スマートホンに後付けする望遠レンズは光学式のため、画質を向上することができます。
しかし、画面(ファインダー)内にレンズの枠が写り込む「ケラレ」を生じる場合があります。
ここでは、ケラレが起きる原因とその対策について詳しく述べます。
望遠レンズを取付ける際のノウハウやポイントについても説明します。
目次
基本的な原因はスマホと望遠レンズの距離が不適切なため
ケラレの主な原因を端的に言えば、スマホと望遠レンズの距離が不適切なためです。
具体的には、スマホと望遠レンズとが密着せず、距離ができてしまっている場合です。
通常の取付状態を図示すると下記のようになります。
上図では、スマートホン(緑)に望遠レンズが密着しています。
光の取り込みがオレンジ色のような線になり、カメラの枠の中に納まりますので、ケラレは起きません。
望遠レンズが密着せず、スマートホンから少し離れてしまっている場合が下記です。
この場合、光の取り込み角度は同じですが、赤矢印でしめした箇所を通るため、ケラレが発生してしまいます。
このように、ケラレが発生してしまう主原因は、スマホと望遠レンズの間に隙間ができてしまうことによります。
具体的な原因と対策
さて、主原因を説明しましたが、実際は、他にも原因があります。
また、主原因を生む二次的な要因もあります。
以下、より具体的な事例を挙げ、もう少し詳しく説明して行きます。
同時に、解決方法も示しておきます
原因1:スマホケースが邪魔をする
主原因を生む、二次的な要因の1つがスマホのケースで、ケラレの原因の中で最も多いケースです。
スマホケースには厚みがありますので、ケースの上から望遠レンズを取り付けると、スマホと望遠レンズの間にその分だけ距離ができてしまいます。
スマホケースに限らず、カメラの傷を防止するための保護用カバーだけでも同様の問題を起こすことがあります。
いずれも、ケースやカバーの厚みによって生じる隙間に起因します。
解決策としては隙間がごくわずかになるようなケースに変更する方法があります。
その際、単に厚みが薄いケースを選ぶのではなく、取り付けた時に生じる隙間を小さくできるものを選ぶことが大切です。
特に、ケースの外面に凹凸がある場合は問題となりやすいので気を付けましょう。
ちなみに、適切なケースが見つからない場合は、望遠レンズを使う時だけケースを外すのも1つの方法です。
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原因2:望遠レンズの取り付け位置がズレている
望遠レンズの取り付け位置がズレている場合もケラレの原因になります。
この状態を図示すると下記の通りです。
この例では、望遠レンズの取り付け位置が下方に寄っているため、上部(赤矢印)でケラレが発生します。
上の例のように、画面(ファインダー)の四隅の片側(2か所)だけに起きることも少なくありません。
位置がズレていると、スマホと望遠レンズの間に隙間が無くてもケラレは起きますが、位置を調整すれば解決できます。
位置を調整する時は、カメラの中心と望遠レンズの中心とを一致させることがポイントです。
完璧に一致させるのは容易ではありませんが、できるだけ正確に位置合わせをしましょう。
位置がズレていると、たとえケラレを解決できたとしても、歪が目立つようになってしまうからです。
原因3:望遠レンズの装着が斜めになっている
望遠レンズが斜めに曲がって取り付けられていると、ケラレを生む可能性があります。
この状態を図示すると下記の通りです。
図の赤矢印の個所に、隙間が生じることでケラレが発生する様子が分かります。
図は、分かりやすくするために極端に斜めにしてありますが、ここまで斜めになることは通常ありません。
どちらかと言えば、他の原因(例えば、原因1や原因2)と合わさることでケラレが発生します。
この対策としては、望遠レンズをスマホに垂直になるように調整します。
望遠レンズには、望遠レンズと垂直になるプレートがあります。
そのプレートは、通常、固定用クリップの一部となっていて、スマホ本体をクリップで挟みこむことで固定します。
クリップの内側には、傷を防止するためのゴムが付いていますが、ゴムの弾力性も斜めになる要因となります。
ゴムは、望遠レンズを囲むような構造で、一般に丸い形状をしていますが、ゴム全体に均等に力が加わるようにすることが垂直を保つコツです。
そのためには、クリップを押さえつけるネジ部分が、カメラとちょうど正反対に来るようにするのがポイントです。
ネジの位置がカメラの位置から外れるほど、ゴムに加わる力が偏るため、斜めになる原因となるからです。
一般の望遠レンズは、レンズ位置をスライドさせて調節できます。
望遠レンズの機種によっては構造が異なるため、上記と同じような調整が難しい場合もあります。
しかし、基本的な考え方は、均等に力が加わるようにすることですから、そのための工夫をしてみましょう。
また、ゴム部が密着するスマホの面が平らになっていない場合も斜めになる要因となります。
カメラを1台だけ搭載したスマホの場合、カメラ部が突出した構造でも、ゴム部が、突出部の外側の平らな面を囲む形となりますので、斜めにはなりにくいです。
しかし、複数のカメラを搭載したスマホの場合、突出した部分が広くてゴム部全体が平らな部分と接しないため、斜めになりがちです。
