人間の目の高さは、頭の上部ではなく、ほぼ中央の高さに位置します。
つまり頭頂とアゴの先端のほぼ中央の高さに位置するわけです。
しかし、目の位置がそのような高さにあるという認識を持っている人は、少ないのではないでしょうか。
実は私自身、このことを認識したのは、数十年生きてきていながら、割と最近のことだったのです。
それまでは、人間の目の位置は、頭部の上部7割くらいの位置という感覚を、漠然と持っていたにすぎませんでした。
ある時、初めて気づく
毎朝、顔を洗う時に、自分の姿を鏡で見ていますし、毎日のように、誰かしらと接しています。
もかかわらず、最近までこのことに気づかなかったわけですが、気付いたのにはキッカケがありました。
ある時、まだ幼い顔をしている次男の顔を何気なく見ていたら、目の高さの位置が、頭部の半分よりも、ほんの少し下に位置していて、幼少期はこんな感じなんだと思っていました。
そして、長男の方に目をやると、長男の目もほぼ中央にあって、「アレっ?」と思って妻の方を見たら、やはり中央にあるのに気づいて、初めて、目の位置の認識を持ちました。
「人間の目の位置って、思っているほど高くないんだ、頭部の中央付近なんだ」と、その時初めて、認識したのでした。
なぜ錯覚を起こす?
その時、感じたことは、「私のように、目の位置が、頭の上部にあるという感覚を持っている人は多いはずだ。」ということです。
また同時に、「何でそんな感覚を持ってしまうのだろう?」という、疑問が湧いてきました。
実際に、上の頭の図を見ても分かると思いますが、NGと示した方の目の位置の方が自然で、OKと示した方が不自然な感じがすると思います。
しかし、よく考えてみれば、人を見るとき、顔を真っ先に見ますし、人を覚える時も、顔として認識します。
従って、目の位置も、頭の中のどこの位置というのではなく、顔の中のどこの位置という感覚を、自然と持つのでしょう。
そして、顔面は丸い頭部に比べてフラットであることも、頭より顔に対する印象が強調される要素なのでしょう。
また、前髪が長ければオデコが隠されて、その分だけ、目は顔の上部に位置するという感覚が強くなります。
更に、口を開ければアゴが下がり、相対的に目の高さを高く感じるようになるのにも、目の位置が高いという感覚を持たせる要因があるのでしょう。
目の高さについて錯覚を起こす要因は色々あるでしょうが、やはり主な理由は顔の認識と頭の認識との違いと言えそうです。
ではここで、顔と頭の認識の違いは、髪の毛の有無にあると考えて、冒頭の頭の図を髪の毛を含んだ絵として見てみましょう。
下記は、最初の絵に髪の毛を書き加えた図です。
先ほどとは逆に、OKと示した方の目の位置の方が自然で、NGと示した方が不自然な感じがすることがよく分かると思います。
実際と同じ描画だと不自然
面白いもので、実際の目の位置が中央付近だとしても、その通りに描画すると逆に不自然な場合があります。
アニメのキャラクターを見てみましょう。
アンパンマンとドラえもんをあげてみましたが、いずれも目は上部に位置しています。
これが、もし中央付近だと、却って不自然な感じがするかと思います。
この例を見ると、人は人物を顔で認識するものなので、このようなキャラクターが、「顔=頭」という感じで表現されていても、違和感を感じないのです。
逆さに見ると感覚が違う
ここでチョット、試してみると面白いと思うことがあるので、顔を上下方向逆さまに見てみて下さい。
実際に逆さまに見るのは大変なので、写真などを逆さまに見るのが見やすいと思います。
逆さまにした上で、目の位置に着目して見てみましょう。
逆さまに見ることで、見ている対象が顔だという認識が薄れて、結果として、目の位置が中央付近であることを、より実感できます。
逆さまに見ない場合は、顔を顔として認識するので、目が上部にあるイメージが潜在意識として頭の中で自然と作られます。
このため、逆さまに見るよりも、目の位置が上部に位置するような感覚にとらわれることが分かると思います。
人間の感覚と現実とがこんなに違うって意識しないと分からないことですね。
人間の感覚や潜在意識って、いろんな面に影響するもので、改めて意識して色々考えてみると、面白いものです。
実際のデータで見てみると
では最後に、実際に人間の目は、頭のどれくらいの高さに位置しているのかを見てみたいと思います。
ちょうど、日本人をサンプルに測定した統計的な数値が、人口知能研究センターから公開(https://www.airc.aist.go.jp/dhrt/head/index.html)されていましたので、これを元に算出してみます。
公開されているデータは、被測定者が男女別かつ青年高齢別の4種で、合計317人分(高齢男性:100、高齢女性:100、青年男性:56、青年女性:61)の身体の部位に関する測定値(センチ)の平均などです。
これらのデータの中から、全頭高(頭の高さ)と、形態学顔高(ほぼ顎から目までの長さ)の平均値をそれぞれまとめると下記の通りです。
測定対象 | 全頭高 [cm] |
形態学顔高 [cm] |
高齢男性 | 230.8 | 123.9 |
高齢女性 | 217.2 | 114.7 |
青年男性 | 231.9 | 121.1 |
青年女性 | 218.0 | 113.9 |
上記で、全頭高を分かりやすく言えば、頭部の最高点と下顎の最下点との垂直距離です。簡単に言えば、頭の高さです。
また、形態学顔高を分かりやすく言えば、両目の中間で鼻の根元の最もくぼんだ点と下顎骨の最下点との距離で、ほぼ目の高さと言ってよいでしょう。(詳細は公開データを参照)
この結果をもとに、「形態学顔高」÷「全頭高」の比をパーセンテージで求める(目の位置)と下記のようになります。
測定対象 | 目の位置 [%] |
高齢男性 | 53.68 |
高齢女性 | 52.81 |
青年男性 | 52.22 |
青年女性 | 52.25 |
上記からパーセンテージは52~53%くらいであることが分かります。
この数値は、もし顎の先端に目がある場合に0%、頭頂に目がある場合に100%となることから、目の位置(高さ)は頭のほぼ中央であることが確認できました。
数値としてはぴったり50%ではなくて52~53%くらいなので、ほんの少しだけ中央よりも上部のような感じもします。
しかし、「形態学顔高」については「全頭高」と異なり、垂直に測定している訳ではないので測定結果が見た目よりも長めになります。
もしこのことを考慮すれば、正面からの見た場合はもっと50%に近づくと考えられます。
実際に調べてみると面白いものですね。