何年にも渡って悩まされて来た花粉症ですが、この度、思い切って根本療法と言われている舌下免疫療法を受けてみることにしました。
まずは医師の診察をと思って耳鼻咽喉科を受診しましたが、せっかくの機会なので気になる点を色々と聞いてみました。
目次
受診までの経緯
花粉症を自覚
私が花粉症(スギ、ヒノキ)だと判明したのは、20代の時にアレルギー検査を受けたことによります。
検査を受けた理由は、花粉症によると思われる、鼻水、くしゃみ、目のかゆみなど、色々な症状が出ていたからです。
花粉症だと判明して以来は、毎年のように症状を抑えるための薬を飲んだり、必要に応じて点眼点鼻薬を用いたりもしました。
しかし、症状は和らぐものの、完全に抑えられるものでもなく、飛散時期には必ずマスクを付け、花粉の付着を防止するような習慣も取っていました。
根本的に直したい
そんな状態が何年も続いていましたが、常に思うことは「根本的に直せないのか?」という願いでした。(心の奥底では、杉の木が絶滅すればなんて願っていましたが…)
そんなある日、アレルゲン免疫療法という体質改善を期待する療法があるのを知り、とりわけ舌下免疫療法については保険も適応とのことで、それ以来、非常に興味を持っていました。
それでも治療期間が長期に及ぶことや、必ず治る訳でもないこと、トータル費用はそれなりにかかることもあり、実際に舌下免疫療法を受けてみようという決断には至っていませんでした。
そういった躊躇が続くなか、試してみようと決断したキッカケは、妻の強いひと言に背中を押されたことでした。
妻はスギ花粉の飛散時期になると辛そうにしている私を常々見ていたからでした。
舌下免疫療法とは
さて、先ず舌下免疫療法(ぜっかめんえきりょうほう)とはどのような療法なのかを簡単に説明しておきましょう。
舌下免疫療法とは、アレルギー症状の原因となっているアレルゲンを体内に投与することで、アレルゲンに対する反応を慣らし、体質を改善するアレルゲン免疫療法のひとつです。
分かりやすく言えば、臭いトイレでも長時間トイレ内に居れば臭さを感じなくなるのと似てますね。
この療法は、症状を抑えるためにその都度投薬するような対症療法とは違って、体質を改善することでアレルギー症状そのものを和らげたり、抑制したりする効果が期待できる、根本的な療法と言われています。
従来、アレルゲン免疫療法と言えば、医療機関で注射をする皮下免疫療法だけでしたが、個人が自分の家で投薬できる舌下免疫療法が登場して、加えて保険適応の対象となったことで、この治療を受ける敷居がかなり低くなりました。
この療法の効果は
さて、舌下免疫療法について最も気になることのひとつに、「効果はどうなのか」があげられると思います。効果が得られないなら治療を受ける意味がないから当然です。
ここでは、一般に言われていることと、今回、医師に聞いてみたことを順に説明します。
効果について一般に言われていること
そもそもこの療法で効果が得られるメカニズムについては、完全には解明されていないのが現実です。
しかし、アレルギーに対する反応を抑制する免疫反応が起こることで症状が抑制されると考えられています。
実際、全ての人が直る訳ではないと言われていますし、得られる効果も個人個人によって異なるとも言われています。また、全く効果が無い人すらもいるようです。
効果の出かたも人それぞれで、早い人だと治療開始後の最初の飛散時期に改善が確認できるとも言われています。
得られる効果の内容についても様々で、症状を治せる、症状を和らげる、長期間にわたって症状を抑える、花粉飛散時期に服用する治療薬を減らせるなどの効果があると言われています。
効果について医師に聞いてみたこと
以上については、一般に言われていることですが、今回、効果に関して医師に色々と聞いてみましたので、それらをまとめます。
筆者:「効果はどれほど期待できるのでしょうか?」
医師:「効果は個人差があり、効果の程度や現れ方、時期なども様々です」
とのことで、やはり一般に言われている通りでした。
そして、ヒノキの花粉症でもある私は、スギ花粉以外にも効果があるのかが気になったので
筆者:「私はヒノキの花粉症もあるのですが、ヒノキ花粉症にも効果は得られるのでしょうか?」
医師:「投薬する薬は、スギ花粉用なのでヒノキ花粉症には効きません。あくまで薬の成分はスギ花粉のアレルギー成分で出来ていますので、効果が期待できるのはスギ花粉だけです。」
それを聞いて気になった私は、更に
筆者:「と言うことは、もし他にカビやダニなどのアレルギーを持っていたとしても、効果はないのですね」
