地獄谷野猿公苑と言えば、温泉に入る自然界の猿の姿を見られることから、その珍しさや興味深さもあって、訪れたことがある人も多いといます。
また、知名度も高くなって、特に海外においても評判で、外国人観光客が多く訪れています。
私もリピータにもなっているくらい、地獄谷野猿公苑に魅せられた一人ですが、そんな魅力を伝えたいと思い、「何がそんなに魅力なのか」、「見どころはどこにあるのか」、「どのように楽しむのが良いのか」をまとめました。
猿の姿に魅せられて
かねてから地獄谷野猿公苑には行ってみたいと考えていたので、長野に引っ越してきてから間もなく、足を運びました。
「いったい温泉につかる猿ってどういう猿なのか」
「どんな光景がそこにあるのか」
など、とても興味津々でした。当初は、「単に温泉に好んで入る猿」というイメージを持っていたのですが、実際に現地に足を運んで見てみると、少しその当初のイメージとは違うものを感じました。
それは、「大自然の中の、厳しい寒さをしのぐためのひとつの手段として温泉に入る」のであって、単に好んで温泉に入るという姿では無かったのです。
そして、そんな自然な姿に魅力を感じ、また興味を覚えたのです。
地獄谷野猿公苑のイメージでもあり、またアピール点でもある「温泉に入る猿」といった姿だけではなく、大自然の中に暮らす猿のありのままの生態、ごくごく自然な姿そのものに魅了されたのです。
地獄谷野猿公苑に行ってみたいという方には、単に温泉に入る猿がいるという見方ではなく、「自然界に暮らす、ありのままの猿のすがたを見る」、という観点で足を運んでみて欲しいと思います。
こんな猿の姿に魅了された私は、これからも何回も足を運び続けて行きたいと思っています。
何が魅力か
さて、もし
「地獄谷野猿公苑の魅力は何?」
と聞かれたら、ひと言で説明するのは難しいところですが、敢えて言うならば、やはり
「自然界の中に暮らす猿の、ありのままの姿に接することができるから」
と答えることでしょう。しかし、
「それのどこが魅力なの?」
と更に聞かれた場合、きっと
「動物園などにいる猿たちの行動を細かく観察していて、面白いと感じたことがあるのではないですか!」
と答えることでしょう。そう言うのは、そういう表現が直感的に一番分かりやすいのではないかと思うからです。
猿は、多くの動物園で飼育されていますから、動物園にある猿のコーナーで、猿たちの様子を観測したことがある人は多いと思います。
そこにいる猿たちが取る行動のひとつひとつを見ていて、実際に、「滑稽だ、面白い、興味深い」などと感じた人は、けっこう多いのではないでしょうか。
そもそも猿は、人間に近い哺乳類の一種で、二本足歩行に近い歩き方もしますし、手を使って木の枝などを道具代わりに使うことなどもしますし、動物の中でも比較的、知能が高いとも言われています。
しかも、集団で生活するという点でも人間と同じで、そこには猿独自の集団社会というものがあります。
そんな様々な面で人間に近い点を持つ猿だからこそ、どこか共感を持つことができ、ひとつひとつの行動も理解しやすく、また馴染みやすいのではないでしようか。
このように、まず猿という動物じたいに、興味がわく要素がたくさんあるといえます。
そして、そんな猿の姿を見るにしても、動物園などではあくまで飼育されている状態を抜けきらないところがありますが、地獄谷野猿公苑の場合は、自然界の中で暮らすありのままの姿を直接、自分の目の前で見ることができるのです。
しかも単に目の前で見るだけでは無く、人間も猿と同じ空間、同じ生息域に身を置くことになるので、言葉では表せないような体で感じる空気、身で味わう雰囲気というものがあります。
実際に、駆け抜ける猿が、観察している人の体に接触することなどもあり、動物園などでは決して経験できないようなことも多く、猿を身近な存在として間近で観察することができるのが魅力なのです。
そんな猿の生態を自然界の中で味わう機会は他にはまずなく、地獄谷野猿公苑以外の場所では、ほとんど見られないところに、この公苑の価値があります。
