花粉症の根本治療法である舌下免疫療法を始めてから、今春で3度目の花粉飛散時期となりました。
治療開始後に、既に2度の花粉の季節を経験してきましたが、今回は1年前や2年前と比べて最も症状が酷い状態でした。
根気よく治療を続けてきていながら、改善するよりもむしろ悪化する(元に戻る)方向に進んでしまうのは非常に不可解な思いがしました。
しかし、そこには明確な理由がありました。
以下、3度目の花粉飛散時期に味わった体験(治療の効果のほど)について、細かく説明して行きます。
目次
現在までの簡単な経緯
本題に入る前に簡単に経緯を説明しておきます。
長年、スギ花粉症に悩んできた私は、2019年の秋に花粉症の根本的な治療方法である舌下免疫療法を始めました。
今からおよそ2年半前のことでした。
年が明けた2020年の春には最初の花粉飛散時期を迎えましたが、症状が改善してきていることを実感できました。
翌2021年、2度目の花粉の季節を迎えた私は、症状が改善してはいるものの前年よりも症状が悪いと感じました。
しかしそれは、前年(2020年)春の飛散量がかなり少なかったことが原因で、むしろ自然な症状と考えられたのですね。
だから、この治療法の特徴でもある”長期間の継続が大事”を胸に、その後も地道に継続して来ました。
そして迎えたのが、3度目の飛散時期である今春です。
症状がどの程度、良くなるのか。
そんな期待を持って迎えた結果は、かなり悪い症状だったのです。
正直、ヘコみましたが調べてみた結果、納得いく感じでした。
以下、今年の症状がどうであったか、なぜ期待に反する症状であったのか詳しく述べて行きます。
ちなみに、この治療を始めてから、機会をみて幾つかテーマを挙げて記事を書いてきました。
興味のある方は、ご覧ください。
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舌下免疫療法の体験談その3ー3ヶ月経過・副作用の状況や治療費はどうか
舌下免疫療法の体験談その4-最初の花粉飛散時期で効果の手応えを実感
今年の症状の現われ方
では、今春の花粉症の症状の表れ方がどうであったのか、過去と比較しながら説明しましょう。
私が、スギ花粉症によって悩まされてきた症状は下記の6つです。
(1)鼻水
(2)喉のかゆみ
(3)くしゃみ
(4)目のかゆみ
(5)鼻づまり
(6)全身のだるさ
これら、6つの症状について1つずつ説明します。
各症状における説明の仕方は、症状の違いが分かるように
①治療前…治療開始前の症状
②1回目…治療開始後の最初の飛散時期(2020年春)の症状
③2回目…治療開始後の2度目の飛散時期(2021年春)の症状
④3回目…今回(治療開始後の3度目)の飛散時期(2022年春)の症状
に分けて説明します。
(1)鼻水
①治療前
常にマスクをしていても、毎日のように鼻水が出てティッシュを手放せない状態が続いていた。
②1回目
飛散開始後に少し鼻水が出たが、その後は殆ど出なくなった。
③2回目
飛散開始後に鼻水が出たが、その後もたまに出ることがあった。
④3回目
飛散時期に関わらず、シーズンを通してけっこう鼻水が出ることがあった。
症状の程度を比較すると下記の通りです。
(重症)←①治療前-④3回目-③2回目-②1回目→(軽症)
これだけ見ると、治療が進むほど、症状が悪化(逆戻り)しているかのように見えます。
普通に考えれば、異常と思えることですが理由(後述)がありました。
ここで、注意すべきは、「①治療前」と「④3回目」との症状には大きな差があることです。
治療前は、毎日のように鼻水が出ていてティッシュの使用量が本当に凄かったのですが、今春はどちらかと言えば「わりと鼻水がでるな」という程度。
だから、今年は毎日鼻をかむわけでもなく、治療前のように一日に20回も30回も鼻をかむようなことも一切ありませんでした。
治療の効果が大きいことに変わりはありません。
(2)喉のかゆみ
①治療前
喉が「痛がゆい」ような症状が続き、頻繁に耐え難い感覚を味わっていた。
②1回目
シーズンを通して、喉が単にかゆいと感じる程度で、耐え難いという状態に至ることはなかった。
③2回目
シーズンを通して、喉がかゆいと感じることがあり、一時的に耐え難いという状態になることがあった。
④3回目
飛散量が多い時だけ、喉がかゆいことが気になったが、耐え難いという状態になることは無かった。
