業務を遂行する上で避けては通れないのが他部署間との交渉ごとです。
特に全社的に関連する業務においては、根回しが非常に大事で、業務の成否は内容よりも「根回し」の方が重要という場合も少なくありません。
根回しとは
さて、「根回し」という言葉を耳にすると、何か裏で手を回す裏工作のような類をイメージする人もいるかも知れません。
何かどこかで、正々堂々としていない、裏や陰に手を回すような行為に対して快く思っていない人もいることでしょう。
しかし、そもそも「根回し」とはデジタル大辞泉によると、
交渉や会議などで、事をうまく運ぶために、あらかじめ手を打っておくこと。下工作。
と言う意味です。下工作であって、裏工作ではありません。
陰でコソコソ何かを行うという意味ではなく、業務を円滑に遂行するために必要な手立てを、予め取っておくだけのことです。
むしろ業務上、大切な方法のひとつと心得て、きちんと「根回し」をすることが重要です。
ちなみに、どうして「根回し」という表現・言い方なのかについてですが、同辞書には
樹木などの移植の1、2年前に、広がった根を根もとを中心に残して切り、細根の発生を促すこと。
とあります。
樹木の移植をしやすくするために予め根に処置をしておくことから、物事が上手く行くように前もって手を打つことの意味に転じたようです。
根回しの仕方
実際の「根回し」の仕方ですが、業務上で影響を与える他部門に、事前にその業務について話を伝えておき、予め了解をもらっておくことが基本的な方法になります。
より具体的に言えば、例えば自分が所属するA課と業務上つながりのあるB課との交渉において、A課とB課の共通の作業手順を改定したい場合、相手のB課の課長に対して、「作業手順を改定してこの部分を変更したい」旨を伝えて、予め了解を得ておきます。
その際、直ぐに了解を得られないのであれば、B課内でその内容を展開してもらって了解を得るようにします。
もし、B課の了解を得られない場合、受け入れられなかった理由を聞いて再検討すれば良いのです。
また、B課の課長との根回しにおいては、自分が所属するA課の課長から直接伝えて貰う、或いは仮に自身から伝える場合でも必ず自分の所属するA課の課長にも関わって貰うことも大切です。
関係部門の上長が「話を知らなかった」となると、後からこじれる場合があるからです。
そして、事前の了解が確認できた上で、具体的に業務を遂行(この場合は、A課・B課の共通作業手順の改定)します。
つまり、事前に話をしておいて了解を得るだけで良く、たったこれだけでも、根回しがあるのとないのとでは大違いなのです。
関連部門が多いと
では、もし仮に、人事課が人事規則を大幅に変更するとか、調達課が購入の仕組みを大きく変えるなど、全社的に影響が及ぶような場合ならどうしたらよいでしょう。
その場合も考え方は同じで、予め全ての本部や事業部の長を通して、全社に展開・周知して貰うことが重要です。根回しの基本は、関連部署の長に対して予め了解を得ておくところにあるのです。
この場合、展開・周知後の反応を見極めてから具体的な業務に踏み切るようにします。その業務遂行に本当に問題がある場合は、周知の行動を取る段階で何らかの反応や指摘などが自然と上がってきます。
仮に指摘などがあがって、了解を得られなかったとしても、却って問題点が見えてくることになるので、後々の解決のための糸口になります。
スムーズさが違う
ところで、「根回し」をすることで得られるメリットは何でしょう。これは、業務遂行が円滑・スムーズになることにつきます。
極端な言い方をすれば、業務遂行の成否を決すると言っても過言ではなく、根回しで成否が決まる場合も少なくありません。
これは業務遂行に限らず、物事なんでもそうですが、予め知らされていることや事前に認識していることと、唐突に言われることや突然言い渡されることと、どちらが受け入れやすいでしょうか?
誰でも事前に知らされていれば、「ああ、あの案件ね」と言った感じになりますから、前者の方が受け入れやすいのは当然です。
しかし後者のように、ある日いきなり「この制度は今日から変更されたから」などと言われれば、「何それ?!」と不快な思いを抱きますし、不信や反発の気持ちを抱くこともあるかも知れません。
根回しをしておくことで、無理なく受け入れられ、業務の上でも早く浸透するようになるのです。
一度こじれると困難
ではもし根回しを怠った場合、どうなるでしょうか。
もしその業務内容が他部署に小さな影響しか与えない場合、恐らくは何ごとも無く業務遂行がはかれることでしょう。
しかし、大抵の業務においては影響は少なからずあるものですから、根回しを怠った場合には、何らかの問題が起きやすいと考えるべきです。
仮に、業務遂行がうまく行ったように見えても、実際は他部門との間で険悪な空気になることもあるかも知れません。
或いは、そのことがキッカケとなって、後々、他の業務で支障を来すこともあるかも知れません。
根回しをしない場合、影響を受ける部門は、唐突さがあり「突然、一方的なこの措置は何だ?」といった思いを抱くものです。
場合によっては、既に遂行したハズの業務でも、「こんな一方的な措置は絶対受け入れられない」と強い反発が生まれて、撤回ということにもなり兼ねません。
急に言い渡されるような突然のことには、人間だれしも拒絶感を持ち、感情的にもなりやすいですから、却って構えて頑なになります。
そして、一度拒絶されると今度は修復や、やり直しが難しくなり、せっかく円滑に行くはずの業務でも、無にしてしまうこともあります。
しかも、単に業務のやり直しをするために振出しに戻るだけではなく、余計、難しい状況にしてしまうことも多いのです。一度こじれてしまった案件は、そう簡単には取り戻せないのです。
たとえ根回しが大変でも
さて、根回しをすることは時として、多くの関係者に伝えなければならないことがあります。
また、時間を充分掛けてきちんと了解を得ておくことが必要な場合もあります。
そのような時、「事前に根回しするのはちょっと大変だから、直接、ことを進めよう!」などと安易に考えることがありますが、これは考えものです。
根回しが大変だからと怠ると、却ってもの凄く大変になります。
根回しが大変であれば大変である案件ほど、問題が起きた時の対処は更に大変になるのです。
まとめ
以上、業務における根回しが如何に重要であるかについて説明してきました。
まとめると、以下のようになります。
・根回しとは、裏工作とは違い、業務の円滑遂行にとても重要な方法
・根回しの基本は、関連部門の長に事前に伝えて了解を得ておくこと
・根回しをするしないで、スムーズさに大きな差がでる
・根回しを怠ると、却って反動が大きく状況を悪化させてしまう
ちょっとした業務や、課内の業務においても、簡単な根回しをするだけで思いの他、スムーズに遂行できるようになります。日常の業務から心掛けて、積極的に取り入れたいものです。
もちろん業務以外でも人と人とが接するあらゆる場所で応用が効きますので、いろんな場面で利用したいところです。