ある時、同じ職場の人が、「北海道は猛暑日になったことがあるけど、沖縄はないんだよ!」なんてことを話していたので、「えっ!?」って感じになった私は「それ、本当?」と思わず聞き返してしまいました。
すかさず、その人は「たぶん無い」とはいったのですが、かなり自信のある言い方だったので、私は内心「本当かよ」と思っていました。
都道府県でいえば北海道は最北で、沖縄県は最南で、日本列島は細長いので両者の緯度の差はかなりあることから、俄かには信じられなかったのです。
気になった私は、実際に調べてみることにしました。
沖縄でも猛暑日はある
猛暑日とは、最高気温が35℃を超えた日をいいますので、過去に最高気温が35℃を越えた日がないかどうか、気象庁が公表しているデータを調べてみました。
観測所のある地点を全て調べるのは現実的ではないので、県庁所在地である那覇について、過去の日最高気温を確認したところ、ベスト1 0は、
那覇の日最高気温ベスト1 0 「気象庁観測史上1~10位の値(沖縄県那覇)」より
日最高気温 ℃ |
年月日 |
35.6 | 2001/8/9 |
35.5 | 2003/8/3 |
35.5 | 1916/7/21 |
35.4 | 1916/7/16 |
35.3 | 1916/7/23 |
35.2 | 1916/7/20 |
35.2 | 1916/7/19 |
35.1 | 2017/7/16 |
35.1 | 1916/7/18 |
35.1 | 1916/7/17 |
のようになっていました。なんだ、猛暑日を記録したのは1890年7月の観測開始以来、那覇だけでも10回はあるじゃないかと分かり「沖縄が猛暑日になったことはない」というのは間違いであることが分かりました。
しかし、ここで着目したいのは、ベスト10のうち7つは1916年に記録されたもので、近年においては3回しかない、換言すれば、起きても稀にしか起きないとうことです。
記録では北海道も同等
さて、気になるのは比較対象となった北海道ですが、ここではやはり県庁所在地である札幌について、過去の日最高気温を確認してみることにしました。
札幌の日最高気温ベスト1 0 「気象庁 観測史上1~10位の値(北海道札幌)」より
日最高気温 ℃ |
年月日 |
36.2 | 1994/8/7 |
36.0 | 2000/7/31 |
35.9 | 2000/8/1 |
35.8 | 1943/7/21 |
35.5 | 1924/7/11 |
35.2 | 1999/8/8 |
35.2 | 1978/8/3 |
35.1 | 1972/8/7 |
35.1 | 1950/7/22 |
34.9 | 2017/7/14 |
結果は上記のように、1876年9月に観測を開始してからベスト10のうち9までは猛暑日となっていることが分かりました。
また、最高気温の史上一位という意味では、札幌は36.2℃となっていて、那覇の35.6℃よりも上回っていることが確認できました。
以上のことから、日の最高気温だけを見た場合、沖縄も北海道も大差はないということが分かりました。
緯度差があるのになぜ
これらの結果だけみると、札幌と那覇では緯度の差がかなりあるのに、何でこんな数値が出てくるのだろうと疑問が出てくると思います。
この疑問については私も同じで、とても不思議でなりませんでした。
そこで、職場にいる気象予報士に聞いてみることにしました。
沖縄が緯度の割に気温が上がらない理由は、
「県全体が海に囲まれている上、島としての面積も比較的せまく、さらに高い山が無いため、海上の空気が循環しやすく、熱がこもらないため」
だそうです。
海上の空気というのは、陸上の空気よりも上昇しないもので、それら比較的あつくない空気が陸地に回り込むため、思ったほど上がらないわけです。
では、北海道の場合はどうかというと、沖縄とは対象的で、陸地としての面積は広く、内陸にはそれなりの標高のある山もありますし、盆地のように地形上、空気がこもりやすい地域も多数あります。
このように、海上の空気が循環しにくい要因があるわけですが、更に、地形上フェーン現象が起こることもあって、局地的、一時的には大きく気温があがることもあるということです。
今回、調べたこれらの結果を見て、驚いた方も多いのではないでしょうか。「北は寒いし、南は暑い」なんて固定観念を持っていると、信じられないような感じでしょうが、日の最高気温だけなら沖縄も北海道もほぼ同等っていうのが事実です。
気象って奥が深いなぁと思うと同時に、面白いものだと感じました。