私が長野に移転したのは40代の後半。
数十年前なら、ちょうど定年退職年齢が見えてくる時期です。
そんな時期になってから地方都市「長野」に引っ越して来ましたので、住み慣れた都会生活とのギャップを強く感じました。
しかし、そんな経験をしたことで、老後に地方移住する場合に考えるべきことが、とてもよく分かるようになりました。
この記事では、私が住んでいる長野をひとつのモデルとして、老後の地方移転について考慮すべき大事なことをまとめました。
目次
老後の地方移住を考えてみた
まず本題に入る前に、私が長野に引っ越して今日に至るまでの経緯を話しておきましょう。
背景が分かった方が、深く理解して貰えるからですね。
私が長野に引っ越してきたのは、ちょうど50歳が見えてきた数年前のこと。
長野市への転勤による移転でしたから、自ら願って移り住んだ訳ではありませんでした。
とは言え、長野県と言えば母の実家があった場所でもあり、子供のころから慣れてきた地域でもありました。
子供時代からキャンプや合宿をし、学生時代にはスキーなどで何度も訪れる機会があり、
「大自然に恵まれた良き場所」
とのイメージを持っていました。
しかし、東京で生まれて、首都圏での生活が定着していた私にとっては、全く予期していなかったこともあり、さすがに抵抗感がありました。
住むのと訪れるのとでは違うだろうと思っていましたので、実際に引っ越してからは葛藤の連続でした。
ちなみに、長野に引っ越してきてから感じてきた様々なことは、長野生活のリアルというカテゴリ内に、色々な記事を書いていますので、興味のある方はご覧ください。
そして、移転から数年が経過した今日に至って、ようやく長野の生活に慣れてきた感じがします。
地方での暮らしの不便さに不自由を感じていた私でも、長野の良さを感じられるようになったわけです。
換言すれば、この年齢(中高年)に至ってから引っ越したため、環境に慣れるまでに時間を要したのです。
ようやく長野の生活に慣れた現在では、
「場合によっては長野に住み続けてもいいかなぁ」
とも思えるようになりました。(あくまで、場合によってはという可能性ですが…)
こんな私ですから、都市部と地方とで暮らすそれぞれの長所と短所を身に染みて体験してきました。
だから、老後の地方移住をリアルに捉えることができると感じ、老後に地方移住を考えている人の一助になればとの思いから、この記事を書くことにしたのです。
老後に地方移住を考える理由は
さて、本題に入りましょう。
近年では老後に地方に移住しようと考える人が徐々に増えています。
その理由(動機)を大別すれば下記の2つです。
(1)自然に恵まれた健康的な地域でのんびりと過ごしたい
(2)経済的な負担を減らすため住居費の安い場所に住みたい
他にも細かい理由はありますが、突き詰めると上記(1)(2)の理由に含まれます。
いずれの理由も、現役時代は仕事の都合で、勤務地から近い都市部に住むことを余儀なくされていたものの、退職に伴ってその必要性が無くなることがキッカケとなります。
1つめの理由「(1)自然に恵まれた健康的な地域でのんびりと過ごしたい」は、都市部ではあまり恵まれない自然に囲まれた環境への憧れと言えます。
都市部では、騒がしい、空気や水が汚い、食材が美味しくない、人口が過密だ、緑が少ない、などなどの短所がたくさんあります。
しかも生活している以上、毎日そのような環境に身を置くことになります。
しかし、地方へ移住すればこれらの短所は改善されますから、移り住みたいと願うこともうなづけます。
また、2つめの理由「(2)経済的な負担を減らすため住居費の安い場所に住みたい」は、住居費用が高額な都市部を離れることで、老後の限られた収入でも十分に暮らせるようにしたい願いから来ています。
都市部だと、広い家屋に住むことはなかなかできませんし、同じ住居費なら地方の方がより良い(広い)家屋が期待できます。
老後には貯蓄や年金などの限られたお金しかありませんから、住居費の負担を考えると地方移住は自然な考えと言えます。
特に、子供が独立していれば、今まで住んできた広い家屋に夫婦二人だけが住み続けるのは無駄がありますから、新たな居住地を構える機会に地方を選択肢の一つとすることも一理あることです。
