ビッグスクータといえば、かつて昭和の時代にはごく一部の車種しかなく、街中でもほとんど見かけることはありませんでした。
その頃、従来のバイクは既に普及していましたので、どこにでも走っていましたし、また、原動機付き自転車も、手軽にのれる乗り物として、同様にどこでも見かける存在でした。

ビッグスクータは当初は普及していなかった
しかし、ビッグスクータに関しては、平成に入ってからようやくブームを迎え、今ではどこでも見かける存在になりました。
このブームの理由については、世間でも色々といわれているところですが、なぜブームを迎えたかをひと言でいえば、何か理由があったというよりも、歴史の必然であったといえるのではないでしょうか。
ブームと同時期にビッグスクータを乗り回していた経験から、その流れを振り返ってみることにしました。
従来のバイクが主流
ビッグスクータがブームを迎える前は、従来型のバイクが多く街中を走っていました。従来型のバイクは、車社会の始まりとして、自家用車が普及した流れと同じように普及してきたものでもありました。
一方で、手軽な乗り物として原付(原動機付き自転車)が多く乗られていて、「自動車代わりのバイク」、「自転車代わりの原付」といった趣もありました。
そんな中、ビッグスクータが発売されるようになったのですが、直ぐに普及したわけではなく、少し時間が経ってからブームを迎えたのでした。
普及したワケ
では、なぜビッグスクータが普及したのかですが、最も簡単な言い方をすれば、自動車のマニュアル車がオートマティック車に代わって行ったのと同じ理由があるのでしょう。
クラッチ操作やギアチェンジなど、面倒な操作は無い方が楽に決まっていますし、その背景には技術的にスマートな加速発進ができるようになったこともあるでしょう。
つまり、操作が面倒でなく簡単な方がよい、そんな当たり前のことが必然を生んだといえます。
自動車を見ても、わざわざ操作が面倒くさいマニュアル自動車に乗るような人はごく一部の人です。面倒なより簡単、いたって簡単な理由ですね。

運転操作が簡単な点で自然と広まった
そして、見逃してはいけないのが、車社会が確立されたことで、従来は「自動車の代わりとしてのバイク」という感覚が割と強くあったものが、次第に「自動車とは別に乗り分けるバイク」という感覚が大きくなっていった点でしょう。
そこには、自動車は駐車が不便だという背景があって、「じゃあバイクにしよう」と考える、新たな需要が大きくなって行ったのでしょう。
そんな需要に対して、従来のバイクにはなかった、汚れにくく、スーツ姿でも乗れ、見た目がスマート、といった要求を満たすビッグスクータというものが、まさにぴったりだったのではないでしょうか。
私自身も、フリーウェイやフォーサイトを乗っていたのですが、そこにブームがあったからというよりも、自然と求めた乗り物がビッグスクータであって、気付いたらビッグスクータがその時代のブームになっていたという感じでした。
つまり、自然な流れでブームを呼んで普及して行った「 歴史の必然」と呼べるものではないでしょうか。
原付ではダメな理由
さて、同じスクータなら、どうして原付ではなかったのでしょうか。ひと言でいえば、原付は自転車の代わりにはなりやすくても、自動車の代わりにはなりにくいからでしょう。
もっといえば、原付は走行に安定性が欠けるため、街中をちょろちょろ走るのには向いていても、幹線を利用して長距離を走るのには向いていません。
何より、原付では高速道路にのることは出来ないので、遠方に赴くには無理があります。ビッグスクータでは、その気になれば、ツーリングなどにも向いていて、遠方に足を延ばすことも容易です。
また、原付もビッグスクータも、駐輪する場合においては、どちらもあまり困らない点で大差がないことも、原付よりもビッグスクータを選ぶひとつの要因になったのではないでしょうか。
実際、原付は駐輪が認められるけど、自動二輪車は駐輪禁止となっているような駐輪場はけっこうあるにはあるのですが、自動二輪車も駐輪可能な駐輪場を探せば、それで済んでしまうものでした。
今振り返れば、必然だったと言えますが、ブームを迎える前にはそんなことが見えなかったのでしょう。
そう考えると、ブーム前に、先駆けて市場にビッグスクータを出したHONDAはさすがだと思います。
追従したYAMAHAやSUZUKIも人気車種を生み出してきましたが、その流れがビッグスクータのブームという、ひとつの時代を生み出したのでしょう。
大きなブームは終わった感じのビッグスクータですが、いざ乗ればその便利さや魅力が分かるハズです。スクータなんてと思っている人も、いちど検討の対象にしてみるのも良いのではないでしょうか。