デジタル時代となった今、アナログ製品はどんどん少なくなっています。
しかし、よくよく身の回りを見てみると、アナログ製品はまだまだ数多く残っています。
そんな製品の中でも、アナログ式のメータは割と身近なところにありますが、アナログメータの正確な読み取り方については、意外と知らない人が多くいます。
身近なところにあるアナログメータ
時計や体温計、テスターなどは時間、温度、電圧などを表示する機器ですが、いずれもデジタル表示が当たり前になっています。
しかし、実際に身近にある製品を見てみると、アナログ表示する機器も、けっこう残っています。
例えば、時計などはデジタル表示が多くある中でも、アナログタイプの時計が根強く残り、壁掛けタイプの場合などは、むしろアナログタイプの方が多いくらいです。
また体温計も、短時間で測定できるデジタルタイプの予測体温計が主流ですが、一部では従来からあるアナログタイプの体温計も未だ使われています。
更に、電圧などを測るテスターの類もデジタル表示が中心ですが、シンプルなアナログ表示をするタイプもまだ見かけます。
こういったアナログメータを持つ機器類は、通常の用途では読み取り誤差が大きく影響することはありませんが、産業用の電圧計などでは、読み取り誤差を抑えて正確に読み取ることが要求されます。
しかし実際は、産業用のアナログメータなどでも、正確に読み取る方法をよく知らずに使っている人が非常に多くいます。
基本は片目で真上から読む
アナログメータを読み取る時、漠然とメータを覗き込んで、目盛の指示値を読み取っている人が少なくありません。
漠然と読む場合、無意識のうちに、読み取る人の利き目で見ている針の位置を読み取りますので、結果として斜め方向から読み取ることも多くなります。
おおよその目安として読み取るのであればこれでも問題はありませんが、正確な読み取りが要求される用途の場合、これでは問題となります。
「少しくらい斜め方向から読んだくらいでは、大した誤差にならないのでは?」
と考える人もいますが、実際は無視できない大きさになることも多々あります。
試しに、何かのメータを読んでみて下さい。
まず最初に両目で見てみた後、そのまま左目を閉じて右目で読み取り、更に顔を動かさずにそのまま右目を閉じて左目で読み取り、それぞれの読み取った値を比べてみて下さい。
けっこう差があることが分かると思います。
要するに、メータを読む時は、利き目だけを開けて(反対の目は閉じる)、メータの真上に利き目がくるようにして、読み取らなければ正確に読み取れないのです。
鏡があるメータは必ず鏡を利用
そして、アナログメータの中でも、特に読み取り精度が要求される用途の機器類の場合、目盛に合せた形で鏡を備えています。(下記の写真)
こういった鏡は、工業用の電圧計や電流計などでは当たり前のように備えていますが、実は、この鏡がとても重要です。
鏡を利用することで、より正確に読み取れるように作られているのです。
アナログメータの場合、指針と目盛盤は僅かではありますが、距離があります。換言すれば、この距離があることにより、目盛を読み取る時に誤差を生じます。
そこで役立つのがこの鏡です。指針を読み取る時に、もし真上から読み取らないと、針と鏡に映った針がズレて見えます。
逆に、針に隠されて鏡に映った針が見えない状態になれば、真上から読み取れていることになります。(針と、鏡に映った針がちょうど重なる)
アナログメータでは、真上から垂直に読み取ることで正確に数値を知ることができるような設計・構造になっていますから、針によって鏡に映った針が見えない状態になるように読み取ることが重要なのです。
意外と知らないポイント
さて、この「針と鏡に映る針が重なるように読み取る方法」を知らない人もけっこう多いのですが、更に意外と知らないことがあります。
それは、目盛にある鏡に読み取り者の目を映す方法です。
上記の、針と鏡に映る針が重なるように読み取る方法の場合、メータの針はとても細いので、きちんと重なっているのかがよく確認できないことがあります。仮に重なって見えたとしても、実際にズレが生じていることもよくあります。
そこで有用なのが、読み取る人の効き目の中心、すなわち目玉の中心部分が、読み取る針のすぐ背景の鏡の部分に重なって映って見えるようにして読み取る方法です。
こうすることによって、読み取り者の目の中心と読み取る針の位置と鏡に映る針の位置が一直線になり、その結果、読み取り誤差を極少に抑えた読み取りが可能になります。
鏡に映る目の中心が、実際の針と、鏡に映る針の位置と一直線になることで、それらが垂直に結ばれることになるのです。垂直になることで、読み取る際に生じやすい読み取り誤差を除くことができるという訳です。
目を鏡に映して垂直にする方法。知ってしまえば「なるほど!当たり前」とも思うのですが、実際はこの方法を知らない人が意外と多くいます。
鏡がなくても工夫する
では、鏡を備えていないメータ類はどうすれば良いでしょうか。
本来、メータに鏡が備えられているのは、工業用など高い精度が要求される場合が普通です。換言すれば、鏡を備えていない場合は、それほど高い精度が要求されない場合がほとんどです。
しかし、鏡を備えていなくても、より正確に測りたいという場合もあります。
そんな場合に役立つ方法は、鏡に見立てて読み取る方法です。
通常、アナログ表示するメータは、針が振れる構造になっていますから、針を保護する透明なカバーで覆われています。
この透明なカバーは硬質プラスチックで作られているものが多いのですが、光の加減や方向などを工夫することにより、そのカバー上にメータを読み取る者の顔を映すことができます。(カバーを鏡代わりにする)
もちろん、そこに映し出される顔は鏡のようにハッキリとした姿ではありませんが、顔の輪郭くらいは分かりますので、その輪郭から目の位置もだいたい判断できます。
つまり、メータのカバーに映る顔の輪郭から目の位置を把握し、目の中心を指針の位置に合うようにしてから読み取るのです。原理としては、上記で説明した鏡を備えているメータ類と同じです。
これにより、ほぼ垂直に読み取ることが可能になり、読み取り誤差を抑制することができます。
ふだん何気なく使っているアナログのテスター類も、これらを意識して測定すれば、より正確な値を読み取ることができます。ぜひ試してみて下さい。
ポイントのまとめ・利き目で真上から垂直に読み取る
・鏡付きのメータは、鏡に映る針が針に隠れて見えない状態で読み取る
・鏡付きのメータは、鏡に映る自分の目と針の位置が一致する状態で読み取る
・鏡付きでないメータも、カバーを鏡と見立てて読むとより正確になる