職場や自治体などでよく実施されている大腸がん検査は、いわゆる検便による検査なので、誰でも手軽に受けることができます。そんな大腸ガン検査ですが、便に潜血があり陽性との判断が出ると、要精密検査などとなって不安を覚えるものです。
実際に行われる精密検査は、内視鏡カメラによる方法が一般的ですが、初めてのこととなると何から何まで分からないことだらけで、特に、ガンではないだろうかとの精神的な不安や、検査は痛くないのだろうかという心配、時間を要するのではとの気がかりや、検査費用は高額ではないかとの懸念など、気になることは色々あるものです。
始めて大腸ガン内視鏡検査へ臨む人が、それらの不安を少しでも取り除けるように、私の精密検査の経験や実際に行った切除手術の経験、更に医師や医療機関から聞いた数々の話をもとに、検査等の流れを中心に細かく説明します。
目次
【1】内視鏡検査に至るまで
一般に定期的な健康診断などでは、大腸がんの検査として「検便」による方法が行われます。これは、便の中に血液が混ざっていないかどうかで判断する検査方法で、潜血といって便に血が混じると陽性との結果になります。この場合、大腸ガンの可能性が疑われることになり、より精密な検査が必要になります。
この精密検査には、通常、内視鏡カメラによって大腸内を直接、視覚的に確認する方法が採られます。医療技術の進歩によって、CTによる大腸ガンの検査や、バリウムを肛門から注入して行う注腸検査と呼ばれる検査も行われるようになってはいますが、内視鏡カメラによる方法では、カメラによって直接内臓の内部を見ることができるため、一般的にはこの方法によって精密検査が行われます。
検便によって陽性の結果が出るのは、検便を行った人の中の数パーセント前後と言われていますが、この数パーセントのうち、実際にガンが見つかるケースはごく一部だそうです。換言すれば、潜血という現象が起きる原因には色々な要素があり、ガン以外の要因で陽性(潜血)となるケースが多いのです。
従って、検便の結果が陽性になったからと言って、いたずらに不安に思う必要はありません。私の妹もかつて要精密検査となって内視鏡カメラによる検査を行ったのですが、結果としては何でもありませんでした。私自身も、良性ポリープが見つかり、予防措置として切除手術を行ったのですが、「良性ポリープが検便で潜血となった原因ではないだろう」との医師の説明もありました。
【2】精密検査
大腸ガンの内視鏡カメラの検査(大腸内視鏡検査)と聞くと、肛門からカメラ付きのケーブルを挿入して、大腸内を直接観て検査するものだということは、誰しも想像がつくところです。しかし、実際にどのような感じの検査なのかとなると、経験したことのない人にとっては実感が分からないばかりか、何かと不安が生じるのが現実です。
ここでは、大腸ガンの内視鏡カメラの検査の内容を、その方法を含めた全体の手順の流れで説明します。私の生の体験をもとに説明しますので、医療機関の違いや検査方針・治療方針などの違いで若干の差異はあるかも知れませんが、基本は同じですから大いに参考になると思います。
【2.1】病院や診療科は?