医師:「ヒノキの場合もそうですが、全く別なアレルギー成分なのでスギ花粉以外には効果はありません。」
とのことでした。
ヒノキの花粉症を持つ私にとっては少し期待外れでしたが、それでも最も症状が気になっているスギ花粉による症状を抑制できれば、それだけでも大きく改善できると感じました。
そして、その会話の延長で、効果に関する下記のような貴重な話も聞くことができました。
医師:「現在、この治療方法が開始されてから、効果が期待できることが統計的に確認されて来ているが、治療が完了してから5年、10年経過した後に症状がどうなったかについては、十分な統計データが取れていないため、不明な点が残っている」
今後、統計データが多くなるにつれて、効果の継続性については明らかになって行くのでしょう。
やはり、ヒノキについては気になったので、
筆者:「ヒノキ花粉症のためのこの種の治療薬はないのでしょうか?」
医師:「現在、薬があるのはスギ用とダニ用の2種だけです。保険対応もこの2つだけで、それ以外は薬そのものがありません」
わずかな期待を抱いての問いでしたが、将来に期待したいですね。
やはり、花粉症のなかでもより深刻と言われているものの薬が優先的に開発されているのを感じました。
どのような副作用があるか
さて、次に誰しも気になるのは、副作用についてではないでしょうか。
特に、この療法の場合、治療期間が長く、投薬期間が非常に長くなるだけに、なおさら心配になります。副作用についても一般論と医師への質問とに分けて説明します。
一般に言われている副作用
よく言われている主な副作用は、口内の炎症や腫れ、舌の下(投薬部位)の腫れ、それらに伴うかゆみや不快感です。
また、投薬部位とは直接関係の無い、咽や耳のかゆみや不快感、或いは頭痛が発生する場合もあるそうです。
また、重大な副作用としてアレルギー反応としてのショックやアナフィラキシーが起こることがあり、稀に重篤な症状に到る場合もあるそうです。
これらはいずれも、投薬する薬の成分がアレルギーの元となるアレルゲンを含んでいる訳ですから、それに応じたアレルギー反応がでることを考えれば理解しやすいところです。
自ら進んでアレルギー症状のもとを摂取する訳ですから、ある意味、当然のような感じもします。
副作用について医師に聞いてみた
では、アレルギーに関係しない要素として副作用はないのかですが、これについては投薬期間が長期に及ぶだけに非常に気になったので直接、医師に対して聞いてみました。
筆者:」「薬に含まれるスギ花粉のアレルギー成分以外の化学的な成分が、何らかの形で副作用として現れることはないのでしょうか?」
医師:「アレルギー反応以外の副作用の症状が現れないのかどうかについては、否定することはできません。薬である以上、何らかの成分が身体に影響しないとは言い難く、例えば0.1%も影響がないのかと問われれば、無いとは言い切れません」
という内容でした。
これを聞いて、薬である以上、やはり副作用が全くないと言えるものはないと考えるべきだと感じました。
次いで、副作用が治療へどのように影響するのかが心配だった私は、
筆者:「副作用がひどくて、治療を断念するケースはあるのでしょうか?」
と聞いていみたところ、
医師:「まれですが、そういうケースもあります」
という答えが返ってきました。続いて、薬の影響についてもっと詳しく知りたかった私は、
筆者:「この薬を飲み続けている最中に、同時に服用してはいけない薬とか、特に気を付けなければいけない病気とかはあるのですか?」
医師:「そういった薬や病気は特にありません」
これを聞いて、気持ちが少し楽になりました。続いて、心配なことなので念のため
筆者:「副作用として、アナフィラキシーなどのショック症状で重篤となるケースがあると聞いていますが、花粉にさらされている花粉症の人がそのようになったという話は聞いたことがありません。本当にそのようなことがあるのでしょうか?」
医師:「薬である以上、そのような可能性があるということです。実際に本当に重篤になったという報告は、今のところ聞いたことはありません。」
これを聞いて、可能性はあるんだということを、しっかり認識しておく必要性はありそうだと感じました。
費用はどれくらいか
更に気になることとして、費用がどれくらいかかるのかということがあります。
これについては、一般にも色々と言われていますし、医療機関や個人差があってもそう大きな差はないとは思いましたが、実際にどれくらいなのかを直接確認したかったので、
筆者:「1ヶ月当り、治療にかかる必要な費用はどれくらいですか?」