しかも、見ていても飽きないところが、その魅力を更に大きくしていると言えるでしょう。
見どころ、楽しみ方は
では、実際のおススメの見方は何かですが、一匹一匹の様子をじーっと観察して、その行動を追って行く中に、色々な姿があるのが面白いところです。
換言すれば、じっくり観測する中にこそ見応えがあり、面白さがあります。では、具体的にどんな姿が見られるのかを紹介しましょう。
入浴姿は必見
まずは、やはり温泉に入る姿はこの公苑の売りでもありますから、一番見るべきところでしょう。
地獄谷野猿公苑が有名な理由こそ「温泉に入る猿がいる」点ですから、これを見ないのであれば、地獄谷野猿公苑に来る意味がないとも言えるくらいです。
温泉に入る姿はここでしか見ることができないから価値があるのです。
ところで、温泉に入る姿を見ようとした場合、行くべき時期は冬期ですが、同じ冬場でも、比較的温暖な日だと、猿は温泉に入りませんから、温泉に入る猿の姿を観測することはできません。
外気温が3℃~4℃くらいでは通常、猿は温泉には入りません。それというのも、猿はあくまで厳しい冬の寒さをしのぐ手段として温泉につかりますので、「そこに温泉があっていつでも入れる状態にある」というだけでは、温泉には入らないのです。
換言すれば、猿が寒さに耐えかねるくらいの状況になって、初めて温泉に入りますので、けっこう寒い日でないと必ず見られるとは限りません。
「どのくらいの気候だと温泉に入るのかなぁ?」と気になる方は、運営会社がライブ映像を公式サイトで公開していますので、一度その様子を確かめてみるとよいでしょう。
そして、温泉に入る猿を見る時はじっくり観察しましょう。ただ「温泉に入っている」のを見るだけでは面白くありません。猿の表情を味わって見ると、とても趣があって滑稽でもあり、とても楽しめます。
一般に人が温泉に入る時などは、湯船の中に浸かって気持ちよさそうに温まる姿がありますが、猿にもどこか似ているような姿があります。
それは、冷え切った身体をじっくり温める姿の中に、どこか気持ちよさそうな表情がある一方で、寒さを乗り越えるためにジッと我慢強く浸かるような様子もあり、そのような姿がとても滑稽なのです。
このように、温泉に出入りする一匹一匹の猿のそれぞれの行動や表情を観察していると、そこにはその猿ごとのユニークな表情があり、そんな自然でありながら、どこか親しみを覚えるようなところが、見応えあるところなのです。
寄り添う姿
そして、観察していて面白いのは、温泉に入る時だけではありません。個々の猿のひとつひとつの行動を、くまなく目で追っていくだけでも面白いものがあります。
例えば、寒い日などは、寒さをしのぐための1つの手段として、複数の猿が寄り添って、お互いの体をくっつけている姿を見ることができます。
しかも、何匹もいる猿の群れの中で、そのように寄り添う複数の猿の集まりは何か所でも見ることができます。2匹の猿が寄り添うこともあれば、3匹、4匹と寄り添う場面もあります。
その姿は、寒さをしのぐために猿が自然と取った行動で、厳しい自然の中で暮らす野生の猿の知恵の現れでもありますが、寒さをじっとこらえながら、耐え忍ぼうとする姿が自然に現れていて、見ていてとても興味深いものがあります。
ペアを組む姿
また、よく見かける光景として、猿がお互いにペアを組んで、相手の体に潜むノミ取りをする姿です。
これは、相手の体の毛の生え際が見えるように、手で毛をかき分けて、じっと生え際を凝視しながら小さなノミを見つけ出し、そのノミを1つ1つ手で取り除いては、取ったノミを口の中に運んで食べるのです。
正確に言うと、実際に取っているものが、本当にノミかどうかは直接確認したわけではありませんが、ペアを組む相手の猿の体毛の生え際に潜む小さな生物を取って、口に運んで食べているのは事実です。
この姿は、公苑内にいる多くの猿が行っていることで、ノミを取って貰う猿は気持ちよさそうに横たわっていたり、楽な姿勢でくつろいでいたりする姿はとても滑稽です。
