中国語の方位詞は、種類としてはそれほど多くないものの、用法に決まりや制約があるものが多くあります。
また、似たような方位詞だと意味の差が分かりにくいだけでなく、使い方の違いも不明なことが多くあります。
ここでは、方位詞とはどのようなものなのか、またその種類にはどのようなものがあるのか、更に方位詞はどのように使うのかについて、それぞれ詳細に解説します。
更に、方位詞について一覧にして、それぞれの発音が分かるようにピンインを併記してまとめます。
目次
中国語の方位詞とは
中国語の方位詞は、一般的に名詞の一部として分類されます。
中国語では方位词(fāngwèicí)と書き、漢字が表す通り方位をはじめ、方向、方角、位置、場所、範囲などを表します。
方位詞の多くは空間的な方向や位置を表しますが、中には時間的な方向や位置を表せるものもあります。
方位詞はあくまで名詞の一種ですが、和訳した文の場合、対応する語句が名詞以外の表現となることがあります。
方位詞の種類
方位词(fāngwèicí・方位詞)を大別すると、单纯方位词(dānchúnfāngwèicí・単純方位詞)と复合方位词(fùhéfāngwèicí・合成方位詞、又は複合方位詞)の2つに分けられます。
これら2つを発音で分けると、单纯方位词は音節が1つであることから单音节方位词(dānyīnjiéfāngwèicí・一音節の方位詞)とも呼び、复合方位词は音節が複数であることから复音节方位词(fùyīnjiéfāngwèicí・多音節の方位詞)とも言います。
整理すると、下記の通りです。
(1)单纯方位词(単純方位詞)…单音节方位词(一音節の方位詞)
(2)复合方位词(合成方位詞)…复音节方位词(多音節の方位詞)
この2つの分類をしっかりと覚えておくことはとても重要です。
それは、分類の違いがそのまま使い方の違いになり、覚え方のカギにもなるからです。
(1)単純方位詞
単純方位詞には、下記の16個があります。
东(dōng)、西(xī)、南(nán)、北(běi)
前(qián)、后(hòu)、左(zuǒ)、右(yòu)
上(shàng)、下(xià)、外(wài)、内(nèi)
里(lǐ)中(zhōng)、间(jiān)、旁(páng)
东、后、间は、日本語の漢字ではそれぞれ、東、后、間のことですが、日本では后の代わりに後を使うのが一般的です。
16個の単純方位詞の多くは、日本語で表した漢字と同じような意味を持ちますが、里については日本語では使われない「~の中」のような意味を持っています。
上記のピンインを見ても分かるように、これら16個の単純方位詞は、全て単一の音節です。
(2)合成方位詞
合成方位詞は、基本的に単純方位詞の前後に別な漢字が加わって構成されます。
構成の仕方には、下記のような5つのパターンがあります。
A.単純方位詞の前に別な漢字が加わる
B.単純方位詞の後に別な漢字が加わる
C.相反する2つの単純方位詞を組み合わせる
D.合成方位詞の後に別な漢字が加わる
E.その他
5つのパターンをしっかりつかんでおくことが、覚え方のコツになります。
では、この5つについて詳しく説明します。
A.単純方位詞の前に別な漢字が加わる
単純方位詞の前に別な漢字が加わることで、合成方位詞となる場合があります。
・単純方位詞の前に「以」(yǐ)が加わる
「以」+単純方位詞の形を取ることで、時間や空間の方角や位置などの限界を表します。
これらの方位詞は、日本語の意味とほぼ同じになります。
(例)以前、以后、以内、以外、以上、以下など
・単純方位詞の前に「之」(zhī)が加わる
「之」+単純方位詞の形を取ることで、時間や空間の方角や位置を表す表現となります。
日本語では、「~の~」と表現するのが自然な訳になりますので、之前の場合「~の前」と言う意味になります。
「之」そのものは意味を持たないと言えます。
(例)之前、之后、之间、之内、之外、之上、之下など
「以」(yǐ)も「之」(zhī)も、全ての単純方位詞に加えられる訳ではなく、それぞれ組み合せられる漢字が決まっています。
また、稀ですが”「一」+単純方位詞”の形を取ったものを方位詞と定義する場合もあります。
