所得が多いと裕福な暮らしができるというのは事実ですが、所得が多いからと言って裕福な暮らしをしているとは限りません。
反対に、所得が少ないと裕福な暮らしがしにくいというのは事実ですが、所得が少ないからと言って裕福な暮らしができないというわけではありません。
裕福な暮らしをするためには、所得は大事な要素ですが、日々の生計においてコストパフォーマンスを追求することは更に大事な要素です。
所得があれば裕福か
裕福とは(デジタル大辞泉)
財産や収入がゆたかで生活に余裕があること
とあるように、「金銭があって余裕があること」を意味します。
財産を持っている人は、ごく一部の限られた人でしょうから、一般には収入がゆたかであれば、生活に余裕が出てくると言えるでしょう。
収入とは、所得から税金や必要経費とみなされる支出を差し引いた残りの額ですから、所得が多いほど収入は多くなり、その分だけ生活に余裕が出てくることになります。これを端的に言えば、「所得が多いと裕福な暮らしができる」ということです。
しかし、所得を増やそうとしても、ちょっとした副業なんかでは、たかだか額が知れていますし、それなりの額を稼ごうとすれば副業とはいえ、大きな労力が必要です。また、大きく所得を得ようと起業や投資をしようとすれば、そこにリスクが付きまとうものです。
また、収入は所得とは異なりますから、所得の割に収入を増やすために、節税対策などを採るわけですが、これを合法的に行う以上、自ずと確保できる収入には限界があります。
そこで大切になってくることは、「収入」と「実質的な収入」を分けて考えることで、これを式で表すと、
実質的な収入=収入-浪費
となります。要するに、コスパの悪い消費(=浪費)をしている分だけ、実質的な収入が減るってことです。
そして、この浪費というのは実は、我々が意識しないところでかなり大きな額になっているものです。だからこそ、所得をむやみに増やすことを考えるよりも、コスパの良い消費を考えることを重視すべきです。
以下、このテーマについて、私が定めた「法則」をもとに考えてみたいと思います。
浪費はバカにならない
浪費、浪費と言っても「実際にそんなに浪費はしてはいない。それよりも、所得を増やすことの方が大事ではないか」と考える人も多いのではないでしょうか。これはこれで、事実ですから、否定するつもりはありません。しかし、浪費についてしっかり考えてみるべきです。
まず、ここで浪費を考える前に、ひとつの法則を見てみましょう。
【法則】年収1000万円超えの人は全体の数%
これは、法則というよりも、世間で一般的に言われていることでもありますから、周知の事実とも言えます。(上記は、給与所得者における率、世帯所得の率だと約10%)
この法則から言えることは、大多数、すなわち我々一般大衆は、多少の差はあっても、ほぼ横並びの所得を得ているということです。
実際に、国民にアンケートを取ってみると、たいていの人は、自分自身は中流階級、すなわち、ほぼ平均的な収入を得ている所得層に当たるという認識・意識を持っていると言います。
そして、日本には累進課税という制度があって、所得の多い人ほど課税が高くなる仕組みがありますから、これによって、一般家庭の収入の格差は縮まることになります。つまり、下記の法則があるわけです。
【法則】収入の格差は所得の格差より小さい
所得税は、所得が多いほど課税されますし、市民税などの税額も所得に応じて課税されます。また、所得が多い人ほど資産を多く持つものですから、固定資産への課税などは、その分だけ増加する傾向になります。
更に、所得に応じた手当や優遇措置などもありますから、所得の格差ほど、収入の格差はないことになります。
さて、所得の格差に比べて収入の格差が縮まるとはいえ、現実には収入にはそれなりの差が生じるのは事実です。ところが、身の回りで生活している同世代の人を見ると、その多くは自分とほとんど生活レベルが変わらない、収入に大差がないことが分かると思います。
収入の差が大きい人はいますが、割合いとしては低いのです。そして、あまり大差のない収入からさらに必要最低限となる出費を差し引いて考えてみましょう。
家が無ければ住む処がありませんから、家賃や住宅ローンは必要なことでしょう。通常の生活をしようとすれば、光熱費もかかることでしょう。子供がいれば最低限の養育費用も必要となるでしょう。
これらは一般に必要とされる費用の一部ですが、どんなに抑えようとしても、最低限必要となる金額というものがあります。そんな最低限必要となる金額を自分の収入から引いてみるとそこには「これしか残らないの!!」という数値が必ず出てくるハズです。
そうです、実際に自由に使える実質上の収入額は意外と少ないのです。ですから、「わずか」とも言える「自由に使える実質上の収入」において、もし浪費を重ねてしまったら、それがどれほど大きく影響するかが分かるハズです。