さて、検査の全体の流れの概要について説明する前に、どんな病院でどの診療科を受診すれば良いのか迷うケースもあるかと思いますので、それについて触れたいと思います。
大腸は内臓のひとつですから通常は「内科」が診療科になります。しかし、病院によっては内科が細分化されていて別な名称になっている場合もあります。また、診療科が内科でも、実際の内視鏡検査を行う場所は、病院内の「内科」の場所では無く、内視鏡検査室などと呼ばれる別な場所となることも多いので注意が必要です。
どんな病院にすれば良いのかと迷うものですが、大腸内視鏡検査の設備がある病院であれば、どのような病院でも検査を受けることができます。しかし、気持ちとして不安があるのであれば、地元の大きな総合病院に行く方が良いでしょう。その方が、精神的にも安心できますし、私自身もそのようにしました。
【2.2】内視鏡検査直前までの準備
さて、実際の検査に臨むまでの一連の流れですが、概要を示せば以下のようになります。
(1)健康診断等の陽性結果を持参して内科を受診する。(診察受診)
(2)上記の受診時に、精密検査(大腸内視鏡検査)の日時を予約する。(検査予約)
(3)検査日2~3日前から、検査を配慮した食生活にする。(食生活の配慮)
(4)検査日前日、夕食後の指定時間に、予め処方された下剤を服用する。(下剤服用)
(5)検査当日の朝、朝食を摂取せずに、通院する。(検査通院)
以上が、実際に検査を受けるまでの準備の流れです。(検査そのものは入院する必要はなく、検査日だけの日帰り通院によって実施します)
検査では大腸内の便を全て排出して、腸内をキレイな状態にしておく必要がありますので、これらはそのための準備です。これらの準備が済めば、実際の検査時に比較的スムーズに腸内をキレイにすることができて、検査に臨む態勢を整えることができるようになります。
では、これら一連の準備について、ひとつひとつ具体的に説明します。
【2.2.1】診察受診
緊急外来などを除いて、通常の病院ではまず診察から始まります。大腸内視鏡検査もこれと同じで、まずは内科を普通に受診して、健康診断等で大腸ガンの検便にて陽性が出た旨を伝えます。健康診断の結果の書類があれば、コピーなどを持参して診断結果全体を見てもらう方が良いでしょう。
診察では、特に何かをすることはなく、自覚症状の有無や、最近の健康の状態、日頃の生活習慣の様子、気になる点の有無などについて、医師による問診がされるといった内容です。
【2.2.2】検査予約
特段、緊急性がない場合や特殊事情でもない限り、大腸内視鏡検査の日程を確認して、検査日を調整して決定することになります。混雑時期やカレンダーなどによって直ぐに検査をできない場合もあります。
私の場合は、2~3週間先まで予約がいっぱいで、四週目に時間の取れる日があったことから、診察日から数えて約1か月後に検査を予約することになりました。
そして、検査の内容や検査に向けての注意点などの説明がなされ、「検査の内容を理解して検査を実施することを承諾した」旨の承諾書にも署名しました。ここで行われる説明では、検査に関する一連の説明がなされますので、きちんと聞いておくことが大切ですし、分からないことや不安に思ことがあれば、この機会に聞いておくのがよいでしょう。
検査日の予約が完了して、具体的な検査日が確定し、一連の説明や承諾書へのサインが完了すると、下剤が処方されて、検査日前日に服用するように指示があって、診察の全ては終わりとなります。
検査に関する説明書はとても大事ですから、しっかり読んでおきましょう。特に、何か持病がある方は、影響が出る可能性がありますので、事前に医師に相談しておくべきです。
【2.2.3】食生活の配慮
検査日が近づくまでは特に何もする必要はありませんし、食生活も配慮する必要もありません。しかし、検査日の2~3日前からは、摂取する食事に注意が必要になります。特に検査日の前日には、摂取する食事には細心の注意を払いたいものです。
こうした食事の管理を怠ると、より正確な検査が妨げられたり、検査に時間が掛かったりしますし、場合によっては検査そのものを受けられない場合もありますので、しっかりと取り組みたいものです。