B.単純方位詞の後に別な漢字が加わる
単純方位詞の後に別な漢字が加わることで、合成方位詞となる場合があります。
・単純方位詞の後に「头」(tóu)が加わる
単純方位詞+「头」(头は、頭の簡体字)の形を取って、単純方位詞の意味を表します。
通常は軽声で头(tou)と発音し、単なる接尾辞としての働きだけで、头としては意味を持ちません。
従って、下头(xiàtou)と言えば、下(xià)が持っている、「下」とか「下の方」の意味になります。
また、R化して头儿(tóur)となる場合は軽声とならず、端っこの意味となります。
なお、一部の地域では头の代わりに首(shǒu)が使われる場合がありますが、意味や用法はほぼ同じです。
(例)后头、前头、上头、下头、里头、东头など
・単純方位詞の後に「边」(biān)が加わる
単純方位詞+「边」(边は辺の簡体字)の形を取ることで、「~の方」という意味を持ちます。
通常は、軽声で边(bian)と発音しますが、第一声で発音(边:biān)することやR化することもあります。
(例)上边、下边、左边、右边、前边、后边など
・単純方位詞の後に「面」(miàn)が加わる
単純方位詞+「面」の形を取ることで、「~側」や「~の方」という意味を表します。
軽声で発音される(面:mian)ことが多いですが、第四声で発音(面:miàn)することやR化することもあります。
(例)东面、西面、 南面、北面、外面、里面など
・単純方位詞の後に、「方」(fāng)が加わる
単純方位詞+「方」の形を取ることで、「~の方」という意味を表します。
方は、ふつう第一声で発音しますが、まれに軽声で発音することもあります。
(例)东方、西方、南方、北方、前方、后方など
・単純方位詞の後に、「部」(bù)が加わる
単純方位詞+「部」の形を取ることで、「~の部分」を表し、日本語と同じような意味になります。
例えば、下部(xiàbù)の場合、下の部分の意味ですから、日本語の下部と同様な意味です。
部は通常、第四声で発音します。
(例)东部、南部、西部、北部、上部、下部など
・単純方位詞の後に、「侧」(cè)が加わる
単純方位詞+「侧」の形を取ることで、「~の側」や「~の方」という意味を表します。
組み合わさる単純方位詞は少なく、使われる頻度も低いのですが方位詞に変わりありません。
侧は通常、第四声で発音します。
(例)左侧、右侧、旁侧など
加わる漢字による意味の違いは
「头」(tóu)、「边」(biān)、「面」(miàn)、「方」(fāng)、「部」(bù)、「侧」(cè)はいずれも全ての単純方位詞に加えられる訳ではなく、それぞれ組み合せられる漢字が決まっています。
上記を見ると、「~の方」と訳す場合が多く、それぞれの違いが分かりにくいと思いますので説明しておきます。
違いを把握することは覚え方のカギでもありますので、違いをしっかり頭に入れておきましょう。
「头」(tóu)と「边」(biān)と「面」(miàn)については、組み合わすことができる単純方位詞は同じで、基本的な意味にも違いはありません。
どちらかと言えば、使われる地域や人が異なるだけと言え、ごく限られた地域だけで使われる首(shǒu)についてもこれら3つとの違いはありません。
従って、これらについては使い分けは必要ありません。
次に、「方」(fāng)についてですが、上述の「头」と「边」と「面」が何かものなどの辺や面や端のような趣を持つのに対して、「方」は何かを基点とした方向や方角を表す趣を持つ点が異なります。
その結果として、上、下、左、右、前、後や东、西、南、北など方向の意義が強い単純方位詞と組み合わさり、方向の意義の薄い、外、内、里、中、间、旁などとは基本的に結び付きません。
また、「部」(bù)については、漢字の通り「~の部分」が本来の意味ですから、他(「边」など)とは意味合いが違い、割と多くの単純方位詞と結びつきやすくなっています。
最期に「侧」(cè)についてですが、これは意味に違いがあると言うよりも、単純方位詞との結びつきに大きな違いがあると言えます。
実際、左侧、右侧、旁侧のように、一部の単純方位詞の後にしか付きませんが、意味としては「边」などを用いる場合とほとんど差がありません。
C.2つの単純方位詞を組み合わせる
単純方位詞を2つ組み合わせることで、合成方位詞となる場合があります。
・反対の意味を持つ単純方位詞の組合せ
「上」に対する「下」など、反対の意味を持つ2つの単純方位詞が組み合わさって合成方位詞が構成される場合があります。
意味は、2つの単純方位詞の両方の位置や方向を表す場合や、一方の位置からもう一方の位置を結ぶ位置や方向を表す場合や、その両方を表す場合があります。
例えば、上下の場合、上と下、上から下、上下方向などを表すことができ、実際の意味は文の構成や文脈によります。
(例)上下、前后、左右、里外、内外、南北など
・同義の意味を持つ単純方位詞の組合せ
同じような意味を持つ単純方位詞を2つ組み合わせて構成される合成方位詞があります。
意味は、個々の単純方位詞が持つ意味と同じような意味になります。
(例)中间、旁边など
・同類の意味を持つ単純方位詞の組合せ
反対語でもなければ同義語にも当たらない、違う方位で似た言葉である2つの単純方位詞から構成される場合もあります。
意味としては、2つの単純方位詞の中間の位置や方向を示す場合や、それぞれの位置からもう一方の位置を結ぶ位置や方向を表す場合や、その両方を表す場合があります。
(例)东南、东北、西南、西北、左上、右下など
D.合成方位詞の後に別な漢字が加わる
前項Cで、「东南」など、同類の意味を持つ単純方位詞の組合せで合成方位詞が構成される場合があることを説明しましたが、この方法で構成される合成方位詞の後に別な漢字が更に加わることで三音節からなる合成方位詞が構成される場合があります。
加わる漢字を挙げると、「头」、「边」、「面」、「方」、「部」です。
この場合、上記の「A~C」に示した合成方位詞に比べて著しく使用頻度は低くなりますが、定義上はあくまで方位詞に分類されます。
具体的には下記のような合成方位詞があり、上記「B」に示した「~の方」「~側」「~部分」などと同じような意味になります。
・合成方位詞の後に「头」(tóu)が加わる
(例)左上头、左下头、右上头、右下头など
・合成方位詞の後に「边」(biān)が加わる
(例)东南边、东北边、西南边、西北边など
・合成方位詞の後に「面」(miàn)が加わる
(例)东南面、东北面、西南面、西北面など
・合成方位詞の後に、「方」(fāng)が加わる
(例)东南方、东北方、西南方、西北方、左上方、左下方、右下方、右上方など
・合成方位詞の後に、「部」(bù)が加わる
(例)东南部、东北部、西南部、西北部、左上部、左下部、右下部、右上部など
これらの意味の違いついては、上記「B」に記載した意味の違いと同様になります。
E.その他
上記に挙げた、A~Dに当てはまらない場合があります。
これらには、特に方位詞を構成する上での規則はなく、それぞれ特有な意味を持っています。
(例)底下、当中、头里、跟前など
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方位詞に含まれる可能性があるもの
以上のように、方位詞には色々ありますが、今まで説明してきたものだけではありません。
実は、中国語の方位詞についての研究が盛んになって来たのは、わりと最近のことで、その歴史は100年にも満たないほどです。
方位詞に関する専門の出版物が色々と登場してきたのも1990年代からのことで、そこから本格的な研究が繰り返されて来ました。
しかし、方位詞についてはまだまだ議論の余地があり、今日でも未解決な問題がいくつも残っているのが現実です。
そのような背景があるため、学術的な分類が不明確で、ある分類方法では方位詞でも、別な分類方法では方位詞ではないとされるものがいくつも残っています。
以下、方位詞であるかどうかが曖昧なものについて説明します。
四字熟語など
まず、挙げられるのが単純方位詞を組み合わせた四字熟語です。
上記で、「上下」など反対の意味を持つ単純方位詞が組み合わさった合成方位詞があることを説明しましたが、この合成方位詞から派生して「上上下下」のような言葉が誕生しています。
