自動計測は効率的、高品質、低コストだが裏に潜む諸問題には要注意!

業務を効率化するために検査ラインなどに、自動計測を導入するケースがあります。

自動計測では、効率化が進むだけでなく、コストも抑えられ、安定した測定も可能であるため、そのメリットはとても大きなものがあります。

しかし、メリットの裏に潜む問題をしっかりと認識して導入しないと、却って非効率になるばかりか、高コスト、低品質にすらなりかねません。

自動計測は決していいことばかりではないので、注意が必要

ここでは、私が見てきた数々のケースをもとに、自動計測システムを導入するにあたって注意すべき点を述べます。

自動計測は便利か?

私がこの記事を書こうと決めたのは、業務上で計測器に関わることが多くあり、やたらと自動計測を進めようとする場面をいくつも見てきたからです。

確かに、自動計測は人手に頼らず、自動で作業が進められますから、それだけを見ていれば、とても効率が良いと感じます。

実際に、自動計測がうまく導入出来て、非常に役立っているケースが多いのも事実です。

しかし、効率だけに目を奪われて、本当の意味で意義ある運用ができているのか疑問を抱かざるを得ないケースもあります。

中には、むしろ弊害と言えるケースすらもあります。

特に、現場の事情や計測対象の実態などを詳しく知らない企業の上層部だけの指示で推し進めたような場合ほど、多くの問題を抱える傾向にあります。

以下、自動計測を推進する上で、弁えておくべき問題点について述べます。

確かにメリットは大きい

問題点に触れる前に、自動計測によるメリットについて触れておきます。

それは、自動計測に潜む問題は、メリットと表裏一体の関係にあるからです。

自動計測によるメリットは細かい点を挙げればいくつもありますが、主なものは下記の3点です。

(1)人手によらないため、業務の効率が上がる。
(2)計測の仕方が一律となり、測定のばらつきやミスを抑制できる。
(3)測定のノウハウに詳しくない者が運用できるので、人材に頼る必要がない。

まず、「(1)人手によらないため、作業の効率が上がる」について簡単に説明しましょう。

自動計測では、計測器の操作をはじめ、測定値の記録などさまざまな作業が自動でできますから、業務の効率があがります。

結果として、生産効率もあがりますし、人手がかからなくなる分だけ人件費を抑えることができますから、低コストの製品を生み出すことが可能になります。

次に、「(2)計測の仕方が一律となり、測定のばらつきやミスを抑制できる」についてです。

人が計測器を操作する場合は、人のクセが影響して、測定値のばらつきを生む可能性があります。

しかし、自動計測では、常にばらつきを抑えた安定した測定結果を得ることができます。

また、人的な操作にはミスはつきものですが、自動計測の場合、プログラムによって同じ処理が繰り返されますので、そういったミスは発生しません。

最後に、「(3)測定のノウハウに詳しくない者が運用できるので、人材に頼る必要がない」についてです。

自動計測では計測器に関する詳しい知識がなくても、運用方法や簡単な操作の仕方さえ分かればよいので、誰でも担当することができます。

たとえ技術者がいなくても、たいしたスキルのない人でもできるので、運用がとても簡単になります。

このように自動計測には大きなメリットがあり、導入する意義はとても大きいと言えます。

そして、これらのメリットは、単なる生産性の向上だけではなく、コスト抑制や品質向上に直結するため、自動計測は積極的に導入すべき仕組みのひとつと言えます。

メリットの裏に潜む問題点

このようにメリットだけを見ていると、導入しない手はないように思えます。

実際、導入しない手はないほど有効な手段であることは間違いありません。

しかし問題となるのは、メリットにばかり目が行って、デメリットを十分に吟味しないで導入しようとする姿勢です。

自動計測において生じる問題を端的に上げると、すべて長所としてあげたことの裏返しです。

分かりやすくするために、上記のメリットを再び記載します。

(1)人手によらないため、業務の効率が上がる。
(2)計測の仕方が一律となり、測定のばらつきやミスを抑制できる。
(3)測定のノウハウに詳しくない者が運用できるので、人材に頼る必要がない。

