上手には読み方が10種類ありますが、特殊な読み方を含めると更にいくつもの読み方があります。
ここでは、それら色々な読み方と、それぞれに対応した意味や用法について詳細を解説します。
目次
基本的な読み方は10種
「上手」には、とても多くの読み方があります。
比較的多い読み方には、
「じょうず」「じょうづ」「じやうず」「うわて」「かみて」「かみで」「うま」「じょうて」「じょうしゅ」「うえで」
の10種類があります。
これら10種類のうち、「じょうづ」と「じやうず」は「じょうず」とほぼ同じ表記・発音をする同じ意味の言葉で、「かみで」は「かみて」が濁音の読み方になった発音です。
従って、10種の読み方は、意味や用法の違いとしては7種類だけになります。
また、通常は用いることがない特殊な読み方として、上記の10種の他にも
「じようず」「じやうづ」「ぜうず」「うはて」「うめ」「じゃうて」「じやうて」
などがありますが、これらはいずれも先に挙げた7種類の読みと同等の意味・用法です。
さらに、「わて」「わで」「あじ」「めいじん」「かみたい」「うえて」などと言った読み方もありますが、これらは固有名詞や当て字に近い読み方などのため、一般に使われることはありません。
以下、意味や用法が異なる7種類の読み方について、一つずつ詳細を説明します。
読み方ごとの意味・用法
ここでは、以下の7つの項目に分けて、一つずつ説明します。
1.じょうず(じょうづ、じやうず)
2.うわて
3.かみて(かみで)
4.うま
5.じょうて
6.じょうしゅ
7.うえで
1.じょうず(じょうづ、じやうず)
「じょうず」という読み方は、上手という漢字を使う中で最も頻度が高い読み方です。使用例の半数以上を占めます。
「じょうず」と読む場合の意味としては、大きく分けて下記の2つがあります。
(1)技術など物事のやり方が巧みなこと。手際がよいこと。また、そのさまや人。
(2)人のきげんをとるのがうまいこと。お世辞やお世辞を言うこと。
(1)は、下手(へた)の反対の意味で、下手(へた)が反対語になります。
話し上手や聞き上手、料理上手と言った言葉もよく聞く言い方ですし、野球が上手だ、絵を描くのが上手だ、上手に交渉する、説明が上手な学生など、とてもよく使います。
また、派生の言葉として「上手(じょうず)さ」という名詞もあります。
また、上手(じょうず)を使った慣用的な表現も多く、
- 上手(じょうず)の手から水が漏れる…(巧みな者でも時には失敗すること)
- 上手(じょうず)の猫が爪(つめ)を隠す…(才能がある者は、ひけらかすようなことはしないこと)
- 好きこそ物の上手なれ…(好きなことは上達も早いこと)
- 話し上手(じょうず)は聞き上手(じょうず)…(話がうまい人は、人の話を聞くのもうまいこと)
- 下手(へた)の長糸、上手(じょうず)の小糸…(下手な人は無駄が多く、上手な人は無駄なく要領がいいこと)
などがあります。いずれもよく知られた表現です。
(2)は、「お」を付けて「お上手(じょうず)」と表現することが多く、「お上手を言う」とか、「お上手な人だ」のような使い方をします。
また、慣用的な表現もあり、
- 上手(じょうず)ごかし…(口先がうまく、相手に諂い親切を装って取り入ること)
- 上手者(じょうずもの)…(世辞がうまく、手抜かりなく立ち回る者)
などが、(2)の意味で使われます。
ちなみに、上記の(1)(2)の意味では「じょうず」と読むのが普通ですが、稀に
「じょうづ」、「じやうず」、「じゃうず」、「じようず」、「じやうづ」、「じゃうづ」、「ぜうず」
などの表記・読み方をする場合もあります。
2.うわて
上手(じょうず)の次によく読まれる読み方が「うわて」です。
この場合、意味としては、下記の3つがあります。
(1)方角や位置、場所などが上の方。
(2)地位や立場、能力などが相手よりも高く勝ること。また、その地位など。
(3)相撲で組み合った時に、相手の腕の上から差した手。
(1)は、ふつう土地の高い方を指して言う言葉で、特に川上(かわかみ)や風上(かざかみ)を指す時に使います。
たとえば、「河川の上手(うわて)へ向かって歩く」のような使い方をします。
この場合の反対語は、下手(しもて)です。広義には、下手(したて)も反対語と言えますが、言葉としては下手(しもて)を反対語とするのが自然です。
(2)は、上下、優劣、強弱など、二つの対象を比較して表現する場合に多く使われます。
特に囲碁や将棋などがその典型で、対局者の段位や実力の優れた者を指して上手(うわて)と表現します。
用例として「昨日の勝負は、上手(うわて)の圧勝であった」のような使い方をします。
また、(2)の意味の延長として、自身を優越的な立場において相手を威圧したり脅かしたりするような態度をとることの意味としても使われます。
例えば、「弱い相手だと、すぐ上手(うわて)に出る」のような言い方をします。