さて、具体的な食事制限としては、腸内に残りやすい固形物のような食べ物の摂取は控えるようにします。これは固形物の中には、腸内でも個体としての形状を保つものがあり、腸内の便を全てキレイに排出する上で妨げになってしまうためです。
具体的に摂取を控えるべき食べ物には下記のようなものがあります。
キノコ類、山菜類、豆類、こんにゃく、海藻類、繊維が多い野菜、種を含む野菜・果物
一方、摂取しても問題になりにくい食べ物には下記のようなものがあります。
ごはん、うどん、卵焼き、目玉焼き、豆腐、ヨーグルト、食パン、茶わん蒸し、スープ、クッキー、蒸しパン、白身魚
要するに、摂取後に溶けて液体にならず、排便時にも形状が残るような食べ物は望ましくありません。スープやうどんなども具が無いもの、あっても個体形状が残らない具にするようにしましょう。便秘症の方は、2~3日前からこのような食事にするようにし、そうでない方も、前日には完全にこのような食事にしましょう。
また、検査前日には普段より水分(水・お湯・お茶、スポーツドリンク)を多めにとるように心掛け、最低でも2000ccは摂取するようにしましょう。
【2.2.4】下剤服用
前日の食事ですが、夕食までは普通に食事をすることが許されていましたが、夕食は7時までに食べ終わるような指示がありました。それ以降は、水(お湯)とお茶以外は一切禁止となります。
そして、前日の夜8時に、診察時に処方された指定の下剤を飲みます。これにより、既に摂取した食べ物が排出されやすくなりますが、実際に便が出るかどうかは個人差があり、その後すぐにトイレに行く人もいれば、朝まで便がないような人もいます。
【2.2.5】検査通院
検査日の朝は朝食は食べられません。食べないでそのまま検査通院に向かうことになります。摂取してよいものは水かお茶だけです。ジュースはもちろん、スポーツドリンクの類も一切摂取禁止です。水分は朝から多めに摂取することが望ましいです。
さて、実際の通院ですが、自分で車を運転して病院へ行くのは控えた方が良いでしょう。
検査時に、腸内の活動を抑制するための薬を注射するのですが、その影響で運転が上手くできなくなる可能性があります。また、検査直後は腸内へ送り込む空気が原因で、しばらく腸が張ったような状態が続く場合もあります。更に、朝昼と食事を二回抜く形になりますので体力的にも一時的に低下します。
やむを得ず車を自分で運転して病院に向かう場合は、検査後には別な人に運転してもらうことも想定しておいた方が無難です。もし、検査に当たって制脈麻酔(眠り薬)を使用する方法を希望していた場合は、絶対に運転すべきではありませんのでご注意下さい。
【2.3】大腸内視鏡検査の流れ
実際の大腸内視鏡検査のおおまかな流れは、大きく分けて2段階で、まず最初はもっぱら大腸内の便を排出しきって、腸内をキレイにするために専用の薬品と水を飲み続け、排便を繰り返します。これが検査当日の時間の多くを占めます。
そして腸内がキレイになってから、検査服に着替えて実際に内視鏡による検査を行いますが、検査そのものの実質的な時間は平均で30分程度と言われています。
このように大腸内視鏡検査の当日は、検査そのものよりも腸内をキレイにするための処理に費やす時間が多くを占め、実際の検査時間は比較的、長くありません。
以下、これらについて詳細を説明します。
【2.3.1】腸内をキレイにする
【2.3.1.1】専用の液剤を用いる
検査日に出される「経口腸管洗浄剤」という専用の薬を使用して、排便を繰り返し、内視鏡でしっかり見ることができるように腸内をキレイにします。私が飲んだ薬はモビプレップ(MOVIPREP)配合内用剤と呼ばれる薬で、殆どが水を成分とする液剤2リットルで、最初の1リットルを一時間掛けて飲み、その間水をコップ3杯以上飲みます。その後、同じ液剤500ミリリットルを40分掛けて飲み、その間水をコップ1杯以上飲みます。
更に、液剤500ミリリットルを40分掛けて飲み、その間水をコップ1杯以上飲みます。このように、ただひたすら「経口腸管洗浄剤」を飲み続けますが、この間に繰り返し、繰り返し排便し、腸内をキレイにして行きます。