いずれの理由であったとしても、現役時代には実現が難しかった移住が、老後という人生の節目に至ったことで現実的になるのですから、一考の余地があると言えます。
それがもし長年の夢であればなおのことですが、夢だけを追い求めても現実は現実としてあります。
長所ばかりに目をやらず、長所と短所をきちんと天秤にかけて、しっかりと検討すべきです。
長野は老後の移住に適しているか
ではここで、私が住んでいる長野を移住地のモデルとして考えてみましょう。
長野県は自然に恵まれている
ある調査によれば、老後に住みたい地域として長野県がトップになりました。
その理由は、関東や関西などの都市部から比較的近く、山々が広がる大自然に囲まれた地域だからだそうです。
実際、長野県には有数の山々があり、県全体に占める山間部の割合も高く、自然が溢れています。森林に囲まれているため水や空気もきれいです。
また、長野県は「フルーツ王国」とも呼ばれているくらい果物の収穫量が多く、穀物や野菜、山の幸などの農産物も多く採れます。
まさに食材に恵まれた地域と言えます。新鮮な農産物は本当に美味しいですし、身体にもいいですね。
そして、着目すべきは長野県は長寿でも有名なことです。
厚生労働省(https://www.mhlw.go.jp/index.html)の発表によれば、長野県は47都道府県中で平均寿命が第一位(平成17年)になっています。(平成27年には第2位に転落していますが、第1位とは微差)
平均寿命が長く、最も長生きする地域だと言われていますが、これは、長野県が健康的であることの表れと言えるでしょう。
このように長野は、自然に恵まれ、農産物が豊かで、健康的。
老後の移住地として好まれる理由がよく分かります。
長野は不動産物件も安価
次に気になるのは、やはり住居費です。
持家を構える場合、不動産の費用は都市部と地方では違いますが、賃貸住宅に住む場合も賃貸料に差が出ます。
また、不動産を所有していれば、固定資産税が課税されますが、その課税額は資産の大きさに応じた額になりますから、これも都市部と地方とでは差がでます。
具体的にどれくらいの差になるのかは、今までどこに住んでいて、老後にどこに移住するのかによって変わりますので具体的な数値を出すのは難しいことです。
従って、ここでは私の身近な例をもとにお話しましょう。
私の身近にいる知人で、東京都下から長野市に引っ越してきた独身の男性がいます。その人の話では、引っ越し前後の間取りはほぼ同等であるにも関わらず、家賃は約半分になったそうです。
また、長野市に一軒家を構えた私の友人の家は、土地が50坪弱で間取りが5LDK+Sでとてもゆとりのある造りですが、私がさいたま市から引っ越す前に近所に住んでいた人の家は、物件価格がほぼ同等でも、3LDK+Sで土地も20坪余でした。
これらから、同じ価格であればゆとりのある家屋に住むことができることがよく分かります。逆に言えば、間取りを抑えれば住居費を抑えることができると言えます。
老後に夫婦二人で暮らすのであれば、移住前の物件を売却して、必要最低限の間取りの物件に移り住めば、余ったお金を老後の資金に回せます。
しかも、固定資産税も抑えることができますから、ゆとりのある生活が期待できます。
具体的な住居費の差は、移住前後の物件を比較しなければ分かりませんが、長野は長野市であっても一般の都市部に比べて安くなることがよく分かると思います。
老後の地方移住は、住居費を抑えたいという願いを十分満たしてくれると言えるでしょう。
長野以外の地方の場合は
さて、長野が老後の移住地として適しているかを論じて来ましたが、長野以外の別な地方の場合はどうでしょうか。
一概には言えませんが、一般に地方は長野と同様、
- 都市部と比較すれば自然に恵まれている
- 都市部よりは住居費が安くなる
といった傾向がありますから、移転に適している点では同じです。
長野は、老後に移住したい地域としてよく候補にあがりますが、それ以外にも「都市部郊外」と「沖縄や北海道」などが候補にあがります。
都市部近郊は、自然の豊かさという点では不十分ですが、中心部よりは緑に囲まれていますし、何より郊外に出ることで住居費を抑えることができます。
沖縄や北海道は、自然の豊かさは申し分ない地域と言え、住居費もまた大きく抑えることができると言えます。