なお、(2)の場合の反対語は下手(したて)です。下手(しもて)ではありません。
(3)は、相撲のみで使われる言葉で、決まり手として上手(うわて)を使う表現が多くあります。
例えば「上手捻り」、「上手投げ」、「上手出し投げ」などがあります。
(3)の場合の反対語は、下手「したて」になります。
ちなみに、「うわて」と読む場合、上記(1)~(3)の他に、
中世に流行した犬追物(いぬおうもの)という騎射訓練において、自分の馬の前方に立つ射手
の意味や、
朝廷の男子の正服において束帯に用いる石帯(せきたい)の左の一端についている革帯
の意味もあります。
いずれも特定の用語として使いますので、広く使われる言葉ではありません。
3.かみて(かみで)
「かみて」は、「うわて」と同じくらい多い読み方です。
意味としては、下記の3つがあります。
(1)上(かみ)の方。上座(かみざ)の方。地勢的に高い方。
(2)川の水が流れてくる方。川の上流の方。
(3)演劇や芝居などで客席から舞台に向かって右のほう。
(2)は、広い意味では(1)に含まれますが、「かみて」は川の上流を意味する言葉として定着した表現ですから、ここでは分けました。
(1)~(3)のいずれの場合にも、反対語として下手(しもて)という言葉があります。
(1)~(3)の意味の具体的な用例をひとつずつあげておきます。
(1)丘の上手(かみて)には、小さな小屋がある。
(2)あの川の上手(かみて)には大きな橋がある。
(3)人気俳優が舞台の上手(かみて)から現れた。
いずれも通常は「かみて」と読みますが、稀に「かみで」と濁音で発音する場合もあります。
また、上手は「かみて」又は「かみで」と読んで、人名(苗字)などの固有名詞としても使われています。
4.うま
この読み方は、「上手(うま)い」や「上手(うま)く」のように、送り仮名を添えて使います。
常用外の読み方ですが、技術などが巧みなことを意味する表現として、比較的よく使います。
意味としては、上記で説明した上手(じょうず)とほぼ同じですが、言葉の響きが違うことから使い分けられます。
「うまい」にはもともと色々な意味があり、
(1)料理がおいしいこと(「旨い」や「美味い」、「甘い」とも書く)
(2)都合がよいこと(例:うまい話)
(3)技術的などがすぐれていること(「巧い」とも書く)
などを表します。
上手(うま)いと表現する場合は、このうちの(3)で、技術的などがすぐれていることを意味します。
単に「うまい」と表現しただけでは意味が多岐に渡りますが、上手(うま)いと表記すれば、(3)の意味であることをより端的に表現できます。
上手(うま)いは、常用外とは言え「バスケットボールが上手い学生」、「時間を上手く使う」、「料理が上手い人」のように幅広く使われます。
なお、「上手(うま)い」は、「お前、水泳が上手(うめ)ぇじゃねえか!」のように、「うま」を「うめ」と読ませるような使い方をすることもあります。
5.じょうて
「じょうて」は、上手をそのまま読んだ読み方ですが、上手の2字だけを「じょうて」と読むのは、人名(苗字)などの固有名詞としてだけです。
通常「じょうて」と読むのは、上手物と書いて「じょうてもの」と読む熟語として使う場合です。
上手物(じょうてもの)の意味は、精巧に作られた品物や工芸品のことで、下手物(げてもの)がその反対語です。
ちなみに、上手物は「じゃうてもの」や「じやうてもの」と書く場合もあります。
6.じょうしゅ
「じょうしゅ」は、上手をそのまま読んだ読み方のひとつですが、とても稀な読み方で、上手契(じょうしゅけい)という熟語としてだけ使われます。
従って、上手の2字だけで「じょうしゅ」と読むことは通常はありません。あくまで「上手契」と書いて、「じょうしゅけい」と読ませる使い方をします。
上手契(じょうしゅけい)とは、中国における不動産の売買契約方法のひとつの名称です。
上手契はもともと中国語で、その漢字表記を日本語で読む読み方(音読み)が「じょうしゅけい」となったものです。
7.うえで
上手を「うえで」という読み方は、専ら人名(苗字)や地名などの固有名詞に使う時だけです。
従って、一般の会話や文章などで「うえで」と表現することはありません。
あくまで、その人名や地名を表現する時の読み方です。
まとめ
以上、「上手」の読み方について細かく説明してきましたが、簡単に整理してまとめます。
上手の、通常の読み方は、
・じょうず(じょうづ、じやうず)
・うわて
・かみて(かみで)
・うま
です。
殆どの場合、「上手」は、上記のいずれかの読み方と考えて良いでしょう。
それ以外の読み方としては、
- 他の漢字と組み合わせた上手物(じょうてもの)や上手契(じょうしゅけい)のような固有の読み方
- 濁音などの音の変化や「ず」と「づ」、「よ」と「や」の違いによって生まれた本来と異なる読み方
- 当て字や固有名詞として使う読み方
です。
とても多くの読み方がある上手ですが、このように分類すると分かりやすくなります。