子供を公園で遊ばせていたある日、公園の水道で手を洗った際に目に入ったのが、排水場所にある鉄格子のクサリ(鎖)でした。
このクサリは、鉄格子とコンクリートに打ち込まれたアンカーボルトとを繋いでいるもので、この種の野外にある水道では、以前からよく見かけているものでした。
今まで意識したことのないクサリでしたが、改めて考えると何の為にあるのかと、ふと思ったのでした。
何のためのクサリか
感覚的には、こんなものは無くても、排水口としては何の問題もなく、敢えて考えられるとすれば、落下防止か持ち出し防止でした。
落下防止だとすると、排水口の深さは50~60センチで、鉄格子の大きさが40センチ四方なので、意味がないことがわかります。
では、持ち出し防止って事になるわけですが、イタズラ防止だとすると、さすがにこんな重たい物を持ち出すなんて考えられないので、あるとすればやはり、盗難防止ですね。
盗難防止策として、わざわざこのような防止策をするってことは、鉄格子にそれなりの価値があるってことになるわけですが、単なる鉄の塊に、そんな価値があるのかと気になったわけです。そこで、この鉄の塊にどれくらいの価値があるのか、ちょっと試算してみました。
鉄格子の重量は?
まず、この鉄格子の重量がどれくらいかですが、約40センチ四方なので、見た目の面積としては
40×40=1600平方センチメートル
で、格子状のくりぬかれている面積をその半分と見積もると、面積は
1600×0.5=800平方センチメートル
になります。鉄格子の厚みは、見たところでは2センチ位でしたので、鉄としての体積は
800×2=1600立方センチメートル
ってことになります。室温における鉄の密度は、7.874[g/立方センチメートル]なので、重量としては
1600×7.874=12598.4[g]=12.5984[kg]
ってことになります。とりあえず分かりやすくするために、鉄格子の重量としては12.6kgだと考えておきましょう。
鉄格子の価値は?
鉄くずの買取相場を調べてみると、時価で約27[円/kg]なので、このレートで計算すると
12.6[kg]×27[円/kg]=340.2[円]
ってことになります。これだけ見ると、「たった340円のために犯罪を犯す人なんているの」って感じがしてならないので、もっと調べていきました。
仮にもし対象が、スクラップ銅だとしたら、買取相場は700[円/kg]なので、さすがにこれくらいの相場(鉄くずの26倍)だと、盗難が起きるのも無理はないと、かつて銅線の盗難事件をニュースでやっていたのを思い出しました。
更に、調べて行くと、「鉄くず」ではなくて「鉄板」の場合などは、買取相場が少し高くなっていて、80~95[円/kg]だということが分かりました。
「そうか、同じ鉄でも、純度や処理の手間などで、それなりに相場は変わるのか」と、なるほど、という感じですが、仮に買取価格が80[円/kg]だとすると、この鉄格子は
12.6[kg]×80[円/kg]=1008[円]
となって、1枚1000円の価値があるということになります。
以前ニュースでやっていた、大規模な電源設備から、銅ケーブルが大量に盗まれた事件では、設備内に侵入して、大量のケーブルを切除して運び出していたということです。
これに対し、公園にあるような鉄格子の場合は、特別な敷地内に侵入する必要はありませんし、仮にクサリが無ければ、ただ持ち去るだけで済んでしまうので、例え、買取相場が銅に比べて低くても、犯罪者にとっては狙い目となることが理解できました。
クサリが犯罪を防止する、重要な役割を担っていることに、なっとくでした。