いずれの地域を願望するかは、自然の豊かさと住居費抑制をどの程度求めていくかで決まると言えるでしょう。
都市部と地方それぞれの長所と短所の比較
ところで、老後に地方移住する理由を「自然の豊かさ」と「住居費の抑制」の2つだけから見れば、誰でも移住することになります。
しかし、都市部と地方とではそれぞれ長所と短所を持っていますから、総合的に検討しなければ本当にどちらが良いのかは判断できません。
地方移住を考える人は、とかくメリットばかりに目が行ってしまいがちですから注意しましょう。
私が長野に移り住んで、感じてきた都市部と地方(田舎)とのメリット・デメリットを挙げてみます。
一方のメリットは、他方のデメリット。
一方のデメリットは他方のメリットです。
ここでは都市部と地方におけるそれぞれの長短所として説明します。
(自然が豊かで、住居費が安いという地方のメリットについては、ここでは省きます)
地方移住の判断材料にして欲しいと思います。
居住地域の交通手段
まず、交通手段ですが、都市部は公共交通機関が発達していますが、地方においては路線もまばらですし、運行本数も少ないです。
従って、地方では、移動する場合に不便を強いられます。
私の住む長野市でも、運行本数が首都圏と比べて極端に少なく、路線も都内のように網目のようにカバーされていません。
電車もバスも共に、始発が遅く終電も早く、移動が必要な時はどうしても自動車に頼らざるを得ません。
交通手段については、都市部は便利、地方は不便と言えます。
施設の充実度
そして、各種施設などの充実度が違います。
例えば、医療機関は都市部の方が地方に比べて充実しています。
人口比率で比べた場合、必ずしも都市部の方が医療機関数が多いとは限りませんが、高度な医療技術や設備を持つのは、やはり都市部の方が多いです。
そして、長野市内の場合はまだ良いのですが、ちょっと山間部まで行くと、大病院と呼べる医療機関すらほとんどありません。
また、学校や教育施設も都市部の方が充実していて選択の幅も広いです。特に子供の進学などは学校も選べる範囲が地方では限られます。
学習塾や予備校なども限られてしまいます。運動やお稽古ごとなどをするにしても、どうしても施設や設備面で地方は見劣りしてしまいます。
老後の場合、教育や進学はあまり関係ありませんが、その他、文化、福祉、娯楽などあらゆる分野において、都市部は地方よりも施設などが充実しているのが現実です。
私が住む長野市は県庁所在地ではありますが、やはり東京との差は大きいと感じています。
買い物の利便性
買い物の利便性ですが、ネット販売が進んだ今日においてはあまり不自由はありません。
特に、食料品や日用品などについては、地方でもそれなりの販売網が整っていますから通常の生活を送るのであれば、大きな短所は無いと言えます。
しかし、都市部の方が品数が豊富であったり、商品ジャンルが広かったりしますので、やはり都市部の方が便利なことに変わりありません。
また、地方には展開していないような店なども多く、都市部でしか購入できない商品も多くあります。
一般に、1号店は東京、2号店は大阪に出店というような流れがありますから、地方では足を運ぶことができない店はたくさんあります。
これは、長野に住む私が、しみじみ感じることでもありますね。
老後になってもショッピング等にこだわるのであれば、その差は無視できないでしょう。
物価
物価の違いは平均的に見れば、都市部も地方も大きな差はないと言えるでしょう。
しかし、農産物などは地方の方が新鮮で安い傾向があります。事実、長野はとても恵まれていて、格安で果物を買えることもしばしばあります。
同様に、移住する先がもし海に近い地域なら、海産物などが安く手に入ることでしょう。
その一方で、加工食品や日用品などは、流通量の差で都市部の方が安くなります。都市部は人口が多い分だけ、薄利多売の商売が成り立つからです。
長野から上京した時にスーパーに立ち寄ると、身近なものがとても安く売っている場面によく出くわします。大きな消費地である都市部ほど販売価格をぎりぎりまで落とせるのだなぁと実感させられます。
このように、都市部と地方とでは物価に差が出る点があります。
