スイミングスクールのコーチから、選手コースで励む子供たちは、どうすれば大きく上達できるのかについて話を聞く機会がありました。
その結果、群を抜いたレベル向上を果たせるかどうかには、いくつかポイントがあることが分かりました。
ここでは、トップレベルを目指す子供が泳力向上をはかるために必要な要素をまとめることにしました。
目次
コーチから話を聞くまでの経緯
以前、水泳に励む子供の上達の違いは何によるのかについて、
「水泳のコーチに聞いた伸びる子供とそうでない子供の決定的な違い」
という記事を書きました。
これは、子供が通うスイミングスクールの担当コーチから話を聞く機会を得たことがキッカケで書いた記事で、初級・中級・上級を問わず、伸びる子供とそうでない子供の決定的な違いについてまとめています。
今回、話を伺ったのもこの時と同じコーチで、最上級の選手コースを担当していて、ジュニアオリンピックに選手を送り出した実績も持っている方です。
我が子の泳力向上を願って直接コーチに問いかけたことがキッカケでしたが、結果として「全国でも通用する選手になるために必要な要素」について知ることができました。
以下、この時の話をもとに、トップレベルを目指す子供に必要な要素をまとめます。
具体的に教えて貰ったポイント
今回そのコーチから聞いた話は、多岐に渡りましたが、要点を整理して記載します。
重要なポイントが分かるように項目に分け、なるべくコーチの生の声を活かせるような形にしました。
練習の質を上げて行く
まず、真っ先にコーチが言ったことは、
「トップレベルを目指すなら、練習の質を上げていかなければいけない。」
「練習を単にこなして行く、泳ぐサイクルを漠然と繰り返して行くだけでは、いつかは成長が止まってしまう。練習の中身を濃くしてこそ、成長していける。」
とのこと。
これは水泳に限ったことではなく、どんな分野でも量と共に質が大切なことを意味しています。
従って、ある意味では当たり前すぎることですが、実際に子供がなかなかできないからこそ”このひと言”があったと思います。
子供の水泳とは言え、選手コースなどの最上級のコースだと、練習は週6日とか時には週7日の場合すらあります。
つまり、水泳の練習に費やせる時間は既に最大で、時間的には限界があるということです。
子供は勉強もありますから、時間を更に確保するのはほぼ無理ってことですね。
量が限られる以上、差をつけるならば質を求めざるを得ないということです。
水泳の練習では、泳ぐサイクル(繰り返しレーンを泳ぐ時間的間隔)がありますが、練習の質が低いとサイクルをこなすだけのような薄いトレーニングになってしまうのです。
現実にレベルアップをはかるためには、中身の濃い練習こそが大切なのですね。
一回一回の練習を充実させる
さて、続けてコーチが言うには
「質の高い練習、中身の濃い練習ができていると、練習を終えた時に”やり切った”という感覚を味わえる。」
「練習後に、やり切ったという思いが湧かず、単に”練習が終わった”というだけの感覚しかないのであれば、質の高い練習ができているとは言えない。”やり切った”という感覚を毎回の練習で味わえてこそ、本当に充実した練習を積み重ねることができていると言える。」
改めて、このコーチの話には、妙に説得力があると感じました。
言っていることは特別なことではないのですが、「当たり前のことができていない」ところに本質があると感じてなりませんでした。
例えば、水泳に熱心に励む子なら
・泳ぎにおける課題
・練習で力を入れるべき点
・改善すべき泳ぎ方
・長短期的に目指すタイム
などは、ある程度分かっているハズです。
ところが、これらを一回一回の練習で確実に意識しながらレッスンに励めているかというと、ほとんどの子供はノーだそうです。
これについて、コーチに言わせれば、
「明らかに伸びる子は、毎回のレッスンでこうした課題などをしっかり意識しながら練習ができている。だから、確実に上達して他の子供とは格が違ってくる。」
とのこと。
毎回の練習で、”やり切った感”を味わう。
平凡なことのようでありながら、非常に重要なことだと、気づかされた思いでした。
指導された内容を練習に反映できるかどうかがカギ
では、練習にどのように取り組むべきか。
その子に当てはまる課題や改善点は、個人によって違います。
従って、どのように練習に取り組むべきかはその人によって変わってきます。
そのコーチが言うには、
「改善して行くべき点は、子供たち全員に対して指導している。また、個人の課題や改善すべき点があれば、そのつど本人に教えている。」