また、ノミを取る方の猿も、その眼差しや視線は真剣そのもので、自然の中に暮らす猿のありのままの姿の一面が、よく現れている感じがします。
親子の姿
更に、親子の猿の姿を見ているのも楽しいものです。
特に小さな猿の場合は、親猿と一緒にいることが多いのですが、親の背中やお腹に捕まりながら移動する姿は、見ていて可愛らしさを感じます。
また、小さい小猿だと親は何かと気にかけている様子が随所に見られます。
例えば、親猿が少し離れていたところから小猿を注意深く見守っていたり、近くにいながら別な行動を取っている場合は、時おり子供の様子をちらりと確認したりする姿などがあり、見ていて微笑ましくも思えます。
親子が一緒にいるときなどは、親猿が小猿を可愛がる様子や、小猿が親猿に構って貰おうとする仕草や行動などもあり、そんな姿が、幼子を育てる人間の姿、子育ての姿ともオーバーラップして、何か共感のようなものを覚えるところもあります。
色々な姿
また、よく見かけるのは、猿が山中を楽しそうに自由に動き回っている姿や、猿同士がじゃれ合って遊んでいる姿、時には喧嘩をして威嚇したりする姿なんかも見られ、そんなリアルな場面を直に見ることができるのは何とも見応えがあるものです。
そんなひとつひとつの姿も、ただ漠然と見るのではなく、一匹一匹の姿を追って細かく観察することで面白さが増加しますし、また、なかなか飽きないものです。
公苑内には多くの猿がいますので、遠方を見ても多くの猿を見ることができますから、それら多くの猿一匹一匹の動作や仕草、行動などを追っていくだけでも全く退屈しません。
そして、よくよく見ていると、一匹一匹、顔が違っているので、頻繁に足を運んでいると目立つ猿は覚えてしまうかも知れません。
最初はみんな同じ顔に見えるものですが、慣れてくると違いがあることが分かり、更に慣れると区別がつく猿も出てくると思います。
ところで、俗に言うボス猿というのは実は、その群れのナンバーワンのことを言い、そこにはナンバーツー、ナンバースリー、 ・・・と言った猿もいます。
そんなランキングされた猿の名前と写真は、地獄谷野猿公苑の入口の施設内に掲示されていますので、そんな風格のある猿たちに注目して、どこにいるのかを探してみて、行動を追ってみるのも面白いと思います。
おススメは絶対に冬
こんなに楽しめる地獄谷野猿公苑ですが、おススメ時期は絶対に冬の特に寒さが厳しい日です。その理由は、冬の寒い時期でないと、猿が公苑の方に来るとは限らないからです。
猿は自然界の生き物ですから、公苑周辺の山間部に住んでいるのであって、公苑そのものに住んでいる訳ではないのです。
言い方を変えれば、冬の特に寒い時期の場合、猿は温まれる温泉のある場所を知っているので、自然と活動領域を温泉のある公苑付近に移すのです。
猿がきちんと見られ、しかも温泉に入っている姿を見られる時期が、まさに真冬の寒い時期なのです。
冬場に行く場合に注意することとして、地獄谷野猿公苑は山間部にあるので、駐車場から山道を30~40分間歩かなければ行けません。そして、積雪時期になると場合によっては溶けた雪で山道がヌカってしまいますので、ヌカっても大丈夫な滑りにくい履物をはくべきです。
また、標高こそあまりありませんが、冬山でもありますので、防寒対策はしっかりとっておくべきです。山間部なので天気も変わりやすいですから、降雪の可能性があることくらいは想定しておいた方が良いでしょう。
そして、猿の観測に当たっては、猿に近づき過ぎないとか、食べ物をちらつかせないとか、目と目とを合わせないなど、注意事項があります。
詳細は公苑の入口に掲載されていますし、公式サイトにも掲載されていますから、思わぬトラブルにならない為にも、これらの注意点はチェックしておいて必ず守るようにしましょう。
一度、地獄谷野猿公苑に足を運ぶと、その魅力に取りつかれてしまうかも知れません。
また、ここでの猿の生き方を観察すると、猿の面白さに気付き、身近な動物園にいる猿を見る時も、見方を変えて楽しめるようになるかも知れません。
ぜひ一度は足を運ぶことを絶対おススメしたいのがこの地獄谷野猿公苑です。