美味しいイチゴを家庭でも育ててみたいと思っている人の中には、
「種から育てるなんて難しいだろう」
とか、
「わざわざ苗を買ってまでは…」
などと考える 人も多いと思います。
実は、方法さえ知っていれば、イチゴを種から育てることは決して難しくなく、どんな家庭でも簡単に作れるものなのです。
種から育てる長所
イチゴを育てたいなら、「苗を入手して育てればいい」と考える人もいることでしょう。
しかし、わざわざ種から育てるのにはメリットがあります。主なメリットをあげると、
(1)品種を選べる
(2)苗を買う必要がない
の2点です。
品種を選べるというのは、「とちおとめ」とか「さがほのか」など、自分の好みの品種を選びやすいという意味ですが、何よりも、種を採取する元となるイチゴを自分で厳選することができます。
簡単に言えば、血統を自分で選べるということです。
市販されているイチゴの苗の場合、元のイチゴがどのようであったかは分かりません。
しかし、種から育てる場合は、実際に自分自身で実りの状態や味わいなどを確かめたイチゴを選べます。
そして、苗を買う必要がないというのは、文字通り、わざわざ購入する必要がなく、経済的な負担がないと言う意味です。
自分が食べるイチゴの種をそのまま利用すればよいだけだからです。
イチゴは、つるが伸びて繁殖して行きますから、時間を掛けて育てれば増やすことはできます。しかし、増殖するのにはそれなりに時間を要します。
苗を購入すると、一株当たりはそれほど高価なものではありませんが、何株もの苗を購入するとなると、その金額はバカになりません。
このように、イチゴを種から育てるのには、品種を選べることと、苗を買う必要がないとのメリットがあるのです。
これらの他にも、育てる楽しみを味わえるなどのメリットもありますね。
育てるのは難しくない
さて、イチゴの種は、果実の周りについている小さなツブツブですが、これらの種をそのまま土に植えたらうまく育つでしょうか。その答えは「ノー」です。
「イチゴは種からは育てられない」と考える人が多いのも当然で、そのまま種をまいただけではうまく育ってくれません。
では、種から育てるのは難しいのでしょうか。決してそんなことはありません。一般の家庭で、誰しもがごくごく普通に育てられるのです。
イチゴは生命力があまりありませんから、たとえ発芽しても周りにカビや雑草があればすぐに負けてしまい、うまく育ちません。
しかし、生命力がある程度そなわる大きさに育つまで、しっかりケアしてあげれば、自然と育って行くのです。
換言すれば、ある程度の大きさに育つまでは細かくケアをしてあげる必要がありますが、ある程度の大きさまで育てば、あとは普通の植物のように育てることができます。
具体的な方法
では以下、イチゴを種から育てる具体的な方法を説明します。
ここでは、苗がある程度の大きさになるまでの育て方を解説します。
種をまく準備
まずは育てるイチゴを選ぶところからです。美味しいイチゴは、育て方にもよりますが、品種血統も大切です。
実際に食べて美味しいと感じた、実のなり方がしっかりとしているイチゴを選ぶのが良いと言えます。
最初に植える場所は、イチゴが販売される時のパック(透明のプラ容器)を利用するのが良いでしょう。
もちろん普通のお皿などでも構いません。いずれにしても、比較的フラットな容器に、脱脂綿を平らにして敷き詰め、その中に充分な水を満たします。
綿に吸収しきれない水がわずかに残るくらいがちょうど良いでしょう。
もし脱脂綿がなければ、その代わりに吸水性の高い素材の紙などを利用してもいいでしょう。
種を採取
植える場所が準備できたら、イチゴから一粒ずつ小さいピンセットなどを用いて種を採り、脱脂綿の上に置いて行きます。
この際、種に力が加わらないように、果肉の周りからピンせットで浮き出すように採るのがコツです。
そして、可能な限り、果肉が残らないように取り除くのが望ましいです。
果肉が残ると、そこからカビが生えやすくなり、イチゴの育成の邪魔になるからです。
撒く種の数は、必要な苗の株数だけで十分ですが、育てるのに自信がない人は、後から間引くことはいくらでもできますから、多めに撒いても構いません。
適切な大きさのピンセットが無い場合は、フォークやつま楊枝などの先端をうまく使って、果肉から種を浮かび上がらせて採り、できるだけ果肉を取り除いてから脱脂綿の上に置けば良いでしょう。
どんな道具を使う場合でも、種に負荷を掛けないようにして、果肉を可能な限り取り除くことが大切です。
双葉が揃ったら植え替えの時期
種をまき終わったら、そのまま室内に置き、発芽するまで待ちます。状況や季節にもよりますが、2週間くらいで目が出だします。(撒く季節は4月頃がよい)
それまでの間、大切なことは、脱脂綿が常に水で充分濡れている状態(撒いた時の状態)を保つようにします。
間違っても乾くことのないように注意が必要です。
その後、発芽してもしばらくはそのままの状態で育て、植えた種の双葉が開き、その双葉が広がるまで待ちます。
双葉が十分に開いて、ある程度の大きさになれば、植え替えの時期となりますので、植え替え先の準備をします。
この段階では、まだまだ生命力が弱く、植木鉢やプランター或いは地面などに直接植えることはしません。
植え替え先の準備
もう少し大きく育つまでの暫定的な入れ物に植え替えて育てます。
その入れ物には、やはりイチゴパックを使うのが有用です。なければ、一般に惣菜などが売られているような食品用プレートを使うと良いでしょう。
使う入れ物の中には、しっかりと煮沸・消毒した土を入れます。
普通の土をそのまま用いると、土の中にある菌や雑草の種などによりイチゴの成長が妨げられてしまうからです。
庭などにある普通の土を鍋に入れて、水を加えて少しドロドロの状態にして火にかけ、沸騰させれば完了です。
土の煮沸には調理用の鍋を使って火にかけるのが一般的ですが、普通の鍋を用いるのに抵抗がある人は、使い捨て用のアルミ製の鍋(コンビニ販売の鍋用のパッケージ等)を使うと良いでしょう。
火にかける代わりに電子レンジをうまく利用して消毒するのもひとつの方法です。電子レンジ対応可能な総菜用プラパックなどを使えば、汚れもあまり気になりませんから便利です。
煮沸・消毒が終わったら、土をそのまま植え替え先の入れ物に移せば、植え替えの準備は完了です。
後は、双葉が広がる小さなイチゴの苗の茎の部分をひとつひとつ丁寧にピンセットなどでつまみながら、移して行くだけです。
その際、注意すべきことは、小さな苗を強くはさんで傷つけないようにすることです。まだまだ小さな苗ですからとてもデリケートなのです。
移し替える際は、苗と苗の間隔は少しゆとりを持っておいた方がいいです。
ある程度の大きさになった後、更に植え替えをしますので、間隔が狭すぎると苗同士がぶつかってしまうからです。
全ての苗を移し替えたら、容器の底にいくつも小さな穴をあけ、その容器をひと回り大きな別な容器の中に入れます。(容器の中に、容器を入れる)
そして、外の容器にたっぷりと水を入れ、中の容器の土が常に十分な水で満たされている状態にしておきます。
あとはそのまま部屋の中(窓際がよい)に置いて、更に大きくなるのを待ちます。
その際は、外の容器の中がいつも十分な水で満たされる状態を保ち、中の容器の土の状態が少し柔らかさを保てるくらい水分で満たされた状態を維持することが大事です。
最後の植え替え
育ってくると、双葉以外にイチゴ特有のギザギザのある葉(本葉)が出てきます。
これくらいに育てば、気候が温暖な場合は、ベランダやテラスに出してもいいでしょう。
本葉が2~3枚ほど出て来て、ある程度の大きさになったら最後の植え替え時期になります。それまでは、少し時間が掛かりますが辛抱強く待ちましょう。
もし、それまでの間に、雑草などの芽が出てきたら、ピンセットなどで取り除きましょう。芽が小さい段階での雑草は強敵です。
植え替え時期を迎えたら、あとは普通に鉢やプランター、地面などに植え替えればいいだけです。
その際に注意することは、通常の植木などと同じで、根っこを傷つけないことです。土と一緒に植え替えるのが最善です。
もちろん、植え替え先の鉢やプランター、地面などは予め雑草を取り除いておくなどの処置は大切です。
この植え替え作業が終われば、あとは苗から育てる方法と変わりません。
ここでは、種からの育て方を解説するのが目的ですから、その後の育て方については、一般のイチゴの育て方のノウハウなどを参考にして貰えればいいと思います。