最終的に便そのものが尿のような感じの液体になる(上記写真の④の状態)と、検査が可能な状態と判断されます。便が完全な液体にならずに個体物が混じる状態や、液体であっても色が濃い状態ではまだ検査は可能な状態とはいえません。検査前日までに食事の管理をするのは、まさに腸内をキレイにするためにあったのです。
【2.3.1.2】注意すべきは2点
この時に気をつけるべき大事なことは、
1.専用の薬を服用するリズムは、服用の仕方に従うこと
2.身体を動かすなどして、意識して繰り返して排便すること
の2点です。
【2.3.1.2.1】服用方法に従う
まず、「専用の薬を服用するリズムは、服用の仕方に従うこと」についてですが、服用の仕方そのものは「経口腸管洗浄剤」の表にも記述してあるでしょうし、検査施設が用意した手順などもあるでしょうから、必ずそれに従うことです。
「経口腸管洗浄剤」は、便を排出して腸内をキレイにするための液剤ですから、その目的を果たすためには、服用の仕方に従うことが一番確実だからです。
【2.3.1.2.2】排便を意識して心掛ける
また、「身体を動かすなどして、意識して繰り返して排便すること」についてですが、「経口腸管洗浄剤」そのものにも便を促進する作用はあるのですが、薬に頼って自然な便意に従っていたのでは、なかなか排便が進まず、腸内がキレイになるまで時間を要してしまうのです。
要は、少しでも早く腸内をキレイにするために、排便したくなるように病院施設内を歩くなどの軽い運動をして、意識して繰り返し排便することを心掛けましょう。特に、便秘ぎみの人や、便が出にくいような体質の人は努めて励む方がよいでしょう。
洗濯でも食器洗浄でも、すすぐ回数が多ければ多いほどキレイになるのと同じで、排便の回数が多ければ多いほど、腸内をキレイにしやすいのです。なぜ腸内を早めいキレイにする方が良いのかといえば、腸内がキレイになったことを確認できた人から順番に検査が行われますので、遅くなれば遅くなるほど、検査の開始時間も遅くなるからです。
一人当たりの検査時間は30分と言われますから、検査を受ける人が8人いれば、検査を最初に受ける人と最後に受ける人との検査終了時間は3~4時間も変わってきてしまいます。(検査設備が1つの場合)
検査当日の朝食と昼食を抜くことになりますから、体力的にも負担が大きいので、検査を少しでも早く終えて、少しでも早目に食事をとりたいものです。
【2.3.1.3】副作用にも注意
「経口腸管洗浄剤」は下剤としての作用もありますので、身体に対しては負担がかかるのは否めません。食物が当たって下痢をする訳ではないので、下痢に伴って発生するような腹痛は基本的にありませんが、薬物としての副作用は少なからずあります。
「経口腸管洗浄剤」の表書きには、
気分が悪い、吐き気がする、吐いた、お腹が痛い、顔が青ざめる、めまいがする、寒気がする、じんましんがでる、息苦しい、顔がむくむ
と書いてあるように、まれにこのような症状を発生する人がいるようです。
仮にそのような場合でも、冷静になって、きちんと医師や看護師に話をすれば大きな問題にはならないでしょう。
実際に私が検査した時に、同時に検査を受けた人は述べ20人位いましたが、「経口腸管洗浄剤」を服用して気分が悪いなどの症状が出たような人は、一人もいませんでした。「経口腸管洗浄剤」を服用してひどい副作用が発生するようなケースはごくまれと考えて良いでしょう。
ちなみに検査を受けた人の大半は60代以降と思われる高齢者でしたが、50代、40代、30代、20代と年齢が下がるにつれて人が少なくなり、20代、30代と見られる人も3~4人ほどはいました。
【2.3.1.4】専用液剤の口当たりは
さて、気になる「経口腸管洗浄剤」の味ですが、正直言っておいしいと言えるものではありません。少し酸味を感じるスッパサがあり、感じとしてはリンゴのような風味(例えであって、美味しいものではない)があります。少し甘みを感じるような口当たりはあるものの実際には甘くはなく、あくまで薬という感じがして、お世辞にも飲みやすいと言えるものではありません。
