NHK (日本放送協会)の放送受信料の公平な負担については、NHK自らが訴えていて、未契約者へ呼びかけたり、公的放送の重要性を伝えたり、公的放送への理解を求めたり、また、悪質な者へは法的手段を持って対処したりしています。
このような取り組みや姿勢をみると、公平な負担を実現するために、日々努力しているかのように見えますが、実は、公平な負担の根本的な解決を妨げているのはNHKそのものなのです。
強制力のない放送法
そもそも、放送受信契約をしていない人は3割にも及ぶと言われていますが、まじめに受信料を支払っている立場から見れば、不公平を感じるのは当たり前で、なんとか解決して欲しいと思いますし、また、解決すべき問題でもあります。
しかしながら、NHKの取り組みは、ほとんど功を奏しておらず、何ら根本的な解決になっていないのが現実です。では、なぜ根本的な解決にならないのでしょう。それは、受信契約の根拠となる放送法に、強制力がないからに他なりません。
放送法を整備すればNHK職員が困る
換言すれば、法を整備して仕組みを作れば、それなりの強制力を生じるため、自ずと受信料負担の不公平さは解消します。従って、NHK自らが政府に対して、法を整備して仕組みを作るように、積極的に働きかければ良いのです。
しかし、NHKはそのようなことを、決して本気でやろうとはしません。それは、なぜでしょう。理由は簡単で、もし本気でやったら、NHK職員の給料が減るからに他なりません。
給料が減るというと、聞こえが悪いですが、正確な表現をするならば、平均年収1200万円にもなるNHK職員の給料が、常識的な給与水準に引き下げられるだけのことです。
受信料支払いに強制力を持たせようとして、法を整備して仕組みを作ろうとすれば、必ず問われるのがNHKのあり方はもちろんのこと、受信料金の妥当性であります。
そして、受信料金の妥当性を議論すれば、経費の大部分を占めるNHK職員の給料額が適切であるかが議論されるのは当り前で、平均年収1200万円という数字が叩かれるのは明らかです。
このようなことは、当のNHKがよくよく知っていることなので、決して本気で推進しようとはしませんし、たとえ取り組んだとしても形だけであったり、平均年収には触れられない範囲の働きかけしかしません。
実際、NHKのありかたについては、いろいろ議論されているようですが、突き詰めていえば、年収を議論されることに関して、NHK側が、腰が引けている点が最大の妨げになっているわけです。
異常なほど高額なNHK職員の年収
さて、平均年収1200万円の数値についてですが、国会議員が公表した数値や、NHK予算審議などの数値から判断しても、この数値の信憑性は極めて高く、実際の数値に大差はないと言えるでしょう。
ここで面白いのは、これだけの金額は世間でも批判を浴びることを知っていてでしょう、NHKの公式サイトで職員の年収を説明しているページ(いわゆるQ&A)では、「大卒モデル年収」や「基本年棒」といった、数字のトリックを使いやすい表現(「モデル」とか「基本」)でしか説明しておらず、少しでも年収を低く見せようとしている姿が見え見えなのです。
同じページに「職員の給与等の支給基準」がリンクされていますが、このリンク先の中身を見ると、驚く方も多いと思います。
基準となる給料額を見ると、大手企業でもここまでもらっている企業はそうそうないという高額になっていますし、着目する点は、手当の内容が異常なほど手厚いことで、相応の残業があることも考慮すると、平均年収1200万円にはなることが、容易に理解できると思います。
高額な年収はNHKも自覚
この1200万円という額は、一般企業の平均年収の4倍、公務員の平均年収でも2倍に相当するといわれていますが、常識のある方なら、これを高いと思わない人はいないでしょう。
放送業界大手の、フジテレビ、TBSテレビ、テレビ朝日などは平均年収が1300~1400万円だと言われていますが、これらは利潤を追求する企業です。公的サービスを提供する機関は、利潤追求を第一とすべきではなく、大手放送企業と同じ土俵で比較するのはおかしな話です。
何よりNHKじしんが年収を少しでも低く見せようとしている姿勢こそ、1200万円は高いことを自覚している表れです。
また、「高学歴で高度な能力を要求され、難易度の高い就職戦線を勝ち抜かなければNHK職員になれないのだから、1200万円は相応の年収だ」という意見もありますが、これは論理がさかさまですね。
公的な機関で安定性があるから人気があるのは事実ですが、年収が高額だから就職希望者も殺到して倍率も高くなり、結果として採用される人は高学歴で能力の高い人になるわけです。
仮に、NHKの年収が一般の公務員並みの600万円であれば、そのような就職希望者の多くは、就職希望先を民放へと変更することでしょう。
受信料の公平負担より先に改善すべきことがある
我々が放送受信料を支払っているのは、公的な質の高い番組を視聴する対価としてであって、NHK職員が裕福な暮らしをするためではありません。
おもてでは公平な負担を訴えているNHKが、裏では不公平さの根本解決を妨げているとは何とも滑稽な姿です。受信料の公平な負担を実現する前に、不公平な給与体系を改善することが先ではないでしょうか。