「それは、誰に対しても同じで、その本人が何を変えるべきか、どう取り組むべきかは日ごろの練習で全て伝えている。上達に必要なことは全て指導している。」
「しかし問題は、本人が言われたことをどこまで真剣に捉えて、それを練習に反映させられるかどうかだ。実際にそれができる子は、あまりいない。」
と。
要するに、上達に必要な指導はコーチから教わっていて本人も分かっているハズでも、それを実践に結び付け切れていないということ。
コーチの話によれば、多くの選手は結局この域を出ることがなく、上達が頭打ちになってしまうそうです。
聞いていて、核心部分をついているなぁと痛感しました。
気付かないところで練習の質を落としている
そして、更にコーチが言うには、
「どの選手も、現在の泳力に至るまでに比較的レベルの低い練習をしてきている。つまり、初級から中級の時代があって、今の練習よりかなり楽な練習をしてきた過去があるが、本人が意識して練習の質を上げないと、どうしてもそんな過去の低レベルの練習に囚われた内容になってしまう。」
「それが結果として、本人の上達を妨げる要因になる。”慣れ”(過去の練習への)というものは、良くもあり悪くもある。」
聞いていて、やはりなるほどの思いがしました。
意識的に練習の質を上げないと、過去の楽な練習の仕方を無意識のうちに踏襲してしまうのですね。
過去と比べてレベルは上がっているから、今までと同じレベルの練習ではいけないのは理の当然。
知らず知らずのうちに自然と練習の質を落としてしまうのは、とても勿体ないことだと感じました。
あまり上達しない子は甘んじる姿がある
そして続けてコーチが言うには、
「水泳の練習はサイクルの繰り返しであるが、子供自身が今のサイクルにどこかで満足し、それに甘んじてしまうとなかなか成長しない。」
「自分よりサイクルの短い(速い)レーンで練習しているチームメートに追いつこうとする強い向上心が大切。」
「頑張れば届くサイクルでも、どこかで加減をしてしまい、楽な方に逃げてしまう姿勢だとなかなか速くはなれない。」
と。
話を聞いていて、厳しい内容だと感じましたが、さすがにトップレベルを想定した話だけあるなと思いました。
大人でも、自分にどこまで厳しくできるかを問われることは多くありますが、子供でも同じ。
自分に厳しければ成長する。自分に甘ければ成長しない。
まだ人間としても未熟な子供だとしても、トップレベルを目指すならば、「自分への厳しさ」が求められて当然なのですね。
まとめ~受け取る側の子供の姿勢が大切
今回コーチから色々な話を聞いて、やはり最上級の選手レベルになると、話の内容もレベルが高いと感じました。
改めて、子供に求められる要点をまとめると
・練習の質を上げる
・毎回の練習を充実させる
・受けた指導を練習に反映させる
・過去の練習を踏襲しない
・現状に甘んじない
の5点です。
どの内容も、いざ励もうとしても、なかなかできそうでできないことが多いと感じます。
逆に言えば、なかなかできないからこそ、それができた時には周りの選手とは一回りも二回りも差がつくと言えるでしょう。
また、強く感じたことは、ここで挙げたいずれの要点(ポイント)においても、全ては本人に高い意識があればこそだということです。
この”高い意識”については、初級でも中級でも泳ぎが伸びる子の決定的な違いとして、以前このコーチが話してくれたことでもあります。
そして、水泳を上達させようとする場合、テクニックや技法、練習方法と言った具体的な練習内容よりも、どのように取り組むかの方がはるかに重要なのだと痛感させられました。
実際に、話を聞いていてテクニカルな話は全くと言ってよいほど出て来ませんでした。
考えてみれば勉強も同じです。小中学校では皆んな同じ授業を受けていますが、学習の成果は人により異なり学力にも差が出ます。
その差は何から生じるかと言えば、授業に対する姿勢でしょう。そして、その姿勢も意識から来ると言えます。
これと同じく、水泳で同じ指導を受けていても、泳力に差が出るのも当然。取り組む姿勢や意識・心意気などが異なるからです。
だから、最後は本人のやる気なのでしょうが、もし子供の水泳の上達を願うなら、親としては上記で挙げた5つのポイントを克服できるような支援が大切と言えるでしょう。
具体的には、
・どうすれば練習の質を上げて行けるかを子供に意識させる
・一回一回の練習が充実できるように子供を励ます
・コーチからの指導を練習に反映できるような支援をする
・コーチの指導を認識できるような動機づけをする
・本人の甘えを排除できるような助言をする
と言ったところでしょう。
とは言え、最後は本人のやる気。
だからこそ、親はサポートに徹して、やる気を継続させることに努めることが重要ですね。