このような言葉には下記のようなものがあります。
上上下下(shàngshàngxiàxià)
前前后后(qiánqiánhòuhòu)
左左右右(zuǒzuǒyòuyòu)
里里外外(lǐlǐwàiwài)
东东西西(dōngdōngxīxī)
これらは、いずれも「上下」などの方位詞から生まれたものですが、位置や方位を表す働きが弱くなっています。
例えば、上上下下の場合、「上から下まで」の意味を持ち、上下の方向や位置と言うよりも、全体を意味する趣が強くなっています。
上記の他の四字熟語も同様です。
このようなことから、上記のような四字熟語の場合、分類の仕方によっては方位詞とはなりますが、方位詞と分類されない場合もあります。
十六分割の方位
次に挙げるのは、方位を十六分割する表現についてです。
日本では、東西南北の四方の中間の方位を表す場合、北東、北西、南東、南西などと表現します。
更にそれぞれの中間の方位についても北北東、北北西などと表現して方位を十六分割した表現が用いられます。
中国の場合も同様に、东西南北という方位を表す言葉のほか、その中間の方位を表す东南、东北、西北、西南があり、これらは通常、方位詞に分類されます。
そして、十六分割した方位を表す言葉として、东东北、东东南、西西南、西西北、北东北、北西北、南西南、南东南などがありますが、日本ほど使われることはありません。
そのようなことから、「东东北」などは、分類上はあくまで方位詞でも、実際に言葉として使われることが少ないため、”定義”と言う意味では曖昧な面があります。
これは、日本語で日常使う実際の表現を考えるとよく分かります。
例えば、「北東の方に向かっている」とは言っても、「北北東の方に向かっている」などのような細かすぎる表現はあまり使いません。
つまり、言葉として存在していても、実用上ほとんど使わないような熟語について、それが方位詞であるかとうかを論じること自体にあまり意味がないとも言えます。
指示代名詞など
次に、指示代名詞などについてです。
本来、指示代名詞に分類される这儿(zhèer)や那儿(nàer)などを方位詞に分類する場合があります。
この分類は、90年代に中国のある学者が唱えた学説から生まれたもので、その流れから这边(zhèbian)や那边(nàbiān)なども方位詞と分類する場合があります。
また、疑問代名詞である哪边(nǎbiān)も方位詞に分類する場合があります。
これらは、「ここ」や「そこ」などの位置や方位の意味を持つ言葉であることから方位詞に分類すべきと考えられたのですが、「あくまでも指示代名詞や疑問代名詞の類であるため方位詞とは言えない」というのが現代における一般的な解釈になっています。
その他
一般に言われている方位詞は、上記の「方位詞の種類」に記載した熟語です。
しかし、方位詞の定義の仕方にはいくつかあり、その定義の仕方によって分類が変わる場合があります。
詳細は後述しますが”名詞+単純方位詞”の形で、その名詞に関連する位置や方位を表現することができますが、広義にはこの”名詞+単純方位詞”全体も方位詞だと解釈することができます。
例えば、
冰箱里(bīngxiāngli)…冷蔵庫の中
です。
これは、冷蔵庫(冰箱里)の中(里)という場所を表す言葉で、名詞である「冰箱」に単純方位詞である「里」がついて構成されたものです。
一般的な解釈では、このうち「里」が方位詞に該当しますが、これを広義にとらえて「冰箱里」全体を方位詞ととらえる考えもあります。
また、「天辺」や「地下」など単純方位詞を含む熟語も広い意味で方位詞に分類することもできます。
更に、方位詞を単に位置や方位を表す言葉と定義した場合、「周围」や「一旁」なども方位詞に含めることができます。
更に言えば、合成方位詞を形成する場合に用いる「头」(tóu)、「边」(biān)、「面」(miàn)、「方」(fāng)、「部」(bù)、「侧」(cè)などの漢字も準方位詞という方位詞の一部に分類する場合があります。
このように、方位詞の解釈についてはまだまだ議論の余地が残る現代においては、その定義の仕方によって方位詞に含まれる対象が変わってきます。