まさに、余裕のある生活、ゆとりのある生活を考えるならば、浪費をしないこと、たとえ浪費をしたとしても極小に抑えること、すなわち「コスパの良い消費をする」ことこそ大切です。
収入に比例してコスパが低下
コスパの良い消費をすることが大切だと分かっても、具体的にはどうすればよいでしょう。これには参考になる法則があります。
【法則】所得に比例してコスパが低下
これは、高所得者ほどコストパフォーマンスが悪く、低所得者ほどコストパフォーマンスが良い傾向があることを意味しています。
低所得者ほど、使えるお金が限られることから、日常において最大限の工夫・節約をするので、結果として、その分だけ無駄がなくなるのです。
つまり、コスパの良い消費を考えようとした場合、所得の低い人が取る行動を真似しようとするところにヒントがあると言えます。
では、ここで話を戻して、本当に「高所得者ほどコストパフォーマンスが悪い」かどうかを考えてみましょう。分かりやすい法則をここであげます。
【法則】高額な商品ほど利益率が高い
これは、製造業者などから見た表現ですが、例えば、500万円の自動車を1台販売するのと、300万円の自動車を1台販売するのとでは、前者のほうが製造業者(この場合は自動車メーカ)にとっては利益を生むという意味です。
仮にこれらの自動車の利益をそれぞれ、200万円(500万円の自動車), 100万円(300万円の自動車)とすると、それぞれの自動車の実質的な価値は、利益を差し引いた300万円(=500-200), 200万円(=300-100)ということになります。
これを消費者から見ると、500万円支払って300万円の価値の自動車を手に入れる人と、300万円支払って200万円の価値の自動車を手に入れる人という見方ができますので、後者の方がコスパが良いことになります。
では、もうひとつの法則を見てみましょう。
【法則】高級品買いの銭失い
これは、世の中でよく言われている「安物買いの銭失い」とは全く反対なので、「これは嘘でしょ」と言う人もいるかも知れません。たしかに、本当に安っぽい物を購入すると、あり得ないほど短寿命で呆然とすることもあります。しかし、上の法則の方が正しいのです。
なぜなら、「安いもの」を買うことは頻繁にあっても、「安っぽいもの」を買うことはあまりないからです。
言い方を換えれば、買う側は、単に安いだけの物を選ぶわけではなく、安くて良い物を選んで購入しますから、そうそう簡単に壊れてしまうものには出くわさないのです。
「安物買いの銭失い」とは、稀にハズレ品をつかまされた時だけで、頻度の低い話なのです。簡単に壊れてしまう姿を眼前にしてしまうからインパクトが強くなるだけで、「安物買いの銭失い」という言葉が当てはまるケースはちょくちょくある話ではありません。
さて、一般に、商品の品質(質)とその価格は比例関係にあることは誰でも理解できると思います。しかし、実際はキレイに比例する、いわゆる一次関数的な関係にはなりません。イメージとしては二次関数的と言えば分かりやすいと思います。図で示すと下記のような感じです。
これは、1つ前にあげた法則「高額な商品ほど利益率が高い」とも関係があり、それが表れたグラフとも言えるでしょう。
ではここで、商品の質を耐用年数という視点から見てみましょう。
家電製品なんかがイメージしやすいと思いますが、一流トップメーカA社が販売するある家電製品が10000円で販売されていて7年間で寿命を迎えたとします。これに対して、トップメーカではないものの、実績があるメーカB社が7000円で同類の製品を販売していて5年間で寿命を迎えたとします。
分かりやすいように35年間、この種の家電を繰り返し買い替えて使い続けた場合、A社製品は5回×10000円=5万円、B社製品は7回x7000円=4. 9万円となり、コスパだけ見れば、B社の方が得と言うことになります。
この説明だと、「B社が安くなるように、価格と耐用年数を設定しているだけじゃないか!」と文句が聞こえてきそうです。
しかし、この設定は、むしろA社に有利な数値を想定した例なのです。よくよく考えて欲しいことは、一流トップメーカなどは、そのブランドバリューがあることから価格は高めになっていますが、近年、家電製品に多く参入して来ているB社のような企業などは、低価格を売りにした比較的安い商品を多く出しています。
また、一流トップメーカの製品と新規参入などといった企業の製品とでは、耐用年数を見た場合、それほど変わらない製品が多いのです。確かに高級品は耐用年数も長いものですが、トータル的なコストパフォーマンスで比較した場合、むしろ「高級品買いの銭失い」というのが現実です。
