実家へ行った時に、高齢の父が健康管理のために毎日、朝晩、血圧計で血圧を測定して、記録を付けていたのですが、測定する度に何度も測り直していました。
そこで「どうして何回も測っているの?」と尋ねると、「測定値がバラついて、測るたびに値が変わるから」との返事が返ってきたので、そんなものかと思っていました。
今回、そのことを思い出し、実際の測定値って、どれ位バラつくものなのか、我が家にある家庭用血圧計で試してみることにしました。
安静状態で測定
まずは、単純に繰り返した場合に、測定結果がどれ位バラつくものなのか試してみました。
実際に使用した血圧計は、オムロン製のHEM-7510Cという型名で、一般によくある、腕の上腕に巻き付けるタイプの血圧計でした。(写真)
安静にして測定することが大事なので、椅子に腰掛け、テーブルの上に腕を置き、取扱説明書に記載された測定方法に従って、まず、十回連続で測定してみました。(測定間隔は約1分)
この間、一度上腕に巻きつけたら外すことなく、そのまま10回、図り続けました。測定中は終始安静を心掛け、体は極力動かさないようにして、身体全体がリラックスするように心掛けていました。下表がその時の結果です。
回数 [回] |
最高血圧 [mmHG] |
最低血圧 [mmHG] |
脈拍数 [拍/分] |
1 | 124 | 76 | 69 |
2 | 123 | 76 | 68 |
3 | 120 | 75 | 69 |
4 | 117 | 71 | 67 |
5 | 116 | 65 | 66 |
6 | 109 | 69 | 67 |
7 | 113 | 67 | 67 |
8 | 115 | 71 | 66 |
9 | 115 | 73 | 67 |
10 | 110 | 65 | 65 |
この結果を見て分かるように、測定のバラつきは、多少は生じてはいるものの、測定値の差(バラつき)自体には、血圧の状態が大きくかわるような大差はなく、傾向自体もほぼ同じでした。
ちなみに、最高血圧の最大と最小の差は15(=124-109)、最低血圧の最大と最小の差は11(=76-65)、脈拍数の最大と最小の差は4(=69-65)でした。分かりやすいようにグラフで見ると、下図の通りになります。
1つ気付いた点は、測定開始直後から全体的に血圧が少し下がっていて、少し時間が経過したところで値が落ち着いた点です。
恐らく、測定開始と同時に椅子に腰かけ、リラックスして少し時間が経過してから血圧が安定して、それが反映されたのでしょう。
後半5回だけのバラつき(最大と最小の差)だと最高血圧は6mmHG、最低血圧は8mmHG程度なので、実質上のバラつきは、もっと小さいと考えて良いでしょう。
また、脈拍数はいずれも大きくは変わりませんでした。
その都度巻き直した場合
次に、測定の度に、上腕に巻きつける部分を付け直す操作を加えました。つまり、最初は一度巻いたらあとは10回連続して測定していたのに対して、今度は、1回1回腕に巻き付け直しながら測定しました。
体の状態は上記と同じで、体も極力動かさず、リラックスを心掛けて測りました。下表がその時の結果です。
回数 [回] |
最高血圧 [mmHG] |
最低血圧 [mmHG] |
脈拍数 [拍/分] |
1 | 108 | 67 | 66 |
2 | 114 | 66 | 66 |
3 | 116 | 72 | 67 |
4 | 119 | 75 | 67 |
5 | 116 | 68 | 66 |
6 | 113 | 69 | 66 |
7 | 114 | 73 | 67 |
8 | 114 | 72 | 67 |
9 | 113 | 69 | 67 |
10 | 113 | 72 | 65 |
この結果を見て分かるように、測定のバラつきは最初と比べた場合と大差はない、むしろ見方を変えれば、こちらの方が少ない感じすらします。
ちなみに、最高血圧の最大と最小の差は11(=119-108)、最低血圧の最大と最小の差は9(=75-66)、脈拍数の最大と最小の差は2(=67-65)でした。グラフで見ると、下図のようになります。
このことから、腕への巻き付け方による影響はあまり神経質になる必要はないとは言えると思います。
しかし、使用した形名の血圧計では、巻きつける部分が初めから円形になっていて、巻き付け方の良し悪しによらずに、それなりに腕にフィットするような構造になっていて、バラつきを防止してくれていると考えられます。
従って、巻きつける部分がこのような構造ではない血圧計の場合は、腕にしっかりとフィットするように、心掛けて巻きつけることが大事といえるでしょう。
故意に身体を動かした場合
最後に、リラックスした安静状態ではなく、故意に身体を動かした場合について試してみました。
この時、腕への巻き付けは、最初の一回限りとし、椅子に腰かけてテーブルに腕を置くのは同じですが、意識して安静状態を保つようなことはせず、測定中は常にスマホのゲームで遊び続けるようなことをしていました。
つまり、わざと身体を動かすことはしないまでも、これくらいならと思ってしまう程度の、ちょっとした身体の動きが生じる状態を想定して試してみました。下表がその時の結果です。
回数 [回] |
最高血圧 [mmHG] |
最低血圧 [mmHG] |
脈拍数 [拍/分] |
1 | 115 | 65 | 65 |
2 | 114 | 69 | 64 |
3 | 112 | 67 | 65 |
4 | 113 | 68 | 66 |
5 | 111 | 68 | 68 |
6 | 114 | 69 | 64 |
7 | 116 | 66 | 65 |
8 | 111 | 69 | 65 |
9 | 115 | 70 | 66 |
10 | 110 | 67 | 66 |
この結果から、安静状態に比べると若干バラつきが大きくなった気がしてはいたのですが、実際の数値を見ると、全然違うような値にはなっていないと言えます。
ちなみに、最高血圧の最大と最小の差は6(=116-110)、最低血圧の最大と最小の差は5(=70-65)、脈拍数の最大と最小の差は4(=68-64)でした。グラフで見ると、下図のようになります。
安静状態の時よりもむしろ若干なりともバラつきの小さい数値になっていることに不思議な感じもしますが、ここで特筆すべきは、この10回の測定の他に1回だけ測定エラーが発生して測定自体ができなかったことがあったことと、10回目(最後の測定)においては、ウォーニングが表示されて「再測定をおすすめします」及び「体を動かさないで下さい」というメッセージが出たことです。
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つまり、血圧計側で、測定状態が良くないことを認識できたということで、家庭用血圧計にしては良くできているものだと感心しました。
以上、家庭用血圧計の測定値がどれくらいバラつくかを試してみました。結論として言えることは、
- バラつきはある程度はあるが著しく異なるような値とはならない。
- 測定では安静が大事だが、リラックスして少し時間が経過した方が血圧が落ち着く 。
- 血圧計の性能に頼らず、腕への巻き付けや安静を保つことには注意すべきである。
ということです。家庭でも簡単にできる、健康管理に役立つ血圧測定ですが、測定結果に影響する要因を頭に入れて、少しでも正確な測定をして、健康維持に努めて行きたいものです。