人の発言を耳にして、
「あの人の言葉は重みが違う」
「あいつの発言は軽い」
「あのひと言は影響力が大きい」
などと感じることがよくあります。
言葉の重みは発言した内容によっても違うものですが、たとて同じ内容の話をしても、発言する人によってその言葉の重みは違います。
また、同じ人でも発言する内容によっては、重みのある言葉もあればそうでない言葉もあります。
これら言葉の軽さ・重さの違いは何により生じるのか、その理由について迫ってみました。
目次
立場による
言葉の重みは何と言っても、発言する人の立場によるところが大きいです。
普通の教師と校長や学長の言葉は重みが違いますし、平社員の発言と社長の発言が違うのは当たり前です。それこそ、一般国民の発言と総理大臣の発言ではぜんぜん重さが違います。
また、たとえ社長の発言でも、会社内で社長の立場で発言するのと、単に家庭内で父親として私的な発言をするのとでは、その言葉の重さはまた違ってきます。
更に、一般人が健康について論じるのと、医者が健康について言及するのとでは、自ずと言葉の重さは違って来ます。
要するに、どのような立場にある人が、どのような立場で発言するかにより、その言葉の重みが違ってくるのです。
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体験・実績の有無
同じ言葉でも、その背景に発言者の体験や実績があるかないかによって、その言葉の重みが違ってきます。
何か発言する時に、その発言内容に関連した経験を持つ人は、経験を持たない人に比べて、言葉に重みがでます。
特に、それが苦労した体験であったり、大きな壁を乗り越えた経験であったりすれば、なおさらその発言には説得力があります。
会社の業績を伸ばすなどの実績が背景にある人は、社内の経営問題に言及した時には、発言は重くなり影響力も大きくなります。
また、プロスポーツ選手でも、実績のあるプレイヤーほど、そのスポーツに関する発言の言葉は、重みを持つものです。
このように、発言の背景に何かを成し遂げたという事実があると、言葉は自ずと重みを増すのです。何かと、口コミや体験談などが重視されることがありますが、それは体験を背景にした言葉は実感がこもっているからですね。
他人事かどうか(心がこもっているか)
その発言を他人事として発言するか、自身のことと捉えて親身になって発言するかによって、言葉の重みは自ずと変わってきます。
発言者の言葉を耳にする人は、発言している人の姿勢や心意気、或いは語調や雰囲気などから、その発言が他人事なのか、親身になっているのかを感じ取るものです。
政治屋が票集めのために、ポーズだけ取って発言していると、見ていて軽々しく思え、口先ばかりだと感じるのも、そのためです。
ようするに、どんな発言であれ、他人事と考えない、心がこもった言葉は、たとえその言葉の表現が下手でも相手には伝わるものです。
それとは逆に、どんなに表現の優れた言葉でも、他人事のように考えた、心がこもっていない言葉は、自然と相手には伝わらないものです。
責任を負っているか
その発言に対して、責任を負っているか負っていないかで、その言葉の重みには差が出ます。
無責任な発言というのは、その言葉に重みはありませんし、責任を負っている発言には自ずと、責任の重さの分だけ言葉にも重みが出るものです。
例えば、「責任を持って遂行する」と発言しても、実際に責任を持たなければその言葉は軽いものになります。
逆に、発言の内容に責任を持つ旨の表現がなかったとしても、実際に責任を持っていれば、発言した言葉は重たくなります。
「私が責任を持って膿を完全に出し切る」などと、全く責任感を感じさせない発言をした総理大臣がいましたが、こんな言葉は宙に浮いてしまうほど軽くなっているのを見ると、このことが良く分かりますね。
自ら行動するか(行動を伴っているか)
ただ口だけで話しているのと、その発言が行動を伴うものとでは、言葉の重みは違ってきます。
自らは何も行動しないのに、人にだけやれやれと言っているような人を見かけることがありますが、この場合の典型的な姿です。
自らやるべきことをやり、その上で発言するのと、やるべきこともやらずに、口先だけで発言するのとでは、言葉の重みに大きな差が生じるのです。
遅刻の常習犯が、他の人に向かって「遅刻をしないように」などと言っても、誰も耳を傾けるものではありませんが、遅刻をしたことが無い人が、同じ発言をすれば、説得力があります。
練習に熱心に励む野球部員が、他のチームメートを励ませば、「がんばろう」との思いも湧いてきますが、練習をさぼってばかりいる野球部員が他のチームメートを励ましても、「お前こそ、しっかり練習しろ!」ということになってしまいます。
話者の姿勢や態度
また、これは当然と言えますが、発言している人の姿勢や態度も言葉の軽重に大きく影響します。
発言している人が、自信に満ちている、覇気がある、堂々としている、熱弁をしているなどといった姿であれば、発言も重たく感じられます。
逆に、発言している人が、おどおどしている、ハキハキしていない、おろおろしている、熱意がないなどという姿をしていれば、その発言も自ずと軽くなります。
話者の姿勢や態度がいかに優れているかにより、話す言葉の軽重は変わるのです。
話す内容も、もちろん大切
以上、言葉の軽重に影響する要素をあげて来ましたが、実際に発言の重みに影響を与える意味では、言葉そのもの、つまり話す内容そのものも大切です。
例えば、稚拙な言葉、語彙力のない発言、深みのない内容、矛盾に満ちた言葉、筋が通っていない内容などであれば、自ずと発言した言葉は軽くなります。
一方、裏付けのある発言、理に叶っている内容、深みのある言葉、道理に立脚した話、理路整然とした発言、筋の通っている主張などであれば、自然と発言した言葉に重みが出ます。
話す内容がきちんとしてこそ、その発言・言葉に説得力が出ることがよく分かります。
まとめ~言葉に重みを持たせるために
言葉というのはそれ自体に意味を持っていますが、その言葉がどれくらいの重みを持つようになるかは、言葉以外の要素によることが多いです。
人の発言を、これら言葉以外の要素を念頭に思い浮かべながら聞いてみると、言葉の裏にある、何か興味深いものが発見できるかも知れません。
そして、自分自身が何かの発言をする場合は、少しでもその言葉に重みがでるようにしたいものです。
その際、言葉に重みを持たせるためには、上記に示して来た要素を徹底することが大切です。
具体的には、
(1)立場や肩書を利用する
(2)体験や実績をもとにする
(3)聞く人の立場に立って心を込めて語る
(4)発言する言葉に責任を持つ
(5)行動を伴った発言に努める
(6)しっかりした姿勢や態度で臨む
(7)内容をよく考えて話す
というところです。
言葉に重みを持たせるためのより具体的な方法は、「なぜ軽重が生じるか」の各要素を見れば自ずと答えを導き出せると思います。
これらの中には、立場や肩書が無い場合はどうしようもないようなケースもあります。また、一朝一夕では経験を積めないなどの問題もあります。
しかし、社長の立場などのないただの平社員だったとしても、
「長年、この業務に取り組んできて〇〇には精通している私の立場から言わせて頂ければ・・・」
のような言い方はできます。
また、経験や実績がなかったとしても、
「経験者から聞いたところによれば、・・・」
或いは
「違う経験ではありますが、これと似た〇〇の経験をしてきた私から見れば・・・」
のような表現も可能でしょう。
もちろん嘘やでまかせ、ポーズだけでは意味がありませんが、自信の持てる点を真実に基づいて主張することで、少しでも言葉に重みを持たせることができるでしょう。
この記事に記した要素をよく分析して、少しでも重みのある言葉を発したいものですね。
ともあれ、話し方が優れていることも大切です。説得力を磨きたい人は専門書を学んでみるのもいいでしょう。