本サイトはプロモーションが含まれています

技術者も意外と知らないオシロスコープの測定誤差が大きい理由と対策

オシロスコープで電圧レベルを測定していて正確な値を得られないことがあります。

周波数が高いと誤差が大きくなることは理解できても、1kHz程度の低周波でも精度が出せず、頭を抱えてしまう技術者すらいます。

時間を測定する場合も同様で、「なぜ正確に測れないのだろう?」と原因が分からない人もいます。

そもそもオシロスコープは測定を主目的にしていない

確かに、測定方法や条件、使用環境なども誤差要因ですが、オシロスコープの誤差が大きくなる主な原因は、オシロスコープ本来の性能にあります

オシロスコープで電圧や時間を測定した場合、電圧計や周波数計などよりも精度が出ません。

オシロスコープは本来、波形を観測するのが主目的で、付加的な機能に当たる電圧測定などは、それほど性能がないのです。

これを知らずに、安易にオシロスコープを用いると、「思っていた精度が出ない」という結果を招いてしまいます。

オシロスコープは、直に波形を見られるところが便利ですが、電圧や時間を測定する場合は、その性能を弁えるべきです。

オシロスコープの測定性能はどの程度か?

では、実際にオシロスコープの測定性能を見てみます。

従来のアナログオシロスコープや初期のデジタルオシロスコープの場合、電圧測定の性能は垂直軸確度という名称で表記されます。

垂直軸確度はメーカーやモデル、垂直スケールによっても異なりますが、一般的には2%くらいです。

簡単に言えば、1Vの電圧を測定すると、0.98V~1.02Vが誤差範囲となります。(DC電圧や低周波の場合)

つまり、オシロスコープ本体の性能以外に誤差要因が全くなかったとしても、最大で±0.02Vの誤差を生じ得るのです。

一方、最近のオシロスコープの場合、デジタル技術の進歩によって測定性能は以前よりも向上しています。

デジタルオシロスコープが当たり前になった今日では、垂直軸の基本性能は、DCゲイン確度という名称で表現されます。

このDCゲイン確度は、メーカーやモデル、垂直スケールなどで異なりますが、性能の優れたモデルでも、せいぜい±1.0%くらいです。

最新の技術によって、DCゲイン確度以上の測定性能を持ち合わせているモデルもありますが、それでも±0.3%くらいです。

しかも、オフセット値や垂直スケール、位置などの条件によって性能が変わり、あくまで条件が良い場合が±0.3%です。

デジタルマルチメータと比較すると

ではここで、比較のためにデジタルマルチメータの性能を見てみましょう。

直流電圧1Vを測定する場合、一般のデジタルマルチメータなら±0.01%くらいの性能(測定確度)を持ちます。

また、交流電圧1Vの場合、周波数が音声帯域なら±(0.1%~0.2%)くらいの性能(測定確度)があります。

これらから、オシロスコープとデジタルマルチメータの測定性能を単純に比較した場合、デジタルマルチメータの方が1桁も2桁も精度が良いことが分かります。

実際は、電圧レベルや垂直スケールや周波数によっても性能差は異なりますが、基本的にはデジタルマルチメータの方が正確に測定できると言えます。

時間測定の性能はどうか?