これ以外の商品でも差が出る場合がありますが、どちらかと言えば都市部と地方との差ではなく、地域による差と言えます。
総合的な便利さ
そして、生活をしていく上で便利かどうかについては、総合的に言えばやはり都市部の方が便利です。
都市部にはあらゆる機能が集中しますから、それに伴って都市部でしかできないことが多くあります。
公的機関なども都市部がメインで、地方はどうしても支所、出張所などとなって、機能が制限されるなどは典型的な例です。
長野に住んでいると、海外へのアクセスはとても不便です。国際空港が近くにないからですね。
色々な面で、都市部は便利な造りになっているのです。
但し、活動量も減少傾向にある老後生活においては、高い利便性が求められる生活にはならないのも事実です。
老後に地方移住する場合に考えるべきこと
さて、ここまで都市部と地方で暮らす違いをメリットとデメリットという切り口で見てきました。
しかし、老後の生活を送る場合、老後ならではの特徴を考慮することが大切です。
では、老後に地方移住する場合に考えるべきことを一つ一つ見て行きましょう。
田舎の暮らしに馴染めるか
まず、一番大事なことは、実際に地方に移住してから、そこの生活に馴染めるかどうかです。
「住めば都」という言葉の通り、住み慣れてしまえばその地が一番住みやすくなるのは事実でしょう。
しかし、それはあくまで一般的な話であって、全ての人、すべての状況に当てはまる訳ではありません。
少なくても、移住する以前は都市部で生活していたわけですから、都市部での生活に慣れていたハズです。
その生活が一変する訳ですから、その影響は小さいハズはありません。もちろん人間は慣れる生き物ですし、環境に順応していく能力を持ち合わせています。
しかし、人は年をとればとるほど、住み慣れるまでには時間を要するようになります。また、順応しにくくもなります。
従って、もし地方に移転するのであれば、同じ老後でも比較的早めに行動する方が望ましいでしょう。
また、UターンやJターンでなくIターンに該当するような、田舎で生活したことがない人は、よくよく考えた上で判断した方がいいです。
自然に囲まれた生活への憧れだけで地方移住を決めてしまうと、「こんなはずではなかった」なんてことにもなり兼ねません。
何度も訪れたことがあってとても魅力を感じている地域だとしても、訪れるのと住むのとでは違います。
ことわざに「住むばかりの名所」とあります。
名所と言われる場所は、外から見るとよさそうに見えても、いざそこに住んでみると実際は良いことばかりではないと言う意味です。
本当に馴染める場所なのか。
余生を長く暮らす場所となる訳ですから、しっかりと検討しましょう。
老後の生活スタイルをイメージ
老後の生活は、現役時代と違って、とても多くの時間を持てるようになります。
現役時代は、仕事に追われて自由な時間を持てないものですが、老後は逆に自由な時間ばかり。
時間を有意義に使えないのであれば、これほど勿体ないことはありません。
地方に移り住んだ場合、日々の暮らし方は自ずと都市部と違ってきます。
都会派には都会派の生活リズムがあり、自然派には自然派の生活リズムがある。
もし、都会派の人間が、大自然に囲まれても何をしてよいのか分からなくなります。
地方に移住した場合、移住の地で何をするのか。これが重要です。
例えば、私の住む長野であれば、山々に囲まれていますから、ハイキングや、山歩き、森林浴が好きなら絶好の場所と言えるかも知れません。
もし、ショッピングが何より大好きという人なら、長野に移り住んだら憂鬱な思いを抱くかも知れません。
老後にどんな生活を送るのか。そのイメージする生活と、移住先の環境や状況がマッチしていなければ、そこには大きな溝ができてしまうことでしょう。
老後の生活スタイルをイメージできる地域であることが大切です。
地方は人とのつながり方が違う
老後に陥りがちな問題に「孤独との闘い」があります。
Uターンであれば、知り合いも多いかも知れませんが、そういう人は一部でしょう。
また、「夫婦二人で仲睦まじく」と願って移住しても、いずれは一人の生活になります。
同年代の高齢者とのつながりを求めても、友人・知人や身寄りがいない土地だと、人との交流そのものが困難でしょう。
まして、見知らぬ土地の場合、外部から来た者に対しては冷たく、疎外感を味わされる場合もあります。