従って、日本人が外国語として中国語を学ぶ上では、方位詞の定義を学問的に追及することには、あまり意味がありません。
一般的な方位詞の定義の解釈としては、やはり上記の「方位詞の種類」に記述した言葉が該当すると認識しておくべきです。
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基本的な使い方
ところで、方位詞には、決められた使い方があります。
方位詞の覚え方のポイントは、使い方をマスターすることでもありますから、その基本をしっかりと押さえておきましょう。
細かい用法については、個々の方位詞ごとに微妙に変わりますので、ここでは基本的な使い方について説明します。
単純方位詞は単独で使えない
上記に挙げた16個の単純方位詞は、原則として単独で使うことができません。
従って、外没有人(wàiméiyǒurén・外に人はいません)とは言えず、合成方位詞を使って外边儿没有人(wàibiārméiyǒurén)のように表現するのが一般的です。
但し、天辺(tiānbiān)、地下(dìxià)、乡下(xiāngxià)、野外(yěwài)など既に熟語となっている場合や、东奔西走(dōngbēnxīzǒu・東奔西走)などの成句は単独で使うことができます。
また、西有山东有河(xīyǒushān dōngyǒuhé・西に山があり東に川がある)のように、対で用いる場合(この場合、西と東)も単独で用いることができます。
更に、往(wǎng)、向(xiàng)、朝(cháo)、由(yóu)などの介詞の後につく場合も、単独で用いることができます。
例えば、下記のように使います。
往西走(wǎngxīzǒu)…西へ向かって行く
向右转(xiàngyòuzhuǎn)…右の方を向く(右向け右)
朝东走(cháodōngzǒu)…東に向かって行く
以上のように、一部の例外を除き、単純方位詞は単独で使うことができません。
これは、方位詞の使い方の基本です。
合成方位詞は単独で使える
一方、合成方位詞については、単独で用いることができます。
例えば下記の通りです。
外面雨大(wàimiànyǔdà)…外は雨が強い
邮局在后面(yóujúzàihòumiàn)…郵便局は後にあります
公园的东边有个公司(gōngyuándedōngbiānyǒugegōngsī)…公園の東に会社があります
上記の三例の合成方位詞の代わりに、単純方位詞を用いて「外雨大」や「邮局在后」、「公园的东有个公司」のようには表現できません。
あくまで合成方位詞の場合に単独で使えるのです。
また、合成方位詞は主語や述語、修飾語などに使うことができます。
例えば、
以上是我听他说的话(yǐshàngshìwǒtīngtāshuōdehuà)…以上が彼に聞いた話だ
と言えば、以上(yǐshàng)は範囲を表し、この文の主語になっています。
また、
图书馆在前边(túshūguǎnzàiqiánbian)…図書館は前にある
と言えば、前边(qiánbian、又はqiánbiān)は「前だ」という位置・方向を表し、この文の述語になっています。
更に、
以前,打过篮球(yǐqiándǎguòlánqiú)…以前は、バスケットボールをやっていた
と言えば、以前(yǐqián)は「以前は」と言う時間的な位置を表し、この文の修飾語になっています。
単なる一般の名詞の場合、主語や目的語にはなっても述語や修飾語にはなりません。
しかし、その名詞に方位詞が加わることで、述語や修飾語にすることができます。
合成方位詞は単独で使えるだけでなく、述語や修飾語など、文章の色々な成分として用いることができるのです。
従って、どの成分としてどのような使い方をするかによって、方位詞を置く位置にも違いが生じてきますので覚えておきましょう。
名詞に付けて使う単純方位詞がある
単純方位詞の中には、一般の名詞の後につけて、場所をはじめ範囲や分野、方面などを表すことができるものがあります。
具体的には、「上」、「下」、「里」、「前」、「后」などで、名詞に直接つけることができます。
例えば、下記の例の通りです。
