ある公園の敷地内にある、送電線の鉄塔を何気なく見ていたら、子供達がふざけて鉄塔に登ったりしないように、鉄塔のまわりに柵がありました。また、子供でも読めるようにひらがなで「てっとうにのぼってはいけません」と、鉄塔の四方にそれぞれ注意書きが貼られていました。
更に、その上の四方の鉄柱には、放射状に何本もの金属の棒が防止策として取り付けられていて、人が登って通過できないような工夫がされていました。
「なるほど、興味本位に登ろうとする人がいることを想定して、ここまでいつくもの防止策を採っているのか」と思いながら見ていました。
しかし、よく見てみると、点検作業員用に作られている、手足を掛けて登れる通路にも、その防止策が採られていて、作業員すら通れない状態になっていることに気付いたのでした。
「送電線などのような設備は、必ず点検をするハズで、そのために用意された作業員用の通路なのに、それが通れない状態であれば、作業員はいったいどの様に上に登っているのだろう?」と素朴な疑問が湧いて来たのでした。
実際に更に上を見上げてみると、作業員用の通路の上には、作業員が留まることができるようなスペースがあり、点検などが容易にできるような構造になっていることが分かりました。
「作業員は、わざわざ、はしご車みたいな車両を乗り入れるのだろうか?」
「いや、そんな大げさなことをするのは不自然だ。」
「防止策のある上まで、はしごを掛けるのだろうか?」
「そんな方法は、どこか不自然で無理がある。」
「危険を覚悟で無理をすれば防止策を超えられそうだが、そうするのだろうか?」
「作業員にそんな危険なことはさせないだろう。」
様々な推測が頭に浮かび、鉄塔を見上げながら思索すること15分。注意深く鉄塔を見ていた末に、遂に疑問の答えに達したのでした。
実は、四方の鉄柱ごとにある防止策のうち、作業員の通路のある箇所だけ、他の3か所と比べて、取り付け位置が低くなっていることに気付いたのでした。
そこで、防止策の取付状況を見ると、鉄柱に対してネジとナットを用いて締め付けて留める構造になっていて、工具を持っていれば、防止策を外せることが分かりました。
「作業員は作業の時に防止策を外し、作業終了後に元に戻したため、防止策の取付位置の高さが、微妙に他の3か所と異なったのだ」との結論を導き出せたのでした。(くれぐれも登らないで下さい)
ちょっとした素朴な疑問でしたが、物事はよく観測し、よく分析・思索すれば、分かることもあるものだと思いうと同時に、身の回りにある、ちょっとした不思議なものは、いい頭の体操になるなと感じました。