飲み終わって口に残った酸味は、その後、わずかな苦みみたいな感覚を感じさせ、あと味はとても悪い感じです。「経口腸管洗浄剤」の服用に合わせて、相応の水も飲むようになっていますので、あと味が悪くならないように「経口腸管洗浄剤」を飲んだら水を飲むというリズムで服用すると良いでしょう。
さすがに2リットルもの「経口腸管洗浄剤」と1リットルを超えるような水を摂取するので、ちょっと苦しいようなお腹いっぱいの満腹感のようなものを感じます。しかし、満腹感があることで、朝昼と食事を抜いていても、却って空腹があまり気にならずに済みます。
【2.3.2】検査を受ける
腸内がキレイになればいよいよ検査です。他に検査を受ける人が何人もいる場合は、腸内がキレイになった人から順番に検査を実施することになりますので、自分の番が来るまでは待たされる場合があります。
待っている間も、可能であれば水を飲み、排便を心掛ける方が良いです。それは、少しでも腸内をキレイにして、可能な限り検査をしやすくする方が良いからです。
【2.3.2.1】衣類着用のままで検査
さて、自分の順番が迫ってくると、看護師から、更衣室で検査服に着替えて待つように指示があります。パンツ等の下着は、使い捨てタイプの検査専用のパンツが支給されますので、更衣室でそれに履き替え、その上から専用の検査着を着ます。
検査着は、丈の短い浴衣みたいな服で、帯の代わりにヒモで縛る形式の服です。シャツなどは邪魔にならないなら脱ぐ必要はありませんし、邪魔になるようであればシャツだけ脱げば(上の)下着を脱ぐ必要はありません。
検査専用のパンツは、後方に穴が開いているため、パンツを着用したままでベッドに横たわって検査を受けるようになります。「下半身は裸になるの?」とか「恥部は露出するの?」などと心配する人もいるかと思いますが、検査専用のパンツは肛門部分を露出させるような構造なので気にする必要はありません。
【2.3.2.2】検査の流れは難しくない
実際に検査の順番が回ってくると検査室内に呼ばれて、直ぐに検査をすることになりますが、基本的に、担当医や助士などの指示に従えば、それほど難しいことも怖いこともありません。
まず、検査室内に設置してある専用のベッドに乗り、身体を横にして寝ます。身体の状態をモニターするために、血圧計が腕に巻かれ、酸素センサーが指に取り付けられます。
その後、大腸の動きを抑制するために注射(抗コリン剤)が打たれ、それが終わるとベッドが一定の高さまで上げられ、続いて内視鏡の挿入がスムーズになるように肛門にゼリーが塗られて、いざ内視鏡を挿入する準備が完了となります。
【2.3.2.3】痛みはない
【2.3.2.3.1】大腸は何も感じない
医師からは、これから内視鏡を入れる旨の話があり、肛門から内視鏡カメラが入れられて行くのを感じましたが、大便の時に便が肛門から出て行くような感覚に近い感じくらいで、それ以外に痛みや違和感・異物感などは一切感じませんでした。
内視鏡を大腸の奥まで挿入するためにゆっくりと管を入れて行きますが、その際感じるのはやはり、肛門を何か物が通過するような感覚があるくらいで、それ以外はありませんでした。
大腸内で何か物が動くような感じがするわけでもなく、敢えていえば時折、お腹の中で、感じるのか感じないのかが分からない程度の何らかのわずかな動きみたいな感覚を味わう程度です。それも意識しているからそう思える程度ですから、意識していないと全く何も感じないくらいです。
大腸内視鏡検査を受けたことが無い人の中には、検査に当たっては麻酔をしたりするのではないかと考える人もいるようですが、そんなものは必要ありません。中には全身麻酔をするのでは、などと考える人もいるようですが、全く必要ありません。
麻酔が必要などころか、大腸内で何かが動いている感覚すら味わえないくらいなので、痛みや苦痛などは、全く心配は要りません。手術歴を持つなど、よほど特殊なケース以外は、全く痛くないと考えて良いでしょう。
では、なぜ全く痛みを感じないのかですが、それはズバリ「大腸には神経が無いから」です。「えっ?」と驚かれる方もいるかと思いますが、神経がないからこそ違和感や異物感すらも感じないのです。このことについては、予防措置のために大きくなった良性ポリープを切除する手術を行った際に、担当医から私が直接、受けた説明だったのですが、私自身もその当時、にわかには信じられませんでした。