・体育馆里没有人(tǐyùguǎnlǐméiyǒurén)…体育館の中には誰もいません
・屋顶上有小鸟(wūdǐngshàngyǒuxiǎoniǎo)…屋根の上に小鳥がいます
・桥下有三只猫(qiáoxiàyǒusānzhīmāo)…橋の下に猫が三匹います
・周末前把作业做完(zhōumòqiánbǎzuòyèzuòwán)…週末前に宿題を終わらせる
・暑假后回乡下(shǔjiàhòuhuíxiāngxià)…夏休み後に田舎へ帰ります
この使い方は、特に「上」や「下」、「里」ではよく用いられます。
「前」や「后」などで方位や位置を表現する場合は、前边や后面のような合成方位詞を使う方が自然で、「前」や「后」を使うのは、時間的な範囲を表す場合が多いと言えます。
「上」、「下」、「里」などを名詞の後に付けて方位や位置を表現する場合、付けることができる名詞には制限があります。
その制限をひと言でいえば、その名詞が場所を表す名詞かどうかで決まり、場所を表す名詞の場合には「上」、「下」、「里」を付けることができず、場所を表さない名詞の場合は「上」、「下」、「里」を付けることになります。
より具体的に言えば、
(1)「上」、「下」、「里」を付けてはいけない場合
(2)「上」、「下」、「里」を付けてもよい場合
(3)「上」、「下」、「里」を付けなくてはいけない場合
の3種があります。
付加する名詞の例としては、以下の通りです。
(1)付けてはいけない…美国、东京、长野、日本、香港
(2)付けてもよい…家、学校、邮局、图书馆、教室
(3)付けなくてはいけない…椅子、书桌、钱包、口袋、书架
(1)のように、国名や地名などの場合、その名詞は場所を表しますので、場所の意味を持つ「上」、「下」、「里」などは付けません。
これは、日本語で考えると分かりやすく、例えば「日本に住む」と言う表現は自然ですが、「日本の中に住む」と言う表現は不自然です。
地名に「里」などは付けないのです。
(2)のように、建物や施設などの場合、場所の意義は含まれますが、直接場所を表すわけではありませんので、「上」、「下」、「里」などを付けることも付けないこともできます。
これも、日本語で考えると分かりやすく、例えば「家で遊ぶ」と言っても「家の中で遊ぶ」と言っても共に不自然な感じはしません。
場所の意義を含む言葉の場合、「里」などは付けても付けなくてもいいのです。
(3)のように、その名詞が本来、場所の意義を持たない単なる名詞の場合、「上」、「下」、「里」などを付ける必要があります。
これも、日本語で考えると分かりやすく、例えば「テーブルに」と言っても「テーブルの上に」なのか「テーブルの下に」なのかが不明です。
「テーブル」そのものは単なる物で、場所を表す意味がありませんので、具体的な場所(位置)を表す「上」や「下」を付けて、テーブルのどこであるかを明確にする必要があります。
場所の意義を持たない一般の名詞の場合、「上」などを付けて具体的な場所を示します。
以上、説明したように「上」、「下」、「里」などを付けることで、一般の名詞に場所の意味を持たせることができます。
この用法はとてもよく使われますので、しっかり覚えておきましょう。
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方位詞一覧
では、方位詞を一覧表にまとめておきます。
上述した通り、方位詞については学術的に分類が不明確な面が残っています。
従って、ここに掲載する方位詞については、
・単に分類上方位詞となる趣が強い东东北などは除外
・位置や方位の意味が薄れた上上下下などは除外
・一部の学説だけで方位詞に分類された这儿などは除外
・単純方位詞に付く要素(头、边、面、方、之など)は除外
しました。
また、方位詞と解釈するのに不適切な左头や右头、不自然さが残る左部や右部、ほとんど使われない一带や一头などについても除外しています。
但し、方位詞としてあまり使われることがない一边や一面、一旁、旁侧などは、分類としては方位詞となるため一覧に含めました。
更に、以北、以东などについては、熟語としての認識も低くほとんど使われませんが、一応の分類上は方位詞となるため掲載しました。