症状の程度を比較すると下記の通りです。
(重症)←①治療前-④2回目-③3回目-②1回目→(軽症)
喉のかゆみについては、昨年より若干よくなった感じがしました。
但し、1回目と比べると症状が重く、不思議な感じもしますが、これにも理由(わけ)がありました。
いずれにせよ、耐え難いかゆみが無かったことは、とても意義が大きいですね。
(3)くしゃみ
①治療前
一度くしゃみが出ると7~8回連続で出て、意思では止められない状態に陥ることがシーズン中に何度もあった。
②1回目
くしゃみが出ることはあったが、連続して止められなくなるような状態は無かった。
③2回目
くしゃみが出ることがあり、連続して止められなくなるような状態にも陥ったが回数としてはたったの2回であった。
④3回目
シーズンを通してくしゃみが出ることがあったが、連続して止められなくなるような状態は無かった。
症状の程度を比較すると下記の通りです。
(重症)←①治療前-④2回目-③3回目-②1回目→(軽症)
くしゃみでツライ部分は、意思に関係なく出てしまう点で、それが連続して止められなくなるのは本当に大変でしたが、それが無かったことは大きな進歩。
1回目と比べると悪化しているようですが、治療前から見れば改善は大きいですね。
くしゃみについても、他と同様、1回目より症状が悪いのには理由がありました。
(4)目のかゆみ
①治療前
「かゆくてかゆくてたまらない」ということがシーズン中に何度もあった。
②1回目
目がかゆいと感じることは少しあったが程度は軽く、「かゆくてたまらない」という感覚は一度もなかった。
③2回目
シーズンを通して、目のかゆみを感じることがけっこうあったが、「かゆくてたまらない」という状態にはならなかった。
④3回目
目のかゆみを感じることがけっこうあり、飛散ピーク時期は「かゆくてたまらない」状態になる一歩手前の状態が継続した。
症状の程度を比較すると下記の通りです。
(重症)←①治療前-④3回目-③2回目-②1回目→(軽症)
これを見ても鼻水と同じく、治療が進むほど症状が悪化(逆戻り)しているようにも見えます。
でも、これには他と同じ理由(後述)がありました。
今年は、飛散量が多い時期には、「かゆくてたまらない」状態になりそうだったので、かなりヘコみました。
治療前は、「目を取り出して、洗浄したい」感覚に襲われたことが何度もありました。
だから、そのツラさが脳裏に浮かんでプレッシャーになったのです。
でも、結果として「かゆくてたまらない」状態にはならず、我慢できる範囲で済みました。
実際、治療先の耳鼻科で「点眼液を処方しておきましょうか?」と尋ねられた時、「要りません」と答えることができました。
治療前の私なら、「お願いします」と答えていたことでしょう。
それだけ、治療による効果は大きいってことですね。
(5)鼻づまり
①治療前
就寝時に鼻が詰まって眠れないことが頻繁にあり、寝不足する日々が多かった。
②1回目
鼻づまりそのものが一度もなかった。
③2回目
少しだけ鼻づまり感があった。
④3回目
去年と同様、少しだけ鼻づまり感があったものの、実生活にはほとんど影響はなかった。
症状の程度を比較すると下記の通りです。
(重症)←①治療前-④3回目-③2回目-②1回目→(軽症)
実際は、今年と去年はほどんど同じ感じで、比べれば今年の方が症状としては出ていたかなぁという位のわずかな差でした。
確かに去年から殆ど改善なく、むしろ悪化している感じはありましたが、理由は他の症状と同様。
治療前と比べると、雲泥の差がありますので、治療効果が大きいことに変わりはありませんね。
(6)全身のだるさ
①治療前
ズッシリと重たく圧し掛かって来るようなダルさを感じていた。
②1回目
治療前に感じていたようなダルさはなかった。
③2回目
治療前に感じていたようなダルさはなかったものの、1回目の飛散時期よりは若干ダルい感じたあった。
④3回目
治療前に感じていたようなダルさはなかったものの、治療開始後の中では最もダルさが感じられた。
症状の程度を比較すると下記の通りです。
(重症)←①治療前-④3回目-③2回目-②1回目→(軽症)
これも改善とは逆行していますが、理由は他の症状と同じです。
でも、今春味わったのは、ズッシリと重たく圧し掛かって来るようなダルさとは程遠い症状でしたので、治療前との差は明らか。