【2.3.2.3.2】肛門はケーブルの通過を感じる程度
さて、大腸に神経がなく痛みを感じないことが分かっても、検査全体を通して何か痛みがあったりしないのか不安になると思いますが、敢えて上げるとすれば内視鏡が出入りする肛門部分への刺激です。肛門にはゼリーを塗るので内視鏡の抜き差しなどはスムーズで痛みを感じることはなく、便が通過するような感覚に近いものですが、痔を持病とするような人にとっては少しハードルが高いとは思います。
しかし、日々の便に耐えているようであれば、耐えられる範囲だと思いますし、肛門に塗るゼリーは、実はキシロカインゼリーと呼ばれる麻酔薬などが使われますので、肛門への刺激を和らげてくれます。もし重症な痔を持っている人で、心配であれば、事前に医師に相談しておくと良いでしょう。
なお、検査を受ける人が希望すれば、制脈麻酔(眠り薬)を使用することも可能ですので、検査が怖い人などは事前に医師と相談するのもひとつの手でしょう。
【2.3.2.4】所要時間も短い
内視鏡の挿入が始まってしばらくすると、身体を横向けから仰向けに変更するように指示がありました。これも指示に従ってゆっくりと身体を動かせばよいだけなので特に問題はありません。
そしてその後、内視鏡の先端部分が、大腸の奥、つまり盲腸の手前に行き着くまで、ゆっくりと挿入されます。その際、カメラでとらえる映像の一部始終は、検査を受ける患者自身も見ることができて、ベッドに寝ながら自身の大腸内の映像を観察できます。
内視鏡の先端が大腸の奥に達すると、今度はここからさらにゆっくりと腸内を観察しながら内視鏡を少しずつ引き抜いて行きます。カメラがとらえる映像を一つずつ確認しながら、必要に応じて画像を記録しながら抜いて行くのです。そうした確認を続けて行き、大腸内の全ての検査が終わると最後に内視鏡を外し、あとは肛門についたジェリーを拭い去って検査そのものは終わりとなります。
検査が終わるとベッドから降りて、そのまま検査室内にある椅子に腰かけて、担当医から検査結果について直ぐに説明を受け、そこで全て終了となります。
私が時計を見て測ったところでは、ベッドに横たわってから検査を終えてベッドを離れるまでの時間は15分でした。この15分という時間には、血圧計などの取り付けや、大腸の活動抑制のための注射、ジェリーを塗るなどの一連の作業を全て含んだ時間ですから、所要時間としてはそれほど長くないことが分かります。
恐らく「あっという間だった」と感じるのではないでしょうか。医師からの説明を含めても30分位でしたし、長い人でも医師の説明時間を含めて60分という話ですから、時間がかかる物ではないことが分かるかと思います。
【2.4】検査後は
検査を終えると、あとは普通に生活することができます。但し、内視鏡検査では、大腸内を膨らます目的で内部にガスを入れていますので、お腹が膨らんで少し張った状態になります。検査後の食事は、このガスが抜けてから摂取する必要があります。このガスは、時間の経過と共に、自然と抜けて行きますので、検査後に張っていたお腹の張りが取れれば問題なく食事をすることができるようになります。
さて、検査後の食事ですが何か特に食事制限などがあるわけではありません。しかし、朝食と昼食の2食を抜いているので、胃腸にやさしい食事に越したことはありません。食事制限などがないとはいえ、刺激物や消化に悪い物は避けるべきでしょう。当日の飲酒はしてはいけませんので注意して下さい。また、可能な限り、普段より水分を多めにとるように心掛けましょう。
食事を抜いたことで、自覚が無くても、体力は幾分なりとも低下しているはずですから、検査後はしっかりと身体を休ませたいものです。特に高齢であれば、その分、身体上の負担は大きいはずですから、しっかりと休養をとるべきでしょう。
検査後の排便において、まれに便にスジ状の血液が付着する場合がありますが、特に問題はありません。心配な場合は、検査を受けた医療機関に問い合わせるとよいでしょう。
【3】検査結果次第で