これを回避するには、突出したカメラ部分の周りにパッドを当てて、周辺が平らになるように高さを均一にする方法が効果的です。
パッドは、高さを揃えられれば何でもよく、100円均一ショップにあるような材料を利用すればいいでしょう。
このように、斜めになる原因は「ゴム部に加わる力が偏ること」と、「接する面が平らになっていないこと」によります。
従って、これら2つの要因を解決すれば望遠レンズを垂直に取り付けられます。
しかし、望遠レンズが斜めになることは、あくまでケラレが発生するひとつの要因に過ぎません。
多くは複合要因のひとつですから、完全に解決しない場合があります。
その場合は、他の原因に対する解決策も併せて実施する必要があります。
ちなみに、望遠レンズが垂直でないと、ケラレが発生しなくても、歪を増加させる要因になりますので、可能な限り垂直に取り付けましょう。
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原因4:取り付け方法を間違えている
以上、原因1~原因3が最も発生頻度が高い要因ですが、意外と盲点になるのが取り付け方法の間違えです。
スマホ用の望遠レンズは、機種に依存しないように、挟みこんで取り付ける構造が主流です。
そのため、単に挟みこんで固定さえすればいいと考えてしまいがちで、細かい取り付け方法を見逃してしまうことがあります。
マニュアルがあるのであれば、きちんとそれに従って取り付けるべきです。
廉価タイプだとマニュアルが付属されていない場合もありますが、望遠レンズの機構を細かくチェックすれば取り付け方は分かるものです。
その際チェックすべきポイントは、
- 取り付ける仕組みはどのようになっているか
- 可動部分はどこでどの範囲まで動かせるか
- 微調整する機能には何があるか
などです。
また、実際の取り付けでは、
- 垂直になっているか
- 位置がズレていないか
- 隙間が発生していないか
の3点の確認が重要です。
よほどの粗悪品でない限り、取り付ける仕組みはきちんと設計されていますから、その仕組みをしっかり見極めましょう。
原因5:カメラの選択ミス
これは、スマートホンに複数のカメラが搭載されている場合に限られた要因です。
複数のカメラは角度が異なり、「1×」、「0.5×」などの数値で角度の違いを表現しています。
望遠レンズを外付けする場合は、広角レンズ(0.5×)のカメラを使わず、最も角度の狭い標準レンズ(1×)のカメラを選びます。
広角レンズを使ってしまうと、下図の赤線のようにレンズの枠が入り込んでしまうからです。
カメラが複数あると、「どれでも使える」と考えるかも知れませんが、通常、広角レンズのカメラは使えません。
原因6:望遠レンズの仕様
これは、望遠レンズの仕様に起因するもので、既に示した原因1から原因5の対策を行ってもケラレが残ってしまう場合です。
この場合、取り付け方や設定で回避することはできず、根本的な解決方法はありません。
但し、実際にこの原因でケラレが生じる場合はごく稀です。
そもそも、スマホ用の望遠レンズは、市場にある多くのスマホに対応するように設計されているからです。
従って、もしケラレが起きるとすれば、
- マイナーなスマートホンを使っている
- 無名の望遠レンズを使っている
など、特殊なケースだけです。
この場合の対策方法を敢えて挙げれば、
- スマホを機種変更する
- 別な望遠レンズを導入する
- ケラレを容認して撮影する
くらいです。
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解決できなくても上手い利用方法はある
解決策を実施しても、ケラレがどうしても起きてしまう場合はあります。
そんな場合でも、うまく利用して問題を回避する方法があります。
丸い枠を持った写真として楽しむ
そもそもケラレは、画面の外側に望遠レンズの丸みが写ってしまう現象です。
従って、被写体そのものはきちんと撮れますので、撮影目的は達しているハズです。
だから、写真に生じたケラレを単に「丸みを帯びたアート」のように割り切ればよいのです。
ケラレの位置や大きさは、レンズの取り付け方であるていど調節可能です。
だから、円形部分がキレイに見えるように調節して撮影すれば、思いのほか趣のある写真を撮れることでしょう。
ケラレを無くすことを考えるのではなく、ケラレで芸術的な写真を表現するという発想転換です。
編集して枠を除去する
それでも、ケラレはどうしても嫌だという人もいると思います。
そんな時は、撮影した画像を編集して、ケラレの部分を削除してしまえば、見た目には全く分からなくなります。
編集に伴って画質の低下を気にする人もいるかも知れませんが、ケラレは隅っこのごく一部に生じる現象です。
ケラレ部分を削ってしまっても、失われる画素数は全体から見れば僅かですから、ほとんど画質は低下しません。
また、「元の画素数を維持したい」、或いは「縦横比は変えたくない」と考える人もいるでしょう。
そんな人は、ケラレ部分を覆い隠すような外枠を編集時に作ってしまえばよいだけです。
「ケラレは絶対回避」との固定観念を捨て、「編集して外枠がきれいな写真を作る」くらいの感覚がいいですね。