高級品はコスパだけに関して言えば、決してよいものといえる訳ではありません。そして、収入が低い人ほど、高級品には手が出しにくくなりますので、結果として、コスパの悪い物は買わない傾向になります。逆に、収入が高い人ほど、より良い物を求めるようになるでしょうから、結果としてはコスパが悪くなりがちです。
これらから学べることは、お金があるからそれに応じた買い物をするのではなく、お金があってもなくても、必要なものだけを購入することが大切だということが分かります。
買わないが基本
さて、コスパのよい消費を考えた場合、最も大事なことは下記の法則です。
【法則】必要な物 ≠ 欲しい物
「欲しい物を買ったけど必要なものでは無かったので、部屋の中でずっ―と眠っているだけだった」なんて物が家の中にたくさんある人も多いのではないでしょうか。必要な物と欲しいものは同じではありません。もちろん、同じ場合もありますが、同じとは限りません。
欲しい物のうち、本当に必要な物か、必要ではないけど欲しい物か、を明確に区別することが大事です。従って、考え方としては「買わないことが基本」です。これについては、別な記事「究極の節約は買わないこと…」にも書きましたが、買わなければお金は減りません。
買えば、どんなに安くても、どんなに少額でも、お金は減るのです。ちょっとここで別な法則を見てみましょう。
【法則】九割引きの商品は買わないより高い
ここで「九割引きの商品を買う」ことと、「その商品を買わない」ことの違いを考えてみましょう。違う点は2つです。
まず1つ目は、支出のあるなしで、九割引きは商品の1割に相当するお金を支払うのに対して、商品を買わないことは支出は全くありません。
そして2つ目は、商品を得られるかどうかで、九割引きはその商品を得ることができるのに対して、商品を買わないことはその商品を得ることができません。
そこで、上の法則にひとつ前の法則「必要な物≠欲しい物」を照らし合わせてみると、「その商品」=「欲しい物」で、且つ「その商品」=「必要な物」であれば、九割引きで買えることになりますので、これはとてもコスパがいいことになります。
ところが、「その商品」=「欲しい物」で、且つ「その商品」≠「必要な物」であれば、不要な物に対して商品の1割に相当する金額を支出してしまうという考え方が成り立ちますから、ある意味、ドブにお金を捨てているようなもので、コスパは悪いということになります。
何かを買おうとした場合、「買わないのは10割引き」、「買わないに勝る値引きは無い」といった考えを念頭において、買うか買わないかを理性で判断することが大切ですね。
では、ここで別な法則を見てみましょう。
【法則】裕福でない人は家の中に、やたら物が多い
貧乏人に限って、やたらと物が多いものなのですね。これは、不要なもの、たいして必要のないものでもやたらと買ってしまうため、結果として家の中がものだらけになるのです。
きちんとメリハリつけて、必要か不要かをしっかり判断する人は、やたらと物が増えたりしないのですね。
究極は、「買わないこと」ですが、それは自然と不要なものが増えないことにつながり、結果として家の中が比較的すっきりするものです。
極論を言ってしまえば、死んでしまえば全ての物は不要になるわけですし、どんなものでもいずれは朽ち果てて行き、用が無くなるわけですから、この視点で「本当に必要?」って考えるといいかも知れません。
企業の合理的経営にヒントがある
結論を端的に言ってしまえば、不要なものを買わないようにすれば、その分だけゆとりが生まれますから、そのゆとりは生活に余裕を生み、それが裕福な暮らしにつながるということです。
換言すれば、「不要な物は買わず、必要な物にお金を掛けて行くこと」こそが裕福な暮らしを生むってことです。
だからこそ、余裕を生み出すためのコスパの追及が大事なわけですが、これは企業などの合理的な経営にもヒントがあります。
たとえば、製造業者などは「余分な在庫は置かない」なんて考えがありますが、一般家庭に例えれば、安いからと言ってやたらと買い置きはしないってことになるでしょう。
他にも、経費削減やスペースセービング、資産を持たずにレンタルするなど、無数の合理化手段がありますが、そんなひとつひとつの手段の中に、一般家庭が取り組めそうな「コスパの良い消費」のヒントがありそうです。
とはいえ、何でもかんでもコスパばかりを追求していては、心が貧乏になってしまいますから、程度は大事です。また、コスパの良い消費をするだけでは、分母(絶対的な所得額)は変わりませんから、分母(所得)も念頭に置いておくことも大切です。
いずれにせよ、裕福な暮らしを求める場合、誰しも所得を増やそうとばかり考えるものですが、その前に立ち止まって「コスパの良い消費」をまず考えてみることも大切です。