では、これらのメリットの陰に潜むそれぞれの問題を列挙しましょう。

(1)業務効率向上の裏側に、見えにくい効率低下が存在する。
(2)万一ソフトにバグがあると、全ての測定結果が不適切になる。(リスク)
(3)自動計測中にイレギュラーな事象が発生すると、直ぐに対応できない。

これらの問題は全て、メリットと表裏一体。つまり、メリットの裏返しです。

以下、これら3つについて詳細に説明します。

(1)業務効率向上の裏側に、見えにくい効率低下が存在する

まず、最初に挙げられるのがこの問題です。

この問題を一言でいえば、

自動計測システムを導入、維持、管理するために必要となる時間や人、コストが、自動計測によって改善される効果よりも高くつく。

と言うことです。

この話を聞くと、たいていの人は

「大きな改善が得られるからこそ自動計測にしたんだ」

と思うハズです。

しかし、総合的な観点から、効率が本当に上がるかどうかをもう一度、考えてみて下さい。

何を言いたいのかが分からないと思う人もいるでしょうから、私が実際に見てきたいくつかの事例から、失敗するパターン例をいくつか挙げて、具体的に説明していきます。

(1)失敗パターンその1「効果をきちんと計算していない」

意外と多いのがこのパターンです。

何かのシステムを取り入れる時には、その導入によって得られる効果を試算するものですが、「自動計測=高効率」という固定観念があることで、きちんと試算しない場合があります。

また、たとえ試算する場合も、その算出方法がいい加減であったり、考慮すべき事項が抜けていたりします。

単純な話ですが、自動計測は、計測する回数が多いほど効率的になります。

例えば、月間1万台生産する製品の出荷検査と、月間10台しか生産しない製品の出荷検査とでは、検査数(自動計測数)が大きく異なりますから、効率も違ってきます。

また、販売期間が10年間にわたる製品と、3年間しかない製品とではおのずと検査数も変わってきます。

仮に、月間10台(年間120台)生産し、3年間で生産中止を想定している製品の出荷検査の場合、単純計算であれば、360回(=3×120)の自動計測を行うことになります。

そしてもし、製品検査を手動で計測する時間が60分かかるとして、自動計測では10分で処理できるとすると1台あたり50分短縮できることになります。

この時、導入による改善効果は、360回×50分=18000分=300時間となります。

このケースだと、もし自動計測の導入に伴って発生する費用が、300時間に相当するコストを超えた場合、「却って損をしている」といえます。

状況にもよりますが、自動計測の導入を外注業者へ丸投げしたとして、300時間相当の額で請け負って貰えるケースはほとんどないと思います。

この例では、分かりやすいように計測回数をあえて少なめの360回として説明していますが、数値できちんと試算することの大切さは分かって頂けると思います。

実際は、こんな単純な計算で済む問題ではありませんが、感覚だけで効率を判断するのではなく、たとえ概算だとしてもきちんと試算して比較評価することが大切です。

特に予測される自動計測の回数(上記の例では360回)と、効率化により得られる短縮時間(上記の例では50分)などは、基本的な数値ですが、このような基本的な数値の概算すら出そうとしないケースが、意外とあるのです。

(2)失敗パターンその2「システムの運用・維持にかかるコストが考慮されていない」

これもけっこう見かける失敗パターンです。

自動計測システムを導入する際のコスト(場合によっては時間や人)は、初期費用が最も多く掛かります。

実際、必要なコストのほとんどが初期費用だと考えても間違いではないでしょう。

しかし、見落としていけないのは、そのシステムの運用にも、維持にも相応のコストが掛かることです。場合によっては、その額が思いのほか大きくなることもあります。

例えば、手動で計測する場合と自動計測を実施する場合、作業者の実作業時間がどれくらい減るのかを試算すると思います。上記を例にすれば、1回の計測で50分短縮できる訳です。

ところが、自動計測システムを導入すると、システムが正常に動作するかどうかの日常点検や、システムに異常がないかどうかを確認する定期的な点検が必要になるのが一般的です。

また、大掛かりなシステムだと、作業者とは別に運用全体を監視する人が必要になることもあるかも知れません。

システムが特殊であれば、それを維持するための設備や管理に伴う経費が更に必要となる場合もあるかも知れません。

要するに、導入したことにより追加で発生するコストなどの増加要因があり、その増加分を考慮しないケースがあるのです。

そして、最も影響が多いケースは、自動計測システムのプラットフォームの維持に伴って発生するコストです。(コストとして高額になる傾向がある)