次に、時間測定についてですが、測定性能は電圧の場合と大きく異なります。

従来のアナログオシロスコープや初期のデジタルオシロスコープの場合、時間測定の性能は掃引時間確度という名称で表記されます。

掃引時間確度は、メーカやモデルによっても異なりますが、一般的には±(1.0%~2.0%)くらいです。

端的に言えば、掃引時間確度が±1%のモデルで1msの周期を測定した結果は、0.99~1.01msの範囲になります。

一般の周波数カウンタなどの場合、±1ppm(0.0001%)くらいの性能を持っていますから、従来のオシロスコープよりもかなり正確なことが分かります。

しかし、最近のデジタルオシロスコープはサンプリング周波数が高く、内蔵する発振器の性能も良いので±(2~3)ppmくらいのモデルも珍しく無くなって来ています。

最近のオシロスコープの時間測定の性能は、内蔵発振器の性能を示す周波数確度、クロック確度、タイムベース確度などの名称で表記されます。

従来のオシロスコープと比べた場合、時間測定の性能は大きく向上していますので、生じる誤差はあまり気にする必要はなくなって来ています。

内蔵発振器の性能をユーザマニュアル等で確認して、測定精度が不十分な場合だけ対策を考えればよいでしょう。

より正確に測定する方法

以上、説明した通り、オシロスコープで電圧を測定する場合は、それほど精度よく測れないことが分かります。

従って、相応の誤差が生じることを弁えることが何より重要ですが、極力、誤差は小さく抑えた方が望ましいと言えます。

以下、誤差を抑える具体的な方法を幾つか示します。

方法1:セルフキャル機能を使う

最近のオシロスコープには、セルフキャル(self calibration:自己校正)機能を搭載しているモデルが多くあります。

セルフキャルは、オシロスコープが持つ性能を最大限に発揮できるように最適な状態にしてくれる機能です。

オシロスコープをしばらく使っていなかった場合や、温度変化があった場合には特に大きな効果が期待できます。

セルフキャル機能を持つオシロスコープを使う場合は、基本的にセルフキャルを実行してから測定しましょう。

実行の仕方は、通常、オシロスコープの取扱説明書にきちんと書かれています。

方法2:オシロスコープを調整する

性能を表す確度は、あくまで製品仕様ですから、同じモデルでも個体によって実際の性能(実性能)にはバラツキがあります。

例えば、垂直軸確度±2.0%のモデルでも、実際の性能が0.2%の個体もあれば、1.0%の個体もあります。

実性能は、購入時の”当たり外れ”もありますが、経年変化や使用環境の影響も無視できません。

そこで、実性能を維持・向上させることができる”調整”が重要となりますが、オシロスコープの場合、多くのモデルで調整が可能な構造になっています。

旧タイプのオシロスコープの場合、基準となる正確な信号を入力して、ボリュームを回して調整します。

最近のオシロスコープの場合、基準となる正確な信号を入力して、ボタン操作で補正値を内部メモリに反映させて調整します。

いずれも、調整方法が公開されていればユーザ自身でも操作できますが、公開されていないモデルもあります。

また、基準となる正確な信号を発生する設備が無い場合もあります。

ユーザ自身で調整できない場合は、有料ですがメーカで調整して貰えますので、必要に応じて依頼するとよいでしょう。

方法3:校正値を利用して補正する

これは少し高度な方法です。

オシロスコープを定期的に校正している場合、校正証明書に記載されている校正値を利用できます。

校正値は、オシロスコープの測定結果がどれくらいの誤差を生むかの情報を含んでいますから、校正値を利用して測定値を補正すれば、より正確な値を求めることができます。

しかし、校正はオシロスコープの性能を評価することが主目的なため、設定が異なる場合にどの程度の誤差を生むかを導き出さなければなりません。

これには、かなりの知識や技量が必要ですし、測定内容によっては補正ができないケースもあります。

方法4:既知の電圧と比較測定をする

これは、高精度な電圧を発生することができる電圧発生器の電圧と比較する方法です。

手順は以下の通りです。

①測定対象の信号をオシロスコープに入力して電圧を測定します。(測定値をVとします)
②オシロスコープの同一チャネルに電圧発生器の出力信号を入力する。(接続切換え)
③上記①で測定した電圧(V)になるように電圧発生器の設定出力電圧を調整する。

上記③の設定出力電圧が求めたい電圧となります。

比較測定をする場合に、測定対象の信号と、電圧発生器の信号を別々なチャネルに入力してしまうと、チャネル間の性能差が誤差となってしまいます。

従って、同じチャネルを用いて接続を切り替えて測定すべきですが、止むを得ず異なる2つのチャネルを使う場合は、2つのチャネルを入れ替えた場合も測定し、それらの平均を求めましょう。

例えば、

測定対象→チャネル1
電圧発生器→チャネル2

のように、上記①~③の手順で測定した結果がV1であった場合、

測定対象→チャネル2
電圧発生器→チャネル1

の接続を入れ替えて、上記①~③の手順で更に測定します。入れ替えた場合の測定結果がV2であった場合、求めるべき電圧Vは、

V=(V1+V2)/2

のように平均して求めます。

なお、電圧発生器の精度があまり高く無い場合は、電圧発生器の出力電圧を電圧計等で確認する方法が可能です。

方法5:デジタルマルチメータを用いる

精度よく測定したい場合は、誤差を小さく抑えられるデジタルマルチメータや電圧計の方が適しています。

オシロスコープを使わなければならない制約が無いのであれば、デジタルマルチメータ等を利用する方がいいでしょう。

但し、電圧が低い場合や雑音(特にランダムノイズ)が大きい場合は、デジタルマルチメータ等との差が小さくなる傾向にありますので、確度やノイズの影響を確認しておく方が無難です。

場合によってはマイクロボルトメータ等、低電圧に特化した測定器を用いるのも1つの手です。

そして、注意したいのは、「デジタルマルチメータでは測定できない」などと、短絡的に思い込まないことです。

測定対象が直流電圧の場合や、正弦波、方形波などの場合なら、オシロスコープの代わりにデジタルマルチメータを使えることは容易に分かると思います。

しかし、ノコギリ波やパルス波、複数信号の合成波などの場合、「デジタルマルチメータでは測定できない」と安易に考えてしまう技術者も少なくありません。

また、複雑な波形や非周期的な信号波の場合、最初からデジタルマルチメータを使おうともしないケースすらあります。

ノコギリ波やパルス波などの場合、実効値と振幅値、ピークトゥピーク値などの換算は難しくありません。

また、複雑に見える合成波でも、個々の信号成分を分けて考えると、換算できる場合もあります。

ネット上には換算方法を説明しているサイトがありますから、そちらを参考にするのがいいでしょう。

複雑な波形や非周期的な信号波の場合でも、検討の余地はあります。

例えば、単に信号の最大電圧レベルを求めたいだけなら、最大値が測定可能なデジタルマルチメータを利用すれば実現できるでしょう。

また、ランダムな信号中に含まれる同期用パルス信号の電圧レベルを測定したいなら、外部トリガ機能を持つデジタルマルチメータが役立つかも知れません。

オシロスコープは、波形を観測しながら測定できるので、ちょっとした信号でもオシロスコープで測定しようとしがちですが、測定する信号の特性を考えれば、デジタルマルチメータで測定できるケースは、けっこうあります。

先ずは、「デジタルマルチメータで代用できるのでは?」と検討してみることが大切です。

なお、デジタルマルチメータ等は通常、実効値電圧を表示しますので、振幅やピークトゥピーク値を測定するオシロスコープとは数値が異なります。測定値の換算を忘れないようにしましょう。

スポンサーリンク
スポンサーリンク
スポンサーリンク

最後までお読み下さりありがとうございました。
気に入ってもらえたらシェアして頂けると嬉しいです。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

スポンサーリンク
スポンサーリンク