検査結果は、ほとんどの人は、特に異常はなしというのが現実でしょう。というのも、大腸ガンとは関係ない何らかの要因によって潜血となるケースが多いからです。
また、比較的あるケースとしては、潜血の直接の原因とはいえないような良性の腫瘍が見つかる場合です。この場合の措置としては、通常、腫瘍の大きさ(直径)が5ミリメートル未満であれば、日本では経過観察となるのが一般的で、直ぐに切除するようなことはしないそうです。
もちろん患者の要望があれば切除ということになりますが、この場合でも検査当日に実施するのではなく、日程調整をした後日に実施するのが普通です。前もって医師に申し出ておけば、腫瘍が発見された場合は、その日の内に切除してもらうことも可能です。
通常、経過観察にする理由は、「腫瘍が5ミリメートル未満の場合は、良性から悪性に変化する可能性が低いため、無理に切除する必要はない」との考えがあるからだそうです。逆に言えば、5ミリメール以上になると悪性に変化する可能性が高くなるため、早めに切除する必要があるそうですが、その場合は切除した腫瘍の組織検査が行われ、切除した組織内に悪性となる部分が無いかどうかの判断がされます。そして、その状況や結果に従って、一定期間後に再び大腸内視鏡検査を受けるように指示されます。
この腫瘍の切除に対する処置についてですが、アメリカと日本では異なり、アメリカでは、たとえ良性腫瘍であっても腫瘍の大きさに関わらず、検査当日、発見された段階でその場で切除するのが一般的となっているそうです。
さて、検査の結果、悪性腫瘍、すなわち大腸ガンが発見されてそれが潜血の原因であった場合ですが、医師でもなく体験もない私にとっては、役立つような情報は持ち合わせていません。この場合については、専門的な情報を提供してくれる機関などを調べて下さい。
【4】検査費用は
【4.1】費用は高額ではない
ところで気になる検査費用ですが、心配するほど高くはないと考えて良いと思います。私の場合は標準的な検査でしたし、人によって差が生じるものでもありませんから、料金はだいたい私の場合と同じと考えて良いと思います。
また、医療機関や検査機関によっても差があるとは思いますが、機関の違いによって大差があるとは考えにくいので、それほど気にする必要はないでしょう。どうしても、気になるようであれば、直接、検査機関に問い合わせてみるのもよいでしょう。
【4.2】保険が適用される
さて、私の場合の料金ですが、検査当日の費用が6,140円(本人負担3割)でした。
明細の写真を見て分かるかと思いますが、全ての費用は健康保険の対象となっていて、この6,140円が本人負担分として当日かかった金額の全てです。要は、検査は、保険がきちんと適用される範囲ということで、自己負担分は健康保険の本人負担分に相当する額になります。この金額には、検査日に掛かった検査費用一式や診察費用など全てが含まれています。(腫瘍の切除手術費用は含まれていません)
検査に先だって別な日に事前に行われた診察においても、診察費用は全て込みで280円(本人負担3割)でしたから、これを含めても、6、420円ということになりますので、それほど高くないといえるでしょう。
ただし、この金額には初診料が含まれておりません(当該病院の別の診療科を以前に診療していた経緯があったため)ので、厳密にはこの額に初診料が加算される額と考えて頂ければよいでしょう。
ところで、ごくごく稀なケースですが、検査に伴って緊急処置が必要になるような事象が発生した場合は、追加料金が発生する可能性もあることだけは頭に入れておいた方がよいでしょう。もちろんこのようなことは、可能性としてのことで、実際に起きる確率は極めて低いものです。
【5】まとめ
以上、始めて大腸ガンの内視鏡検査に臨む人が、少しでも不安を和らげての検査を受けられるように、私の経験をもとにより具体的なところも含めて、詳細をまとめました。
特に、始めての方が抱きやすい不安や疑問などが分かりやすいように項目ごとにまとめ、可能な限り実体験を含めて説明しましたので、検査に臨む人にとって有益な情報になったのではないでしょうか。ぜひ、役立てて欲しいと思います。