看護士から、
「その使い方はダメ!!」
のひと言。強く釘を刺されたんです。
初めて使う私にとっては「えっ?」という感じで???状態に陥りました。
私は、松葉杖の頭の部分(脇の下)に体重を掛けて移動していたのですが、それがダメだと言うのです。
看護士は、
「そこに体重を掛けると神経を圧迫してしまうからダメ」
「あくまで、脇で挟み込んで固定する」
そのように指導された私は、思ってもいなかったことに戸惑いながらも、言われた通りに使ってみました。
しかし、そこで感じたのは「使いにくさの極み」でした。けっこう使うのが難しいんです。
松葉杖の使い方については、基本中の基本も分かっていなかったんです。勝手な勘違いをしていたわけですね。
その後、実際に使うようになると、更に使うのが難しく大変でした。
難しくないと思って完全にナメテいたんですね。
思っていたイメージと違って難しい
さて、私が松葉杖は簡単だとナメテいたのには理由がありました。
私が高校生の時、同級生がアキレスけんを切って、しばらく松葉杖で登校してきた時期があったのですが、ふざけてその友人の松葉杖を使って歩いて遊んでいたのです。
当時は、運動部に所属して体力もバリバリでしたし、実際に怪我をしている訳でもありませんでした。しかも、思いっきり体重を両脇に掛けて歩いていましたので、楽勝って感じでした。
例えれば竹馬に乗って遊ぶような感覚で楽しんでいたのですね。
そんな経験から松葉杖は難しくないという安易な考えを持ってしまっていたのですが、実際に怪我をして使ってみると、その思いとは全く逆で、楽じゃないし、むしろ難しい、という感じでした。
まず、そもそもの話、脇に体重を掛けるのではなく、脇で挟み込んで固定して歩くのはとても使いにくいのです。
それは、神経を圧迫してしまうので、体重はかけられないにも関わらず、しっかりと固定しないと身体から外れてしまうからです。
そして、しっかり固定するため、手の負担が大きく疲れてしまうのですね。長距離を歩くのがゾッとするくらいです。
また、怪我をした足とは反対の足の負担も大きいんです。歩いていると、疲れがたまってくるんです。
高校時代に遊び半分で使ってみた時は、あくまで一時的で、身体も丈夫で実際には怪我もなく、使い方もいい加減だったから楽だと思えただけなんです。
実際は、ぜんぜん違って難しいのです。
歩く時に常に恐怖がある
そして、特に難しさを感じたのは実際に怪我をした場合は状況が全然違う点です。
実際には怪我をしていない状態で松葉杖を使った場合、いざとなればそのまま両足で普通に歩けば済みます。
仮に、もし転倒しそうになっても両足でそのまま身体を支えれば、更なる怪我はしません。
でも、実際に怪我をして松葉杖を使っていると、「もし転倒でもしたら」という恐怖心が常に脳裏に浮かびます。
怪我をした状態で転倒すると、更に大きな致命的な怪我を招きかねないからです。そういう恐怖心が常に心の中から離れないんですね。
実際に怪我をしているのとしていないのとでは大きな差なんです。
しかも、ヒヤッとしたことが実際にありました。
地面に付いている松葉杖の先端が滑りそうになったんですね。
杖の先は、ゴム製で滑りにくい構造なんですが、何と言っても色々な場所を歩いていると滑りやすいところってあるんです。
杖をついて一歩踏み出そうとした瞬間に先端が少し滑り、慌てて体制を整え直して一歩進みましたが、本当にヒヤッとしました。
実際に味わった様々な困難
そして、色々歩いてみて困難だと感じたことがたくさんありました。
物を持つのすら不便
まず、カバンを持つことが不便です。
カバンを持ちながら松葉杖で歩行なんて、正直言って無理です。危険です。
だからと言って、片方の肩に掛けるタイプのカバンだと、松葉杖と交差して邪魔なんです。
たとえリュックを使っても、肩に掛ける部分が松葉杖と接触する感じで使いにくいんです。
結論としておススメのカバンは、腰に留めるタイプのカバンですね。
これならあまり邪魔にならないと思います。
さて、このようにカバンすら持つのが不便なわけですから、基本的に何か物を持つとか、物を運ぶなんて無理ですからやめましょう。
どうしても仕方がない場合を除いて、誰かに声を掛けて、助けてもらうようにしましょう。
雨が降ると悲惨
また、超たいへんなのは雨です。
実際に、私が病院に言った日にけっこう降っていて死ぬような思いでした。
整形外科から薬局まで徒歩数十メートルでしたが、傘に手を添えるようにしながら頭に乗せて松葉杖で歩行。
端的に言えば、濡れるのを我慢するか、転倒するのを我慢するか。それくらい大変でした。
しかもその途上、狭い通路があって、そこを通過するのもちょっと苦労しました。
雨が降ったら傘をさす。そんな当たり前のことが普通にできないんです!
トイレも苦労
更にた苦労したのはトイレで用を足した時です。
小さい方は便器の前に立ってするわけですが、松葉杖を倒れないように保持しておくのが難しかったです。
杖をついたままだと邪魔で用を足せない。杖を手から離すと杖が倒れてしまう。そんな感じの難しさです。
で、大きい方(トイレ)については、今回、家だけで用を足したのであまり苦労はしませんでしたが、万一、外出先で和式トイレしかなかったらと想像した時、まさに恐怖でしたね。
階段は恐い
最後に、これは難しいと感じたのは、階段です。
基本的にエレベーターを使っていたのですが、郵便局で一階の入り口から入る場所にわずか2~3段だけの階段があって、その上り下りすら苦労しました。
たった2~3段の階段ですよ。杖の進め方が難しい。段差があるから杖を扱いにくいのです。
もちろん転びやすくなりますから特に注意が必要ですが、もし仮にフロアー間を移動するような一般の階段なら、松葉杖は使うべきではありませんね。(危なすぎです)
松葉杖を初めて使う人へ
以上、松葉杖を初めて使った経験を書いてみました。
私の場合は実質上は一日の使用でしたので、その苦労は短かったのですが、実体験なのでリアルさが少しでも伝わったのではないかと思います。
初めて使う人にとって、少しでも参考になればと思います。
松葉杖を使う人は、基本的に怪我をしている訳ですから、万能な対策やうまい話なんてあるわけありません。
しかし、敢えて使う際のポイントだけを言えば、
- 初めは無理をせず徐々に慣れるようにする
- いたずらに遠慮せず、周りの人に助けを求める
- 可能な限り不要不急の外出(歩行)は避ける
- 雨の時には傘を使わない(レインウェア等を使う)
- 歩行時に松葉杖に触れるタイプのカバンは使わない
というところでしょう。
実際に、松葉杖を使わざるを得ない状況にならないと実感は持てないものですが、この記事を参考に、使っている様子をイメージしてみて下さい。
少しでも使い勝手の良い案が浮かんでくることでしょう。