漢字に慣れている日本人にとっては、中国語の文章を見ても、漢字の意味を考えることで文の意味合いを憶測することができます。
しかし、日本語で使われない意味や用法の場合は、文意がよく分からないことがあります。
「是」という漢字もその1つですが、基本的な用法を覚えておけば理解しやすくなります。
日本語の「是」
日本語で「是」を使う場合、「これ」、「この」或いは「ここ」などと読んで、指示代名詞として使います。
この場合、是の代わりに此という漢字を用いることもありますが、どちらかというとこれらは平仮名で表現することの方が多いです。
従って、是という漢字を指示代名詞として使う用法は、あまり一般的ではありません。
「これは・・・」「この・・・は」「ここでは・・・」などの表現を見ても、「是」を使わず、平仮名を用いるのが自然であることが分かります。
また、「是」には「正しい」、「正しいこと」の意味があります。これには反対語として、「誤り」や「正しくないこと」を意味する「非」があり、是非という熟語としてよく使われます。
是非は是と非、即ち正しいことと誤りを意味しますが、その意味の延長として、「是か非かを批評する」意味で使われます。
そして是非は、転じて「きっと」「なにとぞ」「必ず」のような意味の副詞としても使われるようになっています。
中国語の「是」
中国語の「是」(shì・シー)の場合、日本語のように指示代名詞としての使い方はしませんが、日本語と同様、非の反対語として正しいという意味で使われることはあります。
しかし、最も一般的な使い方は、英語のbe動詞のような使い方で、日本語に訳すと「・・・は・・・です」の意味になります。
説明しやすくするために英語を用いると、英語「A is B」と表現するとA=Bの意味を持ち、「AはBです」と訳しますが、中国語でも似たような用法になります。
A是Bと表現すれば、英語と同様にA=Bの意味を持ち、「AはBです」と訳します。
例えば、英語でThis is a bookは、「これは本です」となりますが、中国語では
这是本书(zhèshìběnshū)
となります。
这はこれ(This)の意味、本书は(a book)の意味で、文章の意味は「これ=本」を表しています。
英語のbe動詞の場合、beがそのまま使われることがありますが、人称によってam,is,areなどがありますし、時制によってwas,wereなどもあります。
しかし、中国語の場合は人称にはよらず、
我是日本人(wǒshìrìběnrén)…私は日本人です
你是中国人(nǐshìzhōngguórén)…あなたは中国人です
他是美国人(tāshìměiguórén)…彼はアメリカ人です
のように常に是が使われます。
また、時制(過去形、未来形、現在形など)は時を表す副詞などで表現します。
是の発音には注意
是を日本語で表記すると「シー」となりますが、そのまま発音すると通じません。発音する時には注意が必要です。
是のピンインは「shì」(第四声)ですから、下がり調子で「シー」と発音します。
また、ピンインに「h」が含まれていますから、「シー」を巻き舌にして発音する必要があります。
逆に、聞き取る場合は、巻き舌音であるため、少しこもった音に聞こえます。
また、日本語では「シー」と表現するのが最も適切ですが、上海をはじめとする一部の地域ではピンインは「shì」でも、「スー」に近い発音となります。(一種の方言)
「シー」のような発音は、普通語(標準語)を話す人です。
是を省略する場合
そして、覚えておきたいのは、是は省略できる場合があることです。
具体的には、目的語となる言葉が数値で表されたり、年月などの暦を表わしたりする場合に、よく省かれます。
例えば、「私は35歳です」を中国語で表現すると
我三十五岁(wǒsānshíwǔsuì)
となり、是を省くことができます。
また、「今日は11月18日です」は、
今天十一月十八号(jīntiānshíyíyuèshíbāhào)
となり、これも是を省略できます。
更に、「今何時ですか?」は
现在几点?(xiànzàijǐdiǎn)
と表現し、是は不要です。
特に、年齢や年月・時間などの場合は、是を使わないことが多く、どちらかと言えば省く方が自然な言い方になります。
但し、いずれも否定文の場合には「不是」が必要です。
覚えておきたい言い回し
さて、中国語の「是」は英語のbe動詞のような用法として幅広く使われますが、その応用で日常でよく使う表現が色々あります。
是の基本的な使い方として、否定文は是の前に否定の不(bù)を付けて「…不是(búshì)…」と表現して、
我不是日本人(wǒbúshìrìběnrén)…私は日本人ではありません
のようになります。
ちなみに、不(bù)の後ろの是(shì)が第四声なので本来は第四声の不は第二声になり不是(búshì)と発音します。
また、疑問文は疑問詞である吗(ma)を付けて「…是(shì)…吗(ma)?」或いは「…是不是(shìbushì)…?」のように表現します。
例えば、
你是中国人吗(nǐshìzhōngguórénma)
你是不是中国人(nǐshìbushìzhōngguórén)
のようになります。(共に、あなたは中国人ですか?、の意味)
要するに、否定文も疑問文も、他の一般の動詞における用法と同じになります。
そして、ぜひ覚えておきたいのが、相槌を打つ場合に用いる表現です。
「是是!」(shìshì)と言えば、「そうそう!」と言った感じの肯定を表す相槌になります。
話者1「A是B」
話者2「是是!」
という会話はよくあり、「AはBだよね」「そうだよね」と言った感じになります。
この場合、「是是」の代わりに「是的」(shìde・そのとおりの意味)という表現もよく使われます。
また、「是不是」(shìbushì)もよく使う表現で、「A是B。是不是」と言えば、「AはBです。そうでしょ?」と言った感じになります。英語の「A is B, isn’t it?」に似ています。
この他、是を使った表現は細かいものを含めるとたくさんありますが、英語のbe動詞のように使われることを頭にいれておけば、たいていの場合、意味を理解できます。