日本が後進国へ転落する理由を数値で見る(10)恥ずべき労働生産性

ソフトバンクグループの孫社長が昨年発言した「日本は後進国」なる旨を受けて、後進国と呼ぶべきかどうかを数値で見てきました。

日本を後進国と呼ぶべきか、労働生産性を見てみる

前回(第9回)は、失業者への支援に関して見てきましたが、今回は労働生産性についてその数値を追って行きたいと思います。

労働生産性とは

労働生産性について論じられたのは、日本生産性本部が公開している情報に基づいたもので、「日本の労働生産性は先進各国で最下位(日本生産性本部)」という内容でした。

この、労働生産性がどのようなものかについては、公益財団法人日本生産性本部が公開していますので、その情報を見て行きます。

実際の詳細データは、労働生産性本部で公開していますので、更に興味のある方はそちらを見て下さい。

さて、労働生産性本部が公開している労働生産性のうち主なものには以下の2つがあります。

(1)就業者1人当たり労働生産性
(2)時間当たり労働生産性

そして、これらの算出方法は、以下のようになっています。

(1)GDP÷就業者数
(2)GDP÷(就業者数×労働時間)

簡単に言えば、それぞれ

GDP(国内総生産)を従業者一人当たりにするといくらになるか
GDP(国内総生産)を労働時間当たりにするといくらになるか

を算出した数値で、どれだけ効率的な労働生産活動がされているかを表します。

ちなみに、GDPはドル換算で国際比較していますが、実質的な比較を行うために時価為替レートではなく、購買力平均換算といわれるレートで計算されています。

また、労働生産本部の公開データはOECDの情報をもとに出していますが、補正のため諸データも利用されています。

では、具体的に見て行きましょう。

一人当たりの労働生産性

G7における比較

まず、一人当たりの労働生産性(2018年)ですが、G7の数値を見ると下記の通りです。(単位は米ドルです)

米  国  132,127
フランス  111,988
イタリア  108,890
ド イ ツ   106,315
カ ナ ダ     95,553
英  国    93,482
日  本    81,258

これをグラフにして比較すると、下図のようになっています。

G7の一人当たりの労働生産性の比較

確かに、孫社長の言う「先進各国で最下位」の通りですね。

日本のGDPは依然、世界第3位ですが、労働生産性となると先進7か国の中では一番悪いのですね。

数値を米国と比較した場合、日本はその61%(=81258÷132127)ですから、生産性は決して良いとは言えません。

単純な言い方をすれば、「日本人が10人働いて生み出す生産量と、米国人が6人働いて生み出す生産量は等しい」という見方が出来る訳ですから、生産性が低いと言わざるを得ません。

この数値を真摯に受け止める必要があるのではないかと感じます。

OECDにおける比較

では、気になるところですので、OECD各国と比較してみましょう。

下記がOECD加盟36か国の、一人当たりの労働生産性を比較したグラフ(2018年)です。

一人当たりの労働生産性のOECD加盟国との比較

如何でしょうか。日本は、36か国中で21位です。

しかも、グラフ右端に示したOECDの平均値(98,921)と比較しても下回っています。偏差値なら50を切っているってことです。

先進国をうたっていながらOECDの平均以下ってことは、恥ずべきことではないでしょうか。

日本は世界第3位のGDPですから、それに相応しい労働生産性であるべきだと思います。

これでは給料がなかなか上がらない、景気が悪いというのも頷ける気がします。

近年における一人当たりの労働生産性の変化

さてここで、近年における日本の一人当たりの労働生産性の変化を見て行きましょう。

比較のためにOECD加盟国の平均値も併記します。数値のない年は、データが無いからです。

また、年によって統計国の数が違いますので、OECD加盟国の平均値に影響を与えている面があるのは頭に入れておきましょう。

近年における日本の一人当たりの労働生産性の変化

どうでしょうか。数値的には確実に増加傾向にあります。

しかし、ここで着目すべき点は、

  • 常にOECD加盟国の平均以下を推移
  • 近年においてはOECD加盟国の伸び率に比べて日本の伸び率は低い
  • ここ数年間、日本の数値は横ばいに近い

です。

低い生産活動に終始して来て、数十年にも渡ってそれを改善できていないことが、このグラフからよく分かります。

GDPの伸びが横ばいとなったのは1990年代からですが、それでも労働生産性そのものは、その後も伸び続けて来ています。

これは様々な企業努力によって効率化が進められたことなどがその理由にあるのでしょう。

GDPそのものが伸びなくなって約30年。

遂に労働生産性の向上も横ばいになって来てしまった現状を思うと、日本の将来にとても不安を覚えます。

ちなみに、ここではデータを取り上げていませんが、G7(先進国主要7か国)における順位を見た場合、1994年以降、日本はずっと7か国中7番目(最下位)のままでいます。