一覧には、結果として方位詞としてほとんど使われないものや、形式的な趣が強いものも含まれていますのでご注意下さい。
なお、方位詞によっては、その一部を軽声で発音するものがありますが、もとの四声で発音することがある場合は、どちらか片方のピンインのみを示しています。
また、R(儿)化することがある方位詞についても、儿を除いた記述のみを表記しています。
方位詞 | ピンイン | 意味 |
北 | běi | 北、北の、北へ |
北边 | běibiān | 北方、北側 |
北部 | běibù | 北部 |
北方 | běifāng | 北の方 |
北面 | běimiàn | 北方、北側 |
北首 | běishǒu | 北の方、北側 |
北头 | běitóu | 北側、北方 |
当中 | dāngzhōng | 真ん中、…の中、…の内 |
底下 | dǐxia | 下の方、下 |
东 | dōng | 東、東の、東へ |
东北 | dōngběi | 北東の方向 |
东边 | dōngbian | 東方、東側 |
东部 | dōngbù | 東部 |
东方 | dōngfāng | 東の方 |
东面 | dōngmiàn | 東方、東側 |
东南 | dōngnán | 南東の方向 |
东首 | dōngshǒu | 東の方、東側 |
东头 | dōngtóu | 東の端 |
东西 | dōngxī | 東西の方向、東と西 |
对面 | duìmiàn | 向かい側 |
附近 | fùjìn | 付近、近所、近くの |
高头 | gāotou | 上方、上部 |
跟前 | gēnqián | そば、近く |
后 | hòu | 後ろ、後ろの、後ろに |
后边 | hòubian | 後方、背後 |
后部 | hòubù | 後部、後の部分 |
后方 | hòufāng | 後方、後の方 |
后面 | hòumiàn | 後方、後側、裏側 |
后头 | hòutou | 後方、後部 |
间 | jiān | 間、中間 |
里 | lǐ | 中、内、内部 |
里边 | lǐbian | 内部、中、内側 |
里面 | lǐmiàn | 中、内側 |
里首 | lǐshǒu | 中、内部 |
里头 | lǐtou | 中、内部 |
里外 | lǐwài | 中と外 |
南 | nán | 南、南の、南へ |
南北 | nánběi | 南北の方向、南と北 |
南边 | nánbiān | 南方、南側 |
南部 | nánbù | 南部 |
南方 | nánfāng | 南の方 |
南面 | nánmiàn | 南方、南側 |
南头 | nántóu | 南の端、南寄り |
內 | nèi | 中、内、内側 |
內部 | nèibù | 内部、内側 |
內外 | nèiwài | 内と外、内部と外部 |
旁 | páng | そば、傍ら、附近 |
旁边 | pángbiān | 傍ら、そば、わき |
旁侧 | pángcè | 傍ら、そば |
前 | qián | 前、前の |
前边 | qiánbian | 前、前方 |
前部 | qiánbù | 前部、前の部分 |
前方 | qiánfāng | 前方、前の方 |
前面 | qiánmian | 前面、前方、前に |
前头 | qiántou | 前方、前部 |
前后 | qiánhòu | 前と後、前後 |
上 | shàng | 上、上の、上の方 |
上边 | shàngbian | 上、上方、表面 |
上部 | shàngbù | 上部 |
上方 | shàngfāng | 上の方 |
上面 | shàngmian | 上方、上部、表面 |
上头 | shàngtou | 上、上方、上部 |
上下 | shàngxià | 上下、上と下 |
头里 | tóuli | 前、前方 |
外 | wài | 外、おもて、外部 |
外边 | wàibian | 外、表、外表 |
外部 | wàibù | 外部、外側、表面 |
外面 | wàimian | 表、外側 |
外头 | wàitou | 外、外側、表 |
西 | xī | 西,西の、西へ |
