走行している車両を見ていると、「この運転手はしっかりした運転をしているなぁ」と感じることがあります。そんな運転手は、パッと見ると、いかにもベテランドライバーという感じがして、見ていてとても安心感を覚えるものです。
同時に感じることは、こういう運転手は、滅多なことでは事故は起こさないのだろうという感覚で、危なげを感じさせない運転は、誰しもが見習うべきところだと思います。そんなベテランドライバーが、一般のドライバーとはどこがどう違うのか、その姿を考えてみました。
(1)流れが自然で無理が無い
ベテランドライバーが運転する車両は、走行の流れが自然で無理がない運転をしていると感じます。
例えば、走行車線から追越車線へ車線変更して追い越して行く場合に、周辺を走行している車両との距離に無理がなく、操作が自然でリズミカルな動作をしています。その動作は、あたかも台本通りに予め計算されたかのような、本当に自然な動きをしていて、何か周辺の車両までもが、その車両を中心に動いているのではないかと思わせるほど自然な流れに見えるものです。
また、加速や減速、ハンドルさばきなども全て自然体で無理が無く、決して急発進や急加速、急ブレーキ、急ハンドルなどはなく、周囲に不安などを感じさせる動きがありません。
停止線で止まる場合でも、停止線の十分手前で速度を落とした状態にしておいてから、停止線に接近するので、自然でなめらかな停止となり、見ていてとても安心できるものです。
このような運転をしているので、仮に同乗者として同行した場合などは、乗っていても安心感が湧き、とてもリラックスできます。
(2)基本に忠実
そして、運転の操作や車両の動きを見ていても、交通法規を守ることは当然として、安全を確保するための基本に忠実で、当たり前のことを当たり前に確実に行っている感じがします。
例えば、巻き込み確認をする場合に、左折をする段階で巻き込み確認をするだけではなく、交差点に差し掛かる十分手前で、予め周辺の状況を充分確認しておいて、いざ左折をする段階で危険が生じないように事前に調整するような運転をします。こんな当たり前と思えることでも、実際の運転となると必ずしもできていないドライバーは多いのではないでしょうか。
また、車線を変更する操作においても、変更先の車線側の真横や後方を事前に確認した上で、適切なタイミングでウィンカーを出し、ウィンカー操作後にきちんと時間をおいてからハンドルを切って、実際の車線変更を行います。これも当たり前のことですが、事前の確認がきちんとできていないとか、操作のタイミングがきちんと取れていないようなドライバーは意外と多いものです。
そして、これらの基本動作のひとつひとつが、あたかも体に染みついているような感じの操作によってなされるところが、さすがだと感じます。
(3)予測能力・状況把握力が高い
更に、ベテランドライバーは、走行中の他の車両や周辺の状況を正確に把握し、それらの状況を元に、先を予測する能力にも長けていて、その場その場に合った、きちんとした判断ができています。ベテランドライバーが取る行動は、「危険な状況から、事故を起こさないようにどのような行動をとるか」では無く、「危険な状況を作らないために、予めどのような対応をしておくか」という姿になって現れます。
例えば、少し離れた前方の交差点で、対向車両が右折しようとしている姿を見かけた時に、対向車両が自分の車両が通過するのを待つのか、通過を待たずに右折の動作を始めるのかを判断する状況が生じたとします。この状況下で誰もが予測する危険は、右折車と直進車が接触する「右直事故」と呼ばれるものですが、実際に危険が高まるのは、右折車両の右折動作が遅くなる場合や、強引に右折しようとして来る場合などです。
このような時にベテランドライバーは、対向車両が右折動作をしてくるのかどうかを正確に見極めると同時に、右折して危険な状況が生じることを想定して、接触を回避するための態勢を事前に取ります。具体的には、相手ドライバーに減速を感じさせないように自然と加速を抑える中に、直ぐにブレーキ操作に入れるように身構えます。
この例は、あくまで説明を分かりやすくするための一例ですが、要は、状況を把握する時に、相手ドライバーの視点に立ってどのような行動を起こして来るかを良く考えて判断し、状況に応じて危険を回避するための状態を予め作っておくことです。
ヒヤリハットという有名な言葉がありますが、危険な状況に陥る頻度が多ければ多いほど、実際に事故を起こす確率も高くなるのですから、予め危険な状況を作らないようにすることが如何に大事かわかります。
以上、ベテランドライバーはどこが違うかの一面を見て来ましたが、改めて私じしんもハッとするような思いになりました。これらベテランドライバーの姿を鏡として、よりよい運転ができるように励んで行きたいと気持ちを新たにしたものです。みなさんも参考にして、安全運転に努めて下さいね