どこの企業でも、人材を育てることは重要な課題のひとつです。
従って、人材育成のための研修を開催したり、教育プログラムを導入したりして、その企業に必要な人材の能力開発に努めています。
しかし、本物の人材を育てようと考えるならば、そういった取り組みよりも、むしろ育てる側が人材になることの方が大切です。
これは、筆者が長い会社員生活を通して得た実感でもあります。
人材育成は重要
現代ではIT化が急速に進み、AI技術も色々な分野で応用されるようになりました。そして、従来の業務は人間からロボットに置き換わるようになってきています。
しかし、どんな分野でも最終的には人間が開発したシステムを用い、人間が運用・管理していますから、人が果たす役割は重要で、その企業の成長にも大きく影響します。
従って、あらゆる企業が優秀な人材を獲得しようと努めていますが、実際は優秀な人ばかりが集まる訳ではありません。
そこで、如何に人材を育て、人的資源の価値を高めて行くかが重要になりますので、人材育成のための色々な取り組みがされています。
真の人材は現場で育つ
では、人材を育成するために企業ではどのような取り組みがなされているでしょうか。
一般に、企業の人材育成関連部門では、教育プログラムなどを整えて社員の教育を進めます。また、必要に応じて社外の研修などを取り入れて人材を育てる姿も多く見られます。
そういった人材育成を目的としたメソッドやカリキュラムなどの中には、非常に高度な能力開発を可能としたものもあり、実際に大きく人材が育っているのも事実です。
しかし、こうした人材育成の場合、実務を通した実践的な教育が難しいため、自ずとそこに限界が生じます。何より、人材としての心を育てる環境に乏しいという決定的な欠点があります。
その結果、どうしても思うように人材が育たず、人材不足に悩まされる企業も少なくありません。
そこで、実務現場において業務を通して多くを学ばせ、成長させることが大切となりますが、その時に重要なことは、理論理屈では学べない、人材としての心を養わせることです。
そして、真の人材に育て上げるために絶対に必要なことは、人材を育てる側が人材であることで、これが何より重要な要素と言えます。
人材にしか人材を生めない、即ち、自らが人材になって行くことこそが、人材を生み育てる究極の方法なのです。
育成方法も重要だが
では、自らが人材になって人材を育てるとはどういうことでしょうか。
分かりやすい例を端的に示せば、「子供は親の背中を見て育つ」ということです。
社員は上司などの姿を通して育って行きますから、上司が人材であればその部下も自然と人材として育って行きます。
要は、理屈を超えた「生き様」というような姿を通して、人材として必要な多くのことを学ばせることが大切です。
幕末の松下村塾から多くの優秀な藩士が排出され、それがあの明治維新という偉業を成し遂げるに到りましたが、これは師匠である吉田松陰が人材だったからです。
一般の企業に於いても、ある一部の部署から多くの幹部が排出される姿はよく見かけるところです。
もちろん社内の派閥における力関係もあるにはありますが、つまるところ、人材から人材が生まれることに変わりはありません。
また、これは逆の見方、即ち「人材でないところには人材は生まれない」という事例に当てはめてみてもよく分かります。
例えば、今の政治屋の姿を思い浮かべてみましょう。
現在の政権は、全て自分たちに都合の良いような政策ばかりを採り、いわば国家を食い物にしていますが、同じ政権が続いて後任の人事がされて行く中に、国民のことを真に思うような真に徳のある政治家が登場する姿を想像できるでしょうか。
恐らく、誰一人として想像できないことでしょう。所詮、政治屋集団からは政治屋しか生まれません。
このように、人材は人材を生む姿は多くみられますし、人材でないところに人材は生まれない姿もよく理解できるところでしょう。
人材を育成する手段や方法はもちろん大切ですが、育てる側が自ら真の人材となって人材を育成する中にこそ、本物の人材が生まれ育つのです。