機会がある度に訪れる小布施で、先日はじめて蕎麦を食べてみました。
入った店は、そば処「鼎」(かなえ)と呼称する小さな蕎麦屋でしたが、味は申し分なく、改めて信州が蕎麦の名産地であることを再認識しました。
小布施でも蕎麦は人気
長野に引っ越して来てから、いろいろな蕎麦の店に足を運んでいます。
今回、たびたび訪れる小布施町を散策する中に、目に入った蕎麦屋「鼎(かなえ)」が気になり入ってみました。
本来、小布施町は栗の名産地であることから、全国的にも栗菓子の方が有名です。
従って、小布施の表通りには多くの栗菓子店が並んでいます。
つまり、
小布施=栗菓子
って感じなんですね。
実際、色々な栗菓子を食べて来ました。
そんな訳で、蕎麦と言うイメージは全くなかったのです。
今回、改めて街路を散策していた時に目に飛び込んで来たのが、そば処 鼎(かなえ)だったという訳です。
パッと見ただけだと「ただの一軒家」という感じでしたが、却って家庭的で古風な一面もあり、小布施と言う町にはピッタリの雰囲気を感じました。
そして、改めて調べみると、小布施にはいくつもの蕎麦屋があって、けっこう有名な店もあることが分かりました。
「さすが信州。信州そばという名称で呼ばれるだけのことはある。」
そういう思いが湧いて来ました。
そば処 鼎
さて、私が入ったこの蕎麦屋。名前は「鼎」と書いて「かなえ」と呼称します。
「鼎」は、初めて見る漢字でもあったので、ちょっと気になって、この漢字について調べてみました。
鼎(かなえ)とは、古代中国の金属製の器のことで、通常は3つの脚と2つの耳があり、王侯の祭器や礼器として用いられたことから、王位の象徴となりました。(そのことから、鼎は、のちに王位の象徴の意味も持つようになったそうです)
そして、この鼎という漢字は、この器を実際に形にした象形文字だそうです。
で、この店名。蕎麦とは直接関係ないようですが、王位の象徴という威厳と、ちょっとカッコよく見えるこの漢字に魅せられて、店主がこの名前にしたのではないでしょうか…。
と勝手に推測したのですが、どうも店主の出身地が飯田市鼎であるのが店名の理由のようです。
余談はここまでにして、話しをもとに戻します。
昼食をとろうと思いながら、裏通りを散策中に見かけたのがこの店のわけですが、実際にこの店に入ろうと決めたのにはキッカケがありました。
それは、十割そばという文字が目に入ってきたことと、小さな店でありながら家庭的な一面があり、小さいながら日本の伝統的な庭がキレイに見えたからです。
つまり、「そば専門」って雰囲気が伝わってきたわけですね。
店内に入ると決して広くないものの、座敷には6つのテーブルがあり、障子を通して見える小さな庭は情緒を感じさせるものでした。
テーブル席も2つほどありましたが、「和風」に重点を置いているのでしょう。あくまで座敷が中心となっていました。
ゆったりとくつろげる雰囲気が伝わって来て、小布施の町を歩いて回る雰囲気にマッチした食事処だと強く感じました。
メニューはシンプル
さて、この蕎麦屋。どんなメニューがあるでしょう。
私が、素直に感じたことは、メニューがとてもシンプルであることでした。
けっこう蕎麦屋にありがちなのは、そばのレパートリーが多く、メニューの数が多いことです。
でも、この店はメニューが極めてシンプルでした。
ストレートに言えば、蕎麦の味をそのまま楽しめるメニューに限定しているって感じです。
実際のメニューは、下記の3つに大別されていました。
(1)そば粉を100%使った十割(じゅうわり)そば
(2)そば粉を80%、つなぎを20%使った二八そば
(3)普通の温かいそば(そばは、二八そば)
そして、具体的なメニューは下記の通りです。価格は全て税込です。
(1)十割そば(数量限定)
十割そば(粗挽き) 1150円
天十割そば 2050円
(2)ニ八そば
もりそば 900円
ざるそば 950円
とろろそば 1150円
天ざるそば 1850円
(3)温かいそば(二八そば)
かけそば 900円
にしんそば 1300円
大盛り(追加料金) (1)…500円 (2)と(3)…400円