特に、OSのバージョンアップや、ソフトウェアの更新に必要なコストは、システムの導入当初に全く考慮していないケースが非常に多くあります。

実際に、

セキュリティの問題が絡むためOSを更新しなければならないが、現行の自動計測システムの動作が保証されなくなってしまうので、対応させるために多額のコストを要する

などというケースはよく見聞きします。

中には、システム導入時にこういう費用をきちんと想定していなかった結果、却って導入が逆効果になってしまったケースすらもあります。

効率化という利点ばかりにとらわれず、コスト発生というマイナス面も十分検討しておくことが大切です。

(3)失敗パターンその3「試算上で考慮すべき事項を忘れている」

この失敗パターンは、自動計測を強く推進しようとするあまり、見えやすい数値ばかりを注視して、考慮すべき事項を見落としてしまことで発生します。

いわゆる深く検討しないで、安易に判断してしまうパターンです。

この種のパターンの中で最もよくある事例は、自動計測ソフトを自作する場合です。

もしシステム導入を外注業者に依頼すれば、相応のコストが掛かる訳ですから、自作するケースが出てくるのも当然ですし、それが悪いことではありません。

問題は、外注業者の場合と自作の場合を同じ土俵で比較しないことです。

例えば、外注業者に依頼する場合、業者に支払うコスト(お金)と、効率化で短縮できる時間を金額換算した数値で比較すると思います。

では、自動計測システムを自作する場合はどうでしょうか。(説明を簡単にするため、ここでは設備は既存品を用い、新たな購入費は発生しないものとしましょう)

恐らく、プログラミングなど自動計測システムを構築するのに要する時間と、効率化で短縮できる時間とを比較するのではないでしょうか。

仮に、これらの数値が

自動計測システム構築に要する時間:500時間
自動化によって削減可能となる時間:1000時間

だったとします。

これを単純に見れば、500時間分の作業時間削減が見込まれる訳ですから、システムを導入する意義はあると考えると思います。

しかし、それでは短絡的なのです。

一般にシステムを構築する人は、計測機器やソフトウェアのことに詳しい技術者です。

一方、実際に計測を行うのはいわゆる単なる作業者で、高度な技術が必要のない人です。

単なる作業者の場合、アルバイトやパートなどの非正規従業員でも作業が可能な場合が多くあります。たとえ手動操作による計測でも、マニュアルさえ整っていれば、非正規従業員でも対応可能です。

上記の例は、技術者の人件費と作業者の人件費を同等に見ているところに問題があるのです。

一般の企業では、計測機器とソフトウェアの両方に詳しい技術者はとても重要な人材で、人的資源として貴重です。

導入の是非を考える場合、きちんとした比較ができているのかしっかりと考察することが大切です。

(2)万一ソフトにバグがあると、全ての測定結果が不適切になる(リスク)

では、次の問題点についてです。

自動計測では、プログラミングされた通りに動作しますので、作業者に関係なく同一に動作します。また、作業者による操作ミスも無くなります。

これは、自動計測におけるとても大きなメリットなのですが、プログラミングされた通りに動作するからこそ、バグがあると全ての計測にその悪影響が及ぶことになります。

場合によっては、「自動計測した製品の検査結果が不適切であったから検査を全てやり直し」なんてことにもなりかねません。

最悪の場合、リコールとなって企業に大きな損害が発生することもあるかも知れません。

こういうリスクがあるからこそ、自動計測システムを構築・販売する業者はデバッグや検証を念入りに繰り返すのですが、それがシステム導入費用が高価になる原因にもなっています。