文化の違いや地域性などがあって、人との交流に苦労するかも知れません。都市部で生まれ育った人であればなおさらでしょう。
私も長野に引っ越してきて、地域の風習とか習慣にどうしても違和感を覚える傾向があります。
今は仕事をしていてら、職場の人との交流がありますからまだいいのですが、もし、高齢になってから引っ越してきていたら、孤独との闘いに苦しんでいたかも知れないと思えます。
地方は都会と違って、人との交流の仕方が違います。しかも、いざ暮らしてみないとよく分からないこともあります。
移住後の地域住民との関わり合いについても事前によく考えておきましょう。
親戚や縁者との距離も考えるべき
もし移住先が生まれ故郷であれば、周辺には親戚や縁者もいることでしょう。
しかし、Iターンなど、まったく縁もゆかりもない地域に移り住む場合、近くには親戚・縁者が全くいなくなるケースもあります。
親戚とは完全に絶縁していると言うのであれば話は別ですが、何かあった場合に関わりが生じるのが親類です。
もしあなたに子供がいれば、その子供は「年老いた両親が遠方に住んでいて心配だ」と感じることもあるでしょう。
移住する場所によっては、普段はなかなか会うこともできないだけでなく、いざ何かあった場合に、とても不便な思いをするかも知れません。
長野に住む私は、まだ首都圏からは距離が近い方ですが、それでも両親に会おうとして上京するだけでもひと苦労です。
まして、高齢となって足腰の弱った両親ですから、長野に来ることは現実的ではなくなっています。年をとると長距離の移動は困難なんですね。
子や兄弟など、比較的近い立場の身内であれば、お互いが住む場所の距離も考えておくべきでしょう。
血縁というのは切っても切れない関係です。
身内がどれくらい近くにいるかも意識して移住先を検討したいものです。
地方は不便さを否めない
老後に地方への移転を考えるのは、60代が最も多いでしょう。
年老いた時期とは言え、後期高齢に比べればまだまだ若い方です。
もし60代であれば、地方の不便さはそれほど気にならない年齢とも言えます。
ところが、長年地方で暮らしていけば、老化の進行に伴って、当初は気にならなかった不便さが、とても大きく感じられるようになるものです。
老化が進めばどうしても関わるのが病院です。
もし、病院へのアクセスが不便な場所であれば、通院だけでも大変なことになるかも知れません。
仮に大病を患ってしまうと、周辺の病院では対応できない場合もあるかも知れません。
また、地方はとかく自動車に頼らざるを得ない傾向があり、交通手段も不便さを感じるひとつです。
私が住んでいる長野市も、多くの高齢者が自家用車を運転する姿を日常的に見かけますが、危険な運転や、あわや事故になるような場面に遭遇すると高齢ドライバーであることが多いのも事実です。
これは、「高齢ドライバーによる事故」という社会問題とも絡むことですが、公共交通機関があまり発達していない地方では、どうしても自動車に頼らざるを得ない現実を意味しています。
たとえ無理して運転することができていても、やがて高齢化が進めば運転が難しくなります。
地方では、移動に関する不便さは拭えない問題なのです。
このように、老化があまり進んでない時期には影響がほとんどない不便さでも、老化が進行してしまうと極度の不便さに変わる可能性があります。
住む環境によっては、単なる買い物ですら大きな不便を強いられることもありえますから、老化が進行した場合の生活を十分想定した移転計画を立てるべきです。
物価以外の料金の違いを認識すべき
前述したように、平均的な物価に大きな差はありません。あるのは地域ごとの特徴が反映された価格差です。
但し、出費は日常の買い物だけではありません。
わりと盲点になりやすい出費の差があるのです。
例えば、水道料金が一つの例です。
水道料金は住む地域を管轄している水道局によってその料金体系は大きく違ってきます。
これは、さいたま市から長野市に引っ越してきた私が、凄く実感したことでもあります。
実際に調べてみると、全国の水道料金のバラツキはとても大きく、地域差がバカになりません。
詳細は下記の記事にありますので、気になる方は読んでみて下さい。
参考記事長野市の水道料金はなぜ高いのか?
