昨年末のこと、暖房器具を購入しようとヤマダ電機に足を運びました。
気に入った製品が手ごろな価格であれば購入するつもりでいましたが、いざ値切ってみると、思いのほか安くならず、結局その場で購入するのは思いとどまりました。
しかし、その時の店員とのやり取りの結果、ヤマダ電機が他社のネット価格に対抗しなくなった旨を知ったのでした。
ネット価格に対抗しない
ヤマダ電機が、ネット価格に対抗しなくなったことを知ったのは、昨年の暮れに電気ストーブを見に行った時のことでしたが、洗面所に使おうと考えていた小型の電気ストーブを値切ってみたことが直接のキッカケでした。
気に入って値切ってみた電気ストーブは、店頭の表示価格が約11000円でした。
実売価格を把握するために、予めネット販売における価格を調べておいたのですが、ネット販売における安値は六千数百円で、送料込でも七千余円でした。
また、かねてからヤマダ電機が価格対抗すると言っていた、量販店系のウェブ価格(コジマウェブやJoshinウェブなど)については約8000円でしたので、8000円位で買えるかと予想していました。
実際に販売員を呼んで価格交渉をしてみたところ、返ってきた提示価格は約10000円でした。
そこで、今までと同じように、「コジマウェブやJoshinウェブ」では約8000円で販売している旨を伝えて交渉したのですが、「ネット販売の価格に対抗するのは、ヤマダウェブのみです」との返事が返って来て、それ以上は無理だと主張してきました。
今まで値切って来た過去の経緯から「ついにネット価格に対抗しなくなったのか」と思い、「いつかはこうなる」と予測していたこともあって、あまり驚くことはありませんでした。
その店員にもう少し話を聞いてみたところ
「本年(2018年) 10月に上から指示があり、ネット販売価格に対抗するのはヤマダウェブのみとなった」
「会社の方針として、儲けにならない販売をしても意味がないとの判断があった」
とのことでした。
このやり取りから、この方針変更は、単なる店長判断ではなく、ヤマダ電機の経営方針としてかじ取りがされたことがわかりました。
そして、更に話を聞いてみると
「ネット販売の場合は、扱う物流の数が桁違いで圧倒的に多く、仕入れ価格も大差があるため対抗しきれない」
との理由を説明してきました。
私の従来の意識としては、ネット販売の場合は人件費が圧倒的に安いことと、集客が期待できる立地条件の良い場所に店舗を構える必要がなく、そうした店舗の設置や維持管理するコストを抑制できることが価格競争の上で有利だと思っていました。
しかし、今回の店員の言葉から、それらの有利点に加えて、今や仕入数の差がより大きな要因になってきたことを強く感じました。
今までの経緯
今回、ヤマダ電機がついにこのような方針を採りましたが、ここでちょっと、これまでの経緯を振り返ってみたいと思います。
そもそもネットワークがあまり普及していない時代は、ネットで物を販売するという事業がありませんでしたが、ネットワークが普及してインターネットが広く利用されるに従って、ネット販売というものが利用されるようになりました。
その後、インターネットの利用者の増加に伴って、その販売量も増えて行き、家電製品に限らず、日用品の購入にも当たり前のように利用されるようになりました。
そんな時代の変化の中で、ヤマダ電機は当初はネット販売価格に正面から対抗する姿勢を示して来ました。従って、店頭で購入する場合も、予め調べておいた最安値を示せば、それと同額もしくはそれより安い価格で購入できるのが当たり前でした。
そんな対応がしばらく続いていたのですが、それから間もなく「ネット販売価格に対抗するのは、量販店を構える同業社のウェブ価格のみ」となり、例えばコジマ電気系のコジマウェブやJoshin電機系のJoshinウェブなどが対抗する相手でした。
ちなみにその当時、ある店員から聞いた話では、「都内の繁華街にある店舗では、たとえ赤字になっても、量販店以外のネット販売価格にも全面対抗するところもある」とのことでした。
それを耳にした時は、「結果として収支が見合えば競争はしていくのだろうが、見合わなくなってきているのは事実であろうから、遠からずネット販売価格には対抗しなくなるだろう」と思ったものでした。
そんなことがあってから今回の方針になるまで、10年以上になるかと思いますが、「ついにそういう時が来た」という感じがすると同時に、「よく今日まで頑張って来たものだ」とも思います。
今後はどうなるのか?
さて、今回の方針変更により、「価格交渉はヤマダウェブのネット価格のみ対抗する」とのことですが、私の経験から正直に言えば、ヤマダウェブは同業他社であるコジマウェブやJoshin ウェブなどと比べると、販売価格が全般的に高く、買う理由はないと感じます。
私が記憶するところだけで考えると、ヤマダウェブの方がコジマウェブやJoshinウェブなどより安かったという製品は、一つも見たことがありません。
つまり、価格だけで判断した場合、今後、販売方針を改めない限り、ヤマダ電機で家電製品を買う理由はありませんし、買うことも無いと思います。
なぜならば、価格の差が大きいため、価格以外の要素を考えても、ほとんどメリットがないと感じるからです。
今回の方針変更がされる前は、「量販店系のウェブ価格と対抗」していましたので、ネット上の最安値との差はあまりありませんでしたから、保証や安心感や実績、その場で入手できるなどの利点を考慮した時、多少なら高くても構わないとの判断ができました。
しかし、「量販店系のウェブ価格と対抗」しないと、ネット上の最安値との差は大きく目立ってきますし、保証や安心感や実績を考えた場合、量販店系のウェブサイトで購入した方が安い分だけ、得になるのではと強く感じます。
今回の対応変更は、ヤマダ電機の経営者による苦渋の判断があったかと思いますが、この変更によって今後、市場がどのように動いて行くのか、注目に値すると感じています。今後どのようになって行くのか、見守って行きたいところです。