西北 | xīběi | 北西の方 |
西边 | xībian | 西方、西側 |
西部 | xībù | 西部 |
西方 | xīfāng | 西の方 |
西面 | xīmiàn | 西方、西側 |
西南 | xīnán | 南西の方 |
西首 | xīshǒu | 西の方、西側 |
西头 | xītóu | 西の方、西側 |
下 | xià | 下、下の、下部の |
下边 | xiàbian | 下、下方、下部 |
下部 | xiàbù | 下部 |
下里 | xiàlǐ | …方面 |
下面 | xiàmian | 下方、下部、下側 |
下头 | xiàtou | 下、下方、下部 |
下方 | xiàfāng | 下の方 |
先后 | xiānhòu | 前後 |
一边 | yībiān | 一方、片側、そば |
一面 | yímiàn | (物体の)1つの面、側 |
一旁 | yīpáng | そば、傍ら |
以北 | yǐběi | …より北 |
以东 | yǐdōng | …より東 |
以后 | yǐhòu | …の後、以降、…より後 |
以南 | yǐnán | …より南 |
以内 | yǐnèi | …よりも内、以内 |
以前 | yǐqián | …前に、以前 |
以上 | yǐshàng | …より上、以上 |
以外 | yǐwài | …よりも外、以外 |
以西 | yǐxī | …より西 |
以下 | yǐxià | …より下、以下 |
右 | yòu | 右、右の、西方 |
右边 | yòubian | 右の方、右側 |
右方 | yòufāng | 右側、右の方 |
右侧 | yòucè | 右の方、右側 |
右面 | yòumiàn | 右の方、右側 |
之后 | zhīhòu | …の後 |
之间 | zhījiān | …の間 |
之內 | zhīnèi | 以内、…の内 |
之前 | zhīqián | …の前、以前 |
之上 | zhīshàng | …より上、…以上 |
之外 | zhīwài | …の他に |
之下 | zhīxià | …より下、…の下 |
之中 | zhīzhōng | …の中 |
中 | zhōng | 中に、中で、中央 |
中部 | zhōngbù | 中部 |
中间 | zhōngjiān | 中間、中央、真ん中 |
周边 | zhōubiān | 周囲、まわり |
周围 | zhōuwéi | 周囲、まわり |
左 | zuǒ | 左、左の、東 |
左边 | zuǒbian | 左の方、左側 |
左方 | zuǒfāng | 左側、左の方 |
左侧 | zuǒcè | 左の方、左側 |
左面 | zuǒmiàn | 左の方、左側 |
左右 | zuǒyòu | 左右、両側、左と右 |
方位詞を使った例文
最後に、方位詞を使ったいくつかの例文を下記に挙げておきます。方位詞の使い方の参考にして下さい。
北方的冬天很冷…北方の冬は本当に寒い
在同学当中她是最漂亮的…同級生の中で彼女が一番きれいだ
房子东侧有一个院子…家の東側に庭がある
狗跑到我附近来啦…犬が私の近くに駆け寄ってきた
卓子后面有电视机…机の後にテレビがある
这里边没有…この中にはない
鸟飞往南方…鳥が南に向かって飛ぶ
问了旁边的孩子…そばにいた子供に尋ねた
她跟前有一个少女…彼女のすぐそばに一人の少女がいる
外边天已经发白了…外は空がすでに白みがかっていた
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コメント
中国の散文に以下の記述があるが、どうも意味が不明。教えて頂けませんか。
这时走过来一个路人
路人问: 赔得起么
老头 : 赔不起
路人说 : 赔不起还不跑
、、、、、
記事の内容と直接関係ないようですが、せっかくコメントを頂いたので簡単に意味を添えておきます。
その時、一人の通行人がやって来ました。
通行人は、「賠償できる経済力はあるのですか?」と尋ねました。
老人は、「賠償できる経済力はない」と言いました。
通行人は、「賠償できる経済力が無いのに、逃げないのですか」と言いました。