と単刀直入に聞いてみました。返ってきた答えは
医師:「だいたい2000円くらいです」
でした。念のため、
筆者:「それは健康保険を除いた、本人負担(私は3割)の費用ですか?」
医師:「そうです。本人負担3割の人のおおよその費用です。」
これは、巷でも一般に言われている金額ですから、これくらいの費用が相場なのでしょう。
前もって費用を聞いておけば、後で違ったなんてことにもならないでしょうから、私のように治療を考えるのならば、最初の段階で担当医に確認しておけば安心できると思います。
一応、念のため急に必要となる他の費用があるかどうかについても聞いてみました。
筆者:「治療の経過や状況によって、新たに通常費用とは別の費用が発生する場合はありますか?」
医師:「基本的にはありませんが、花粉症の症状がひどい場合は、症状を抑えるための薬を処方する場合がありますので、その場合は別途その薬の費用が発生します」
これを聞いて、花粉のアレルギー成分を摂取する一方で、アレルギー反応を抑制する薬を服用することに不自然さを感じた私は、
筆者:「舌下免疫療法の薬を飲む一方で、同時にアレルギー反応抑制用の薬を服用したら、薬の効力が落ちたりしないのですか?」
医師:「全く別な働きなので大丈夫です。両方の薬を飲みながら治療を継続します。両方の薬を飲むのは、治療開始直後に症状がひどい場合や、花粉の飛散時期に症状が重い時などに飲むものです」
聞いていて、こんなものなのかと思いました。
さて、話をもとに戻して、上記でいう2000円ですが、これは長期治療中における平均的な費用のことで、治療の判断をする初期段階で行うアレルギー検査については、検査方法によって検査費用に差がでるようです。
つまり上記の費用2000円の内訳は、薬代と定期的な診察費用です。
私の場合は、この際、自身のアレルギーについては詳しく知っておきたいと考えたので、36種類のアレルギー反応を検査できる少し高額な方法を選択しました。
この検査の費用は約4800円(税込・本人3割負担)で、ちょっと高い感じはしますが、初回だけなのでこの方法を選びました。
ちなみに、現在、保険の適応対象となっているこの種の治療は、スギ花粉症、ダニアレルゲンによる通年性鼻炎の2つだけだそうです。
治療期間は?
さて、舌下免疫療法による治療期間はどれくらいでしょうか。これについては一般的にも言われているところですが、3年から5年ということです。
要は年単位で継続し、3年以上を推奨するとのことです。
これについても念のため医師に確認してみると、
医師:「この療法は、一定のアレルゲンを長期間投与し続けることで効果を得ようとするため、何年もかけて根気よく治療を続けて行く必要があります」
とのことで、予想通りの答えでした。
長期治療中は、毎日服用し、投薬を継続して行くことに専念することになりますからその都度、処方が必要になり、また定期的な診察も行うということです。
実際の治療期間はどのようにして決めるのかが気になった私は、
筆者:「3年で治療完了とか5年で治療完了とかは、どのようにして決めるのですか?」
医師:「明確にこうなったら治療を完了するという基準はありません。症状の経過を見ながら、最終的には患者さんと相談して決めます」
筆者:「もし、効果が直ぐに出て、例えば2年くらいで充分改善した場合、どのようになるのですか?早めに治療を終えることはあるのですか?」
医師:「治療を継続するかどうかは患者さんが決めることになりますが、効果を確実にするためにも3年は治療を継続することとお勧めしています。中には途中でやめてしまう人がいるのも事実です」
筆者:「逆に治療期間が5年を超えて長期化する場合はあるのですか?」
医師:「期間が長期化するという考えではなく、その時の症状がどうであるか、患者さんがどのようなことを望んでいるのかを考慮して、一緒に相談して決めて行きます。5年を超えて治療をしてはいけないという訳ではありません」
色々と話をしていて、本当に根気強さが求められる治療だと感じました。
まとめ
以上が、今回、耳鼻咽喉科で実際に診察を受けて得た情報です。
この他にも、今回、私が知り得た、ちょっと頭に入れておきたい情報には下記のようなものがあります。
・小児でも治療が可能であるが、医師との相談が必要
・治療はスギ花粉症と確定診断された人だけ受けられる
・スギ花粉飛散時期はアレルゲンに対する過剰反応があるため治療開始できない
・投薬前後2時間は、激しい運動、アルコール、入浴は避けるべき
最終的には治療を受けることにしましたので、今後、治療の経過について、随時、記事にして行きたいと思っています。