従って、もし外部業者に依頼するのであれば、単に費用の問題だけではなく、実績や信頼のある企業を選択すべきです。

投資費用を抑えようとするあまり、いい加減な企業に依頼して、却って後からしわ寄せが生じたなんてケースもあります。

そして、これは自動計測システムを自作する場合こそ気を付けなければいけません。

自動計測は、大きく効率アップを図れる手段のひとつですから、どこの企業としても積極的に推進して行きたいと思うハズです。

ところが、無理に推進しようとするあまり、十分なデバッグや検証を経ずに実用化してしまうケースがあるのです。

特に、自動計測の場合、計測器や測定に詳しい技術者が設計する必要がありますが、同時に、プログラミングの技術力も持ち合わせていなければなりません。

ところが、計測もプログラミングも、どちらについても詳しいという人材は限られてくるものです。

計測の専門家はプログラミングの専門家ではなく、プログラミングの専門家は計測のことは疎いというのが普通なのです。両方に長けている人はまれなのですね。

では、ちょっとここで、実際に私が目にして来た例をあげましょう。

  • プログラマーが作成したソフトがあり、ソフトとしての完成度では相応であったが、測定方法が間違っていて意図しない結果を招くアルゴリズムになっていた。
  • デバッグが不十分であった結果、補正計算を行う計算式の記述に誤記があり、間違って計算されてしまう状態があった。

いずれの例も、品質に影響しない用途でしたから幸いでしたが、もし用途次第では大変なことになっていたかも知れません。

プログラミングされた通りに動作するからこそ効率的になるのですが、その裏に大きなリスクがあることをしっかり弁えるべきです。

(3)自動計測中にイレギュラーな事象が発生すると、直ぐに対応できない

では、3つめの問題点です。

自動計測に直接携わる運用者や作業者は、本来、測定やソフトウェアに関する技術的なノウハウは持ち合わせません。

従って、イレギュラーな事象が発生するとすぐに対応できないという問題を抱えています。

イレギュラーな事象は、本来、頻繁に発生することではありませんから、万一、発生した場合に限って開発業者に対応を依頼したり、社内の開発担当者に連絡したりすれば済むはずです。

従って、この問題はあまり深刻に捉えない傾向がありますが、実は注意しなければならないケースがあります。

それを端的に言えば、イレギュラーな事象が比較的起こりやすい場合です。

製品の出荷検査や、部品の納品検査などで自動計測を利用する場合、測定結果が良好であることが想定されています。

ところが、定期点検や故障診断などに自動計測を導入・利用している場合などでは、自動計測によって不良判定がされる確率が高くなります。これは測定対象品の経年劣化が進行しているためです。

この話を耳にすると、

それは、劣化品の自動計測をするだけのことでしょう。
単に、不良率が上がるだけだから問題ないのでは?

などと考える人もいるかと思います。

しかし、必ずしもそのような単純なケースとは限らないのです。

一例をあげれば、単に不良という結果だけではなく、どのような不良なのか、どれだけ劣化しているのかなどの点検結果や診断結果をきちんと出さなければならない場合です。

計測対象が劣化すると、測定ができなくなることがあります。また、測定が途中で中断してしまうこともあります。さらに、計測結果が安定せず、測定結果(値)が変動するケースもあります。

自動計測の場合、ソフトウェアによって決められた測定しか実行されないため柔軟な対応ができず、上記のようなケースでは、手動操作による測定をせざるを得ない状況が生じてしまうのです。

特に、メンテナンスサポート期間が長い定期点検や、ロングセラー品の故障診断などでは不良率があがり、場合によっては手動操作に依存する割合が予想以上に高くなることもあります。

自動計測システムを導入する際に、手動操作に依存せざるを得ない作業量をきちんと見積もっておかなければ、当初考えていた投資効果が得られないことになります。

状況によっては、「手動のままの方が総合的な効率は良かった」なんてことにもなりかねません。

以上、私が関わってきた業務の経験をもとに、自動計測を利用する上で盲点となりやすい問題点を挙げてきました。

ここにあげた問題は、「極端な例ではないか」と感じるかも知れません。

しかし、私は身近なところで、類似の事例を実際に見てきたのです。決して、極端と言い切れるものではないのです。

そして、こういった問題が生じる場合には、「とにかく自動計測を推進しよう!」との、盲目的に推進しようとする姿勢が必ず背景にありました。

自動計測は業務を大幅に効率アップさせます。
しかし、それは必ずしも全ての場合ではないのです。

あなたが、もし自動計測システムを構築しようとしているのであれば、

このケースで、本当に効率アップが図れるのだろうか?

との十分な掘り下げ・検討が重要です。

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