中国語に「竜」という漢字はない。「龍」はあるが厳密にはこれも無い。

「竜」という漢字は中国語でも同じなのかと調べても、見当たらなくてその理由がよく分からないものです。

実は「竜」という漢字は日本にしか存在せず、「竜」に相当する漢字は竜と同意で使われる「龍」です。

竜という漢字は中国語にはない

しかし、厳密には「龍」という漢字も使われなくなっています。

漢字は中国伝来なのに

竜というのは伝説上の生き物で、その起源は中国から伝わったものですから、中国語でも「竜」と言う漢字がありそうです。

しかも、漢字そのものも昔の中国(漢の時代)から伝わった文字ですから、日本にある漢字が中国にあるのは当然だと誰しもそう思うハズです。

しかし、実際には「竜」という漢字は中国には存在せず、日本だけで使われています

別の記事「竜王は龍王とも書くが恐竜は恐龍とは書かない。竜と龍の違いは何?」で説明しましたが、日本で用いる「竜」は「龍」に対する新字(龍は旧字)で、龍が竜に置き換わったと言えます。

従って日本では、龍は使わないで竜を使うようにする流れがありますが、実際は、龍と竜は両方とも使われます。

特に古くからある名称や固有名詞などでは龍は依然として頻繁に使われます。

ただし、新しい言葉には竜という言葉だけが使われる傾向にあります。

龍という漢字はあるのか

では、中国に竜という漢字がなくても、竜の元の漢字「龍」はあるでしょう、と誰しも思うことでしょう。

しかし、厳密なことを言えば、この「龍」という漢字は無くなりつつあります。

と言うのも、現在の中国では簡体字が使われるようになったため、以前のような漢字に変わって簡略化された漢字が通常用いられるようになったからです。

この簡略化の結果、現代の中国では「龍」の代わりに「」という漢字が使われています。

漢字そのものが大きく変わっていて元の字体の面影すらも無いので分かりにくいですが、「」が漢字の「龍」を表しています。

但し、台湾においては中国とは別な政策が採られていますし、漢字も簡略化された簡体字は使わず、従来からの漢字「龍」(繁体字)がそのまま使われています。

従って、「竜」という字は、中国では「」(簡体字)、台湾では「龍」(繁体字)となります。

以上を簡単にまとめると、以下の通りです。

日本:竜(新字)、龍(旧字)
中国:(現代の字体)、龍(昔の字体)
台湾:龍のみ(竜はない)
同じ漢字のハズなのに、色々な種類があることが分かります。

龍と竜と龙の由来は?

さて、ここで気になるのが、龍と竜と龙の由来でしょう。

いずれの漢字も、もとになった甲骨文(中国最古の文字で甲骨文字ともいう)では、蛇が冠を被ったような図形が描かれていました。

その図形が龍の字形よりも竜の字形に似ていることから、竜の原形の文字はこの甲骨文から来ているとする説もあるようですが、それは不自然です。

なぜかと言えば、その後の金文(金属器に刻まれた昔の文字)では龍の字形に近い文字が表現されており、更にその後の篆文(奏以前で用いられた文字)では、ほぼ今日の龍に近い文字になっているからです。

そして、篆文は篆書という書体として定められ、漢の時代には隷書という書体で書かれるようになりますが、いずれも基本的には龍に近い字形でした。

その後、正式に楷書としての「龍」が登場するのは魏・呉・蜀の時代で、「竜」の原形と思われる字は隋の時代になって登場しています。現在、中国には龍の異体字として龍と竜の中間の漢字(後述)がありますが、この漢字はその名残と言えます。

漢字が日本へ伝来したのは、魏・呉・蜀や隋よりも前の漢の時代ですが、日本における文字の普及や発達過程では、自然と「龍」と「竜」の2つの字体が異体字として併用されるようになっていました。

近年においては、これら2つの字が併存していることから漢字の施策の上で揺れ動いていましたが、1923年に定められた常用漢字では「龍」がその対象となり、「竜」は常用漢字外となりました。

しかし、1981年に常用漢字が見直された結果、当初とは反対に、「竜」が常用漢字、「龍」が常用漢字外となり、今日に到りました。

一方、中国では龍が使われるのが一般的で、他にも数ある龍の異体字はあまり使われてきませんでした。

その後、龍の代わりに龙が使われるようになったは、近年の中国の文字改革の一環として従来の字体が簡略化されて簡体字になったことによります。

それぞれの字体の成り立ちは?

ところで、由来は分かっても、何でこんなにも違う漢字が異体字として存在しているのか、その字体の成り立ちが気になるところです。

龍は16画、竜は10画、龙は5画で画数が大きく異なるだけでなく、字形もお互い似ても似つかぬ感じがしますから、疑問に思うのも当然です。

実は、細かな字体の変化は別な話として、これら3つの字体はいずれも元は同じ「龍」の字形から生まれています。

つまり、そのままの字形が残って定まった字体が「龍」、筆記が略される中で生まれた字体が、「竜」と「龙」です。

竜に関して、その流れの概略を示せば、下記の通りです。

「龍」の字形の右側上部にある「ヒ」のような部分を略す形で筆記して生まれた字体が、龍の異体字でもある②ですが、そこから更に変化して生まれた字体が「竜」です。

筆記が略される中に変化した様子がよく分かると思います。

中国で「竜」のように筆記された字が全くなかったわけではないようですが、実際に普及して一般に使われるようになったのは日本においてです。

従って、中国では竜はあくまで非公式な漢字であり、日本で定まった漢字という認識があります。中国では、公式な文字として「竜」は存在しないのです。

そして、龙についてですが、これは龍の草書における右側部分から生まれています。

龍の部首はあくまで龍なので文字を分解しにくいのですが、字形を単に左右に分割すれば、「立+月」で構成される左側部分と、複雑な形状を持つ右側部分で構成されていることがわかります。

草書の場合、右側部分が龙の字形に近い筆記となりますが、この筆記から正式な龙という字体が定められました。

日本で一般的に筆記されている龍では、草書体よりも行書体の右側部分の方が龙の字形に近いのですが、龙はあくまで草書から生まれています。

これは、同じ書体でも時代や地域、筆者によっても変わるため多くの種類が存在するためですが、日本と中国との違いにもよります。

実際、中国では一般に、龍を行書で書く場合、右側部分は「尨」のような筆記となる場合が多く、草書体の右側部分の方が「龙」の筆記に近いのです。

覚えておきたいこと

このように竜など、日本で新字となった漢字は、中国には存在しない場合があります。

従って、そのような漢字は、上記の「龍」のように旧字のみが存在しているケースが通常です。

しかし、漢字の簡略化(簡体字)によって中国で従来使われていた漢字は違う字体になっていることが多いため、実際にはその旧字も使われなくなって来ているケースが多々あります。

つまり、上記の例のように、旧字そのものは台湾に残っている(繁体字)が、中国は別な字体(簡体字)に変わったというものが大半といえます。

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