時間当たりの労働生産性

さて次に、時間当たりの労働生産性(2018年)を見てみましょう。

G7における比較

まず、G7における比較です。

下は生のデータです。(単位は米ドルです)

米  国  74.7
ド イ ツ   72.9
フランス  72.2
英  国  60.6
イタリア  57.9
カ ナ ダ   54.8
日  本  46.8

では、これをグラフで比較してみましょう。

G7の時間当たりの労働生産性の比較

これも、孫社長の言う「先進各国で最下位」の通りですね。

従業者一人当たりの労働生産性と同様に、米国と比較した場合の比率は62%余になります。

時間当たりの労働生産性も一人当たりの労働生産性とあまり差はありませんから、数値として低いことに変わりありません。

上記の数値から、日本人が一時間働いて46.8ドルの生産量を生み出すのに対して、米国人が一時間働けば74.7ドルを生み出すと考えれば、差の大きさをより実感できるのではないでしょうか。

また、見方を変えると、これは日本人が1時間働いて生み出す生産量は、米国人が37~38分(1時間の62%)働いて生み出す生産量に相当すると言えます。

もし仮にこの数値の比率がそのまま給料に反映されるとすれば、米国で時給747円の仕事は、日本だと時給468円になるってことですから恐ろしいですね。(もちろん、実際はそんな単純計算にはなりませんが…)

OECDにおける比較

では続いて、OECD加盟国における国際比較をグラフで見てみましょう。

OECD加盟国の一人当たりの労働生産性の比較

これも36か国中で21位です。しかもOECD加盟国の平均(56.1)と比べて、かなり低いことが分かります。悲しいですね。

自国を先進国と呼ぶことに対しておこがましい思いすら湧いて来ます。

胸を張って「先進国・日本」と言えないですね。

近年における時間当たりの労働生産性の変化

では、ここで先ほどと同じく、時間当たりの労働生産性についても最近の変化を見てみましょう。

上記と同様に、比較のためにOECD加盟国の平均値も併記します。

また、数値のない年はデータが無いことや、年によって統計国の数が違うことも一人当たりの労働生産性の場合と同じです。

近年における日本の時間当たりの労働生産性の変化

如何でしょうか。

全体の傾向としては、一人あたりの労働生産性の場合と同じ感じで、数値的に増加傾向にあるものの、憂慮すべきことがあります。

それは、常にOECD加盟国の平均以下を推移していて、近年においては伸び率が鈍化している点です。

労働生産性という数値は、多国籍企業の誘致や税制などが大きく影響するほか、産業構造や国民性、生活習慣など細かな要素が微妙に影響するでしょう。

従って、上記の数値そのものだけを見て、直ちにそれを良し悪しの判断にするべきではないと思います。

だからと言って、労働生産性の数値が低いことに着目してその問題点を分析して、向上のための改善を図ろうとして来たようにはとうてい思えません。

低迷している日本経済と、この数値が低くなっていることに強い相関関係を感じます。

まとめ

以上、日本の労働生産性について、労働生産性本部の情報をもとに、その数値を見てきました。

これらを簡単にまとめると、以下の通りです。

  • 日本の労働生産性は、先進7か国の中で最も低い
  • 日本の労働生産性はOECD各国と比較しても低い方に属す
  • 就業者1人当たり、時間当たりの労働生産性の傾向に大差はない
  • 労働生産性の低さは、近年に始まったことではない

確かに、孫社長の言う通り、労働生産性はG7中で最下位でした。

また、OECD加盟国などと比較しても全体的に低い方に属しています。

そして、労働生産性が低い傾向は近年にそうなったという訳ではなく、経済が低迷する以前から低い傾向にありました。

労働生産性の数値の変動には様々な要因がからむようですから、低いから直ちに悪いと言える訳ではないようです。

しかし、労働生産性の低さは国の経済力を表すひとつの数値として捉えるべきでしょうから、数十年にも渡って改善できていないことに問題があると感じます。

特に、国家としての長期的な経済戦略に欠けた日本が自ら招いている結果と思えてなりません。

労働生産性本部が公開している情報には、更に細かなデータがあり興味深いものがあります。

特に、産業分野別に出している数値がありますが、情報通信業の労働生産性において、米国、ドイツ、フランスが伸びているのに対して、日本が横ばいとなっていることは注目すべきだと感じました。(詳細は労働生産性本部の情報参照)

ここに、孫社長が伝えたかった「日本はIT後進国」、「日本はAI後進国」であることの一端が表れている気がしました。

次回(第11回)は、世界輸出のシェアに関する数値を追って行きます。

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