野球でもサッカーでもバスケットでも、点を取り合って勝敗を決する競技ですが、相手よりも1点でも多く取った方が勝ちになりますので、1点を取る価値も1点を守り抜く価値も差は無いハズです。
もちろん点を守るだけでは勝てませんが、1点を守れば1点を取ったのと同じ価値があることになります。
この考えをもとに、現在の選挙制度において支持者や支持政党に一票を投じる代わりに、支持しない者や支持しない政党にマイナスの票を投じる仕組みを導入したら面白いだろうなぁとふと思いました。
つまり、有権者はプラスかマイナスのどちらかの一票を投票できる制度で、候補者はたとえプラス票を一票獲得しても、マイナス票を一票獲得すればプラスマイナス0票となって、得票数はゼロとなるわけです。
従って、場合によっては最終的な得票数が、マイナス10万票なんてことすらあり得るような仕組みです。
「仮にこんな制度が本当に導入されたらどうなるのだろう?」と、とても興味がわき、ちょっと考えてみることにしました。
競技と選挙とでは何が違う
まず、スポーツ競技の場合と選挙の場合の違いですが、競技では点を取るか取られるかしかありませんが、選挙の場合はそもそも票を投じない、すなわち棄権するという選択肢があるので、プラス1票、0票、マイナス1票の3種類があります。
また、競技の場合は点数に制限がありませんからゴールをすればするほど、得点を取得することができるのに対して、選挙の場合は投票の総数の最大値が選挙権者数という制限があります。
制度導入で何が変わる
実際にマイナス票を投じる仕組みを導入したとすると、どのように変わるでしょうか。
従来、支持者がいたり支持政党があったりする場合に、一票を投じていた人は、制度変更後もほとんど変わらず同様に支持する側に一票を投じることでしょう。
しかし、特に支持する人や支持する政党がいなくて、「他の人や他の政党よりは、まだましだから」といった理由で一票を投じていたような人は、制度変更後はその一票を「この人だけは、或いはこの政党だけは絶対に当選して欲しくない」という人や政党に対して、マイナス票を投ずるようになるかも知れません。
また、従来は支持する人や政党がいなくて投票に行かなかったような人も、制度変更後は、当選して欲しくない人や政党に対してマイナス票を投じる人も出てくることでしょう。
一方、立候補する側から見れば、いたずらに敵を多く作るような政策などは採りにくくなるため、反対派に対しても相応の理解を得られるような政策を考えるようになるでしょう。
更に、たとえ賛成派が多いような政策案であっても、同時に反対派も多くいるような場合は、強引に政策を押し通すような無理なことは無くなるのではないでしょうか。
今の政権に当てはめると
さて現在において、もし仮に本当にこのような選挙制度に変わったらどのようなことが起きるでしょうか。
今の政権与党は、支持率が低迷して支持しない人が多くいます。しかし、そのー方で与党に代わる頼りになる政党が特に無いため、仕方なく与党に投票する人や、「与党よりましだ」という理由で様々な野党に投票する人、或いは棄権する人もいることでしょう。
結果として野党に投票された投票数は分散されることになり、支持率が低いにも関わらず与党が勝利しているというのが実態です。
従って、もしマイナス票制度なるものが実現したとしたら、仕方なく野党に投票していた人や棄権していたような人の中からは、与党に反対してマイナス票を投じるような人も相当数出てくると思われます。
これにより、かろうじて勝利していた与党の体制はゆらぎ、議席の過半数を占めるようなことは出来なくなるでしょう。
そしてその分、得票数は野党に分散されて行き、より多くの政党がそれぞれ相応の議席を獲得するような体制になるのではないでしょうか。
こうなると、数にまかせて強引に法案を可決するような非民主主義的なやり方は抑制できることになり、殊に反対者が多いような政策は簡単には可決されにくい、換言すれば無理のあるような政策は簡単には通らないような傾向になるでしょう。
またその一方で、議論がなかなか進まない、結論がなかなか出ない、決まらないなど、何を推し進めるにも、簡単には決めにくいというデメリットが出てくるのも事実でしょう。
以上、マイナス票という、現実にはない制度が導入された場合について考察してみましたが、意外と面白いのではないかと感じました。
もちろん、単純にここで考察した通りにはならないでしょうが、選挙制度の在り方を考える上での、ひとつのヒントになるのではないでしょうか。