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日本が後進国へ転落する理由を数値で見る(4)所詮賃金はこの程度

ソフトバンクグループの孫正義社長の「日本は後進国」発言を受けて、日本を後進国と呼ぶべきかどうかを数値で見て来ました。

今回は、前回(連載第3回)の世界競争力ランキングの続きとして、平均賃金についてその数値を追ってみることにします。

日本の平均賃金は?

平均賃金

賃金というのは、労働の対価として得られる金銭で、事実上、一般労働者の収入を決するものです。

実際、得られる賃金をもとに我々は生活しているわけですから、その賃金の多い少ないは、実質的な生活レベルを推し量る意味ではとても重要です。

平均賃金は、一般に先進国ほど多く後進国ほど少ない傾向にありますから、これが多ければ先進国、少なければ後進国ということになるでしょう。

同じ先進国でも、平均賃金がどの程度であるかは、その国力を示す数値になりますし、またどれだけ後進国に近いかという見方もできます。

今回の「日本は後進国」発言では、「平均賃金はOECD加盟35カ国中18位でしかなく」(OECD)というものですから、主要国の中でも後ろの方に位置するわけです。

もし、G7,G20というように、先進国は7~20カ国というような数え方をするならば、もはやランクとしては後ろの方と言わざるを得ません。

ランクを見ると

では早速、実際の数値を見てみましょう。

OECDが2018年に発表している主要国の平均賃金(年間・ドル換算)をそのまま見てみます。(Average annual wages per full-time and full-year equivalent employee (annual))

OECD加盟国の平均賃金(2018年)

これを見ると確かにOECD加盟国中では中間より少し後ろに位置するのが分かります。

しかし、よくよく見てみると、18位ではなく19位であることが分かると思います。

実は、これは2018年のデータで、孫社長の発言の頃は2017年のデータをもとにした発言だから異なるのです。

言い方を変えれば、1年の間に、1つランクを落としたとも言えます。

グラフ中、G7の国を見ると、アメリカ、ドイツ、カナダ、イギリス、フランスの5か国は日本よりも上位に位置し、唯一イタリアだけが日本より下に位置しています。

また、G20の中では韓国、メキシコ、オーストラリアのランクインが目に入ります。

これらのうち、オーストラリアは既に日本よりもかなり多く、韓国はほぼ同等ですが、微差ですから直ぐにでも抜かれてしまうかも知れません。

メキシコは数値的にはまだまだ日本との差は大きいですが、このまま日本が低迷し続ければやがては抜かれてしまうかも知れません。

この数値だけ見れば、後進国と言うまでの数値ではないかなぁとも思いますが、気になるのは近年の動向です。

近年の動向

では、この平均賃金が、近年どのように変わってきたのかを見てみましょう。(縦軸はドル換算、横軸は西暦)

近年の日本の平均賃金の推移

図を見ると、殆ど横ばいであることが分かると思います。

線形近似式(図中点線)を見てみると、ゆるやかに上昇しているようです。

しかし、2018年の40573ドルに対して18年前の2000年は40468ドルですから、賃金の伸び率は0.26%(40573÷40468=1.00259)です。もう、殺人的な数値です。

線形近似式の伸び率を計算しても1.7%で、年間の増加だと37.5ドルに相当しますから、いかに低い賃金伸び率であるかがよく分かります。

分かりやすく言えば、1ドル=100円とすると年間3750円しか賃金が上がらないってことです。

20年近くもこんな低成長を続けてきたことになるんです。

これだけ低成長を続けていれば、後進国化しないとは言えなくなりそうです。

諸外国はどうか

では、OECD加盟国の他の国の賃金伸び率がどうなのかが気になります。

早速データを見てみましょう。(縦軸はドル換算の年間平均賃金)

各国の平均賃金の推移

これを見るとちょっと分かりにくいですが、全体的に上昇しているのが分かります。

しかし、その中で日本(中央付近)はほぼ横ばいであることも分かると思います。

ちょっと見にくいので、日本と同じくらいの賃金の国に絞って見てみましょう。

各国(抜粋)の平均賃金の推移

これを見ると、前の図よりもよく分かりますが、全体的には上昇傾向にある各国の中で、日本の横ばいが特に目立ちます。

国家財政が厳しいイタリアや、国内の治安が不安定であるイスラエルなどは低迷していますが、そうした事情のある国を除くと、ここまで低迷している国は見当たりません

敢えてあげればスペインですが、それでも年間167.3ドルほど増加している計算になりますから、日本ほどは低迷していなく、少しずつではあっても上昇している感じがあります。

まさに、日本ほど賃金上昇が伸びていない国は見当たらないのです。

ではここで、気になる昔の順位を見てみましょう。平均賃金の統計データのうち2000年について先ほどのように順位を見ると下記の通りです。

西暦2000年時の各国の平均賃金

このように、2000年はOECD加盟国中11位だったのですね。

G7の中ではアメリカ、ドイツに次いで3位でした。当時はまだカナダ、イギリス、フランスよりも上だったのです。

いまや徐々に順位を落として遂に19位です。落ちる一方ですね。

これらの数値を見ると、生活が良くならないなぁというのも頷けます。政治屋は景気が上向いているなどの嘘をついても数値は嘘をつきませんね。

まとめ

以上、OECDのデータに基づく平均賃金を見て来ました。これらをまとめると以下の通りです。

  • 平均賃金は後進国と呼ぶほどではないが決して高い水準とは言えない
  • 過去18年でOECD中の平均賃金の順位は11位から19位まで落ちた
  • 過去20年近くにも渡ってほどんと賃金が伸びていない
  • 諸外国と比較しても、恐ろしいくらい賃金が伸びていない

これを見ると、かつては言えた「経済大国日本」なんて言葉も、もはや恥ずかしくて言えないですね。

政権維持ばかりに注力して、本気で日本経済のことを考えてこなかった政治屋の責任を強く感じるものです。

連載第5回は別な相対的貧困率の数値を追って行きます。

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