この他には、食事としての食べ物はなく、簡単な料理が数点と、日本酒などの飲物のメニューがいくつかあるだけでした。
蕎麦の基本メニューだけという、とてもシンプルな内容は、蕎麦専門店であることの表れだと感じました。
ちなみに、十割そばは数量限定で、無くなり次第終了となるそうです。
そばの実は、八ヶ岳産の蕎麦を厳選し、粗挽きのそば粉を使っているとのこと。
温かいそばは、たったの2種だけで、あとは蕎麦そのものの味わいを引き出せる冷たいそばだけでした。いわゆる、その場でつゆにつけて食べるタイプの蕎麦が主流ってことですね。
そして、メニューの大きな特徴として、十割そば と ニ八そば の2種類から選べる点があります。
今回、この2つを食べ比べたことで、好みで選ぶことの大切さを認識させられました。
要は、そば粉の割合が10割か8割かの違いですが、これが違うだけで味が変わることを初めて実感したのです。
十割と八割の食べ比べ
さて、私たちが今回注文したのは、「十割そば」と「ざるそば」(二八そば)の2種(いずれも大盛り)でした。
それは、2つの味を楽しめると考えたからです。
十割そば
まず、十割そばです。十割そばの盛り付けはこんな感じでした。
ネギやワサビなどが付いているのはもちろん、ちょっとした小鉢も付いていて高グレードって感じです。
ちょっと、蕎麦をアップで見てましょう。
蕎麦全体が、少し濃い目の色をしていることが分かると思います。
また、ちょっとツヤが欠けた感じがしていますが、そば粉100%の表れですね。
つゆはダシがとても強くきいた感じ。
しかも、決して麺(そば)に負けていない味です。
で、肝心の蕎麦はどうかと言えば、天然の味がそのまま伝わってくるような深みのある味でした。
店のメニューには「豊かな香りと甘味のあるそば、甘皮をふんだんに挽き込んだ黒っぽいそば」と記載されていましたが、まさにその通りですね。
ひと言で言えば「蕎麦の素材を表に出した深みのある味」ってところです。贅沢な味わいってことですね。
ただし、忘れてはいけないのが、口当たりです。
蕎麦100%だと味は上々なのですが、少しパサパサした感じが拭えないのです。
そして、そのパサパサ感は、食べやすさにもつながり、そのまま総合的な味わいにも影響して来ます。
もちろん好みですが、蕎麦の天然の味を追求するならもちろん10割そばです。そば粉100%だからです。
しかし、トータル的な味わいを考える場合、10割だからベストとは言えない感じがします。
言葉で説明しにくいのですが、本当に美味しいけど、「まとまり感に欠ける」ってところでしょう。
でも、10割そばを食べたことが無い人は、絶対に一度は食べてみて下さい!!感動するハズです。
ニ八そば
次に、もう一つ注文したのが、この二八そば(ざるそば)でしたが、「うまくまとまっている味」と言う感じでした。
口当たりがとても良く、それでいて蕎麦の素材の味がしっかりと伝わってくる深みを持っていました。
写真を見ても、十割そばよりも若干ツヤがあるのが分かると思います。
端的に表現すれば、
食べやすい → 美味しい
です。もちろん食べやすさだけではありません。
この類の蕎麦は、色々な店で食べて来ましたが、「そば粉8割、つなぎ粉2割」が相場なんですね。
「9:1」でもダメ。「7:3」でもダメ。
「8:2」という数値が、恐らく蕎麦の理想的な比率なのでしょう。
そして、つゆについてですが、十割そばと同じく、つゆの味も蕎麦に負けていませんでした。
麺(そば)と凄くマッチしているってところでしょうか。
今回、2つを食べ比べて分かったことは、そば粉の比率は微妙に味の違いを生むことです。
そして、同時に感じたことは、10割そばの方が美味しいとは言い切れないことです。
十割そばもニ八そばも、それぞれの特長・味わいが出ていて、どちらにも長短所があります。
味の好みや気分でどちらを注文するのか考えてみるといいでしょう。
小布施を訪れる機会があれば、ぜひ食べてみて下さい。
そばが好きな人なら絶対に満足することでしょう。
参考までに、店の情報を下記に記載しておきます。
住 所:長野県上高井郡小布施町大字小布施731-3
電 話:026-247-6106
営業時間:11:30 ~ 15:00
地 図: