カネカの炎上は、時間が経過したこともあって、今ではだいぶ落ち着きましたが、この炎上を見ていて人それぞれ色々なことを感じたと思います。
この炎上で最も着目されたことは、パタニティハラスメントではないかということで、実際にネット上でも様々なコメントが飛び交っていました。
そんな中、私が強く感じたことは、炎上に対する企業の姿勢には、その企業が伸びて行くのか低迷して行くのか、その姿が表れるものだということです。
カネカの対応は
カネカの炎上とは、カネカの男性社員が、育児休暇を取得し終わった直後に転動を言い渡されて、結局、退職せざるを得なかったことをその妻がSNS に投稿したことから起きました。
その退職が、男性の育児休暇を阻むパタハラ(バタニティハラスメント)ではないかという議論に発展して炎上しました。
事の真相は別として、今回の炎上に対してカネカが取った対応について、みなさんはどのように感じられたでしょうか。
「素晴らしい対応をした」との感想を抱いた人は、まずいないのではないでしょうか。
どちらかというと、「何とお粗末な対応なのか」とか「的外れもいいところ」と言った思いを抱いた方が大多数でしょう。
少なくても、 育児に積極的に参加しようと思っている男性にとっては、カネカは全く魅力のない企業と映ったに違いありません。
カネカの対応で、一番目に付いた点は、弁護士のもと協議して、法的に問題無しとの見解を出していることですが、これについては、「物事を正しく見られていない」、「自社の置かれている状況を、客観的に把握できていない」との印象を強く持ちました。
世間が騒いで着目しているのは、法的に合法かどうかではなく、 企業の体質としてどうなのか、育児休暇制度に取り組む姿勢としてどうなのかという点ではないでしょうか。
それに対して、法的な合法・違法を中心に論じている点を見る時、「自社の状況をも把握できない企業なのか」との思いを抱きます。
そして、「その程度の低い見識を持つ企業が、昨今の不況下を乗り越えられる訳がない、低迷するのも当たり前だ」と思わざるを得ませんでした。
対応に現れる企業体質
そして、改めてこのカネカの対応の姿を考察したところ、低迷する企業の特長がよく表れていると痛感しました。
以前、不況下で低迷を続ける企業の共通の特徴とは?という記事に於いて、不況下で低迷する企業の特長には「形から入る」「周りの真似をする」「古いことを止められない」「経営者が自ら身を削らない」の4点がある旨を述べたことがありました。
今回のカネカの対応の姿に、それらの特徴がにじみ出ていました。
形から入る
まず、「形から入る」についてですが、カネカが男性の育児休暇を取得できる制度を導入して、その制度を企業のウリのひとつにもして来たわけですが、その育児休暇制度そのものが「形から入った」ものにすぎなかったということです。
女性が社会に進出して、男性が積極的に育児に参加していくようになって行くのは時代の流れでもありますから、その流れに乗って行こうとするのは企業としては自然なことです。
まして、その流れに乗れば、「時代の先を行く企業」として企業イメージを高め、それがその企業の利益にも結びつくことですから、むしろ当然とも言えます。
もし、カネカが魅力ある企業にするために、形だけではなく、本気で育児休暇制度の充実を図っていたのなら、「男性の育児休暇取得については、これだけ前向きに取り組んでいる」という内容を自然と、前面にアピールしたコメントになっていたハズです。
つまり、炎上をむしろ企業イメージをあげるチャンスととらえることができていたハズです。しかし、現実は「形から入った」だけの育児休暇制度にすぎなかったから、ボロが出たと言えます。
周りの真似をする
次に「周りの真似をする」についてですが、カネカのコメントを見て、男性の育児休暇制度について、何か特質的なものを感じた人がいるでしょうか。
何か、「在り来たりのことしか言っていない」、「育児休暇制度に優れた点を何ひとつ感じられない内容になっていた」と、誰しも感じたのではないでしょうか。
それこそが、他の企業がやっている真似、即ち「周りの真似をする」姿に他ならず、独自性がなく、何ら魅力も感じない、どこの企業でも単に看板を掲げているだけの育児休暇制度に過ぎません。
「形から入った」のと同じことで、「周りの真似をした」から、 育児休暇制度についてアピールできる点がなく、 あのコメントとなったと見るべきでしょう。
独自で自負できる優れた育児制度があれば、間違ってもあのようなコメントにはなりません。
古いことを止められない
そして、「古いことを止められない」についてですが、カネカのコメントを見聞きして、果たして「新しい何か」を感じた人がいるでしょうか。
簡単に言ってしまえば、世間の批判を浴びた企業が、在り来たりの釈明をした姿以外の何ものでもありません。
そして、釈明の内容において触れていた、転動の制度にしても、人事のあり方にしても、休暇の取得に関しても、従来どこの企業にもある、古い制度がそのまま残っている姿が露見しただけです。
古いままの体制で、新しいことに取り組めていない、他の真似をして形だけ整えるという、低迷する企業の姿そのままをさらけ出したという感じがします。
言い方を換えれば「この企業は何かが違うぞ。凄いなぁ」と感じさせる点が何もないのです。
もちろん、育児休暇等に対する姿勢を見ただけではその企業そのものは分からないという見方もあるかと思います。
しかし、企業の体質というのは一つの制度を見ただけでもその全体像が現れるものです。少なくても時代を先取りして最先端を行こうという気概を感じることは全くできませんでした。
経営者が自ら身を削らない
最後に「経営者が自ら身を削らない」についてですが、カネカの対応を見て、保身の姿を感じました。
と言うのも、経営者が最も恐れることの一つに、法的な合法性・違法性がありますが、カネカの対応が、法的にどうかと言う点に論点が絞られていた点に、保身の姿を見たのです。
もちろん、法的に合法であることは大切ですし、違法があれば問題です。
しかし、今回の炎上は法的なことよりも企業体質や姿勢などが問われているにも関わらず、法的な見解に偏ってしまったのは、経営者の保身の強さが出てしまったのではないかと思うのです。
以上、低迷する企業の4つの特長を軸に、カネカの対応を述べて来ました。いずれの特長も、伸びている企業や成長している会社などが同じ立場に立たされた場合、果たしてカネカと同じような対応をするかどうかを考えれば、よく分かるのではないでしょうか。
伸びている企業を想像してみると、カネカが古い体質から抜け出せず、成長できずに低迷する企業なのだろうと思えてならないのです。みなさんはどのようにお感じでしょうか。