日常的に漢字を使っている日本人は、中国語の文章に目を通せば、おおよその意味は推測できます。
しかし、日本語にない使い方がされていると推測しにくいものですが、漢字の「天」にも日本語では使われない意味や使い方があります。
日本語の「天」の意味
日本語で漢字の「天」を用いる場合、最も多い使い方は、地上を覆っている空間、即ち大空の意味としてです。
天気、天体、天候、天災、天下、天文学、天の川など多数の熟語がありますが、これらはいずれも大空の意味から来ています。
また、「天」には天地や万物を支配する理法、或いは、天地や万物の支配者や創造者の意味もあります。
「天の恵み」とか、「天に運を任せる」と言った表現がこれに当たります。
天命という熟語もこの意味から来ています。
更に、物事の上部を表す意味としても使われ、天井などの熟語がこれに当たります。
この意味の場合、「地」がこれと反対の漢字に相当し、漢字の「地」は下部を意味します。
天地無用という表現が典型的な使い方です。
中国語の「天」の意味
中国語の「天」(tiān)にも、日本語と同じ意味があります。
「天」には日本語と同じく、大空という意味がありますから、そこから天気や天候、空模様を表す表現にも使われます。
また、日本語における天地や万物を支配する理法の意味と同様の意味があり、運命とか自然の理、楽園などを表すこともあります。
更に、上部にあるものを指して「天」を用いて表現することもあり、これらはいずれも日本語の「天」とほぼ同じです。
しかし、日本では使われない意味・表現として、一昼夜、即ち日としての意味があります。
具体的な使い方としては、
今天(jīntiān・今日)
明天(míngtiān・明日)
前天(qiántiān・一昨日)
后天(hòutiān・明後日)
每天(měitiān・毎日)
天天(tiāntiān・毎日)
一天(yìtiān・一日中)
一天二十四小时(yìtiānèrshísìxiǎoshí・一日二十四時間)
一周七天(yìzhōuqītiān・一週七日)
昨天(zuótiān・昨日)
といった使い方をします。
日本人から見た場合、中国文中の漢字「天」を「日」に置き換えると意味が分かりやすくなります。
中国語の天は、上の棒が短い
さて、日本語と中国語の「天」の意味や使い方の違いについて説明しましたが、実は、字体・字形についても少し異なります。
少しの違いしかないため、「天に似ている字」とか「天みたいな字」、「天にそっくりな字」のように、別な漢字と認識される場合もあります。
しかし、あくまで同じ漢字で、単に字形が異なるだけです。
具体的な違いは、日本語の天は上の横棒の方が長いのに対して、中国語の天は下の横棒の方が長くなっています。
つまり、中国語の「天」は、上の横棒の方が短いのです。
日本の漢字に慣れていると少し違和感がありますが、字形が違うだけで漢字としては同じです。
漢字が同じだからこそ、同じような意味もたくさんあるのです。
同じ漢字なので、デジタルコンテンツの場合、文字コードやフォントの扱いによっては、中国語の天でも日本語と同じく上の横棒が長く表示される場合があります。
ちなみに、天という漢字の語源を説明すると、漢字源には
大の字にたった人間の頭の上部の高く平らな部分を―印で示したもの。
とあります。
つまり、天の一画目の横棒が、広がる天空を表しています。
中国語の天を用いた熟語
天は基本的な漢字ですから、日本語でも天気、天候、天才など、たくさんの熟語があります。
中国語でも同様で、多くの熟語があります。
ここでは、覚えておきたい天を用いた中国語の熟語をいくつか紹介します。
- 天气(tiānqì)…日本語の天気と同じで、天候などの意味もあります。
- 天才(tiāncái)…日本語の天才と同じで、生まれ持った優れた才能のことです。
- 天空(tiānkōng)…日本語の天空と同じで、空や大空、天空と言った意味があります。
- 天地(tiāndì)…日本語の天地と同様、天と地の意味です。
- 天候(tiānhòu)…日本語の天候と同じ意味です。
- 天然(tiānrán)…日本語の天然と同じですが、天然の、自然のなど、通常は形容詞として使われます。
- 天文(tiānwén)…日本語の天文と同じ意味で、天文学の意味もあります。
- 天下(tiānxià)…日本語の天下と同じで、世界、全国、世の中、この世などの意味があります。
- 天上(tiānshàng)…空の上、天空、上空、空、天上(てんじょう)などの意味があります。
- 天色(tiānsè)…空のいろあい、天気、天候、空模様、天色(てんしょく)などの意味があります。
- 天生(tiānshēng)…天然の、生まれつきの、天生(てんせい)のなどの意味があります。
- 天真(tiānzhēn)…無邪気である、あどけない、単純である、幼稚であるなどの意味があり、日本語の天真(てんしん)と同様の意味もあります。
発音が違うだけでは、使われている漢字はほぼ同じ(字形は異なるが)で、意味も同様であることが分かります。
ここで挙げた熟語は、全て基本的なものばかりですが、日本語と同じ漢字の熟語もけっこうあります。
ぜひ覚えておきたいものです。
知っておきたいこと
最後に、中国語の「日」はどう使われるのかが気になるかと思います。
中国語の「日」には、日とか日付と言った意味があり、纪念日(記念日)とか、节日(祝日)といった使い方をします。
また、日付を表す表現として、三月四日という使い方もしますが、これは三月四号とも表現します。
更に、上記の明天や昨天の代わりに明日、昨日などとも表現しますが、どちらかというと明天や昨天の方が一般的です。
天と日は違う漢字ですが、同じような意味を持ち合わせていますので、使い方に注意したいですね。
ちなみに、日本語のひらがなの「て」やカタカナの「テ」は、いずれも漢字の「天」に由来すると言われています。