特に水道は生活に欠くことができない要素ですから、積み重なれば大きな金額になります。
必ず事前にチェックしておきましょう。
但し、都市部だから安い、地方だから高いという単純な料金体系ではありませんから、検討している移住先の水道料金をきちんと調べておくことが重要です。
ちなみに、料金差が生まれる要因や、料金の偏りがどの程度かについても上記の関連記事に掲載してあります。
次に、ガス料金です。これもガス会社(地域)によって料金がけっこう変わってきます。
ガスも日常で使い、出費を余儀なくされる要素のひとつですから、必ずチェックしておきましょう。
下記の記事も参考になると思います。
参考記事やっぱり長野のガス料金は高かった
ちなみに電気料金については、日本全国、どこに住んでいてもそれほど大差はありません。
従って、電気については、電力会社をどこにするか、料金プランを何にするかを老後の生活にあわせて選択するのが賢いと言えます。
そして、頭に入れておきたいのはガソリン価格です。
もちろん、自動車をどの程度運転するのかにもよります。
老化が進めばあまり運転しなくなるでしょうから、それほど気にすることはないかも知れませんが、全国を見ると地域によって、ガソリンの販売価格には開きがあります。
念のためチェックしておく方がいいでしょう。
私も、さいたま市から長野市へ引っ越してきた当初、ガソリン価格の差がけっこうあることに驚きを覚えました。一リットル当たり10円ほども違うのです。
詳しくは下記の記事を参考にして下さい。
参考記事長野のガソリン価格は高い!
最後に、必ず気に留めておきたいのが、国民健康保険料です。
国民健康保険は、老後の人の多くが関わってきますが、この保険料は住んでいる市区町村によって違ってきます。
たとえ隣接する地域でも管轄する市区町村が異なればその差額が大きくなる場合もあり、夫婦二人なら年間で10万円以上も差がでることすらあります。
どこに移住するかを検討する際には、必ず確認しておきたい項目のひとつです。
以上、物価以外の各種料金について述べて来ましたが、ここに記載した事項は定期的に相応の支出を余儀なくされる意味では、老後の生活に非常に大きく影響します。
事前にひとつひとつをしっかりと比較、検討しておきたものです。
こんなことも頭に入れておこう
老後の地方移住に当たって、考えるべきことについて述べてきましたが、他にも考えておいた方がよいことは無数あります。
細かい点を挙げればきりがありませんので、比較的重要と思われる3点について最後に触れおきます。
まず1つ目は、移住の市区町村に、移住を支援する制度や取り組みがあるかどうかです。
全国的に過疎化が問題になっている地方などでは、企業を積極的に誘致したり、移住を支援するための支援をしているところが多くあります。
せっかくある制度ですから、可能な限り大いに利用して行きましょう。
ただ、制度を積極的に導入している市区町村ほど、衰退していく傾向があります。その地域が発展しているかの見極めも大切です。
2つ目は、移住する地域のハザードマップを確認しておくことです。近年は、異常気象が悪化して豪雨に伴う災害などがとても多くなっています。
以前では考えられないような気象によって、ハザードマップを見直し、その範囲を拡大する市区町村も多くあります。
高齢となってから万一にも避難を強いられることになれば、生活が根底から覆されることもあります。
セカンドライフを盤石なものにするためにも、ハザードマップをしっかり確認して、危険な地域には移住しないようにしましょう。
3つ目は、もし移住後に仕事をしていこうと考えているのであれば、労働賃金のレベルが都市部よりも低いことをしっかり認識しておきましょう。
高齢というだけで、賃金の条件は厳しいものです。都市部の感覚で賃金を想定していると、大きな誤算にもなり兼ねません。
場合によっては、仕事を完全にリタイヤしてから移住するなどを考えてもよいでしょう。
老後の地方移住に関するまとめ
老後に、地方に移転する場合に考慮すべきことをまとめました。
実際に移り住んだからこそ分かった経験をもとにしていますので、少しでも実感を持って頂けたのではないでしょうか。
老後に地方に移住する場合に考えるべき要点をひと言でいえば、「単なる引っ越しではない」ことです。
老後は、現役時代と異なる点が多くあります。そして、老化は必ず進んでいきます。
そして、年老いているだけに、簡単にやり直しがききません。
老後の新たな出発ともなる地方移住。
しっかりと検討、計画して有意義なセカンドライフにして行きたいものです。