やはり、治療による改善効果は大きいと感じます。
症状を総括すると
以上、個々の症状について述べて来ましたが、総括すると下記の通りです。
(重症)←①治療前-④3回目-③2回目-②1回目→(軽症)
これだけ見れば、治療に効果は見られるものの、治療を継続するほど悪化していくようなイメージが湧くと思います。
特に、1回目が劇的な改善、2回目もまぁまぁであったため、今回はけっこう治療前の症状に近づいた(逆戻りした)面も大きくて、ショックのような感じがありました。
「このまま悪化して行くと、元のような症状に近づくのでは…」
そんな不安が脳裏に浮かび、
「治療の意味があるのか」
とすら思うこともありました。
特に、目のかゆみは気になり、喉のかゆみは「このままもっと悪化したら、耐え難い状態にまで至るのでは…」という、精神的な不安が強くありました。
それでも、飛散のピーク時を過ぎると、「大したことはない」と思えるような症状に落ち着き、「やはり治療の効果は大きい」と感じました。
ただ、治療後の初の飛散時期で味わった症状の改善が強く頭に残っていた分だけ、どうしても腑に落ちない点が残っていました。
そこで、ちょっと踏み込んで調べてみることにしたんです。
なぜ悪化したのか
私は治療中の当事者ですから、これら症状の悪化については本当に気になりました。
なので、読者の中にも気になる人もいると思います。
「なぜ症状が悪化したのか?」
気になりますよねー。
で、考えたのは症状に差が出る要因。
思いついた要因は「体調」と「花粉量」の2つでしたが、「体調」についてはシーズンを通して見れば、良い日もあればそうでもない日もありますから、直接は関係ないと判断しました。
つまり、花粉の飛散量の違いが真犯人だと考えたんです。
そこで調べたのが花粉の飛散量。
環境省の花粉情報サイト(https://www.env.go.jp/chemi/anzen/kafun/)に情報がありました。
下記にそれぞれの年における、長野県(私の居住地)のスギ花粉の飛散量(個/cm2)を示します。(青字が治療開始後)
H29(2017)年:1542(個/cm2)…①治療前
H30(2018)年:3145(個/cm2)…①治療前
H31(2019)年:3240(個/cm2)…①治療前
R02(2020)年: 526(個/cm2)…②1回目
R03(2021)年:1300(個/cm2)…③2回目
R04(2022)年:1800(個/cm2)…④3回目
ちなみに、2021年は同サイトに長野県の情報がなく、2022年は未発表であったので、両年については実測値ではなく、他のサイトの情報や隣接県のデータを元にして出した推定値です。
これを見て分かるように、治療開始直後の春(2020年)の飛散量は極めて少なく、その後、翌年、翌々年と増加しているのです。
要するに、私に現れた症状は、ほぼ花粉の飛散量に応じた変化をしているのですね。
それで、2017年と2022年を比較してみることで、効果がハッキリ分かりました。
治療開始前は、飛散量に関わらず、上記の「①治療前」に記した症状が毎年、必ず出ていました。
つまり、2017年にもかなりツライひどい症状だった訳ですが、それより飛散量の少し多い今年(2022年)は、症状が全然違ってかなり良くなっていると言える訳です。
今までは、「治療の継続によって改善が進む」とだけ考えていましたが、それだけの考え方ではダメなのだとづくづく思いました。
舌下免疫療法で弁えるべきこと
という訳で、今年の体験は私にとって、ある意味とても有意義だったと言えます。
実際の飛散量が大きく影響することがよく分かったからですが、それだけではありません。
治療前は症状の変化が感じられないほど、毎年のようにツライ思いをしていたのですが、治療を始めて改善してきたからこそ飛散量の違いを感じられるようになったとも言えるのです。
もし、舌下免疫療法の治療を考えている人がいれば、治療中は単なる症状の変化だけではなく、実際の飛散量を弁えて評価することをお勧めします。
でないと正しい判断ができないからですね。
今年、味わった症状は考えてもいなかった誤算。
でも、改善しているからこそ感じられるようになった飛散量の影響とも言えます。
実際に治療してきた当事者だからこそ実感できるんです。
今後、治療をする人は、大いに参考にして欲しい体験だと思います。