漢字を見て中国語の意味を想像してみても、ちょっと分かりにくい意味を持つ漢字はいくつもあります。
「想」という漢字もそのひとつで、単に「おもう」という意味と考えても、なかなか文意が推測できないケースが多くあります。
それは、日本ではあまり使わない使い方・意味があるからです。
日本語の「想」の意味
想は「思(おも)う」と同じく「想(おも)う」と書くように、何かをおもうことです。
具体的には、何かの考えを持つ、推量や想像する、或いは回顧すると言った意味があります。
予想する、想像する、追想するといった熟語もそれらの意味で用います。
また、気遣うや慕う・恋する、感じるといった幅広い意味も持っています。
しかし、上記のいずれも、たいていの場合は「思う」のように表現するのが一般的で、「想」を使うのは趣としては、何かの対象に向かって「心」で思うことが多いです。
頭脳というよりも心ってことです。
従って、頭で思考するというよりも、心でイメージする感じが強いです。
「思」との微妙な違いは、まさに「心」がキーポイントと言えるでしょう。
中国語の「想」の意味
さて、中国語の「想」(xiǎng)は、漢字が同じですから、日本語と同じ意味で使う場合も多くあります。
何かを考えるとか、思う、予想する、思い出すなどは日本語と同じように使います。
また、思いしのぶ、会いたいと思う、恋しく思うという意味も日本語と同様です。
例えば我想你(wǒxiǎngnǐ)と言えば、異性に思いを伝えるフレーズとなります。
これは英語で言えば、「I miss you」のように、しばらく会えていない恋人などに会いたい思いを伝える表現で、我想你了(wǒxiǎngnǐle)とも言います。
単に、想你(xiǎngnǐ)とか想你了(xiǎngnǐle)、或いは想你想你(xiǎngnǐxiǎngnǐ)などと言う場合もあります。
このように、想には「思う」や、そこから派生した意味を持つ、日本語と同じような動詞として使われます。
しかしこのほかに、日本語には馴染みのない意味・用法として、「○○したい」という願望を表す助動詞としての使い方もあります。
例えば、
我想吃饭(wǒxiǎngchīfàn)
と言えば、ご飯を食べたいになります。
また、
她也想去(tāyěxiǎngqù)
と言えば、彼女も行きたいになります。
このように「想」は、動詞としてだけではなく、助動詞として英語の「want to」のような、願望や希望を表現する使い方をします。
そして、この願望を表す表現はとても頻繁に使うのです。
中国語の想の使い方や読み方
上記のように、中国語の想には動詞と助動詞の2つの品詞としての意味があることが分かったと思います。
動詞の場合、一般的な動詞の用法と同じように、主語の後に想(動詞)が続き、その後に「想う対象」(目的語)が来る(ある場合)のが基本的な文型です。
否定形や疑問文も一般の動詞の用法と変わりません。
問題は助動詞としての想ですが、基本的な文型は、主語の後に想(助動詞)が来て、その後に動詞が来ます。動詞の後に目的語が来るかどうかはその文によります。
例えば、上記の「我想吃饭」(wǒxiǎngchīfàn)の場合、
「我」…主語
「想」…助動詞
「吃」…動詞
「饭」…目的語
となります。
文法的には「会」や「能」などの助動詞と同じく、助動詞「想」の後に動詞が位置する語順になります。これは英語の語順にとても似ています。
否定形にする場合は、助動詞「想」の前に「不」(bù)を付けて、
「我不想吃饭」(wǒbùxiǎngchīfàn・私はご飯を食べたくない)
となります。
また、疑問文の場合、文末に吗(ma)を付けて、
「你想吃饭吗?」(nǐxiǎngchīfànma・あなたは、ご飯を食べたいですか?)
とします。
不の前後に想をつけて、
「你想不想吃饭?」(nǐxiǎngbùxiangchīfàn・あなたは、ご飯を食べたいですか?)
のように表現することもできます。
想はピンインでは「xiǎng」と表記しますので、日本語の「シャン」という発音に近くなります。
従って、「シャン」と言えば音としてはよいのですが、声調が第三声なので、読み方としては音程を低く抑えるように発声します。
似た意味を持つ助動詞「要」と「愿意」との違い
ところで、中国語には「〇〇したい」という願望を表現する助動詞が「想」の他にもあります。
「要」(yào)と「愿意」(yuànyì)の2つがそれに該当しますが、「想」を含んだ3つとも「〇〇したい」という同じ意味なので、それらの違いがとても分かりにくくなっています。
基本的には「〇〇したい」という同じ願望を意味しますが、ニュアンスや趣が異なります。
3つのニュアンスを示すと、
「想」・・・・・・一般的な願望を示す
「要」・・・・・・意思が込められる
「愿意」・・・・・喜んで願う
従って、あえて違いが分かるような訳をした場合
「想」は「~したいと思う」
「要」は「~したいのでする」
「愿意」は「よろこんで~したい」
のような感じになります。
ちなみに、愿意の否定形は不愿意ですが、願望を表す「要」の場合の否定形は、不要ではなく不想になります。(不要は禁止の意となる)
こんな表現が便利
さて、想を使う表現はたくさんありますが、日常で頻繁に使うようなフレーズを例文としていくつかあげてみましょう。
我想想多了(wǒxiǎngxiangduōle・考え過ぎていた)
你想想(nǐxiǎngxiang・良く考えてみて)
我没想到(wǒméixiǎngdào・思ってもみなかった)
想は基本的な動詞なので、日々とてもよく使います。
また、上記のような中国語特有の助動詞としての表現も日々の会話で使われ
你想不想喝酒(nǐxiǎngbùxianghējiǔ・お酒飲みたくない?)
我想买这个(wǒxiǎngmǎizhège・私はこれを買いたい)
他也想结婚(tāyěxiǎngjiéhūn・彼女も結婚したい)
などなど、願望、希望、要望など、「~したい」という思いを表す言い方としてとても幅広く使います。
ぜひ覚えておきたい用法・意味です。